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トマトのしずく

EntaMirage! Movie

父への思いをここに(映画『トマトのしずく』)

たくさんの映画が公開される昨今。
だがその分だけ撮影したのに上映されない映画が
沢山あるということは知られていない。

お蔵入り映画祭は年に一度様々な事情で上映に至らなかった作品の上映を行い、
グランプリに選ばれたものが劇場公開される仕組みの映画祭だ。

『トマトのしずく』は
お蔵入り映画祭2015の観客賞とグランプリをダブル受賞した作品。
ここ最近精力的に映画を撮影する榊英雄監督が手掛けた。
監督が自身の亡き父への思いを込めて。
父娘の心の距離を描く。

あらすじ

美容師のさくらは年下の夫・真と中目黒で美容室を経営している。
近く結婚披露パーティーをする予定だがさくらは父の辰夫を呼びたくないと強く主張する。

自分を美容師の道へ導いてくれた母。
母が愛したトマトをさくらも愛していた。
母が病気で他界した後、父・辰夫のある行為がきっかけでさくらと父の距離は離れていき
疎遠になってしまっていたのだ。

夫の真はさくら父娘の仲をなんとか元に戻そうと結婚したことを知らせるが…。

 

「幸せになあれ」は魔法の呪文

主人公さくらを演じるのは小西真奈美さん。
安定した演技力で父親への強い思いを持つさくらを演じる。
嫌いなのは好きだから。
「幸せになあれ。」「幸せになあれ。」
まさに魔法の呪文のようなこの言葉を声に出すさくらは
果たして本当の幸せを手に入れられるのか。

 

主人公さくらを取り巻く男たち

昔の出来事と今が交差する展開。
若い辰夫を演じているのは三浦誠己さん。
『侠飯~おとこめし~』で生瀬勝久さん演じる柳刃の弟分として
主人公の家に住み着く火野を好演していた。
その作中ではコメディ担当も担っていたが本作では不器用な父親。
妻を亡くして途方にくれる男を演じる。
三浦さんの演技が古稀を迎える辰夫へと繋がっていく。

古稀を迎える父・辰夫を演じるのは悪役からいいおじいちゃんまで。
年を重ねる毎に役の幅が広がる名俳優・石橋蓮司さん。
『四十九日のレシピ』の際に撮影現場で拝見し、その背中をずっと私は眺めていた。
作中での石橋さん×ベンガルさんの背中を抜くカットがたまらなく好きなのだが
言葉ではなくその身体から出てくる佇まいがたまらない。
辰夫の不器用な行動が描かれる部分はどこかコミカルな雰囲気もある。

年下の夫・真役は吉沢悠さん。
今時らしい優しさのある夫。
妻の意見を全て聞いてしまうのではなく
妻が幸せになれるように先のことを考える優しさ。
絶妙な距離感を測る夫の雰囲気は役設定か吉沢さんから出ているものか。

様々な作品に夫役で吉沢さんが出てくると目立たない包容力が
たまらないと思う。
あとからじわじわ来る魅力がある。

 

どうしても上映したい 榊監督の思い

お互い素直になれない父娘。
言葉にするのが苦手な父親とわかってはいるけど許しきれない娘
拗れると家族の方がその絡まってぎゅっと結ばれてしまった結び目を
ほどくのには時間がかかる。
ほどきはじめれば早いのにその結び目に手をかけようとしない。

なぜあの時素直になれなかったのか。
そう思いながら踏み出せない。その気持ちを痛いほど榊監督はわかっている。
あるひとことがきっかけで父とケンカ別れしてしまい
孫の顔を見せられないまま父は他界した。
その直後に作られたのがこの作品だ。

撮影から7年が経っている。
それでもいつかちゃんと上映したいという思いが
今回の上映に繋がった。

トマトのしずく

榊監督の根底にあるもの

榊監督の作品と言えば『捨てがたき人々』『木屋町DARUMA』のような
男が主人公で気持ちがむき出しになる作品の印象が強い。
7年前に撮ったこの作品が監督のイメージじゃないだけなのか?
いや、そうではない。

榊監督が携わったテレビ東京のドラマ『侠飯~おとこめし~』、
メ~テレのドラマ『まかない荘』では心がほっこりする話や泣ける話が出てくる。
榊監督の根底にあるのは実はこういうハートウォーム系の話なのではないか。
今後の榊監督の作品にも期待したい。
(もちろんハードな榊監督作品も大好きだが。)

結婚式や披露宴には
家族それぞれに忘れられぬドラマがある。

主人公・さくらに思いを重ねるのか。
それとも父親・辰夫に重ねるのか。
見る人によってそれは変わるのだろう。

この話は見ている人の物語でもある。

 

『トマトのしずく』http://tomato-shizuku.net/
1月14日より渋谷シネパレス他で全国順次公開。
名古屋では名演小劇場で1月14日より公開。

名演小劇場舞台挨拶情報

日程:1/21(土) 13:30の回上映前
ゲスト:榊 英雄監督  ※予定
※登壇者は予告なく変更になることがありますが、ご了承下さい。

チケットの発売は
1/21(土)当日名演小劇場窓口にて
劇場OPEN時間より開始(予定枚数に達し次第販売終了)
料金:通常料金
(一般1800円、大・専門1500円、小・中・高以下1000円、シニア1200円)

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