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国民文化祭 清流の国ぎふ 文化祭2024 見る、聞く、語る、岐阜の映画文化 映画『キツツキと雨』沖田修一監督トークレポート

国民文化祭 清流の国ぎふ 文化祭2024 見る、聞く、語る、岐阜の映画文化 映画『キツツキと雨』の上映が2024年11月10日に行われた。上映後のトークには沖田修一監督が登場。トークの様子をお届けする。
(進行:後藤栄司さん)

沖田修一監督(以後 沖田監督)
「今日は『キツツキと雨』を観に来てくださってありがとうございます。監督の沖田です。短い時間ですが、色々話ができたらと思っております。よろしくお願いします」

後藤さん
「沖田監督、岐阜は久しぶりですか?」

沖田監督
「そうですね。久しぶりかもしれないです。『モリのいる場所』という映画で、この辺りも取材させてもらって、色々お話を聞かせていただいたりしていたので、それ以来かもしれません」

沖田修一監督

沖田修一監督

後藤さん
「『モリのいる場所』は2018年の映画です。あの時は CINEXさんという、ここから150メートルぐらい行ったところの同じ柳ケ瀬の中にある映画館でトークしていただきましたが、このロイヤル劇場は初めて登壇いただきました。ここには300人入ります」

沖田監督
「すごくいい劇場で嬉しくなりました。『モリのいる場所』の時もここに「こういう映画館もあるんですよ」と案内してもらって、この辺りを歩いた覚えはあるんです」

小栗さんが演じた監督のモデルは沖田監督

後藤さん
「この『キツツキと雨』は2011年の作品でデジタルの作品かなと思ったらフィルムで作られていたのがちょっとびっくりしたんですけど」

沖田監督
「撮影はデジタルだったんですが、フィルムでも作ったみたいです。今こうやって上映しているのは35ミリフィルムが残っているということで、本当に時代の境目というか、フィルムで残す最後の時期だったんじゃないかなと思うんです。だから僕としてはすごく嬉しいです。運良くギリギリ35ミリのフィルムで残ってくれたなと思っていました」

後藤さん
「この後の『横道世之介』はもうデジタル上映の映画ですよね。フィルムでは残っていない?」

沖田監督
「残ってないですね」

後藤さん
「そういう意味でも今日皆さんにフィルムで見ていただいたのは、特別な味わいかなと思います」

沖田監督
「そうですね、ちょっとデジタルより柔らかい感じがするなと思っています」

後藤さん
「今日は若い方もいらっしゃって。今のデジタルとフィルムの違いを把握するのは難しいかもしれないですけど、本当にカタカタと大きな映写機でフィルムが回っているという結構大変な上映方式なんですが、色気もあるし、味もあるし素敵だなと」

沖田監督
「そうですね。当たり前だったことがどんどん贅沢になっているような気がします。この劇場で観ていただくことも本当に贅沢だなと思います」

後藤さん
「監督は日本大学芸術学部出身ですね。映画監督に元々なりたかったんですか?」

沖田監督
「全然そんなつもりはなくて。映画の仕事をしたいなと思っていたんです。普通監督をやる人は監督コースに行くんですけど、僕は間違って撮影コースに行っちゃって。カメラマンのコースなんですよね。学費が高いなら払いがいのあるコースに行きたい、手に職もつけたいと思って、せっかくだからと思って行ったんですけど通っているうちにだんだん自分で脚本が書きたくなってきて。脚本を書いたらもう自分で撮るしかなくて。 なんとなくそうやって監督の道にどんどん行ってしまったというところです」

後藤さん
「プロフィールを見させていただいてもとんとん拍子で、すごく順調ですよね。映画を撮るにはお金もかかりますし、難しいと思うんです。『キツツキと雨』は長編デビュー3作目ですよね?」

沖田監督
「はい。3作目です」

後藤さん
「このクオリティの高さ。俳優さんは今だったら信じられない出演料がかかりそうな方ばかり出られていますよね」

沖田監督
「そうですね。とんでもないですよね。ただ、僕の周りでも、映画を撮ったりする人には自主制作映画のコンペティションで賞を取ったりして監督をやったりする話はいっぱいあったんです。だから最初『キツツキと雨』の話を考えた時は60歳ぐらいの監督さんと映画を誘致する若い青年の話を書こうとしたんですが、なんか逆の方が面白いんじゃないかという話になりまして。25歳の映画監督という登場人物は、多分今までの映画ではないんじゃないかと思って、面白がってやったんです。僕はもうちょっと年が上でしたが、自分の体験みたいなものを反映する形になってしまった感じでした」

後藤さん
「ということは本当に映画の裏話的な話で、沖田監督そのものが小栗さん演じる監督にもだいぶ投影されているということでしょうか」

沖田監督
「あまりそのつもりはなかったんですが、やっていくうちに、やっぱりそうだよなということになっていて。小栗旬さんも現場で僕のモノマネをし始めるというか、僕を見て、僕の身振り手振りをそのまま僕の目の前でやるということが起きまして(笑)。すごく不思議なことになったんです。もう1個撮影隊が目の前に現れるという感じで。だから小栗さんは明らかに僕をモデルにしてお芝居していたと思います」

後藤さん
「監督はどの作品も自らオリジナルで脚本を書かれていることが多いですが、現場で本を変えたりすることもありますか?」

沖田監督
「変えることはあまりしないようにしています。いきなり変えると俳優さんが困るとか色々注意を受けたりしながらやってきましたので」

『南極料理人』から3年経って

後藤さん
「『南極料理人』は当時すごく面白い感じの映画が出てきたなと思った作品です。『南極料理人』が評価を得て、それで次のプロジェクトとして『キツツキと雨』という流れですよね」

沖田監督
「『南極料理人』はたくさんの人に観てもらいました。今みたいにはSNSもなかったんですが、 それでも劇場にいっぱいお客さんがいることはわかって。でもその後しばらく時間が空いたんです。色々お仕事ももらったりしたんですが、何をやっていいかわからなくて。そんなこんなで、友達で大学の同級生だった守屋文雄くんと、この『キツツキと雨』の原型である話を考えていて、 当時オフィスシロウズの佐々木史朗さんというプロデューサーが面倒を見てくださっていたので、その佐々木さんと「こんな映画どうですか?」と話して長い期間かけて話を考えて、台本も書いてということをやっていたら2、3年経ってしまって」

後藤さん
「『南極料理人』が2009年ですから3年経っていますね。キャストも凄い方が集まって」

沖田監督
「『南極料理人』の前例があったので、その監督の次の作品だというので、皆さん出てくださいました。役者さんも若い監督と仕事をされるのが多分刺激的だったりするんじゃないかなと思うんです。そういう意味では良かったんですけど。でも僕としては「こんな大きなキャストで…(汗)」という形になりました」

後藤さん
「『キツツキと雨』は栗沢村を舞台にしています。なので、スナックマロンとか栗絡みの名前も出てきます。岐阜県をイメージはされているんですよね?」

沖田監督
「はい。一応架空の町ではあったんですが」

後藤さん
「山﨑努さんが大物俳優役で出られていて。スナックマロンのシーンも撮影のシーンも最高でした。山崎さんとはこの後の『モリのいる場所』にも繋がっていくんですよね」

沖田監督
「そもそも山﨑さんと岐阜でロケした時に「熊谷守一という方の美術館が、この近くの付知にあるから行ってごらん」と山崎さんが教えてくださったんですが、その時は行けず、ずっと覚えていて。熊谷守一さんの美術館は池袋の方にもあって行ったことがきっかけだったんです。自分が昔から見ていたテレビで流れている映画とかに出ていた山崎努さんが目の前にいて、自分が撮影するというのは本当に不思議な体験だなと思いました。目の前にいると一生懸命だから気づかないんですけど、たまに遠目に離れたところに山崎さんがいると、「あ、山﨑努さんがいる」と思って、あらためてそう感じてしまうんですね」

後藤さん
「『キツツキと雨』のロケ地に岐阜の東濃地方を選ばれた理由は何ですか?」

沖田監督
「山あいの村を探して、撮影しようと思っていたんです。 林業の盛んなところということで、こっちの方に来て色々車で回って、白川や恵那のあたりをぐるぐる回って、この辺も撮影しやすいし、山の撮影もしやすそうだし、ちょうどいいかもしれないとなって、結構広範囲から探して、 この岐阜に落ち着きました」

後藤さん
「温泉も探されて監督が選ばれたそうですね」

沖田監督
「恵那を中心にして、瑞浪や長野県の南木曽の方まで行って撮影したりしていたので、撮影自体も広範囲でした」

後藤さん
「私は東京国際映画祭で2011年に見ていて、その時にものすごく感動して。岐阜の架空の町でしたが、岐阜県人から見ると岐阜が見事に捉えられていて、それが嬉しくて、僕はその当時岐阜新聞東京支社長だったんですが、新聞のコラムに書いた記憶があるんです。日本を代表する森のまち、木のまちみたいな形で撮られて、それが映画の現場として使われたことが本当に嬉しかったですし、何よりも映画が素晴らしいので、審査員大賞を取るのも当たり前だなと思います」

沖田監督
「東京国際映画祭は本当にすごくいい反応だったので嬉しくて。思い出しました。あの時小栗さんと登壇して、Q&Aも受けたんですが、その時質問されたのが普通に観に来たムロツヨシさんだったんですよ(笑)」

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未知の出会い、異文化交流なあたりがコメディに見えてくる

後藤さん
「撮影中だからと仕事を止められ、気が付いたら映画の撮影に取り込まれて、ゾンビのメイクをしているというところまでの語り口は見事です。お互いに未知の世界の出会いが面白いですよね」

沖田監督
「監督を若くする、設定を逆転したのは映画のストーリーの面白さもそうなんですが、結局は文化交流の話のつもりで、そっちの方をちゃんとやらないと佐々木史朗さんも言っていましたし。だから、映画作りの映画ということで、楽しむだけじゃないもので作らないとというところがあって。その異文化交流を象徴する場面が冒頭のシーンだと自分では思うんです」

後藤さん
「お互いの常識は相手に理解不能という。監督の意図としてはコメディな感じで撮る気はさらさらないですよね。結果笑いが起きてしまう」

沖田監督
「はい。こだわりはあるんですが、あんまり笑わせようとすると笑わないので」

後藤さん
「役所さんが立っている場所だと映像に映りこんでしまうので、助監督に「逃げて(カメラに映らない場所に移動してという業界用語)」と言われて、たくさん逃げるシーンはそんなに逃げるんだと(笑)」

沖田監督
「あんなに逃げるんだって思いますよね」

後藤さん
「やっぱり役所さんはすごいんですよね」

沖田監督
「すごいですよ。本当にご一緒できて光栄でした。自分が想像して書いている台本の面白さはもちろんあるんです。それはもちろん役所さんも理解してやってくださっているんですが、その上で、俳優ができることをプレイヤーとして出して足してくれて、本当に面白かったです。ゾンビで最初エキストラに出てと言われて倒れて、再び起き上がった後、土を払うゾンビなんていないです(笑)。無茶苦茶払っていたので、これすごく面白いと思って。そういうのは考えつかないですね。役所さんだから色々出してくれているんだなと思います」

後藤さん
「役所さんは当時、もう『Shall we ダンス?』も『うなぎ』も出ておられて一流の俳優さんでしたが、この映画に参加されたというのは、やはり脚本を読まれて決められたということですか?」

沖田監督
「そうですね。脚本をすごく気に入ってくれたところもありますし、役所さんもご自分で木を切ったりとかされていたので「チェーンソーも使えます」と言って、実際に撮影でもやってくださいました」

後藤さん
「この映画では恵那とか中津川でロケをされて、現場のお手伝いは結構地元の方に協力をしていただいたんですか?」

沖田監督
「地元の方にいっぱいゾンビになってもらって。映画の中の撮影隊でチームを組まなくてはいけないので。台本にはない照明とか記録係で地元の方に俳優として出てもらったんです。エキストラだったら、1日だけですけど、撮影隊は現場にずっといてもらわないといけないので。セリフもない役ですが、自分なりにちゃんと動いてもらって、リアリティある現場を作っていただけました」

後藤さん
「方言も東濃の方言ですか?」

沖田監督
「東濃弁を元にして考えていたと思います。一応架空の村ですし、多分年代やいろんな人によって違うだろうから、その辺りはある程度、正解と不正解は決めずにやっていました」

後藤さん
「撮影期間はどれぐらいだったんですか」

沖田監督
「撮影期間はおそらく1ヶ月ぐらいですかね」

後藤さん
「映画では雨で撮影が止まりますが、実際の撮影ではどうだったんですか?」

沖田監督
「天候には恵まれました。ラストシーンを撮るところの撮影は結局2、3日かかっているんです。そうすると天気が繋がらない感じだったりするんですけど、映画の設定が急に雨が降ったり、晴れたりするので、カメラマンがものすごく天気を気にしたりして。映画と同じように「晴れた!」と言ってやっていました」

後藤さん
「主題歌が星野源さんですね。星野源さんは当時からご縁があったんですか?」

沖田監督
「この頃はまだブレイク前と言うんですかね。2011年頃はSAKEROCKというバンドをやっていて、ソロでCDを出された頃で、音楽プロデューサーの方がそのCDがすごくいいと紹介してくださって。名前は知っていたので、お願いしたらしっかり映画を観て、ぴったりの歌詞を書いてくださって。最初の音源を聞いてびっくりしました。めちゃくちゃいいと思って。最後の仕上げの音の作業まで星野さんが来てやってくださったりして。すごく楽しかったです」

後藤さん
「先日、別の映画の上映で、この作品に女優役で出演された臼田あさ美さんにお会いしました。沖田監督によろしくお伝えくださいとおっしゃっていました。臼田さんと平田満さんの劇中劇も面白いです。臼田さんにはどんな風に伝えて芝居してもらったのでしょうか」

沖田監督
「めちゃくちゃわざとらしく芝居してくださいと。平田満さんと面白がってやってくださいました。やっぱり差がつかないと劇中っぽくならないので、意図的にやろうと言ってやっていましたが、俳優さんは普段あんな大きな芝居はできないので、どんどん面白くなっていったみたいで、よかったです(笑)」

観客から
「小栗旬さんは確か前年に『シュアリー・サムデイ』というていう映画で監督デビューされていると思うんですが、それがキャスティングに影響していますか?」

沖田監督
「監督役は誰がいいかという話になった時に、小栗さんが浮かびました。小栗旬さんが『シュアリー・サムデイ』の監督をやったのを僕も見ていました。小栗さんの『シュアリー・サムデイ』の取材記事に「撮影が大変すぎて、毎日雨が降ればいいのにと思っていた」と書いてあって、それがすごく面白くて。幸一の気分をすごくわかってやってくれるんじゃないかなと思ってお願いしました」

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観客から
「役所さんのアドリブもあったというお話もありましたが、アドリブも含めて監督が好きなこの映画のシーンがあれば教えてほしいです」

沖田監督
「そもそもセリフが方言なので、なかなか俳優さんはセリフでアドリブを言うのは多分難しかったと思うんですが、役所さんはもう撮影の中盤ぐらいになってから平気で、台本の自分の言葉を方言に置き換えて喋ったりされていたので、すごいなと思っていたんです。セリフのアドリブ抜きであげるならば、露天風呂のシーンです。最初役所さんが小栗さんに向かって横にひょいひょい近づいていくのを撮ったんですが、その後小栗さんがひょいと近づいてくるというのは、小栗さんのアイデアだったと思うんですよね。考えていなかったことでしたが、それはすごくいいねとみんなで盛り上がって採用したシーンです」

後藤さん
「寄っていくシーン、横移動が早いですよね」

沖田監督
「すごくうまかったです」

観客から
「人と人とのコミュニケーションから生まれるおかしみ、面白さを私は『南極料理人』で気づきました。監督のコミュニケーションから生まれる面白みは何かに影響されているんでしょうか。ご自身がこれまでに拝見された映画や書物で今の表現に繋がったものがあれば教えていただきたいです」

沖田監督
「色々あると思うんです。すごくどんよりとした面白さは高校生ぐらいの時に森田芳光監督の『家族ゲーム』を見て、こういう感じの映画が作りたいなとずっと思っていました。あとは『南極料理人』に出ていたきたろうさんがやっていたシティボーイズさんのコントとか、笑ってはいけないような、笑っていいような洋画もすごく好きだったりします」

後藤さん
「今日はありがとうございました。新作のご予定はありますか?」

沖田監督
「来年撮影できるように今準備をしております。名前をみかけたらぜひ観に来てください。こうやって映画をきっかけに岐阜にまた来て、皆さんの前で挨拶できたことをとても光栄に思っています。また『キツツキと雨』を観たいなと思った時にまた会いに来てください。今日はありがとうございました」

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