風はどこから湧き起こるのか(映画『心に吹く風』インタビュー)
松竹ブロードキャスティング第4弾の監督はユン・ソクホ氏による『心に吹く風』。
日本でも一大ブームを巻き起こした韓国ドラマ『冬のソナタ』をはじめとする
四季シリーズの演出を担当した演出家が韓国ではなく、日本で映画の初監督をする。
初恋をテーマに描く作品が印象に残るユン・ソクホ監督。
『心に吹く風』は自然豊かな北海道を舞台に
23年ぶりに再会した初恋相手との数日を描く。
ヒロインのオーディションをしていることは知っていた。
ヒロインが発表になって驚いた。真田麻垂美さんだった。
『月とキャベツ』が今でも大好きな私には彼女の姿は
あの当時のヒバナの姿で止まっていた。
16年前アメリカに渡りそのままアメリカに居を移した彼女は
スクリーンから姿を消していたのだ。
スクリーンに16年ぶりに映る彼女はあの透明感を残しながら
しっかりと16年間を経た姿を見せてくれた。
その相手役には映画やドラマで様々な顔を見せてくれている眞島秀和さん。
本作でも新たな魅力で観客を楽しませてくれる。
撮影に来た北海道で23年ぶりに初恋相手・春香(真田麻垂美)に出会った
リョウスケ(眞島秀和)はわずかな時間を一緒に過ごしたいと願う。
はじめは戸惑っていた春香だったが少しずつ昔の感覚を思い出していく。
5月19日。ユン・ソクホ監督、真田麻垂美さんが来名。
作品、役作りについてインタビューした。
ユン・ソクホ監督 真田麻垂美さん インタビュー
Q.日本で映画を撮ることになったきっかけを教えてください。
ユン監督
「松竹のプロデューサーである深田さんから以前に一度
映画撮影の提案を受けていましたが
その時はスケジュールが合いませんでした。
今まではドラマをずっと撮ってきていたんですが
いつか映画も撮りたいなと思っていました。
今回落ち着いてきたところに再度深田さんから提案があり、
これがチャンスかもしれないと思いました。
しかも日本での撮影ということは経験したことがなかったですし
外国のスタッフとともに作品を作るということは
私にとっても挑戦で楽しみだったので提案をお受けしました。」
Q.北海道との縁はどこからあったんですか?ーロケ地に北海道を選んだわけ
ユン監督
「昔、ドラマ『北の国から』を見たことがありました。
そのときにとても美しい場所だと思っていました。
『冬のソナタ』をきっかけに札幌のNHKに出演しまして、
その事を話したところ『北の国から』の撮影場所に行くことができました。
ドラマの中と同じように美しい場所だなとひかれまして
それからプライベートで何度も足を運びました。
ですから場所についての知識はたくさんあります。
映画を撮る時にこの場所から受けるインスピレーションがたくさんありまして
北海道で撮影することにしました。」
Q.今作も"初恋"がテーマ。日本の初恋と韓国の初恋は違いますか。
ユン監督
「私が思うに韓国の方が日本よりも初恋に対する思いは深いと思います。
韓国は日本に比べて男女共学が少ないんです。
大学に行くまで同じ空間で異性に対して知る期間がないので
好奇心や審美眼が維持されると思うんです。
初恋に対してのファンタジーは審美眼が維持されていてこそだと思うんですね。
そういうところからも韓国の方が思い入れもあると思います。」
Q.監督にも初恋の思い出はありますか?
ユン監督
(日本語で)「もちろん!(笑)」
監督によって再び開かれた扉
Q.ワークショップから撮影までどんな気持ちで臨まれましたか?
真田さん
「16年前に出演した映画がきっかけでアメリカに渡ったんですが
あの当時は演技のワークショップが存在していなくて
個人の先生について学ぶという感じだったんです。
たくさんの人と何かをするという経験がなくて
今回ユン・ソクホ監督がワークショップをやられるということで
私でも参加していいのかなと戸惑いはあったんですが
是非という後押しもあって参加しました。
男女20人ずつで組んでやっていくんです。
監督が書いたシナリオをやっていくんですがその内容が心動かされるもので
気負うこともなく自然とワークショップで感情が動き出したんです。
16年経っていたんですが、感情の扉はユン監督のお力で自然と開かれたような感じです。
無理矢理涙を流さないといけないとかもなく
フラットな状態で自然な反応ができました。
その後、春香役に決まって現場に戻れたことはすごく嬉しかったです。
何とも言えない感情の高ぶりがありました。
春香は自分の気持ちを押し殺して生きてきた女性なので
自分の感じたことをそのまま表現すればいいというわけではないですし、
その辺りのコントロールを現場では監督に委ねて
私がその当時できた力を発揮させていただいた感じです。
監督がひとつひとつ引っ張ってくださったと思います。」
リョウスケとの距離感はどう演じていたのでしょうか?
「リョウスケが突然現れたときの春香は戸惑いだらけだったと思うんですよね。
今自分の前に現れても何もしてあげることができないし、
そこから何か変えるわけにもいかないしどこかで迷惑ではないけれど
どうすることもできないという距離感をはじめはもってますよね。
そこからリョウスケに連れ出されてどんどん心を解していってもらうんですが
その解されていく演技というのは撮影に入る前から
監督と眞島さんと半年前ぐらいから本読みもリハーサルもしていたので
お互いに春香とリョウスケになっている状態で現場にいて
しかもほぼ順撮りでの撮影で、解れていく段階の表現は私のフィルタを通しただけで
感情が赴くままに表現していた感じです。」
Q.眞島さん演じるリョウスケにひかれます。真田さんから見た眞島さんはどんな方ですか?
真田さん
「撮影中はリョウスケだと思うんですが
普段の眞島さんはソフトな男性というよりは男気に溢れた感じです。(笑)
今回は眞島さんの新たな魅力をユン監督が引き出してくださっていると思います。
映画やテレビで眞島さんを見ている方はリョウスケにも心が揺れるんじゃないかと思いますね。」
人を味方につける力ー真田麻垂美の変わらぬ魅力ー
Q.なぜ真田さんを選んだのですか
ユン監督
「私はワークショップの面接から関わりました。
韓国でも1日のワークショップに関わったことはあるんですが
3日以上というのは今回が初めてでした。
役者さんはエネルギッシュな方が多くて
私もエネルギーをもらって情熱的になりました。
オーディションなので誰かを最後には選ばないといけない。
真田さんははじめの面接よりもどんどんプラスの印象を見せてくれた参加者でした。
途中ぐらいから真田さんが春香にリンクしてるなと思っていたんですが
どの課題でもいいところを見せてくれたので真田さんに決めました。
春香は真面目に生きてきた女性です。とても女性らしい女性。
どういう運命でもこれが私の人生かなと逆らうことなく
毎日をコツコツ生きる女性に風が吹く。段階を踏みながら
本当の自分自身を見つけていくという春香にぴったりだったんです。
韓国でも大事に考えていることですがビジュアルのイメージだけでなく、
いかに見る人を味方につけられるかが大事だと思うんです。
演技力でも外見でもなく人に好かれる雰囲気を持っていることは大事です。
今回は特に不倫の話なので不倫だけどあの二人を応援したいと思ってもらえる
雰囲気を持っていたので真田さんに決めました。」
日本でとったからこそ。いつもと違うユン・ソクホ監督の違う顔
Q.もしこれを韓国で撮影していたらストーリーは違っていましたか?
ユン監督
「意図的にそうしたわけではないんですが作品を見て
自分の作品ではない気がいい意味でしました。
新しいものを感じました。慣れないカラーと言いますか。
もし韓国で韓国の俳優とやっていたらきっと感じられないことだったと思います。
場所柄というよりは日本の俳優さんだったので演じ方に違いがありました。
間接的な表現であったり、控えめな表現であったり。
ぐっと抑えた演技をしてくれました。
韓国の俳優だったら違うように思います。
編集担当も日本の女性で、編集の方やプロデューサーの方の意見も
聞いて取り入れたところ違った感じの作品になりました。」
Q.テレビドラマと映画ではやはり違いますか?
ユン監督
「ドラマと映画は違いがたくさんありました。
ドラマはテレビを通してみていただくので不特定多数の方が見ますよね。
子供からお年寄りまで。それも考えないといけないし、
しかも同じ時間に他のチャンネルと競争しています。
リモコンですぐチャンネルが変えられてしまわないように
視聴者を引き留めておくためにはあまり考える時間を与えないと言うか
テンポを早く進めないといけません。
そこも考えないといけないですし、与える情報が多い分だけ
色んなことを親切に細かく説明しないといけない。
映画はドラマとは違います。今何を撮りたいのかを真剣に自分と向き合って考えました。
テレビではできないカットを撮っています。
車が走るカットを長く撮ってみたり、大自然が本当にきれいなので
大きなスクリーンで見ていただくために大きなカットでそれを入れてみたり。
音の面でも風の音が効果的に使われるというのが映画だと思うんです。
ドラマではできなかったことが今回は思う存分できたと思います。」
風の気配が随所にする映画だ。
風の音はせつなくもやさしくもある。
23年ぶりの再会で二人の心にも風が巻き起こる。
北海道の自然と日本の俳優が
ユン・ソクホ監督の新たな魅力を引き出した。
『心に吹く風』(http://kokoronifukukaze.com/)は
6月17日より新宿武蔵野館他で順次公開。
東海地区では6月17日より名古屋センチュリーシネマにて公開。
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第75回CINEX映画塾 『エゴイスト』松永大司監督が登場。7月29日からリバイバル上映決定!
第75回CINEX映画塾 映画『エゴイスト』が開催された。ゲストには松永大司監督 ...
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映画を撮りたい。夢を追う二人を通して伝えたいのは(映画『愛のこむらがえり』髙橋正弥監督、吉橋航也さんインタビュー)
7月15日ミッドランドスクエアシネマにて映画『愛のこむらがえり』の公開記念舞台挨 ...
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あいち国際女性映画祭2023 開催決定!今年は37作品上映
あいち国際女性映画祭2023の記者発表が7月12日ウィルあいちで行われ、映画祭の ...
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映画『愛のこむらがえり』名古屋舞台挨拶レポート 磯山さやかさん、吉橋航也さん、髙橋正弥監督登壇!
7月15日ミッドランドスクエアシネマにて映画『愛のこむらがえり』の公開記念舞台挨 ...
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彼女たちを知ってほしい。その思いを脚本に込めて(映画『遠いところ』名古屋舞台挨拶レポート)
映画『遠いところ』の公開記念舞台挨拶が7月8日伏見ミリオン座で開催された。 あら ...
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観てくれたっていいじゃない! 第10回MKE映画祭レポート
第10回MKE映画祭が7月8日岐阜県図書館多目的ホールで開催された。 今回は13 ...
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京都はファンタジーが受け入れられる場所(映画『1秒先の彼』山下敦弘監督インタビュー)
台湾発の大ヒット映画『1秒先の彼女』が日本の京都でリメイク。しかも男女の設定が反 ...
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映画『老ナルキソス』シネマテーク舞台挨拶レポート
映画『老ナルキソス』の公開記念舞台挨拶が名古屋今池のシネマテークで行われた。 あ ...
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「ジキル&ハイド」。観た後しばらく世界から抜けられない虜になるミュージカル
ミュージカルソングという世界を知り、大好きになった「ジキル&ハイド」とい ...
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『オールド・ボーイ』のチェ・ミンシク久しぶりの映画はワケあり数学者役(映画『不思議の国の数学者』)
映画館でポスターを観て気になった2本の韓国映画。『不思議の国の数学者』と『高速道 ...
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全編IMAX®️認証デジタルカメラで撮影。再現率98% あの火災の裏側(映画『ノートルダム 炎の大聖堂』)
2019年4月15日、ノートルダム大聖堂で、大規模火災が発生した。世界を駆け巡っ ...
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松岡ひとみのシネマコレクション 映画『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』 阪元裕吾監督トークレポート
松岡ひとみのシネマコレクション 映画『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』が4月1 ...
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映画『サイド バイ サイド』坂口健太郎さん、伊藤ちひろ監督登壇 舞台挨拶付先行上映レポート
映画『サイド バイ サイド』舞台挨拶付先行上映が4月1日名古屋ミッドランドスクエ ...
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第72回CINEX映画塾 映画『雑魚どもよ、大志を抱け!』足立紳監督トークレポート
第72回CINEX映画塾が3月25日岐阜CINEXで開催された。上映作品は岐阜県 ...
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片桐はいりさん来場。センチュリーシネマでもぎり(映画『「もぎりさん」「もぎりさんsession2」上映+もぎり&アフタートークイベント』)
センチュリーシネマ22周年記念企画 『「もぎりさん」「もぎりさんsession2 ...
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カンヌ国際映画祭75周年記念大賞を受賞したダルデンヌ兄弟 新作インタビュー(映画(『トリとロキタ』)
パルムドール大賞と主演女優賞をW受賞した『ロゼッタ』以降、全作品がカンヌのコンペ ...
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アカデミー賞、オスカーは誰に?(松岡ひとみのシネマコレクション『フェイブルマンズ』 ゲストトーク 伊藤さとりさん))
松岡ひとみのシネマコレクション vol.35 『フェイブルマンズ』が3月12日ミ ...
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親子とは。近いからこそ難しい(映画『The Son/息子)』
ヒュー・ジャックマンの新作は3月17日から日本公開される『The Son/息子』 ...
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先の見えない日々を生きる中で寂しさ、孤独を感じる人々。やすらぎはどこにあるのか(映画『茶飲友達』外山文治監督インタビュー)
東京で公開された途端、3週間の間に上映館が42館にまで広がっている映画『茶飲友達 ...
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映画『茶飲友達』名古屋 名演小劇場 公開記念舞台挨拶レポート
映画『茶飲友達』公開記念舞台挨拶が2月25日、名演小劇場で開催された。 外山文治 ...
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第71回 CINEX映画塾 映画『銀平町シネマブルース』小出恵介さん、宇野祥平さんトークレポート
第71回CINEX映画塾『銀平町シネマブルース』が2月17日、岐阜CINEXで開 ...
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名古屋シアターカフェ 映画『極道系Vチューバー達磨』舞台挨拶レポート
映画『極道系Vチューバー達磨』が名古屋清水口のシアターカフェで公開中だ。 映画『 ...
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パク・チャヌク監督の新作は今までとは一味も二味も違う大人の恋慕を描く(映画『別れる決心』)
2月17日から公開の映画『別れる決心』はパク・チャヌク監督の新作だ。今までのイメ ...