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本から始まるストーリーは無限大に広がる(映画『本を綴る』篠原哲雄監督×千勝一凜プロデューサー インタビュー&舞台挨拶レポート)
映画『本を綴る』が10月25日から名古屋シネマスコーレで公開されている。
映画『本を綴る』は、YouTubeで公開されているドラマ「本を贈る」に続く物語。あることがきっかけで小説を書けなくなってしまっていた作家が本のコンシェルジュとて東京を飛び出し、那須、京都、香川の本に関わる人々に会いに行くロードムービー。旅の途中で様々な本との出会いや人との交流を経験し、作家として再生していく姿を通して、本や本屋の魅力を描いている。
公開記念舞台挨拶でシネマスコーレに登壇した篠原哲雄監督と脚本・プロデューサーの千勝一凜さんにお話を伺った。また舞台挨拶レポートもお届けする。
篠原哲雄監督×千勝一凜プロデューサーインタビュー
Q. 映画『本を綴る』はYouTubeドラマ「本を贈る」から派生した作品だと伺いました。「本を贈る」という本に関わる作品が生まれた経緯を教えてください。
篠原哲雄監督
「元々、知人が東京都書店商業組合の方で、コロナ禍で本屋が減少している状況を背景に、東京都の助成金もあり、YouTubeチャンネルを立ち上げたので、組合に加盟している約90店舗への取材を通して、本屋の魅力を発掘するコンテンツを作りたいという依頼でした。最初はカメラマンや録音担当と3人で取材を回り始めました。千勝さんが加わり取材を進める中で、「これはドラマになるのではないか、本屋を舞台にしたドラマを作ったらいいのではないか」という企画が浮かんできたんです。組合側には「書店動画」という枠があり、その中に「企画動画」という予算枠があったので、ドラマ制作を提案しました。千勝さんの企画・脚本が通り、前作『本を贈る』が始まったという経緯です。これは取材から導かれた要素を取り入れた、東京の本屋を舞台にした話で、最終的には娘が亡くなった父の本屋をどうするか選択するという物語になりました」

©ストラーユ
Q. 「本を贈る」の撮影中に、続編の話も出ていたのですか?
篠原哲雄監督
「「これ続編もできるよね」という話は撮影の合間にしていた気がします」
Q. 『本を綴る』がロードムービーになった転換点や、物語が那須や京都、香川へと広がったきっかけは何だったのでしょうか?
千勝一凜プロデューサー
「「本を贈る」は東京都書店商業組合の依頼で作っていたため、舞台は東京の本屋に限定されていました。しかし、全国には素敵な本屋がたくさんあります。「本を贈る」の物語の最後に、小説が書けなくなった作家が、書けそうになる予感を抱いて旅に出るシーンがあるんです。どこを旅して、どんな人に出会い、なぜ書けなくなったのかを描きたいと考えました。それが『本を綴る』の構想になりました。那須が最初の舞台になったのは、「本を贈る」の上映会を那須で開催することになったのがきっかけの一つです。また、那須の黒磯駅前に那須塩原市図書館みるるのような立派な図書館がある一方で、那須ブックセンターのような知名度のある本屋が閉店している現状や、森の中でワクワクする本屋さんを見つけた時、那須から始まる映画が撮れるじゃないかと思ったんです。私は京都出身で、監督も京都が好きで、京都の本屋にも行くようなロードムービーにしようという流れになりました」

©ストラーユ
篠原哲雄監督
「その時の話の中で、永谷集落というところがダムにもならずに本当に廃村になってしまったという出来事や故郷をなくした人の悲哀感を哲弘が小説にして、そこに住んでいた人に責められて書けなくなったというエピソードを入れるのもいいかもしれないという話もしたことを覚えています」
Q. 京都から香川に行く展開ですが、宮脇書店との繋がりや、香川を舞台に選ばれた理由について、詳しくお聞かせください。
千勝一凜プロデューサー
「ロードムービーのロケ地を検討する中で、私自身、他の本屋より品揃えがマニアックな宮脇書店が好きで、大手でありながら庶民的な感覚がどこから来るのかを知りたいと思いました。その成り立ちを知りたくて、宮脇書店に伺った際に歴史を教えてほしいと頼んだところ、非売品の「宮脇書店物語」をお借りすることができました。全国にある宮脇書店の発祥は香川だったんです。京都の次は瀬戸内に行くことが必要だと感じ、四国周辺を調べました。映画を撮りやすい尾道などではなく、文化的に本の歴史や本に携わる人が多いのも香川だったんです。撮影の際、香川の皆さんに「なんで香川なの?」とよく聞かれましたが、撮影・宣伝や上映に行くと高松市、観音寺市など、市長さんや香川県知事さんにお会い出来て、協力を得られ、その土地の皆さんが映画館に来てくれるなど、地域自体がとても温かいと感じました」
篠原哲雄監督
「香川といえば本広克行監督の『UDON』のイメージですが、全国的な映画のロケ地としてはあまり香川は使われていない印象があったので、もしかしたら新鮮で面白いかもしれないという思いもありました」
千勝一凜プロデューサー
「香川では、脚本上で作家が宿泊するシーンだけを撮影する旅館を探していましたが、すごくぴったりの旅館が見つかり、女手だけで経営されているのを見た時に、哲弘が探す源次がここを手伝っている設定もいいなと思い、脚本を書き直しました」

©ストラーユ
篠原哲雄監督
「以前『種巻く旅人 くにうみの郷』で海苔漁師を取り上げたのですが、海苔漁師は朝早くには漁が終わるので、ダブルワークをしている方もいるんです。旅館で働いているという設定はあるなと思いました」
千勝一凜プロデューサー
「源次役の加藤久雅さんとも脚本の段階で細かいシーン設定などもいろいろ話し合いました。海苔漁師である源次のキャラクターを深く掘り下げることもやりました」
篠原哲雄監督
「千勝さんが俳優なので、俳優同士で色々話し合って、作っていく部分はいいなと思いました。撮影の間も千勝さんが現場にいるので、脚本の内容を話し合って撮影することができました。普通の映画の現場では脚本家はいないので、なかなかこういうことは出来ませんが、これは自主制作ならではだと思いますね」
千勝一凜プロデューサー
「脚本を書いて、イメージがある中でプロデューサーとしてロケハン準備をして、撮影場所の手配も出来るのでこのスタイルは効率がいいと私は思っています」
Q.今回の作品を機に会社を設立されたそうですね。
篠原哲雄監督
「機材を借りるにしても、個人ではなかなか貸してもらえません。だから、会社にしてしまえばいいのではないかということで、設立しました。今後も、自分のスタンスの中ではそのレーベルを使って作品を作れる可能性もあるので必要になってくるだろうという考えから立ち上げました」

©ストラーユ
Q. 映画の主題歌をASKAさんが担当されていますね。
篠原哲雄監督
「偶然大学時代の後輩が、当時ASKAさんのレーベルの社長をしていて、新しいアルバムを聞いてくれないかと声をかけられた時、「ASKAさんの曲がこの映画に合うかもしれない」と直感的に思いました。ちょうど映画が出来上がった頃の話で、ASKAさん側からも使っていいと言ってくださったんです」
千勝一凜プロデューサー
「レーベルの担当者から、この映画の「葛藤があったり、未完成だったり」という内容にぴったりの曲だと勧められたのが「I feel so good」でした」
Q. 『本を綴る』の後に、さらなる続編の構想はあるのでしょうか?
千勝一凜プロデューサー
「「本を贈る」があって、『本を綴る』があるから、次は「本を〇〇」という形で3部作のような形で続けられたらいいなと思っています。本や図書館やブックカフェなどの本の居場所を扱うので、今後は日本に限らず、台湾や韓国など、海外の出版事情にも広げていけたらと考えています」
篠原哲雄監督
「次は、出版社の協力も得て、さらにスケールアップしたいですね」
千勝一凜プロデューサー
「次回作は先に原作となる本を出版した方が、本屋さんの協力も得やすいというアドバイスも受けたので、先に本を書きたいです」

映画『本を綴る』舞台挨拶レポート
映画『本を綴る』の舞台挨拶が開催され、篠原哲雄監督、千勝一凜プロデューサーが登壇。その一部をお届けする。(司会:坪井シネマスコーレ支配人)
篠原哲雄監督
「篠原哲雄と申します。今日は朝早くからまたまた来ていただきましてありがとうございます。短い時間ですが、よろしくお願いします」

篠原哲雄監督
千勝一凜プロデューサー
「脚本、プロデューサーを務めました千勝一凜と申します。足元悪い中来ていただき、ありがとうございます」
坪井支配人
「先週から千勝さんは名古屋に入って、本屋を回って宣伝活動をされていましたが、名古屋の雰囲気はいかがですか?」
千勝一凜プロデューサー
「名古屋は今まであまり来る機会がなくて。私は関西人なんですが、ちょっと想像と違いました。名古屋の街はそんなに遠くまで行ってないんですが、とても綺麗で。皆さん、出会う人出会う人、なんか優しくて、「名古屋の嫁入り道具は見栄っ張り」みたいなイメージを聞いていたので、全然違うなと思いました。とても好印象で、皆さんに繋いでいただいたお店にも行かせていただきました。円頓寺商店街でやっている「本のさんぽみち」という本の催しがあるんですけど、そこに行ったら知っている本屋さんがあったりとか、色々なお店を端からずっと回ってきました」
坪井支配人
「矢柴俊博さんは「本を贈る」にも出ていらっしゃいますがぴったり役にはまっていますね」
篠原哲雄監督
「彼とは僕は実は長い付き合いで。昔とあるワークショップに彼が参加して、その短編で彼が主役を務めていました。『山桜』とかにちらっと出ていただいていましたが、いずれもう少しちゃんと腰を据えてやりたいと思っていた時に、「本を贈る」の副主人公としてお願いしました。多分彼はこれを喜んでやってくれるだろうと思ったら、本当にその通りで。そして今度は『本を綴る』で主役だよと。彼は結構脚本作りから関わってくる人なんですよ。今回すごくいい意味でうるさかったです(笑)。何度も、なぜ書けなくなったかということを、ちゃんと明解にしていかなければ伝わらないとか、そういうようなことを盛んに話しました。矢柴さんも言葉にこだわるんです。「こういうことは言わない」とか、言葉遣いも割と指摘を受けて。現場に入る前に全部やり取りして直したこともありましたが、それだけこの作品に入り込んでいた作り手としての姿勢だったと思います」
千勝一凜プロデューサー
「私は役者でもあって、自分たちの表現する場を求めて自主製作で作品を作ったところから今に繋がっています。役者さんとスタッフの方々とでは脚本の読み取り方が違うんだなと作品を作ってみて初めてわかったんですよ。各々の仕事があるから、その仕事に対して脚本の読み方があるんだと。役者は脚本を読み解いたり、感情で読んでいきますが、スタッフは違って、色々説明も書いて台詞を削っていったりするんです」

千勝一凜プロデューサー
篠原哲雄監督
「那須、京都の撮影の後、香川撮影の間に僕は『ハピネス』を撮っていました。その間に千勝さんが取材したり、役者さんと話し合ったりして、リライトしてくれました」
坪井支配人
「最後に来ていただいた皆様に締めの一言をお願いします」
千勝一凜プロデューサー
「名古屋の地で、そしてシネマスコーレで上映していただいたことを本当に嬉しく思っております。この映画はいろいろ小さな隠し技がありますので、2回、3回と観ていただけたらなと思います。そしてまた次のシリーズを上映する際もまた見に来てください。本日はどうもありがとうございました」
篠原哲雄監督
「映画はお客様に観てもらって初めて作品になります。お客様の受け止め方によってもどんどん映画自体が変わっていくので、やっぱり上映することは大事だと思っています。今日は名古屋公開2日目です。これからまだ5日間やりますので、ぜひ広めてください。また新しい映画の発見もあると思います。僕も色々作り続けているので、また名古屋に来た時にはお会いできたらいいなと思います。ありがとうございました」

映画『本を綴る』は現在名古屋シネマスコーレで公開中。また11月24日~28日のNAGOYA CINEMA Week 2025(https://nagoya-cinema-week.com/events/honwotsuduru/)にて三越映画劇場(星ヶ丘三越9階)でも上映される。
映画『本を綴る』
出演:
⽮柴俊博 宮本真希 ⻑⾕川朝晴 加藤久雅 遠藤久美⼦
川岡⼤次郎 宗清万⾥⼦ ⽯川 恋
渡邊このみ 歌川貴賀志 市村 亮
千勝⼀凜 福地千⾹⼦ 渡辺 ⼀
森⽥朋依 紀那きりこ 及川規久⼦ ⽶野真織 ノブイシイ 岡村洋⼀ 丈
監督‧総合プロデュース:篠原哲雄
脚本‧キャスティング‧プロデューサー:千勝⼀凜
プロデューサー:櫻庭賢輝
アソシエイトプロデューサー:⼭中勝⼰
⾳楽:GEN
主題歌:ASKA 「I feel so good」
撮影:上野彰吾(JSC) 尾道幸治 照明:浅川周
録⾳:⽥中靖志 ⽥辺正晴 美術:⼤町⼒ 京映アーツ
スタイリスト:神恵美 ヘアメイク:岩鎌智美 梅原さとこ
助監督:市原⼤地
デザインイラスト:松永由美⼦ 宮本奈々 編集:⽔⼾英樹
整⾳:⽥中靖志 グレーディング:稲川実希
後援:⽇本書店商業組合連合会 東京都書店商業組合
企画‧製作:ストラーユ
配給:アークエンタテインメント
2023 年|カラー|⽇本|DCP|ビスタ|107 分|
5.1ch レイティング:G ©ストラーユ
公式サイト: http://honwotsuzuru.com
YouTubeドラマ「本を贈る」 (約10分×9話)
https://www.youtube.com/playlist?list=PLqEsc8gylHta5a4paoMSN4WVnH3vzSHuG
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