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開戦前夜、上海。幕は開くか(映画『サタデー・フィクション』)
2023/11/16
2019年第76回ベネチア国際映画祭コンペティション部門に正式出品されたロウ・イエ監督『サタデー・フィクション』が、11月17日(金)より名古屋・センチュリーシネマで公開される。
あらすじ
1941年、日本軍の占領を免れた上海の英仏租界は、当時「孤島」、「魔都」と呼ばれ、日中欧の諜報部員が暗躍。機密情報の行き交う緊迫したスパイ合戦が繰り広げられていた。
日本の真珠湾攻撃から7日前の12月1日、魔都上海に人気女優のユー・ジン(コン・リー)が現れる。新作の舞台「サタデー・フィクション」で主役を演じるためだ。ユー・ジンには、幼い頃フランスの諜報部員ヒューバート(パスカル・グレゴリー)に孤児院から救われ、諜報部員として訓練を受けた過去があり、銃器の扱いに長けた「女スパイ」という裏の顔があった。
12月3日、日本から海軍少佐の古谷三郎(オダギリジョー)が海軍特務機関に属する梶原(中島歩)と共に、暗号更新のため上海にやってくる。ヒューバートはユー・ジンに告げる。「古谷の日本で亡くなった妻は君にそっくりだ」と。それは、古谷から太平洋戦争開戦の奇襲情報を得るためにフランス諜報部員が仕掛けた“マジックミラー計画”の始まりだった……。

租界で暗躍するスパイ達
租界とは治外法権が通じる租借地だ。
日本の占領下、上海の英仏租界は混沌としている。
ひとりの女優ととりまく人々を描いている物語は、彼女が演じる劇中劇と共に入れ子構造で展開していく。自国の未来の行く末を握る諜報員たちが戦いの匂いを嗅ぎとり、上海で交錯する。
ユー・ジンを自分の舞台に呼んだ恋人で演出家のタン・ナー、その友人で製作スタッフでありながら南京政府の諜報員であるモー・ジーイン、女優としてのユー・ジンに近づきながら、裏の情報を探ろうとする重慶政府の諜報員パイ・ユンシャン。お互いの正体に気づきながらも駆け引きしながら探りを入れていくのはスパイ映画の醍醐味と言える。
ロウ・イエ監督は上海出身。11作目となる『サタデー・フィクション』で、1作目の『ふたりの人魚』(2001)、3作目の『パープル・バタフライ』(2003)に続いて再び上海を舞台にした。物語は太平洋戦争開戦7日前の1941年12月1日から始まる。
ロウ・イエ監督とプロデューサーのマー・インリーの友人でもあるホン・インの小説『上海の死』で描かれる女スパイの物語を脚色し、劇中劇の主役には横光利一の『上海』の中国共産党の女性闘士・芳秋蘭の設定を採用している。
監督が一度は挑戦したかったというモノクロ映像は「蘭心大劇場」「キャセイ・ホテル」などの上海の歴史的建造物に重みを持たせる。そして敢えて音楽をつけず、劇中に流れるジャジーな音楽があの時代を思い起こさせる。
そこに佇むコン・リー。彼女が燻らす煙草の煙も、そこに沸き立つ埃にも艶やかさが漂う。

ユー・ジンのターゲットになる海軍少佐の古谷にはオダギリジョー、海軍の梶原には中島歩が日本からは起用されており、重要な役割を担っている。
上海に帰ってきた女。女優?それともスパイ?それとも…
『サタデー・フィクション』というタイトルは何を表しているのか。
スパイ達の暗躍と愛を追った『サタデー・フィクション』https://www.uplink.co.jp/saturdayfiction は現在全国順次公開中。
愛知センチュリーシネマで11月17日(金)より公開。刈谷日劇でも順次公開予定。
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