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昭和から平成。裏社会を生き抜いた男の物語(映画『無頼』)

2021/01/06

さまざまなアウトサイダーたちの姿を一貫して描き続けてきた鬼才・井筒和幸監督の新作が8年ぶりに到着した。井筒監督が今回描いたのは戦後の日本の裏社会で生きた男達の生き様だ。

あらすじ

敗戦後の日本は高度経済成長の下で所得倍増を求め、60年安保、オイルショック、ロッキード事件、そしてバブル狂騒と崩壊まで欲望のままに生き、そして昭和が去ると共にその勢いを止めた。その片隅で何にも頼ることなく、一人で飢えや汚辱と闘い、世間のまなざしに抗い続けた“無頼の徒”がいた。やがて男は一家を構え、はみだし者たちを束ねて、命懸けの裏社会を生き抜いていく。

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井筒監督が描く裏社会からみた“欲望の昭和史”

井筒監督は時にハードボイルドに、時にコミカルに様々な視点・演出方法で人々の生き様を描いてきた。

『岸和田少年愚連隊』、『黄金を抱いて翔べ』のようにアウトローと呼ばれる人々のヒリヒリする日常、『パッチギ』では在日朝鮮人と日本人の抗争と恋愛、『のど自慢』ではのど自慢に出場することに執念を燃やす人々。そこに生きる人たちの輝きに観客は魅了される。

今回井筒監督が舞台に選んだのは「もはや戦後ではない」と言われた昭和30年代から平成。戦争ですべてを失いながら世界の中で驚くべき成長と発展を遂げた日本をアウトローな主人公を通して描いていく。昭和から平成へと時が流れていく中で、スポット的に流れるテレビ映像や当時の文化、ファッションもしっかり時代に合わせて再現された。ロケ地も昭和を再現出来る場所を求めて日本全国へ。東海地方では昭和の色を残している多治見市を中心とした岐阜県の東濃地方の建物、中濃地方にある使用されなくなった信用金庫跡地、明治村もロケ地として使用された。撮影はデジタルでは表現出来ない昭和の空気感が出せるスーパー16ミリフィルムを使用。何よりスーパー16ミリだと通常のフィルムより画角が広くなり、俯瞰で撮られたシーンではその迫力が遺憾なく発揮された。

組同士の血で血を洗う抗争、しのぎを得るための力尽くの突破が繰り返される。組へ車が突っ込むシーンやショベルカーが家を壊すシーンはCGでなく実際に壊して撮影しており、驚くほどの迫力がある。

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出演者総勢400人超え。役者達の演技にも注目

オーディションが行われ、3000人の役者が集まった。その中から選ばれ、出演したキャストは総勢400人を超えるというから驚きだ。主人公・井藤を演じるのはEXILEのメンバーとしてテレビや舞台で活躍する松本利夫。何度も収監されながら小さな事務所の組長から、次第に子分という家族を増やし、武闘派としての地位を確立、本家の幹部へと成り上がっていく男を人間臭く演じる。彼の人生を支えた妻・佳奈役には映画『純平、考え直せ』のヒロインに抜擢されるなど女優として活躍も目覚ましい柳ゆり菜。姐御として子分も支える強い面だけでなく、妻として揺れる心も繊細に表現する。その周りには木下ほうか、ラサール石井、升毅、小木茂光、隆大介、中村達也という顔面力と演技力のあるキャストが勢ぞろい。メインキャストだけでなく、阿部亮平、清水伸、森本のぶ、駒木場俊介、土平ドンペイなどワンシーンで印象を残す役者達からも目が離せない。

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『無頼』な男達の社会が排除されてしまった今の時代にこの映画を作るというのはチャレンジだと思う。だが、いつも私たちに驚きや気付きを与えてくれるのが井筒監督だ。今の時代をもっと自分のことに欲をもって生きてほしい、自由に生きて欲しい。そんな井筒監督からのメッセージを感じる本作は若者達にはどう映るのだろうか。

弱肉強食、やられたらやり返すの世界で『無頼』として生きた男たちの物語。確かに彼らは存在していた。日本の一時代を裏社会から動かしていた。仁義のもと、がむしゃらに家族と共に生きた男たちの姿がここにある。

映画『無頼』は12月26日から名古屋駅西口シネマスコーレ、2021年1月29日より関シネックスマーゴにて公開。

映画『無頼』公式サイト www.buraimovie.jp

監督:井筒和幸
出演:松本利夫(EXILE) 柳ゆり菜 中村達也 ラサール石井 小木茂光 升毅 木下ほうか 他
主題歌:泉谷しげる 「春夏秋冬〜無頼バージョン」
製作・配給:チッチオフィルム 配給協力:ラビットハウス
2020年/日本/146分/カラー作品/ビスタサイズ/5.1ch/R15+
©2020「無頼」製作委員会/チッチオフィルム

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