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大森南朋×須藤蓮×庄司哲也 ロイヤル劇場思いやるプロジェクト 映画『トレインスポッティング』トークレポート

2023/11/20

ロイヤル劇場思いやるプロジェクト 須藤蓮セレクト35ミリフィルム上映『トレインスポッティング』 AUGER presents <映画とファッションと、時々、音楽>が10月28日、岐阜柳ケ瀬・ロイヤル劇場で開催された。

上映後のトークには俳優の大森南朋さん、映画監督・俳優の須藤蓮さん、クリエイティブディレクターの庄司信也さんが参加。その様子をお届けする。

岐阜新聞社 後藤さん(以後 後藤さん)
「これだけ愚直に35ミリフィルムで上映している映画館は今、日本でこのロイヤル劇場だけになりました。貴重な映画館で、入っていただいた瞬間にタイムカプセルのように昭和のフィルム上映をお楽しみいただけるという形で運営されています。最近名古屋で名演小劇場、シネマテークという2つの映画館が閉館しました。なんとかこのロイヤル劇場だけは残していきたいという思いで、クラウドファンディングを9月22日に立ち上げさせていただきました。今回は昨年柳ケ瀬夏祭りを盛り上げてくださった俳優であり、監督の須藤蓮さんに『トレインスポッティング』をセレクトしていただき上映していますが、このクラウドファンディングに賛同してくださった須藤蓮さん、大森南朋さん、庄司信也さんにお越しいただき、お話をしていただくことになりました」

庄司信也さん(以後 庄司さん)
「どうですか。日曜日の昼下がりとは思えないような内容でしたが(笑)」

大森南朋さん(以後 大森さん)
「初めて観る人は、衝撃ですよね」

須藤蓮さん(以後 須藤さん)
「初めて今日トレスポ見たよという方はどれぐらいいますか?」

(観客から手が挙がる)

大森さん
「すごい。なんかすいません」

庄司さん
「うちの須藤が日曜日の昼下がりだというのにこんな作品を選んで(笑)」

須藤さん
「もちろん大好きな映画なんですけど。劇場で観たことが僕はなかったので、刺さるというか、さっき後ろで観ていて、選定やらかしたかなあと思いました。いかがでした?」

庄司さん
「須藤さんは1996年生まれでトレスポと生まれ年が同じということで。27年前の映画です。当時は90年代」

大森さん
「何をしていたかという」

庄司さん
「私は山形県出身なんですが、このポスターのビジュアルが若者には刺さって。これを観ていればおしゃれなんだろうとか、これを押さえていればイケてるんじゃないかみたいなフィーリングで鼻を垂らして当時観ていました」

大森さん
「そうですか(笑)。あなたが何者かわからない方もいるので紹介します。庄司信也くんと言って、音楽のプロデュースをしたり、色々企画をやったりする方で僕のカルチャーの先生みたいな方です」

大森南朋さん

大森南朋さん

庄司さん
「よろしくお願いします」

大森さん
「今日は須藤さんが同い年の映画を選んで。僕らはその時代を知っているから、ちょっと喋りに来る?みたいな話になっているんでしょ」

庄司さん
「90年代のあの頃のあの感じとか」

須藤さん
「観ていて、この映画が流行ったこと自体がちょっと信じられないなと思って。どんな気分で当時公開を迎えられていたのかということをすごい聞きたいなと思っていたんですけど、南朋さんは当時、おいくつぐらいでしたか?」

大森さん
「25、6歳」

庄司さん
「噂だと、「斜に構えてしばらく観なかったのかもしれない」とおっしゃっていたと聞きました」

大森さん
「そうそう。カルチャー誌「CUT」とか「switch」のような雑誌しか情報源がなくて、とんでもないおしゃれな映画がイギリスあたりからやってきたと書かれていて。「なんだよ」と思って。だからこれを当時は劇場で観ていないんですね。だいぶ経ってから観たんじゃないかな。だから俺、語れるほどの能力を持っていないので(笑)。でもやっぱり、アスミックエースとか、パルコの字が出ると、感動するね」

庄司さん
「『バッファロー66』もこのタッチですよ」

大森さん
「イギリス方面から来るやつだと、ちょっと前に『シドアンドナンシー』もパルコでやっていて」

庄司さん
「あー。南朋さんが1人で行ったという」

大森さん
「そうそう、俺が高校生の時に、そういうのを一緒に観に行ってくれる友達がいなくて、1人でパルコに行ったら、 『シドアンドナンシー』はパンクスの映画だから、僕以外の人たちは本当にパンクスみたいな人ばっかりで。すごく怖かったから走って帰った」

須藤さん
「庄司さんは当時おいくつぐらいでした?」

庄司さん
「僕は18歳です。だから初めて今日ご覧になったお客様と同じような気持ちだったと思うんですけど、こういうおしゃれな、かっこいい、スタイリッシュなポスターとかの作り物が多かったので、その気持ちで観にいったらもう全然違って。内容がああいうことだったので、結構ショックでしたね」

須藤さん
「そうですね。トイレとかいきなり」

大森さん
「おえーって」

庄司さん
「お客さんもさっき観ながら声が上がってましたよ」

須藤さん
「帰った人が2人ぐらいいました(笑)」

庄司さん
「まあでもそうですね。ダニー・ボイル監督は結構エグい演出が多いので。痛みが伴ってるというか。赤ちゃんのシーンとかね」

須藤さん
「いや、あれやばいですよね」

大森さん
「皆さん観たばかりだから、もう衝撃的すぎて」

庄司さん
「これがだから当時はおしゃれな映画だとか言われていて。は?って感じですもんね」

須藤さん
「当時は日本でも劇場が満席になる感じで流行っていたんですか?」

庄司さん
「僕は田舎の単館でフォーラムという映画館だったんですが、いましたね。ただ、客層は若かったです」

須藤さん
「今日はちなみに20代ぐらいの方ってどれぐらいいらっしゃいますか?」

須藤蓮さん

須藤蓮さん

庄司さん
「クスリもやったことがないので(笑)、いまいち分かってない。飛んでるんだなというのはわかるんですけど」

大森さん
「日常的すぎるもんね。でも、あの頃のスコットランドはああいう感じだったんでしょ」

庄司さん
「そうです。さっきちょっと袖でも話していましたが、イギリスの元気がなかったというか、自信がなかった時代なんですよ。サッチャー政権で」

大森さん
「先生、解説お願いします」

庄司さん
「先行きが見えない若者たちが、短絡的にクスリで日常から非日常に行く。それが本当に日常的にあって、日本だとあまりピンと来ないと思うんですけど。海外ではそれが普通みたいで。『さらば青春の光』もそうです」

大森さん
「そうだね。もうちょっと前だけどね」

須藤さん
「唐突に、電車の駅に絶望した4人が降りて、山に向かって1人突き進んでいって叫んで引き返していく。昨日解説で読んだだけなんですけど、あのシーンはその当時のスコットランドだと国の外に出ているイメージがスコットランドの大自然万歳みたいな映画がある中で、それは現実じゃないんだよみたいなことを、映画を通じて思った以上に結構鮮烈にまっすぐ訴えかけるシーンだなと」

庄司さん
「確かにそうですね。作り物だとか、ファッションとかスタイリングもそうですけど、エッジに見せているだけで結構リアルというか。節々にそれを感じますね」

大森さん
「おしゃれだよね。アングルとか。仕掛けも多いし」

須藤さん
「印象に残っているカットとか、お2人はありますか?」

庄司さん
「えー、やっぱりトイレは最悪だと思います」

大森さん
「最初の方でユアン・マクレガーが変な角度で起き上がる。あれ身体能力すごいなって(笑)」

須藤さん
「ドラックでバタンってなってから起き上がる」

庄司さん
「本人もオビ=ワン(『スター・ウォーズ』)になるなんてこの時思ってないでしょうし(笑)」

庄司哲也さん

庄司哲也さん

大森さん
「ユアン・マクレガーってこの時いくつだっけ?俺とあんまり年変わらないぐらいだよね」

庄司さん
「多分南朋さんぐらいじゃないですかね」

大森さん
「売れてるねぇ(笑)」

庄司さん
「ケノービですよ。今や」

須藤さん
「カット割がすごいですよね。二人でジュースを吸っているところとか。何の意味もないんだとは思うんですけど」

大森さん
「90年代、これに影響された日本映画らしきものが結構いっぱいあってね。カット割だけそれを使ったり。自主映画の人によくいて、そういうのもちょっといやだなと思って」

映画も音楽もファッションも昔の情報源は本だった

庄司さん
「須藤さんは27歳ということで、トレスポにはどう行きついたんですか」

須藤さん
「名前は知っていました。トレスポのすごい話は聞いていて」

庄司さん
「『トレインスポッティング2』も何年か前にありましたね」

須藤さん
「U-NEXTとかNetflixとかで、知っているけど観たことない映画を観るという流れの中で観ました。今僕は映画を撮ったりもしているんですけど、これは撮り方がだいぶ攻めきっているなと思って。アングルも、ずっと足元を追いかけていたりとか」

大森さん
「ダニー・ボイルのキレキレ期。ガイ・リッチーの方がダニー・ボイルより後輩だよね」

庄司さん
「そうです」

大森さん
「結構似ているよね」

庄司さん
「音楽の使い方とか、画の載せ方とか、疾走感みたいなところですよね。リズムとかね」

大森さん
「同じ学校に行ったのかな(笑)」

庄司さん
「先輩後輩みたいな」

大森さん
「でも、なんかありそうだよね」

庄司さん
「当時のイギリスの映画って、そういうリズミカルなタッチが多いですけどね。ガイ・リッチーの『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』でしたっけ?」

大森さん
「あっちも好きだったけどね。エグい表現はあんまりなくて、すごい疾走感があるというか」

庄司さん
「そうですね、クライムサスペンス」

大森さん
「そちらもぜひご覧ください」

須藤さん
「今あんまりこういうタッチの映画は出てきていないんですか?」

庄司さん
「クライムサスペンスはあるとは思うんですけど、こういうポップカルチャーの一部みたいにはあまりなっていないかもしれないですね」

須藤さん
「普通に今日1本映画を観ながら、この映画の脚本を受け取ったら「大丈夫?」となってしまいそうな、出来ない表現がいっぱいありました」

庄司さん
「ああ、もう世の中的にね。あの当時役者のTシャツとかがたくさん出ていたんですよ」

大森さん
「そうそう」

庄司さん
「だから観ていない人もそれを着てしまうぐらいの影響力が確かありました」

須藤さん
「当時『トレインスポッティング』のファッションを真似ている人とかもいたんですかね」

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庄司さん
「えーっと、90年代ってどうですか、南朋さん」

大森さん
「みんなこんな(ポスターを見ながら)ピッチピチのTシャツを着てさ。確か94年だよね」

庄司さん
「流行っていたのは映画公開のもちろん後になっちゃうんですけど、そういう時期がありましたね90年代」

大森さん
「あれはなんだったんだろうね。フェミ男。僕達全員、古着屋にちょっと関わっているんですよ。元古着屋店員みたいな。その頃ドンピシャで古着屋の店員だったので、小っちゃいTシャツをいっぱい売ってた。売れてた」

庄司さん
「それはもちろん男性が買っていくんですよね?」

大森さん
「そうそう、だからいしだ壱成さんとか武田真治さんみたいな人がね」

庄司さん
「いましたねえ、そういう男性。フェミ男ね。須藤さんには全然わかんないですよね?」

大森さん
「信じられないと思うけど。細い男の人がピチピチのTシャツを着ているというのが流行ってた」

須藤さん
「今は見ないですね」

庄司さん
「でも、中性化みたいな感じだったので、今のもしかしたら男性が、肌がどうとか、毛抜いちゃうみたいなことに続いている部分があるかなと」

須藤さん
「スキニーにとか流行ってました?」

大森さん
「スキニーはどうだろう。その後かな。割とまだダボダボだったような気もする」

庄司さん
「パンツダボダボ、上ピチピチみたいな、腰履きで。パンツ出しちゃうみたいな」

須藤さん
「僕は今もうファッションにはトレンドみたいなものを感じないです。逆に流行があるのが面白いというか。『トレインスポッティング』みたいな、みんなが観た映画というものがあんまりないので」

庄司さん
「共通の幻想がないってことですね」

須藤さん
「まさにそれです。共通の幻想がない」

庄司さん
「でも、90年代が最後かも。共通幻想を見たというのは」

大森さん
「今は情報がすごいからね。それで分散しちゃうから。だから映画館も人が来なくなっちゃうんじゃないですか。これ。先生、どうでしょう?」

庄司さん
「いや、そうだと思います。自己完結しやすくなっちゃうというか。思い出してくださいよ。我々全く情報がなかったですよ」

須藤さん
「トレスポ情報とかはどうやって収集していくんですか?」

大森さん庄司さん
「本です」

庄司さん
「メディア操作されまくっていました」

大森さん
「そうだよね。あの頃の方がされやすいよ」

庄司さん
「されまくってた。純粋だったし」

須藤さん
「どういう本ですか?」

庄司さん
「「ロッキンオン」がいうことは全部そうだと思ってた」

大森さん
「あー。本当にそう。渋谷陽一に騙された(笑)」

庄司さん
「言い切るから。「そうだ」って。「あ、そうなんだ」と」。

大森さん
「それで、好きになったりしたままのものもいっぱいあるね。でも、本で全部そういう音楽とか映画とかも学んでたというか。買えないから、本屋で立ち読みを全力でするとか」

庄司さん
「そう、切り抜いて壁に貼ったりとか」

大森さん
「それ、かっこいいね」

須藤さん
「もはや僕の世代は雑誌を読まない世代なので、情報があまり人と被らないんですよね。流行りとか。『バッファロー66』とか『トレインスポッティング』とかを後追いで観て、ウォン・カーウァイの映画や、その当時の時代が持っている熱、孕んでいる熱みたいなものって、特にフィルムだったからか、当時の熱狂みたいなものがスクリーンからはみ出してきている気がして、なんかそれにすごく今日はしびれました」

大森さん
「フィルムはなんかよかったね。生々しく見えるというか。デジタルで観ることに慣れているせいか、すごいいい距離で観ている感じがあったな」

庄司さん
「『トレインスポッティング』は音楽の使い方もいいですよね」

大森さん
「その入り方もフィルムで観ているとまたなんかいいよね」

須藤さん
「ちなみに音楽の入り方がいいというのはどういう点がいいんですか?」

庄司さん
「まず頭のイギー・ポップの「ラスト・フォー・ライフ」とかはもうシーンにばっちり。高速モータウンビートですか。ドンドンドン、ドンドンドドンみたいな。トリップしているところは、ルー・リードだとか。浮遊感のある楽曲だとか」

大森さん
「ここのスピーカーがいいよね。スピーカーの音がさ、昭和の感じで。今、新しい映画館に行くとすごいじゃないですか。ドルビーなんとか言っちゃって」

庄司さん
「そう、おもしろいですよね。だからこれ、平成の映画なのに昭和を感じさせる(笑)」

大森さん
「そうそう。音が良かった。スピーカー見ちゃったもの」

庄司さん
「いわゆるハイブリッドじゃないから」

大森さん
「そう、それがあえていいアナログ感」

須藤さん
「デジタルリマスターされていると、映像のバキッとしたブレとかがないじゃないですか。ちょっと傷んでいる感じもすごいいいなと」

大森さん
「そうだね。セットして回したという感じがする。キネマという感じ」

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庄司さん
「音楽で言ったら結構面白い話があって。『トレインスポッティング』のこの字体だとか作り物をイギリスのデザイン集団「TOMATO」がやっていて。僕はそこの社長のサイモン・テーラーさんと付き合いがあって。初めて会ったのは15年ぐらい前なんですけど色々喋っていて。『トレインスポッティング』のサウンドトラックにUnderworldの「Born Slippy Nuxx」という知っている人は知っているのかなという曲が入っているんですが、そのUnderworldのボーカルのカールが「TOMATO」でずっとバイトしていまして。この映画のクリエイティブディレクションを「TOMATO」がやるとなった時にうちのバイトに、売れないミュージシャンがいるから、ちょっと1曲やらせてくれと。それがUnderworldの「Born Slippy Nuxx」になるんです。これが売れて、「TOMATO」はビルを建てたという」

大森さん
「なんでも知ってるでしょ?(笑)」

庄司さん
「もう本当に、適当な世界というか。そんなものなんだなロックンロールって、良くも悪くも」

須藤さん
「「TOMATO」は当時流行りのデザイン集団みたいな感じだったんですか?」

庄司さん
「そうです」

須藤さん
「他にはどんなものを手掛けていたんですか?」

庄司さん
「日本でいったら、テレビ朝日のロゴだとか。オリンピックとかもやっていたんじゃないですかね。でも、会うと「気のいいおっさん」という感じ」

須藤さん
「黒白のトレインスポッティングが出てくるあのロゴですね。現場で起きるインスピレーションみたいなものをすごい感じました。良くも悪くも、映画を観ているとうまく頭で作られている映画ももちろんたくさんあるじゃないですか。理屈で積み立てられているような映画というよりは、現場で考えたようなカメラワークがバシバシ出てくるのはすごくいいなと思って。いろんな音楽とか映画とかいろんな人のクリエイティビティの活性化の場所みたいに1本の作品がなっているのが、いろんな人の熱狂を作り出しているんだろうなと思います。90年代ぐらいの映画を見ると、そういう、遊び心、やっちゃえ感があります」

庄司さん
「まあでも自由だったかもしれないですね」

大森さん
「どこまでかというのは僕も詳しくは知らないですが、確かにすごいアングル決めてくるから。 でもこれ、割と計算してやっているんじゃないかな」

須藤さん
「計算してますかね」

大森さん
「どうなんだろうね」

須藤さん
「あとはクラブでダイアンと最初に会う時の外観の赤、タクシーに乗って行くか行かないか迷う時に、パッとライトが入るんですけど、その光の色が全然リアルなタクシーの色じゃないみたいな。カラーライトの使い方が窓の外から赤い光がぶち抜いて入っているという作り方が、例えば今、カラーライトで映画を作る人は中国映画とかでよくあるんですが、そういう映画って大体街の光の色を拾って、リアルっぽく、照明を作ったりするんですけど、全然関係ないんだなと思って。この時代の映画が持っていた自由さみたいなものをすごく感じて、夢見ちゃいますね」

庄司さん
「クリストファー・ドイル、それこそウォン・カーウァイがよく使っていたな。カメラマンとかもそういう色の使い方をしていましたね」

大森さん
「それ、絶対意図していると思う。みんな鈴木清順監督の影響を受けているんじゃないかな。ああいう、わけわかんないことをするよね」

須藤さん
「好きですね。ここで僕が初めて観た映画も鈴木清順でしたけど、わけわかんないですよね」

大森さん
「わけわかんない(笑)。でもなんか興奮するでしょ?」

実はオリジナルTシャツを…

庄司さん
「今日は限定のTシャツが販売されているみたいで」

大森さん
「いいな、それ。あれ?俺も着てた(笑)。似てるなとは思ってた」

庄司さん
「僕たち白なのになんで南朋さんだけ黒なんですか」

須藤さん
「これは誰がデザインしたものですか?」

庄司さん
「東京の恵比寿で古着屋さんとか洋服屋さんをやっている原田くんという方が」

大森さん
「今回、そもそも僕がここにいる理由は、原田くん」

庄司さん
「どういういきさつだったんですか?」

大森さん
「いや、なんか岐阜でこういうことがあって、そういうことがあるから、どうですか。みたいな」

庄司さん
「奇遇にも俺も一緒です。では今回のキーマンってことですね」

大森さん
「プロデューサーと言っても過言ではない」

庄司さん
「須藤さんと僕らを繋いでくれました」

大森さん
「そんな原田くんにご挨拶してもらいましょう」

原田さん
「キーマンの原田です。東京で古着屋と映画が好きで、ポスターとかグッズも販売している店を経営しています。 Tシャツのデザインは映画冒頭とラストで、主人公レントンが走りながら言うchoose lifeから始まるセリフには人生に必要、豊かにするものが羅列されているんですが、あれは元々choose lifeというスコットランドの麻薬撲滅のスローガンというか標語だったんです。レントンは俺にはそんなの不要だ、へロインがあればいいみたいなことを言うんですが、そのセリフだと結構ベタすぎるので、そこではなくて序盤のタイトルが出た後に、レントンが自分の薬物を抜くために、部屋にこもる時に必要なものを羅列するセリフをchooseをつけて入れていますが、引きこもっているより出かけよう映画館へという風にちょっとだけ変えています。そのセリフの最後に全部揃えたけど、もう1発必要だみたいなギャグが入っているんですけど、そこを最後の一撃ならぬ、最後の一作というか、映画を一作観に行こうに変えているという感じです。揃えたものは、ママが用意してくれたというセリフがあるんですが、それを店の名前がTRAVISなので、TRAVISが用意したと入れました。裏のタグはカチンコデザインで、ロイヤル劇場さんのお名前と今日の日付を入れております。ブラックだけ南朋さん限定カラーとして特別上等な生地のもので、1000円だけ値段は上がります。店のinstagramであげておりますので、ご確認ください。南朋さんがすごく男前に映っております」

大森さん
「どうもありがとうございます」

原田さん
「今日の映画ぐらい興奮するかなと思います。映画館がなくなってから泣いても仕方ないので、皆さん、映画館にもっともっといきましょう。僕も行きます」

庄司さん
「このTシャツの売り上げはロイヤル劇場の修繕費に使われるということですよね」

須藤さん
「この売り上げの一部がロイヤル劇場さんにも還元されたりするので。普段、駄菓子しか入っていらっしゃらない素晴らしい当時の劇場のケースの中に、今回このTシャツが販売されていますので、この特別な日にぜひ皆さん買って帰っていただけたらと思います」

観客から
「昨日『ABYSS アビス』を拝見しまして、ほんの少しだけエッセンスが今日の作品と似ているかなと思ったところがあったんです。須藤監督は、この作品と『ABYSS アビス』に共通点を感じたことがありますか。あれば教えてください」

須藤さん
「すっかり自分の映画の宣伝をするのを忘れていました。一応、映画監督をしていまして去年、柳ケ瀬夏まつりを主催の1人として盛り上げさせていただいたんですけれども、今回も自分の映画の公開時期にかこつけて、人が入りそうなトレスポを選んで、大物を呼んで宣伝の機会を作ろうという大変下心満載でやっているんですけど」

大森さん
「やり手だね(笑)」

須藤さん
「すっかりそんなことも忘れて楽しんでいました(笑)。CINEXさんという、 ロイヤル劇場さんと同じ系列で、商店街にある劇場で僕の最新作が上映しているので、ぜひ観ていただきたいです。あまりトレスポを意識はしていないんですけど、割と当時のスコットランドの若者の暗い暗い日常、先行きの見えない日常を、きわきわのカット割りとカラーで描いているみたいな、そういうバランス感覚は、すごくかっこいいなと思っていて、自分なりにも、日本の先行きが見えなげな日常がありますけれども、若者としてそれを色彩豊かなカッティングで映画にしてみたいという思いを込めてつくりました。『ABYSS アビス』は親友という意味です。今日の映画が面白かった方は自分の映画も観ていただけると嬉しいです」

観客から
「もし須藤監督が南朋さんを役者さんとして自分の作品に出ていただこうと思うなら、どんな作品で、どんな役がいいですか?」

大森さん
「今日は次回作にね、呼んでもらうために来ているから」

須藤さん
「いいんですか!いや、実は今日初対面なのにすごい優しくしてくださって、いいタイミングで絶対次の作品に出てくださいとお願いしようとしていました」

大森さん
「そうですよ、今日、夜のご飯ぐらいの時にね、お互いちょっとそういうことを話すんだろうなと思いながら(笑)」

庄司さん
「お互い営業(笑)」

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須藤さん
「もう見てわかる通り、本当に絵になりすぎるといいますか。 僕、声が低い男性を撮りたいんですよ。もう素晴らしく声が良くて、存在感がありますので。台湾的な瘴気と煙のある、ちょっと裏社会の感能的な恋愛映画の怖い人みたいな」

大森さん
「もう結構具体的に決まっていたんですね(笑)。僕なんかもう年齢も年齢なので、若い監督と出会うこともあまりないものですから、こういう機会をいただいてありがたいです。やれたらいいですよね」

須藤さん
「ぜひよろしくお願いします」

観客から
「須藤さんにお聞きします。監督と俳優とどちらがやりやすいですか」

須藤さん
「僕の場合は映画を作り出したきっかけが、大して売れていないので出る作品がなくて、 自分が出られる作品を自分で作ろうというところから始めていまして。『ABYSS アビス』も自分で主演をしながら撮っているんですけど、 やりやすいかというと、ちょっと難しくて。理想を言えば映画を撮るのがものすごい楽しくて、作り続けたいなと思いつつ、俺は映画作るんだと目覚めてしまって、役者じゃないみたいなことを、この間まで言っていたんですが、 優柔不断な若者なので役者もしたいなと最近思っています。やっていて楽しいのは自分としては映画作りなんですが、芝居をしていると、いろんな演出家さんの動きだったりとか、いろんな役者さんに出会えたり、学べたりするので、芝居で勉強させてもらいながら、映画に結びつけるような動きを今後もしていきたいなと思っております。ですので、自分としては自分の撮った監督作を観ていただけるのが1番嬉しいので、ぜひ『ABYSS アビス』を観ていただけたらと思います」

大森さん
「須藤くんは監督、主演じゃない。「よーいスタート」と言って自分が芝居始めるの?」

須藤さん
「最初はわけわからなさすぎて。誰も言わないので。「よーいスタート!」と言って芝居を始めていました(笑)。しかも「カットは言って」と助監督さんにお願いしているのに、向こうもわからないからかけないんです。なので「カット!」と言ってカメラの裏に回って(笑)」

大森さん
「今度、CINEX でも北野武監督の『首』はやるでしょ?北野監督もカット尻でずっとアドリブを仕掛けられて、「カットかかんねえな」と。「先輩の仕事です。お願いします」と言ってアドリブに付き合っていたら、そのアドリブが映画でも使われているというターンはすごい。 ぜひ『首』もよろしくお願いします」

観客から
「色々ドラマ、映画を拝見させていただいてるんですが、ドラマ「居酒屋ふじ」の大森さん自身の役がとても好きです。あと映画『初恋』ではちょっと嫌な刑事役だったと思うんです。偶然なんですが、つい先日、お父様の麿赤兒さんも、刑事を演られていました。お父様の演技を参考にされるようなことはありますか?」

大森さん
「『初恋』とその後にうちの兄が撮った『グッバイ・クルエル・ワールド』は同じやさぐれた刑事役で、オファーが来た時に『初恋』観てないのかと言ったんですが、「いいんだよ」と言われました。設定は同じですが、微妙に変えています。えー、そして麿赤兒さん。やさぐれ刑事系を演じるというのはちょっと血が争えない状況に陥っていますけど(笑)。父親に関しては特にお芝居の話を元々せずに育ったというか。ある日役者をちゃんとやっていこうと思うみたいなことを吉祥寺の喫茶店、珈琲家族で話したら「今日から敵だ」と言われて」

庄司さん
「元々でも南朋さんはバンドをやっていたんですよね」

大森さん
「そうですね。音楽をやっていたのでそれを1回やめて、ちょっと俳優に集中しようという時期があって、その時に親父に敵扱いされ、親だと思って役者で全然食べられなかった時にお金を借りようとしたら全然貸してくれなかった。敵だから(笑)。でも、今はなぜか異常に仲が良くてちょいちょい会います。孫ができたので楽しんでいます。父親も芝居の話はほとんどしないですね」

観客から
「先ほど大森さんが当時は観られなかったけど、ちょっと時間を置いて映画を観られたという話をされていたんですが、皆さんは当時は自分には合わないなと思って、時間を経て改めて映画だったりとかカルチャーだったりとかに触れたということがあれば教えていただきたいです」

庄司さん
「映画ですと『ゴッドファーザー』です。子供の頃やっていても全然わからないじゃないですか。10代でちょっと難しいなと思って、20代から観たら面白い、30代で観たらまた違う側面とか悲しさとかもわかる。 今40代なんですけど、また新しく発見するような場所があったりとかして。そういった意味では、映画では『ゴッドファーザー』はすごいですよね」

大森さん
「僕も評判の印象がすごい植えつけられちゃうからというのがあって流行ってみんながこぞって観る作品はその時期に観なかったです。自分の考えを結構強めに持っていたんでしょうね。だからライターさんが書いてくれる評論は悪くないし、面白く読んだ上で映画を観てもよかったはずなんですが、多分そういうことに対して、斜めに構えていたというか、そういう感じでいたので、そういう現象が起きていたんでしょうね。携帯を見たら情報が入ってくるみたいな時代でもなかったので、だいぶ経ってからその映画を観たということは結構やっていたんですが、それは割と最近でもあって。それが『インセプション』。なんかすごい難しそうと思っていて。でも最近観たらめっちゃ面白かったです」

庄司さん
「宣伝が鼻につくのかもしれないですね」

大森さん
「CMのやり方と日本人が出ているから日本のCMもバッキバキに打ちますから。でも映画ってすごい面白いと言われている作品を観てしまうと、読み終わった後のジャンプぐらい価値がない。とっておきたい、観ないで取っておくぞという。そういうのがありますよね。須藤さん何かあります?」

須藤さん
「『千と千尋の神隠し』ですかね。僕はそもそもそんなに映画文化に触れてきていなかったんです。 だから、『テッド』とか『ハリー・ポッター』ぐらいしか知らなくて、役者を始めてから観るようになったんです。コロナ禍でジブリを映画館でやっていたじゃないですか。『テッド』とかの延長線上で『千と千尋の神隠し』を観に行ったらぶっ飛んじゃって、ファーストカットで素晴らしすぎて泣いちゃって、最後まで泣いていました。今、逆に宮崎駿監督作品は大好きすぎてやばいみたいなことを思っています。自分の時代ではトレスポみたいな若い人たちがこぞって観に行くような映画がそもそもなかったりするので、この席が半分ぐらい同世代で満席になるような映画の新しい仕掛け方みたいなことをやっていきたいなと。今日トレスポを観て思ったんですけど、何にも古びていないですね。めちゃくちゃ新しいなと思います」

大森さん
「そうだね。20代とか10代がいっぱい来る映画の主演が俺だったら面白いですよね。面白いですよね?須藤監督」

須藤さん
「若者だらけの大森さん主演のヒット作を作りたいですね」

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後藤さん
「原田さんが『トレインスポッティング』についてちょっと一言言いたいと言っています」

原田さん
「『トレインスポッティング』って意味わかんないですよね。Trainspotterという言葉があって、電車マニアという意味のほかに薬物中毒者を表します。夜中の廃駅に彼らが溜まるというところから『Trainspotting』という言葉になっています。だから、薬物中毒者のお話という。1つ小ネタがあって、レントンの部屋には壁紙には電車がたくさんあります。あっ、それだけです」

大森さん
「今日は皆さん、本当にとんでもない映画を昼から観させられてご苦労様でした。こういう映画館が、都内にはもうほとんどなくなっているので、こういうのがあるのを見ると感動しますし、僕は昭和生まれで座席に座った感触とか、 さっきも言ったんですが、音の鳴りとか、フィルムの映りとかを、こうやってまだ体験できる場所があると思うと幸せな気持ちになれるので、ロイヤル劇場にずっと残っていただけると、また遊びに来れると思います。大森南朋ナイトなど企画しております!」

庄司さん
「今日はありがとうございました。まさに、南朋さんがおっしゃるように、こういう文化財というか、皆さんの日常の楽しみみたいなものが錯綜する場所は必ず必要なものだと思います。我々も微力ではありますが貢献させていただきます。皆様も日々の中で映画というものを暮らしの中に添えていただけたら、なお楽しい人生になるんじゃないか、豊かな人生になるんじゃないかと思います」

須藤さん
「皆さん、今日はどうもありがとうございました。ロイヤル劇場はクラウドファンディング実施中ということで、こういう場所があるからこそ、去年僕も夏祭りを仕掛けることができましたし、僕のようなこれから映画界を作っていく立場の人間としては、こういう場所が残っていていただけると、『トレインスポッティング』のような過去の名作の力をお借りして、この場所を新しい形で使っていくようなことができますので、ロイヤル劇場と僕の監督最新作『ABYSS アビス』も何を見せられたんだという映画ですので、その辺も含めて、皆さんに楽しんでいただけたらと思います。今日はお忙しいところ来てくださったお2人に大きな拍手をお送りください。劇場はほんとに人がたくさん入ってこそだなというのを改めて思っています。集まってくださった皆さん、そして運営してくださっている皆様、応援に駆けつけてくださったテレビ局の皆様も、今日は本当にありがとうございました」

後藤さん
「ロイヤル劇場、大野支配人から一言いただきたいと思います。劇場の歴史も含めて、今日ご来場いただいた感謝とともに、今後の活動についてお話いただきます」

大野支配人
「本日はこんなに大勢のお客さまにお越しいただきまして、感謝の極みでございます。ありがとうございます。ご案内があったと思いますけれども、クラウドファンディングという形で9月22日から立ち上げまして、 皆様方にご支援をいただいているような状況ではございますけれども、まずは劇場に多く来ていただくこと、 それが第一目的でございます。皆さんが応援団でございます。こうやって劇場に来ていただいて、こうして楽しいトークショーを見て、お宅に帰って、明日、職場、学校に行かれて、そこで、「昨日こんなことがありました。 岐阜に行ってきました。ロイヤル劇場って知ってますか?」と話していただけたら、それで結構でございます。それが私どもにとってクラウドファンディングだと思っています。皆さんにぜひぜひ、ロイヤル劇場の宣伝をしていただいて、ますます応援していただければと思っております。本日は本当にありがとうございました」

⇒ロイヤル劇場 思いやるプロジェクト  https://gifunpmovieclub.kas-sai.jp/

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パク・チャヌク監督の新作は今までとは一味も二味も違う大人の恋慕を描く(映画『別れる決心』)

2月17日から公開の映画『別れる決心』はパク・チャヌク監督の新作だ。今までのイメ ...