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『ぼくが生きてる、ふたつの世界』の呉美保監督が黄金タッグで描く今の子どもたち(映画『ふつうの子ども』)
昨年『ぼくが生きてる、ふたつの世界』が国内外の映画祭で評価された呉美保監督の新作『ふつうの子ども』が9月3日(金)から全国公開中だ。
あらすじ
上田唯士(ゆいし)、10才、小学4年生。両親と三人家族、おなかが空いたらごはんを食べる、いたってふつうの男の子。最近、同じクラスの三宅心愛(ここあ)が気になっている。環境問題に高い意識を持ち、大人にも臆せず声を挙げる彼女に近づこうと頑張るが、心愛はクラスのちょっぴり問題児、橋本陽斗(はると)に惹かれている様子。そんな三人が始めた“環境活動“は、思わぬ方向に転がり出して…。

©️2025「ふつうの子ども」製作委員会
呉美保監督の新作は『そこのみにて光輝く』や『きみはいい子』を生み出した脚本・高田亮との黄金コンビ。
脚本の高田亮がずっと前から書きたいと思っていたという「ふつうの子ども」たちの姿を、ありのままに描きたいという思いから企画は始まった。高田は自身の身の回りの子どもたちに魅了され、小学校への取材を重ねてオリジナルの物語を執筆。一方、呉監督は、育児経験を経て、子どもも大人も「共に楽しめる映画」を作ることへの情熱を強く感じており、ありのままの子どもを思いっきり描きたいと思っていた。二人の思いから生まれた本作は、今の日本に生きる子どもたちと、子どもたちと同じ時間に向き合う大人たちに焦点があたっている。自分達が得た知識をもとに活動を積極的に始める子どもたち、どうしたらうまく子育て出来るか試行錯誤しながら子どもに寄り添う母親、子どもたちにリアルな自分の思いを伝える先生。日常を描いている作品はたくさんあるが、こんなにリアルな子どもの描き方がされている作品ふ今までにないと感じた。
いろんな小学校があるが、撮影に使用されたのは扉のないオープン型の教室。閉鎖的ではない新しい形の教室で子どもたちの姿が捉えられている。
映画を牽引する3人の子どもたちがとにかく魅力的だ。
主人公の平凡な小学生・唯士を演じるのは深田晃司監督の『LOVE LIFE』、足立紳監督の『劇場版 それでも俺は妻としたい』、現在ドラマ「こんばんは、朝山家です」に出演中の嶋田鉄太。呉監督作品には『ぼくが生きてる、ふたつの世界』に続いて2度目の出演。唯士が大人びた同級生・心愛に淡い恋心のようなものを抱き、平和なようで「事件」だらけの毎日に体当たりでぶつかっていく姿を感じたまま素直に演じている。大人びた心愛役には瑠璃。本作が本格的な芝居初挑戦だというから驚きだ。心愛と一緒に環境活動に没頭する陽斗役はドラマ「3000万」「VIVANT」に出演、映画の公開待機作も多く控える味元耀大が演じている。
また、唯士の母親・恵子を蒼井優、担任教師・浅井を風間俊介、心愛の母親・優冬を瀧内公美が演じるなど、実力派の大人キャストが顔を揃える。子どもたちは得た知識で身近な所から積極的に活動を始める。その情報の吸収力と躊躇のない行動力は素晴らしい。昔子どもだった親たちは世間の常識や大人の世界のルールに忖度しながら子育てに試行錯誤する。その姿もまたリアルな描写だ。

©️2025「ふつうの子ども」製作委員会
遅刻しないようにクラスで飼っているカナヘビの餌を探したり、休み時間には友だちとケンカし、放課後には塾に通う。マルチタスクな中で生きていくのは子どもも大人も変わらない。あれ?いつから自分は大人になったんだっけと思う。今の自分達に重なる気持ちも子どもたちの姿に見えてくるから不思議だ。大人になるってどういうことだったのだろう。結局自分達は昔から変わらないのではないかとも思えてくる。あの頃の自分を思い出し、忘れていた感情が湧き上がる。
映画『ふつうの子ども』https://www.kodomo-film.com/ は9月5日(金)より全国公開中。東海三県では9月5日(金)より伏見ミリオン座、ユナイテッド・シネマ豊橋18、10月10日(金)より大垣コロナシネマワールド、伊勢進富座で公開。
UDCastによるバリアフリー字幕上映に対応。
詳しくはこちら
映画『ふつうの子ども』
キャスト
嶋田鉄太 瑠璃 味元耀大
瀧内公美 少路勇介 大熊大貴 長峰くみ 林田茶愛美
風間俊介 蒼井優
スタッフ
監督:呉美保 脚本:高田亮
企画・プロデューサー:菅野和佳奈 音楽:田中拓人
撮影:田中創 照明:溝口知 録音:小清水建治
美術:井上心平 衣装:藤山晃子 ヘアメイク:知野香那子
編集:木村悦子 リレコーディングミキサー:野村みき
サウンドエディター:大保達哉 カラリスト:石原泰隆
製作幹事・配給:murmur
©️2025「ふつうの子ども」製作委員会
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