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©︎2025「Good Luck」製作委員会(別府短編プロジェクト・TAMAKAN・theROOM)

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映画『Good Luck』は「ととのう系」!? 自然とサウナと旅先の出会い(『Good Luck』足立紳監督、足立晃子プロデューサーインタビュー)

2025年12月13日からシアター・イメージフォーラム、12月27日から名古屋シネマスコーレで公開される映画『Good Luck』。

別府ブルーバード劇場で上映される短編企画をきっかけに製作された足立紳監督による完全オリジナルの長編新作だ。

足立紳監督と夫婦共同で会社を設立した足立晃子プロデューサーを迎えて、映画制作秘話を伺った。

短編から長編へ 別府ブルーバード劇場短編映画プロジェクトからの生まれた長編映画

Q. 本作は別府ブルーバード劇場の短編プロジェクトから生まれた作品ですが、出来上がったものは長編です。監督はどのタイミングで長編になると思われましたか。

足立紳監督 (以下、足立監督)
「シナリオの段階では、長くても50分から60分かなと思っていました。編集で切って50分ぐらいに収めるという話だったんですが、50分にしていいなら、粘って60分くらいにすることが出来るかなと思って書いていました。ただ、脚本では1行で済む「太郎が歩いている」という場面は、一人旅というものをちゃんと描きたくて、太郎がうろうろしているところを撮影時にはじっくり時間を使いました。編集した時に普通はバッサリ切るシーンではありますが、切りたくないなと思って残したら編集が終わって僕のもとに作品が届いたときには115分ありました。本当は僕の意見を入れて短くしたものを別府短編映画プロジェクトの方に観てもらうのですが、そのまま観ていただいて、長くなってもいいかお伺いしたところ、「いいんじゃない」と、面白がってくださって長編にすることが出来ました」

足立紳監督

足立紳監督

Q.長編にすると足立監督から言われてプロデューサーとしてはどう考えましたか?

足立晃子プロデューサー(以下、足立P)
「長編にすれば一般映画としてのチャンスがあると思いました。撮影自体は終わっていたので、予算的にはポスプロ(ポスプロダクション)でスタジオを借りる2日分の実費が増えるぐらいの話でした。長編なら東京を始め、劇場での公開や映画祭出品のチャンスがあるかもしれないと欲が出てきました」

Q.別府ブルーバード劇場との交流はいつからあるのですか。

足立監督
「コロナ禍の2020年に第4回Beppuブルーバード映画祭に呼んでいただきました。『喜劇愛妻物語』を上映してくださったので、夫婦一緒に登壇してくださいと言われて、2人で行くなら子ども2人も連れて行っちゃうかということで、家族全員で行ったら居心地が良すぎました。子どもたちもその劇場の方に懐いて。そこから作品を作るごとに呼んでいただけるようになりました。今回の短編制作も声をかけていただけたのが光栄で、ぜひやらせていただきますということで作ったんです」

©︎2025「Good Luck」製作委員会(別府短編プロジェクト・TAMAKAN・theROOM)

©︎2025「Good Luck」製作委員会(別府短編プロジェクト・TAMAKAN・theROOM)

監督の内面が透ける「私小説」的作風

Q. 足立監督の作品は、監督の内面が透けて見える「私小説」的な作風が多いと感じています。特に『Good Luck』はフィクションとはいえ、主人公・太郎の浮気心もチラチラと見えてくるような作品です。パートナー、そしてプロデューサーとして、複雑な感情がよぎったりしませんでしたか。

足立P
「普段から「あわよくば」を抱えている人なので、浮気はあるだろうと。街を歩いていても、面白い音が聞こえるとすぐ聞きに行ったりする人なので。太郎のキャラクターや考え方は彼の頭の中を反映していると思っていました。なかなか実現はしませんが、常に「あわよくば」「何かいいことがないかな」と考えているようなので、全然驚きもしませんし、怒りもしません(笑)」

足立晃子プロデューサー

足立晃子プロデューサー

Q.監督の考え方や動きが主人公に反映しているとのことですが、どんなところに反映していますか。

足立監督
「駅に着いたらぴょんと降りるとか。あれも僕が一時やっていた行動です。知らないところに行ったら、ちょっと飛び跳ねるというか。それはただのゲン担ぎなんですけどね」

監督が愛するしょうもないシーン

Q. 監督が『Good Luck』の中で一番お気に入りのシーンはどこですか。

足立監督
「本当にしょうもないシーンと思われるかもしれないですが、太郎が別府から豊後大野に移動して夜うろうろしている場面が一番好きなんですよ」

足立P
「それを監督はずっと言っていますが、私はそんなに好きじゃないんです(笑)。誰も歩いていない道をただただ飲み屋に入るか入らないかでうろうろして」

足立監督
「あれは僕が独り旅でよくする行動です(笑)」

足立P
「監督はいかがわしい店を覗くことが大好物なんです」

足立監督
「いかがわしい店だけではないです(笑)。繁華街も含め、知らない街に行った時に、『何かないかな』と思って見ているんです」

足立P
「歩くシーンの多さに関しては、もうちょっとテンポ良くできないのかという話はしましたが、監督は「意味もなく歩くことがリアルだ」と言って削りたくないと言うんです。少し短くしてもらって104分になりました」

©︎2025「Good Luck」製作委員会(別府短編プロジェクト・TAMAKAN・theROOM)

©︎2025「Good Luck」製作委員会(別府短編プロジェクト・TAMAKAN・theROOM)

Q.切らないといえば太郎の着替えシーンもじっくり撮られていますね。

足立監督
「あれでも実は切っているんです。着替えにはパーソナリティが出ると思っていて。これでどれぐらい太郎の不器用な感じが伝わっているのかなとは思いますが、切る切らない以前に普通の映画やドラマでは間違いなく撮らないところを撮りました」

一人旅が二人旅へ

Q. 物語の舞台が豊後大野になり、サウナという要素が入ってきたことで、太郎と未希の旅は何か変わったと思いますか。

足立監督
「そうですね。異性と一緒にサウナに入るということはあまり普段ないですよね。サウナが介在することで、2人の距離感がぐっと近くなりました。サウナがあって良かったなと思います」

Q. 太郎と未希の元にもう一人現れて会話する謎の夜のシーンは、台本のどのあたりから構想に入ってきたのでしょうか?

足立監督
「最初はなかったです。短編として考えていた頃は太郎が一人でぶらぶらして、色んな人とすれ違うだけの話でした。がっちり誰かと一緒に旅をする設定はなくて。天野はなさんとオーディションで出会ったことが大きかったです。未希という女の子と2人で一泊二日道中共にすることになることを決めて、色々考えていった時に、映画『ビフォア・サンライズ 恋人たちの距離』のような恋愛チックな感じにはしたくないなと思いました。あの映画とは違う男女の同行にしたいけど、なかなかドラマチックなことが起きないからどうすればいいんだろうと考えながら台本を書いている時の悩みをそのまま出したシーンです。商業映画だと絶対できないもので、今回は自由なプロジェクトなので、やってみることができました」

©︎2025「Good Luck」製作委員会(別府短編プロジェクト・TAMAKAN・theROOM)

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足立P
「あの夜の会話シーンは、実験的で好きですね。面白いと思いました。「足立さん、53歳にして面白いことやってるじゃないの」と思いました」

足立監督
「映画監督が主人公の映画でもあるので、僕自身もメタ的なことをやってみたいなと思いつつも、なんかもっと映画について真剣に考えている人じゃないとやってはいけないのかなという怖い感じもあったりして。でも、今回は自由なプロジェクトだし、ちょっとやってみようかなと思ってやってみました」

Q. 複数の役を演じている役者さんがいらっしゃいます。しかもちょっとキャラが濃い目な気がします。

足立監督
「ちょっと夢のような映画にしたいという思いがありました。この監督はどういう世界に迷い込んじゃったんだろうという不思議なふわふわしたものを作りたかったんです」

足立P
「豊後大野にロケハンに行った監督から「桃源郷みたいな街だった」と聞いていました。その後で書いたシナリオにはちょっと変な人が随所に出て来て」

©︎2025「Good Luck」製作委員会(別府短編プロジェクト・TAMAKAN・theROOM)

©︎2025「Good Luck」製作委員会(別府短編プロジェクト・TAMAKAN・theROOM)

足立監督
「あっちに出てきた人がこっちでは別の人で出てきているというものが面白いかなと思って、はじめからオファーする時には「3役になります」とか「2役です」と俳優さんに伝えて演じ分けていただきました。映画『8 1/2』の自主映画版みたいなことをやりたいなとも思っていたので、メタ的シーンも含めて今回はいろいろやっています」

タイトルに込められた「幸あれ」の願い

Q. 公開に向けてのメッセージをお願いします。

足立監督
「映画『Good Luck』は12月13日のシアター・イメージフォーラムでの公開を皮切りに全国で公開されます。名古屋は12月27日よりシネマスコーレで公開です。映画の中にもサウナが出てきますが、この映画自身が【ととのう系】の映画だと思っています。よろしくお願いいたします」

足立P
「タイトルはなかなか決まりませんでした。タイトルの候補にあったのは「祈り」という短いものから「僕にも私にも君にも幸あれ」という長いものもありましたが、みんなに幸せになってほしいという、世界平和の気持ちでシンプルに『Good Luck』にしました。頑張れというよりも、「みんなでハッピーになるといいね」という気持ちです。ラッシュを観終わった後、「私、この映画好きだなー」って本当に思いました。
年末年始ふとあたたかくなれる映画になったら、すごく嬉しく、一人でも多くの方に届けばいいなと思っています」

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映画『Good Luck』https://mapinc.jp/film/good-luck/は 12月13日(土)よりシアター・イメージフォーラム、12月27日(土)より名古屋シネマスコーレで公開。

映画『Good Luck』

キャスト
佐野弘樹 天野はな 加藤紗希 篠田諒 剛力彩芽 板谷由夏

スタッフ
監督・脚本 足立紳
企画・プロデュース:釘宮道広 森田真帆
プロデューサー:坂井正徳 足立晃子
撮影:俵謙太 照明:福⽥裕佐 録⾳:⾅井勝
助監督:草場尚也 制作担当:太⽥勝⼀郎  編集:平野⼀樹
制作プロダクション:theROOM
協⼒:豊後⼤野市 別府市
配給:MAP 配給協⼒:ミカタ・エンタテインメント
2024年|⽇本|104分
©2025「Good Luck」製作委員会(別府短編プロジェクト・TAMAKAN・theROOM)

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