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アーラ映画祭2022レポート(映画『いとみち』横浜聡子監督トーク)
2022/11/28
可児市文化創造センター アーラで毎年行わなれているアーラ映画祭が今年も11月5、6、13、14の4日間で行われた。
上映作品は『浜の朝日の嘘つきどもと』、『いとみち』、『すばらしき世界』、『そして、バトンは渡された』『映画 太陽の子』、『梅切らぬバカ』。
この作品の選考と映画祭の運営はアーラ映画祭実行委員会の手で行われている。
ゲストの選考も実行委員会で行い、今年は『浜の朝日の嘘つきどもと』のタナダユキ監督、『いとみち』の横浜聡子監督が来場し、上映後トークが行われた。
13日に映画祭を取材したレポートをお送りする。
実行委員会の動き
9:00
実行委員会メンバーが上映会場である映像シアターに集まり始める。
受付準備。
コロナ禍では必須の消毒、検温器の設置も。
9:15
一回目の上映の役割分担について確認。
9:30
開場。順番にお客様を迎える。
10:00
上映開始
チケット受付数が実際の販売数よりすくないため、遅れてくるお客様を待つ。
上映チェック担当は映写室で上映トラブルがないように終わるまで確認を続ける。
10:30
受付待機者を残し、映画祭の過去の記録を展示するため、数人が和室へ移動。もちよりシネマ設置と、午後、翌日用のアンケートなどお客様にお渡しするパンフレットなどを用意。
11:00
ゲスト担当が横浜監督と打ち合わせ
上映後
横浜聡子監督を迎えて、トーク。
タイムキーパーが最前列で時間の確認。記録係がトークの様子を写真に収める。
お客様から質問を受け付けるため、マイク係も待機。
(横浜聡子監督トークレポートは最後に記載)
トーク終了後
お客様のお見送り。忘れ物確認、座席の消毒。
横浜聡子監督と記念写真撮影。
12:50
午後も担当する人は昼食をとる
13:20
午後の上映担当、集合。分担確認。
13:30
開場。雨が降ってきたので、傘立てを用意。
14:00
上映開始
チケット受付数が実際の販売数よりすくないため、遅れてくるお客様を待つ。
上映チェック担当は映写室で上映トラブルがないように終わるまで確認を続ける。
上映終了まで、映画雑談をしながら待機。
上映終了後
お客様のお見送り。忘れ物確認、座席の消毒。
夜の回は18:30集合のため、明日の映画雑談会の準備後、夜の担当は待機。
今年新たに企画された映画雑談会は映画を観た方が感想を話したり、アーラ映画祭実行委員と交流を図る企画だ。どんなことを感じたか、映画祭に何を求めているかがアンケート以外に聞くことが出来る貴重な場となった。
アーラ映画祭実行委員会は完全ボランティアな人たちの集まりだ。映画館のない可児市でいい映画を観てほしいという思いで毎年選考を行っている。
今年の映画祭が終わったら、また来年へと動き出す。一緒にやってみたいという方はぜひアーラ映画祭の公式SNS(以下参照)へ問い合わせて欲しい。
横浜聡子監督トーク
横浜聡子監督(以下 横浜監督)
「ご覧いただきましてありがとうございます。この映画は去年劇場公開されまして、岐阜県内でも上映されたと思うんですけれども、見逃された方も多くて、今日初めて観たという方が多いかもしれません。こうして1年経ってまたアーラ映画祭で上映していただけて本当に嬉しいです」
Q.『いとみち』は越谷オサムさんの同名小説の映画化ですが、今回映画化されようと思った経緯を教えてください
横浜監督
「最初にこの映画のお話をいただいたのが5年ぐらい前だったと思います。プロデューサーの松村さんが大阪出身の方で『奇跡のリンゴ』という青森が舞台の映画がありまして、アーラ映画祭でも以前上映されたと思うんですが、その作品でスタッフをされて、青森をすごく好きになったので、自分がプロデューサーデビューしたら絶対青森で映画を1本撮りたいと思っていたそうです。私も青森県出身で、過去に青森を舞台に映像を何本も撮ったりしていまして、青森で映画を撮るんだったら横浜監督にと、松村プロデューサーからお話をいただいて。『いとみち』という越谷オサム先生の小説があるんですけれど、ものすごくエンターテイメント的で人の心を掴む面白い小説を青森で青森の監督に撮ってほしいという強いお誘いを受けまして、それが最初のきっかけです」
Q.原作は3巻ありますが、映画は1巻を描いているんですね
横浜監督
「高校生のいとちゃんが高校に入学してから卒業するまでが小説では描かれています。今回映画化したのはその一番最初の部分で、メイド喫茶で内気な少女がアルバイトをし始め、成長する瞬間をピックアップしています」
Q.劇中のいとと駒井蓮さんがリンクして成長している、女優としてもこの作品で大きくなられたなあと。
横浜監督
「皆さんご覧いただいたのでわかると思いますが、駒井さんはすごく背が高くて、モデルみたいな体型なんですが、原作のいとちゃんは150センチに満たない小柄な身長で、ちっちゃい体で三味線という大きい楽器を弾いていて、それですごく同時に泣き虫でという小説のイメージがあったので、どなたにオファーしようかなってすごく悩みました。青森弁が喋れる女優さんじゃないとちょっとこの物語は成立しないなと思いまして、そこをまず絞って俳優さんを探した結果、駒井さんという10代で津軽弁が喋れて、経験値もあって、これからどんどん伸びていく若い方を見つけて。でも駒井さんは170センチ近くあるので、原作のイメージとだいぶかけ離れるという懸念はあったんですけれども、彼女は澄んだ、ひねくれたところがない、すごく真っ直ぐ青森で育ったのびのびした素質をお持ちの面白い人であるので、お願いしました。駒井さんに決めてからは駒井さん自身からどうやっていとに繋げていくかを考えました」
Q.駒井さんが元から弾けたかのように津軽三味線を弾いていらっしゃいますが、未経験だそうですね。事前準備はどのくらいからされたのでしょうか。
横浜監督
「津軽弁を話せて津軽三味線を弾ける女優っていないと思うんです(笑)。本当にハードルが高すぎて。三味線って難しい楽器らしいんです。駒井さんにはもう練習してもらうしかなくて。オファーした時は初心者で全く触った事もない状態だったんですが、ギターとかピアノは結構得意で、音楽的な素養が高かったんです。そんな素養があってもこんな難しい楽器はないと言いながら9ヶ月間ぐらい練習してもらって。2年前に撮影を行ったんですけど、コロナ禍で何ヶ月か撮影が延期になってしまって。その期間も不幸中の幸いというか、それがよい三味線の練習期間になって、すごく上達して撮影までにある程度仕上げてもらった感じです。撮影までに三味線が弾けるようになるかはわからないので賭けではあったんですが、駒井さんは本当に意志が強くて、真面目で本当に血のにじむような努力をする人間だと知っていたので、駒井さんなら何かしら形をちゃんと残してくれると信頼してお願いしたんです。ご本人的には撮影が始まってからも、毎日ホテルに帰ってからずっと練習していて、すごくつらかったみたいです」
Q.おばあちゃん役の西川さんは三味線奏者ですが、2人でセッションしているシーンは元から家族でやっていたみたいな雰囲気がよく出ていたと思います。
横浜監督
「おばあちゃん役の西川洋子さんは三味線を10代の頃からやっている方で、青森県の三味線奏者で高橋竹山さんという方がいらっしゃるんですが、その方の一番弟子で、若い頃からすごく上手な方で、駒井さんはその西川さんと渡り歩かなければいけないシーンだったので、お2人で練習を重ねていただいて。本番は2人で手を繫ぎながらがんばろうねって。2人ともすごく緊張されていたと思います。よくあそこまで駒井さんも追いついたなという」
Q.西川さんはこれが初演技で新人賞を受賞されて。西川さんと三味線が初めての駒井さんということで初々しいコンビという(笑)
横浜監督
「西川さんは役者さんではなく、普通に暮らして生活されている方なんですよ。でもすごい堂々としていらっしゃるじゃないですか。カメラが回っている時と回っていない時とが変わらないんです。緊張はしているんですけど、豊川悦司さんとも全然ちゃんと対等にお芝居されている、本当にすごい方です」
観客から
「ビジュアルについて伺います。今監督の横に置かれている、いとが仁王立ちしている赤いバージョンのポスターと、DVDのジャケットになっている、いとが三味線を持ってジャンプしている青色のものとあるんですよね。赤版と青版二つキービジュアルがあるんですが、二つある意味がわからなくて。赤版は青森県以外の都道府県にフライヤーが配られて、青版は青森だけ配っているのは知っているんですが、なぜそうしたのか。それと、いとちゃんが三味線を持ってジャンプしているのが同じく東北を舞台とした映画『スイングガールズ』のポスターにそっくりというかほぼ構図が同じだと思うのですが、その意図を教えてください」
横浜監督
「DVDは青いポスターで主人公のいとがジャンプしているものなんですが、あの写真はスタジオで撮影したんです。最初とりあえずは青森県民全員に見てもらおうというためのチラシを作るということで、主人公のいとが元気で、老若男女皆さんに伝わるような明るい映画だっていうイメージで、まずキービジュアルを作りましょうということであれをやってもらいました。本当に『スイングガールズ』みたいというか、朝ドラ「あまちゃん」のテイストも入っていて、私的には大丈夫かなあと不安だったんですが。あれは青森県の人用、一番最初のこの映画の入り口として見てもらうためのポスターだったんですけど、三味線してジャンプするというのはいとのキャラクターとちょっと違うかなという意見もありまして。意志が固いけれども、基本的に人見知りで内気な女の子ということで、もうひと思案して、全国公開にあたってはポスタービジュアルを別のものにしてほしいとお願いしまして、この写真を選びました。これは劇中でいとがメイド喫茶で三味線ライブを行うシーンの、告知のポスター用に撮影したものをこの映画のビジュアルとして使ったという経緯があります」
観客から
「可児の印象は?」
横浜監督
「今回岐阜県に来たこと自体初めてですが、最寄りの駅を降りたら野焼きのにおいがして。遠くに来たのに青森もこのにおいが漂っているので、すごく懐かしい、地元に帰ってきた錯覚に陥りました。すごい静かなまちだなと思いながら、アーラまで来ました。映画祭は市民の方がスタッフさんもやられていて長年、毎年やられている。本当に手作り感あふれる、素晴らしい映画祭だなと思いながら今日呼んでいただけて、参加させていただけて嬉しいです。毎月上映されているということにすごいびっくりしました(注:アーラキネマ倶楽部)。地元の方が映画を中心に集まれる場はすごく必要だと思っていますので、感謝しております」
観客から
「監督が映画に携わるようになったのが確か大学を卒業して一度企業に就職して、そこからまた映画学校に行ってそれで監督を目指したと聞いたのですが、やっぱり映画好きだな、やりたいなと思ったということですか?」
横浜監督
「大学を卒業して、全く映画とは関係ない会社に1回就職したんですが、やっぱり映画に携わる仕事がしたいという気持ちが残っていて、1年も経たないうちに会社を辞めてしまいまして。当時はフリーターという選択肢って割と若い人の間では普通になっていて、就職しなくてもフリーターとして生きていけばいいじゃんという考え方が社会的に結構一般的な考えとしてあったので、バイトしながら映画を作ろうという気持ちで会社を辞めました。でも映画をどうやって作るか全然わかっていなかったので、まずはやっぱり学ばなきゃと思い、映画美学校という映画作りの学校に行きました。でも最初は監督をやりたいというわけでもなく撮影をやりたいなと。撮影や脚本を勉強したいなということで入学したんですけれども、何年かやっているうちに演出すること、自分が監督として映画を作ることの楽しさをもっと追求したいなと思って。いつの間にか監督という役職についていました」
観客から
「『いとみち』って何の道だろうと思って観たんですが、いとみちって三味線のことかなとも思いましたし、いとちゃんの道だったんですね。監督はどちらで描かれましたか。両方でしょうか」
横浜監督
「いとみちは三味線用語としてあります。左手で弦を押さえていると人差し指の爪の真ん中に溝ができて、それを糸道と一般的には呼ぶそうです。その糸道でもありますし、歴史の話と私は捉えています。継承されていく物語。津軽弁ですとか、津軽三味線は継承していかないと、いつか消えてしまうものなので、ちゃんと古い時代から大事にされてきた津軽弁や三味線を若い人が継承していく物語、歴史としてこの映画を作れたらいいなと思って。それが道というか、歴史というか、続いてきた道をこれからも耕して続けていくというイメージで糸の道でもありますし、主人公のいとの歴史の話でもありますし、いろんな意味を込めてタイトルを眺めておりました」
Q.今後の予定を教えてください
横浜監督
「今年は短編映画を撮りまして、来年上映になる予定です。間もなくドラマの撮影が始まります。長編の映画は来年以降になる予定ですけれども、映画、ドラマと垣根を越えて面白い作品を作っていきたいと思っております。皆様これからもよろしくお願いいたします。またアーラ映画祭に呼んでいただけるよう頑張ります。今日はありがとうございました」
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