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地方で働こう-趣味も仕事も充実させる働き方-(映画『波乗りオフィスへようこそ』)

日本は今、自分の時間、生き方を重視する方向へと進み始めている。だが、なかなか自分の時間を作ることが出来る仕事を選択している人は少ない。自宅のある郊外から数時間かけて都心に通う人はまだ沢山いる。かくいう私もその一人だ。

インターネットの普及で、遠隔地にいても会議に出たり、自宅に居ながらにして会社の仕事を在宅勤務として出来るようになってきた。その先駆け的に実際に東京から故郷の徳島へ本社を移転させた会社社長がいる。吉田基晴さんだ。吉田さんは都会での人材獲得競争を逃れ、地方に人材を求めた。故郷にUターンして帰ったことで都会との連携という新たなビジネスも見つけた。吉田さんの著書「本社は田舎に限る」を原作に作られた映画が『波乗りオフィスへようこそ』。

『終わった人』のプロデューサーで吉田さんと同じ徳島県出身の明石知幸監督が数年ぶりにメガホンを取る。

地方は忘れ去られていく土地ではなく、これからの可能性がある場所と考え方を転換した一社長の実話が描かれていく。

あらすじ

セキュリティソフト会社を経営している徳永は東京での人材不足から自身の故郷徳島で、地方で生きることを望む人達から人材を募り、会社を経営することを思いつく。マスコミには大きく取り上げられ、自分のやりたいことをしながら働きたいという思いでやってきた人材を確保し、順調にプロジェクトがスタートしたように思えたが、地元で生きる人達との関係づくりも一から始めなければいけなかった。

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都会にはない魅力を求めて

徳島で都会にはない時間の使い方を紹介し、それを魅力的に感じて集まった人達から思い通りに人材を確保した徳永だったが都会からの転居をよく思わない人との折り合いに苦心したり、地元の人達の信頼を得るためのボランティア活動、伝統として続く祭りへの参加など都会では考えなかった地域とのつながりに時間が費やされていく。

主人公徳永は都会に豊かさを求めて上京したが、便利でものも豊富にある都会の豊かさが自分の求めるものではないことに年齢を重ねて気がつき始めている。故郷に帰り、地元の実業家・岩佐の手助けで都会にはない地域との関わりに時間を費やし、より自分の仕事を効率化して生きていくこと、自分に必要な本当の時間、豊かさが何なのかを改めて学んでいく。

地域との繋がり、古くから伝わる伝統やしきたりが地方では色濃くある。それを避けてはそこに住むことは出来ない。郷に入っては郷に従う。その姿勢で向かいあった時、新たな出会いやアイデアが生まれる。

舞台は徳島県美波町

セキュリティソフト会社を経営する主人公徳永が帰る故郷は四国の右下と言われる徳島県美波町。原作者の故郷が舞台となっている。撮影は町の人達が全面的にバックアップ。作品内に出てくる料理、船は美波町の方が協力し用意している。祭りのシーンは撮影を実際の祭りの時期に合わせ、キャストが参加してドキュメンタリー形式で撮影された。

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受け身の役者・関口知宏

主演はこの映画が初主演となる関口知宏。近年は世界を列車で旅する番組の旅人としての活動が大きく取り上げられているが、役者としての活動も長い。旅番組を観ていた明石監督が巻き込まれ感を持って演じてほしいとオファーしたという。東京から戻り、様々なトラブルに巻き込まれながらもしっかりと徳島での生活を確立していく社長の姿は海外の見知らぬ地で様々な人とふれ合う関口さんの姿と重なる。世界の様々な場所で人と出会い、多種多様な文化に触れてきた経験は芝居に大いに生かされている。

田舎にだっていいものはある。田舎にしかないものもある。便利が必ずしもいいことではない。不便さの中で生まれる価値もある。
都会にはない魅力が地方というブランドにはある。地方から全国へ、世界へ。地方からビジネスチャンスを掴む働き方は日本で次第に増えてきている。

自分の人生を本当に輝かすことが出来るのはどこか。仕事をする場所が生きる場所なのではなく、生きたい場所に仕事を作る。自分の仕事のスタンスを考えさせられる映画だ。

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『波乗りオフィスへようこそ』https://naminori-office.com は
現在有楽町スバル座他で公開中。東海地区では5月4日より愛知・名演小劇場で公開。

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