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人種も国籍も超えて。仲間として共に生きる(映画『ファミリア』)
一族や家族を大事にしてきた歴史がある日本だが、地縁関係は年々薄くなっている。周りとの関わり、共に生きるとはどういうことなのかを改めて考える映画が公開される。
1月6日から公開される映画『ファミリア』だ。
あらすじ
陶器職人の神谷誠治は妻を早くに亡くし、山里で独り暮らし。アルジェリアに赴任中の一人息子の学が、難民出身のナディアと結婚し、彼女を連れて一時帰国した。結婚を機に会社を辞め、焼き物をやりたいと宣言した学に反対する誠治。一方、隣町の団地に住む在日ブラジル人青年マルコスは半グレ達に追われたときに助けてくれた誠治に亡き父の面影を重ね、焼き物の仕事に興味を持つ。そんなある日、アルジェリアに戻った学とナディアを悲劇が襲う。
身近にあった状況から生まれた日本の今を描く物語
愛知県瀬戸市の窯業の家に生まれ、隣接する豊田市には在日ブラジル人がたくさん住む保見団地があるという環境で育った脚本家・いながききよたかが自身の周りで起こったことから着想したオリジナル脚本を映画化。『八日目の蟬』『ソロモンの偽証』の成島出監督がメガホンをとる。
主演の誠治には成島監督の『聯合艦隊司令長官 山本五十六』でも主演をつとめた役所広司。成島監督が絶対的な信頼を置く。息子に自分の気持ちがなかなか言えない不器用さもありながら、困った人を助けずにはいられないまっすぐな陶器職人を演じる。誠治の息子・学は大河ドラマ「青天を衝け」の主演後も、映画出演が続き、正月は『ブラック・ナイト・パレード』が公開中の吉沢亮が演じる。
日本に夢を見た外国人達の現実
日本に海外から就労外国人がたくさんやって来るようになって半世紀は経とうとしている。
彼らは日本で豊かな暮らしが出来るというジャパニーズドリームを夢見て家族を引き連れやってきた。日本人がやりたがらない3K(きつい、汚い、給料安い)の職業を一気に請負い、日本の労働力を担ったが、日本でのリーマンショックに巻き込まれ、一番始めに会社から解雇された。故郷に帰るだけのお金もない。言葉がわからず、コミュニケーションを取ることが難しい日本でなんとか彼らは仲間と支え合い生きてきた。外国人だと日本人から変な目で見られ、何も悪いことはしていないのに差別される。仕事も冷遇されて、給料のいい仕事が出来ない人々もいる。毎日を生きることが精一杯で、夢見ることすら彼らには望めない現実がある。
日本の各地に外国人労働者達の家族が住むコミュニティが出来ている。撮影が行われた愛知県豊田市保見団地は日本最大のコミュニティだ。住む人々の半分が外国人だという。以前、この団地では文化の違いから起こる日本人と外国人の間での対立が大きな問題になったことがある。
同じ人間なのに、言葉が違う、国籍が違うというだけで隔たりが出来る。お互いを知り、同じ場所で生きることは出来ないのだろうか。この問題を機に市や、ボランティア団体が多文化共生を目指し、様々な交流を行っているという。
いながききよたかは保見団地に住む外国人達から様々な話を聞き、脚本に反映させた。下から見つめるとたくさんの目に見つめられているような大きな団地から飛び降りがあった話、いじめに遭い学校に行けない話、犯罪に手を染める話。そして彼らに日本人がどう接しているのか。
マルコスやエリカ、そして仲間たち、交流を始める誠治と学、半グレ達は彼らの話から生み出された。彼らに対する日本人の優しさの部分を誠治達が、偏見や排除する部分を半グレ達が担い、今の日本での現実が描かれている。
マルコス役のサガエルカス、マルコスの恋人エリカ役のワケドファジレらはオーディションで選ばれた。彼らも少なからず外国人として扱われ日本で生きてきた。純粋で強い眼差しが魅力的だ。
いつも自身の作品ではフィクションでありながらリアリティにこだわる成島出監督が、演技初挑戦の日本で暮らすブラジル人の若者たちに求めたのは彼らの経験から来るリアルで説得力のある反応だ。
後半、アルジェリアでの事件に学とナディアが巻き込まれてから誠治はエリカと幸せな家庭を作ることが夢だと言ったマルコスの危機を知り、思い切った行動に出る。
まるで学を助けに行っているかのような、なりふり構わぬ姿は、大切に思う息子をもう失くしたくないという思いに溢れている。
絆の強さは血のつながりを超える。お互いを支え合い一緒に生きてきた仲間たちは大切な家族だ。
家族という括りを大きくとれば世界中の人々が家族になる。しかし、過去の確執や記憶はなかなかリセット出来ない。解決出来ない問題が山積みで争いは終わらない。自分の周りの小さなコミュニティから少しずつ問題を解消していくことが争いのない世界への一途になると信じたい。
映画『ファミリア』 https://familiar-movie.jp/ は1月6日(金)より丸の内TOEI他で全国公開。東海3県では1月6日(金)よりミッドランドスクエアシネマ、イオンシネマ(ワンダー、岡崎、豊田KiTARA、津、東員)、ユナイテッド・シネマ(豊橋18、稲沢)、コロナシネマワールド(安城、大垣)、ミッドランドシネマ名古屋空港、MOVIX三好、関シネックスマーゴで公開。
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