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最強という名の虚像、その脆さと再生の記録(映画『スマッシング・マシーン』)
かつて、日本の格闘技ファンが熱狂の渦に包まれた時代があった。1990年代後半から2000年代前半、格闘技イベント「PRIDE」のリングに君臨し、その圧倒的なパワーから「霊長類ヒト科最強の男」と畏怖された一人のファイター、マーク・ケアー。5月15日(金)から公開される映画『スマッシング・マシーン』は、その栄光の影で薬物依存と心の葛藤に苛まれたケアーの、壮絶な挫折と再起を描いた実話に基づくヒューマンドラマだ。
あらすじ
1997年、ケアー(ドウェイン・ジョンソン)は総合格闘技のデビュー戦を無敗で制し、UFC王者として頂点に上り詰めた。対戦相手を粉砕する姿から「壊し屋(スマッシング・マシーン)」の異名を取った彼は、向かうところ敵なしの状態に見えた。しかし1999年、日本で開催されている「PRIDE」へと戦場を移した彼の裏側は、決して「最強」とは呼べない脆さに満ちていた。相次ぐ負傷による慢性的苦痛を紛らわすため、彼はオピオイド系鎮痛剤に深く依存。敗北への恐怖と重圧は、最愛の恋人ドーン(エミリー・ブラント)との関係をも蝕んでいく。そしてついに迎えた「PRIDE.7」での敗北はケアーをさらに追い詰めていく。
「PRIDE」から見るスポーツとしての格闘技の黎明期
本作の重要な舞台となるのが、日本が世界に誇った総合格闘技の祭典「PRIDE」。1990年代、まだ格闘技が「スポーツ」としてのルールや運営を整備しきれておらず、どこか野蛮な決闘として熱を帯びていた黎明期を、ベニー・サフディ監督が活き活きと再現している。リングの外にカメラを置き、観戦しているような感覚でケアー達の試合を映し出す。当時の「PRIDE」は、数万人の観衆が熱狂する巨大なスペクタクルイベント。ケアーは、レスリングのベースを活かした爆発的な強さで黄金期を支えてきたが、同時に薬物検査も甘く、鎮痛剤に依存した。ビジネスと情熱が混沌としていた当時の過酷な環境が描かれているのも興味深い。次第に変化していくルールの中で負けは免れたケアーだが、「勝てなかったこと」が、彼の脆いメンタルに大きな衝撃を与えた。誰にも弱さを見せられず、控え室で独り涙を流すケアーの姿は、私達が知る無双なケアーではない。鎮痛剤過剰摂取による昏睡と入院というどん底を経て、彼は再びリングへと戻るために、己の脆さと向き合う過酷なリハビリと特訓の道を選ぶことになる。
ドウェイン・ジョンソン、イメージを覆す入魂の演技
主演のマーク・ケアーを演じるのは、ドウェイン・ジョンソン。これまで「ワイルド・スピード」シリーズで“最強のタフガイ”を演じてきた彼が、自ら本作の映画化権を獲得するために奔走し、そのパブリックイメージを覆す「脆く、繊細な男」としての演技に挑んでいる。ケアーを支え、共に苦悩する恋人ドーン役にはエミリー・ブラント。実在のドーン本人に取材を重ねて、深みのある多面的な女性像を創り上げた。また、マーク・コールマン役には現役UFCファイターのライアン・ベイダー、イゴール・ボブチャンチン役に世界ヘビー級王者オレクサンドル・ウシク、そしてバス・ルッテン本人が出演するなど、本物のファイターたちが物語に圧倒的なリアリティを付与している。
「PRIDE」に関わった人々として、大沢たかお、石井慧、光浦靖子、布袋寅泰などの日本人キャストも登場。大沢は、当時日本中を沸かせた総合格闘技の祭典「PRIDE」の主催者であり、現在RIZIN FIGHTING FEDERATIONの代表を務める榊原信行を演じる。石井は、ケアーが対戦するエンセン井上を、光浦は、「PRIDE」の記者会見で進行・通訳を務める女性をそれぞれ演じている。そして、布袋は2000年の「PRIDE」開幕戦のオープニングを飾る“布袋寅泰”本人役で出演を果たしている。
リアルを追求するためにドウェインは毎日3〜4時間を特殊メイクに費やし、試合の進行に合わせたアザや傷の変化までもが時系列で精巧に表現された。アカデミー賞受賞者のカズ・ヒロらが参加し、合計15点ものパーツを顔や体に装着している。
本作は、単なるスポーツの成功譚ではない。勝利よりも敗北から多くを学べるという監督の信念のもと、最強の男が敗北の果てに踏み出した「本当の強さ」への第一歩を映し出している。
映画『スマッシング・マシーン』 https://happinet-phantom.com/smashingmachine/ は5月15日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開。東海三県では5月15日(金)より伏見ミリオン座、ミッドランドスクエアシネマ、イオンシネマ(名古屋茶屋、ワンダー、岡崎、豊田 KiTARA、長久手、常滑、津南、桑名、東員)、TOHOシネマズ(木曽川、赤池、東浦、津島、岐阜、モレラ岐阜)、ユナイテッド・シネマ(豊橋18、(ローソン・ユナイテッドシネマ)岡崎、稲沢、阿久比)、コロナシネマワールド(中川、小牧、ららぽーと安城、大垣)コロナシネマワールド、ミッドランドシネマ名古屋空港、MOVIX三好で公開。
映画『スマッシング・マシーン』
監督・脚本:ベニー・サフディ
出演:ドウェイン・ジョンソン、エミリー・ブラント、ライアン・ベイダー、バス・ルッテン、
オレクサンドル・ウシク/大沢たかお、石井慧、光浦靖子、布袋寅泰 ほか
原題:The Smashing Machine
製作年:2025 年
製作国:アメリカ
上映時間:123 分
レーティング:G
字幕翻訳:佐藤恵子
©2025 Real Hero Rights LLC
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