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映画『港に灯がともる』伏見ミリオン座公開記念舞台挨拶レポート

映画『港に灯がともる』の公開記念舞台挨拶が1月18日(土)伏見ミリオン座で行われた。

堀之内礼二郎プロデューサーが登壇、映画制作について語った。観客からの質問にも答えた舞台挨拶での堀之内プロデューサーのコメントをご紹介する。

堀之内礼二郎プロデューサー(以後 堀之内P)
「皆さん本日はお忙しい中、数ある映画の中でこの映画を選んでご覧いただきありがとうございます。僕は映画は作っただけでは完成しない、皆さんのもとに届いて初めて完成するんじゃないかなと思っています。この映画を完成させてくださって、本当にありがとうございます」

映画制作の始まりは一冊の本

堀之内P
「この映画はどうやって生まれたのかを話させてください。全ての始まりは一冊のこの本「心の傷を癒すということ」からでした。安克昌さんという精神科医の方がいらっしゃいました。1995年の阪神・淡路大震災の時に被災者の心のケアに奔走された精神科医です。今では一般的な言葉である「心のケア」や「トラウマ」という言葉はその当時は一般的ではありませんでしたが、その頃から心のケアが大事だということを考えて、ご自身も被災されながら、被災者を回って心のケアに奔走された方です。その時に感じられたことをまとめられたのがこの本です。安さんは震災の後、2000年に亡くなられたんですが、この本を京田プロデューサーが手に取って、ぜひ番組にしたいということで、安達もじりというNHKの演出家に話をしまして、2020年、震災25年のタイミングで、「心の傷を癒すということ」というドラマを制作しました。

堀之内礼二郎プロデューサー

堀之内礼二郎プロデューサー

安成洋さんとの出会い

堀之内P
「安克昌さんの人生をモデルにするということで、取材の窓口になったのが安克昌さんの実の弟の安成洋さんでした。取材をさせていただきながら、ドラマを共に作っていく中で、このドラマをテレビ放送の中だけに収めていくのはもったいない。さらに多くの方々に長い長い時間をかけて届けていきたいという思いが成洋さんに生まれ、2021年、一年後に成洋さんが中心となって劇場版が制作されました。その劇場版は何年もかけて映画館のない町の公民館やホールなど、全国200か所以上で上映会をされてきました。その時に成洋さんが感じられたことが、何年経っても、震災から25年、30年経ってもやはり言えない心の傷というものがあるということ。それと同時に映画が心の傷を癒すということに繋がっているということでした。さらに新しい作品を作っていく必要がある、作っていきたいと再び『心の傷を癒すということ』の安達もじり監督とプロデューサーだった僕にお話をくださり、 共に作り上げたのが映画『港に灯がともる』になります」

©Minato Studio 2025

©Minato Studio 2025

震災だけではない、様々な出来事から生まれる心の傷

堀之内P
「神戸市でも震災を経験していないという方が現在半数以上になっています。今後その割合はどんどん高まっていくでしょう。そういう中で、どんな物語を作ればいいのか。震災の当時を再現して、その時に大変だったという話に共感していただける方はどれだけいるだろうということを悩みました。ただ経験していない方と色々話をする中でも「あれは震災の前だったんじゃないかな」とか「震災の5年後だった」と、震災を基準に物事を考える方がとても多くて、神戸で暮らす方にとっては、経験していなくても、心の中ですごく大きな面積を占める出来事だったんだなということを取材させていただく度に感じます。今回の映画の主人公の灯(あかり)ちゃんは、震災の翌月に生まれて、震災を経験していないんですが、ご両親が震災で多くのものを失いました。震災が大変だったという両親の話は、頭ではわかる。でも「わかった」と言い切れない、心がついていかない、そういうような苦しみはあるのではないかと思いました。僕自身も宮崎県生まれで、阪神・淡路大震災が起きた時は15歳、テレビで震災の様子を見ることだけしかできなかったので、被災者の方々から何度も話を聞いても「わかった」とは言えないんです。そういう中でも、わかりたいと思いながらそばに居続けるということを心がけています。それでいいんじゃないかということが、この映画で伝わっていけばいいと思います。そして心の傷というのは震災だけで生まれるものではないんですね。日々暮らしていて、何か心に引っかかったり傷ついたりすることは皆さんにもあると思います。その苦しみや悩み、心の傷に大きいも小さいもありません。他人が「それは大したことない」と言えるものではなくて、些細なことだけれども、自分にとっては大きいことなんだと思っても全然いいと思うんです。自分のペースで傷が癒えていくのを待ったり、進めない時には止まったり、そういう風に生きていってほしい。そのためのエールになるような作品になればいいなと考えています」

「灯」として生きる 富田望生さんの芝居

堀之内P
「安達もじり監督は富田さんにこうしてほしいとか、演技の細かいことに関して、ほぼ言わなかったんです。ただ一つ、「神戸で灯ちゃんを生きてください」ということだけをお願いしました。そうするために富田さんには撮影の期間中、一ヶ月余りなんですが、神戸にほぼずっと住んで生活をしていただきました。 撮影がない日であっても神戸に滞在し、神戸の空気を吸って、本当にたくさん神戸の街歩きをしていただいて、監督も時に寄り添いながら散歩をして神戸を感じていただきました。灯ちゃんという役を生きてもらうことはすごく勇気のいることだったと思います。心が傷つくシーンでは、自分の体、心を使って、本当に傷ついていらっしゃいましたし、 時にはカットがかかっても動けなくなるほど、本当に全身全霊をもって灯という役に飛び込んでくださいました。その勇気と精神力は本当に尊敬しています。安達監督も富田さんに寄り添いながら、本当に二人三脚で作り上げていった作品です」

©Minato Studio 2025

©Minato Studio 2025

優しい社会を作っていくために

堀之内P
「僕達にとっては、この作品を観てもらうことが願いではないんです。安克昌さんの本の中で、「人間の心は傷つきやすい。この傷つきやすい心を抱えた人と社会はどう向き合っていけばいいのか。 傷ついた方々を切り捨てる厳しい社会を選ぶのか、それとも心を癒すことができる優しい社会を作るのか。これは私たち全員に問われた問いである」というようなことが書かれているんですが、その問いに対して、私たちは人が心を癒すことができる優しい社会を作っていきたいと答えたいと思っています。そういう世の中を作っていくために、映像作品を作って届けていきたいと思いました。その第一歩が、この『港に灯がともる』です。ぜひ皆さんこの作品を気に入っていただけたら、友人の方に勧めてください。それが共に優しい世の中を作っていくことに繋がっていくのではないかなと思っています。ぜひ、この作品を一緒に遠くに届けて育てていっていただけたらと思います。どうぞよろしくお願いいたします」

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『港に灯がともる』https://minatomo117.jp/は現在伏見ミリオン座他で公開中。2月15日(土)より岐阜CINEX、3月21日(土)より伊勢進富座で公開。

『港に灯がともる』公開前の堀之内プロデューサーのインタビューはこちらから

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