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義に生きる男たちの姿を見よ(舞台「忠臣蔵」観劇レポート)
名古屋伏見の御園座で堤幸彦監督が演出を手掛ける舞台「忠臣蔵」を観劇した。
舞台のスクリーンに「忠臣蔵」と映し出され、全くセットがないことにまず驚く。
しかし、この後映像を使って見事に様々な場所やその場所の奥行きまで再現する舞台セットが現れた。今までも堤監督は映像を多様しているが、今回は思いきったなと思った。これから観る方もいるので内容については多くは語らないでおく。
古くは大河ドラマ、テレビ東京の12時間ワイド時代劇で描かれる忠臣蔵を3時間で描くので、いわゆる「畳換え大騒動」「殿中でござる!」のあたりはものすごく端折られているし、各赤穂浪士のエピソードや討ち入り蕎麦あたりの話も全くない。いわゆる「3時間でわかる忠臣蔵」だから昔から忠臣蔵を知っている人にはあれがない、これがないと感じるが、知らない人が見れば特に問題ないという構成。家臣達や内蔵助が大願成就に向けて何を考えてどう動いたのかという所に重きが置かれた展開となっていたように思う。特筆すべきは悪者としてばかり描かれていた吉良上野介についてもしっかりと人間像を描いていたところや元禄時代に今の時代を投影し、現代を生きる私たちに一石を投じるセリフが随所にあったところだ。
赤穂浪士や吉良上野介を守る武士達は熱い。各人物に見せ場が設けられている脚本で、役者達の輝きを感じることができる。キャストは2.5次元ステージやテレビ朝日のスーパーヒーロータイム(仮面ライダー&スーパー戦隊)出身者や現役ウルトラマンまでが勢揃い。こんなに一度にお目にかかれていいのかとワクワクしてしまった。
堀部安兵衛役の藤岡真威人さんの闘い慣れした剣さばき、清水一学役の近藤頌利さんの二刀流との立ち回りも見事。
藤林泰也さん演じる大石主税と唐木俊輔さん演じる矢頭右衛門七の若き浪士の熱い思いもたまらない。浪士たちに血判を渡すシーンの右衛門七の涙が前の方の席にいたこともあり、リアルに止めどなく流れていくのを観てもらい泣き。
舞台のメインビジュアルとずいぶんビジュアルが違って驚いたのは崎山つばささん。ワイルドで軽やかな不破数右衛門だった。
徳重聡さん演じる色部又四郎は「元禄繚乱」の松平健さんのように本当に一物も二物も腹に持っていそうなキャラ(褒めている)。
松田賢二さんのイケボもたまらなかった。
財木琢磨さんは大きな声の寺坂吉右衛門のキャラがコミカル部分も担っていて、楽しい。
藤原紀香さん演じる妻として、母としてのりくの強さが美しい。瑤泉院とおかるという全く違う役を演じた珠城りょうさんは特におかるの身の上話をする部分が素敵。
何より立石俊樹さんが義を貫く浅野内匠頭をしっかりと演じていて、最後までその姿を忘れることがないことがこの作品の胆となっている。
拍手を送りたいのは討ち入りシーンで斬られても別人として戻ってまた斬られていたアクションチーム。諸鍛治さんの殺陣に合わせて怪我をしないように決められた導線をしっかりタイミングを合わせて動いている。彼らなくして討ち入りシーンは存在しない。刀を合わせる音を入れていた方のタイミングも見事。
吉良上野介は高橋克典さん。キャストが発表された時、意外だなと思っていたが、今回の上野介のキャラクターであれば納得。吉良の民には良き領主として慕われていた吉良公。世の中の流れに乗り、生きてきた男もやはり武士。最後の演出もドラマにはない展開で新鮮だった。
大石内蔵助を演じたのは上川隆也さん。忠義を貫く城代家老の様々な面を見せてくれる。長年出演作品を見てきた中には忠臣蔵関連の作品もある。NHK時代劇「最後の忠臣蔵」では「生きよ」と内蔵助に言われて四十七士が亡くなった後に遺族達のもとへ訪ねて回る寺坂吉右衛門を、テレビ東京の正月ワイド時代劇「忠臣蔵~決断の時」では浅野内匠頭を演じている。いつか大石内蔵助をやってくれたらいいなと思っていたが、時代劇スペシャルがテレビではなくなってきていたので、諦めかけていたところのこの舞台。ついにその姿を見ることが出来た。浪士たちに血判を渡すシーンでの浪士たちとのやりとり、多くを語らずにきて、やっと自らの思いを語るシーンは観るものにもずっしりと伝わってくる。この説得力がたまらない。一瞬刀を差すのに苦労しているなと思ったところも自然に対処していて、一つ一つの所作が美しい。立ち回りの見せ場は若手に譲っている感じになっているが、刀を抜けばさすがの剣捌き。客席からステージに駆け上がるスピードが他の赤穂浪士達に比べて誰よりも速かったことはここに記しておきたい。
殿のために。権力にも抗い、大義を果たすその一途な思い。ただ歴史や文化を伝えるだけでなく、現代劇では言えない、描けないことも時代劇では出来る。その可能性を感じた舞台だった。
おまけ 名古屋初日カーテンコールレポート
スタンディングオベーションがあり、緞帳が一度下がった後、再び開いて、上川さんが前に出て観客の拍手をタモリさんよろしくチャンチャンチャンと収めてご挨拶。
上川隆也さん
「皆様新年明けましておめでとうございます。新年を私たちと過ごしていただき…(正確に思い出せないので以下略。ただいつものように折り目正しい挨拶をご想像いただければ)
忠臣蔵にもゆかりある地でもあり、演出の堤さんは四日市ご出身ですが、他にもゆかりがある者がおりますのでご紹介します。愛知県長久手市出身、岐州匠!」
長久手市出身岐州匠さんがまずご挨拶。
岐州匠さん
「僕が明けましておめでとうございますといったらおめでとうございますって言ってもらってもいいですか?」
慌てて、上川さんが岐州さんのところに。
上川さん
「そういうことはお願いしたらいけません!」
岐州さん
「でもこういう機会でもない限りできないですし…」
止めようとしている上川さんを見て克典さんがまあまあと後ろからそれを抑えようと動くと結局上川さんもOKを出す。
岐州さん
「明けましておめでとうございます」
観客
「おめでとうございます!」
場内大拍手。おかげで私たちも推しにおめでとうが言えました。ありがとう岐州さん。
岐州さん
「おばあちゃんも歌舞伎を観にくる御園座に年明け最初に立てて嬉しいです。ありがとうございます!」
続いては蒲郡出身の珠城りょうさん。
上川さん
「蒲郡市出身、珠城りょう!」
珠城りょうさん
「蒲郡市出身、観光大使もしております、珠城りょうです。久しぶりに御園座に、立てて嬉しいです。では方言で皆様にご挨拶を…(正確に思い出せないので以下略。ただ、方言でのご挨拶もお美しかった)」
上川さん
「もう一人。ナレーターを担当してくださった松平健さんから今日ここにいる方のためにメッセージをいただいています」
語りを担当している松平健さんからも特別にメッセージ。嬉しい。松平健さんのアナウンスを盛り上げ、花びらを投げようと高橋克典さんが投げた花びらが一つしか飛ばなかったのを観て、あららと反応している紀香さん。
ここで終わろうとした上川さんに
「僕も…」とアピールする克典さん。
上川さん
「またあなたは…あなたは横浜、横浜市出身。生粋のハマっ子じゃないですか!」
高橋克典さん
「ここのところ愛知、西尾市、吉良だもん」
なかなかあきらめない克典さん
上川さん
「あなたは…北秋田、白川村に続いてまた観光大使増やすつもりですか!」
克典さん
「よく調べてるな…わかった」
手を上げてアピールすると場内大拍手。
克典さん
「今日のお客様は僕を観に来てくれているから」
上川さん
「だからやりづらかったのか」
克典さん
「こちらもやりづらかった」
上川さん
「でも仇討ちはしないといけないんです!」
上川さん
「それでは皆様と一丁締めで締めたいと思います。一丁締めはチャチャチャンチャチャチャンチャチャチャンチャンじゃなくてチャンの一回だけですよ」
始めようとする横から
克典さん
「二階はやっちゃだめ…(手で×を作る)」
上川さん
「違う!その一階じゃないの!一回、one time!」
克典さん
「はいはい、GO AHEAD…」
上川さん
「その格好でGO AHEADって…(笑)」
その後一丁締めでカーテンコールは締めくくられた。
ソワレがないのでゆっくりカーテンコールしてくださったのが嬉しい年明け一本目の名古屋初日だった。
舞台「忠臣蔵」公式サイトはこちら
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