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原爆投下後の長崎で生きる人々を描く(映画『祈り-幻に長崎を想う刻(とき)-』)

日本には忘れてはならない過去がある。
1945年8月。広島、長崎に原子力爆弾が落とされた。

長崎の爆心地からおよそ500メートル北東にある浦上天主堂は、長崎に投下された原爆の爆風とその後の火災により、一部の壁を残して倒壊。教会やその周りでたくさんの人が犠牲になった。

1959年に再建された聖堂では、毎年原爆の犠牲者を追悼するミサが行われている。

その長崎から戦後76年の今、祈りの映画が発信された。
戦後の長崎、浦上天主堂が舞台となった映画『祈り ―幻に長崎を想う刻(とき)―』が公開される。

あらすじ

1945年8月9日、広島に次ぐ二発目の原子力爆弾が長崎市に投下され、人口24万人のうち約7万4千人が一瞬にして命を奪われた。東洋一の大聖堂とうたわれた浦上天主堂も被爆。外壁の一部を残して崩壊した。それから12年の時が過ぎた1957年、冬の長崎。戦争の爪痕が生々しく残る浦上天主堂跡には、ひっそりと埋もれるように、聖母マリア像=通称「被爆マリア像」の首と腕が転がっている。

浦上天主堂の保存を巡って議会が紛糾している中、被爆のケロイドを持つカトリック信徒の看護婦であり娼婦というふたつの顔を持つ鹿と市場で詩集を売りながら、自分を犯した男を探す忍は戦争の記憶と傷跡を残すため、被爆した浦上天主堂跡から被爆マリア像の残骸をひそかに盗み集める。

彼女たちはなぜマリア像を盗み出さなければならなかったのか。

そして長崎に雪の降るクリスマスの日がやってくる。

田中千禾夫の戯曲を映画化

原爆投下から12年、日本は急激に復興していたが、長崎では被爆した人々の苦しみが続いていた。被爆したというだけで避けられるという理不尽な差別に遭い、原爆症の症状にずっと苦しむ人、症状が10年以上経って遅れて出てくる人々もいた。戦争への自分の気持ちと葛藤しながらも強く生きる2人の女性の生活を描く中で長崎の戦後を生きる人々の姿が見えてくる。

原作は戦争体験者である田中千禾夫が書き、1959年に初演された戯曲「マリアの首 ─幻に長崎を想う曲─」。あまり描かれることのなかった戦後の被爆地長崎で生きる人々を捉えたこの作品は日本の演劇界に衝撃を与えた。岸田演劇賞、芸術選奨文部大臣賞を受賞し、唐十郎や野田秀樹ら多くの演劇人にも影響を与えたといわれている。

この作品を日立鉱山の煙害問題を扱った新田次郎原作『ある町の高い煙突』の監督・松村克弥と脚本・渡辺善則のコンビで映像化。戯曲にオリジナル要素も加えて脚色した。

自らも被爆によるケロイドを持ち、差別され生きてきた鹿。看護師として原爆症で日に日に弱っていく患者や血気盛んに抗争を繰り返し傷つく男達の処置をしながら、夜は娼婦として男達の話を聞き、様々な情報を集め密かに天主堂の復興を望んでいる。

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病弱な夫の代わりに昼は保母として働き、夜は詩集を市場で売っている忍。鹿の客引きを手伝っていたため、娼婦達から目の敵にされながらも、詩集を買ってくれた男の境遇を聞き、男と家族のために祈る。忍が辛い思いをしても市場に行くのは自分を犯した男を探して自身の目的を果たそうという強い思いがあるからだった。

原爆の光を浴びて焼けた自身の肌のケロイドも、首だけになってしまったマリア様も残さなければいけない。
鹿と忍は倒壊している浦上天主堂から戦争を忘れないために強い気持ちで被爆マリア像のかけらを密かに集め揃えていく。キリスト教には赦すという精神がある。過去と葛藤し、赦しの精神を支えに、鹿や忍は希望ある明日を夢見て生きていこうとする。

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実力派個性派キャスト勢揃い

実力派個性派の俳優が揃った。
鹿役には高島礼子。忍役には黒谷友香。生き方は全く違うが信仰心の強い二人の女性を中心に取り巻く人々が描かれる。忍の夫で、原爆症への差別に怯えながら隠遁生活をつづけ、自らも戦争で犯した罪の意識に苛まれる桃園に、田辺誠一。鹿に天主堂の状況を話す多良尾に寺田農、忍の詩集を買い求め自身の境遇を告白する一ノ瀬に村田雄浩、市場の取りまとめ役で、忍と過去に因縁がある次五郎に金児憲史。他にも柄本明、藤本隆宏、温水洋一 、馬渕英里何、宮﨑香蓮と、個性豊かな演技派キャストが揃う。彼らが演じた戦後の長崎の人々の生活の中に平和への強い思いが感じられる。

戦争のない平和な世の中が続きますようにと復興の中で誰もが思ったに違いない。
被爆者として自らの運命を受け入れながら、平和な社会が続くことを祈った人々の思いを忘れてはならない。戦後76年。あの日を知る人達は次第に減っている。戦後を生きる私達がこの歴史を伝えていかなければならない。そんな強い意志がこの映画にはある。

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もう二度と原爆を使ってはいけない。戦争はしてはいけない。最後の被爆地長崎から今も人々の祈りと共に原爆マリア像の祈りは続いているに違いない。

映画『祈り-幻に長崎を想う刻(とき)-』https://inori-movie.com/ は8月20日(金)よりシネ・リーブル池袋、UPLINK吉祥寺他で全国順次公開。現在ユナイテッド・シネマ長崎、佐世保シネマボックス太陽は先行公開中。東海3県では8月20日より愛知・名演小劇場で公開。

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