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あいち国際女性映画祭 映画『でくの空』トークレポート&林家ペーさんインタビュー
名古屋 名演小劇場で9月23日から公開される映画『でくの空』。埼玉県秩父市、寄居町を舞台に仕事の事故で部下を死なせてしまい、責任をとって会社をたたんだ男が、姉が営む便利屋を手伝いながら再生していく姿を描く。主演は日本テレビ系「笑点」でおなじみの林家たい平。監督は島春迦。前作『おくれ咲き』と同じコンビが新たなテーマを自身達のなじみ深い地で撮影。
9月8日から開催中のあいち国際女性映画祭で一足早く9月10日に公開され、トークゲストには主人公の父親役で出演した林家ペーさんが登場。トークの様子の一部とトーク後のインタビューを合わせてお届けします。(トーク進行:水野由美子さん)
あいち国際女性映画祭 『でくの空』林家ペーさんトークレポート
水野由美子さん(以下 水野さん)
「ステージでは距離もありますのでマスクは取ってお話させていただきます」
林家ペーさん
「マスクは取っていいんですね?このマスクは海老名香代子さんからいただいたんです。(観客に)知ってます?わたしの師匠、林家三平の奥様です。名古屋に行くと言ったらぜひ使ってくださいとおかみさんが」
水野さん
「マスクもピンクですね。あいち国際女性映画祭へは初参加だと思いますが、名古屋に来られたのは久しぶりですか?」

林家ペーさん
「名古屋はね、大須演芸場がありますよね。そちらには定期的に出演しています。きっかけは一度大須演芸場が閉館してしまって、復活させるということで街の方々が東京と大阪の落語会に頼んで出てもらったというのがあって。その頃から出ています。でも久しぶりですね。愛知県なら愛知県西春日井郡豊山町……」
水野さん
「それはどこなんでしょう?」
林家ペーさん
「イチローさんのお家(笑)。よく行くんですよ。資料館とかね(笑)。すいません、余談が多くて」
水野さん
「今日はTシャツにも「余談」と」
林家ペーさん
「余談が僕の人生ですからね。余談ですが、今日はセーラームーンの水野亜美さん、欧陽菲菲さんの誕生日です!」
水野さん
「今回たい平さん演じる主人公のお父さんの役ということですが」
林家ペーさん
「たい平さんとは兄弟弟子なんです。兄弟感覚だから年が三つか四つぐらい上の感覚なんです。それが親子の役でしょ。ショックですよ(笑)。一応僕ビジュアル系なんで。死ぬほど恥ずかしくてね」
水野さん
「島監督からは何か父親役についてお話はありましたか」
林家ペーさん
「島監督の作品は小津安二郎的な作品なんですよ。淡々と親子やまちの人たちの絆を描いていてね。だから僕は笠智衆を意識して。『東京物語』での話し方を自分なりに研究してね。」
水野さん
「役作りをされたんですね」
林家ペーさん
「それでね、現場に行ったら島監督とたい平さんに「そんなことしなくていい。地でいい」って言われて(笑)。なので、肩の力を抜いてやりました。いずれにしても自分は死ぬほど恥ずかしいですね。今までもドラマとかに出てはいるんですよ。でも95%ぐらいが林家ペー役。パー子と一緒に出る役でほとんど地のままだから。台本を見るという経験もないですし」
水野さん
「セリフがあって台本があるという役はあまりなかったわけですか」
林家ペーさん
「セリフがあるとなると、プレッシャーなんですよ。役作りしたとはいうものの、現場ですっかり忘れていて怒られました。絡みのあるシーンに台本を持っていくのを忘れてしまって。不謹慎なことになってしまったんです。現場では島監督に言われた通り演じていました。『ゴッドファーザー』のマーロン・ブランドって知ってます?あの人も台本見ないで現場で話していたんです。それでも大スターですけどね。あんな風には行かなくて忸怩たる思いでした」
水野さん
「山の中を歩いて、空を見つめているシーンとかすごくよかったですよね?」

(観客拍手)
林家ペーさん
「そう?本当に?僕は死ぬほど恥ずかしいんだけど。歩いていくだけだけどなかなかカットがかからなくて、まだ終わらないのかなと思っていました」
水野さん
「セリフがあって、御本人役ではない役がオファーされた時のお気持ちは?」
林家ペーさん
「たい平さんの父親役だったので、兄弟弟子ですからどうも違和感があって正直嫌でしたけど、自分を抑えて、地味な服を着て演じました」
水野さん
「いや、よくお似合いでしたよ」
林家ペーさん
「でもね。芸能界でも僕はミーハーなので、熊谷真実ちゃんとか結城美栄子さんと同じ映画に出られてよかったです。結城さんとは共演シーンはなかったんですけど」
水野さん
「ご家族でのシーンが多かったですよね」
林家ペーさん
「そうなんです。たい平さんが現場でも島監督と役についてディスカッションしているんですよ。ちゃんと自分の意見も話されていてね」
水野さん
「たい平さんといることは多いと思いますが、お芝居するたい平さんはいかがでしたか?」
林家ペーさん
「落語もお上手ですけど、あの人は芸術家ですから。武蔵野美術大学出てますから。淡々と演じることも出来ますからね。たこ焼きを焼くシーンのうまさにはびっくりしてね、唖然として、「うまいな」ってアドリブが出ちゃった。とにかく感心しながらずっと共演シーンはやっていました。長い人生の中でも楽しい経験になりました」
水野さん
「撮影中はたい平さんのYOUTUBEにも出られていましたね」
林家ペーさん
「映画のロケの合間に出てくれませんか?と言われて。映画の家として使った家の中からいろいろ持ってきて、ぶっつけで大喜利みたいに駄洒落をやってます。見て!YouTube」

水野さん
「共演者の方とお話されたりしたんですか」
林家ペーさん
「結城さんとお話しました。結城さんは映画女優さんとしてもキャリアが長いですが、陶芸も35年ぐらいやられているんです。だから映画の中で陶芸をやるシーンがありますが、全部自分で作られているんですよ。わたしも一つブローチをいただきました。結城さんはデビューが昭和35年なんですよ。東映ニューフェイスでね、同期は三沢あけみさん。彼女がデビューした作品を僕は見ていて。映画の話をたくさんしていたら「あなたは映画評論家なの?」と聞かれました。結城アンナさんって知ってる?岩城滉一さんの奥さん。あの方が結城さんの姪っ子さんなんですよ。余談だけど」
水野さん
「たい平さんが演じた役は歌も歌うし、俳句もやるという役でしたが、ペーさんの趣味は?」
林家ペーさん
「わたしはね、マニアックなことが好きでね。毎日Twitterに今日は誰の誕生日かを呟いてますけど、誕生日に興味があるんですよ。それでテレビに出させてもらっていたりしますね。こんな誕生日とかの余談もしながら撮影は和気あいあいと進む現場でした」

水野さん
「映画『でくの空』は9月23日から名古屋の名演小劇場で上映が決まっています」
林家ペーさん
「名演小劇場ね。みんな行って!」
林家ペーさんインタビュー
Q.この映画に出演するきっかけは何だったんでしょうか。
林家ペーさん
「たい平さんが島監督の前の作品にも出ていて。試写を観に行って。島監督に「この映画小津安二郎チックでいいですね」と言ったら、今回出演のお話をいただいたんです。全く自分と正反対の役なので、いいのかなとは思いましたが」
Q.料理をするシーンがありましたが
林家ペーさん
「結構、撮影していた時間としては長くて、炒めているものの水分がなくなったりするので、試行錯誤しながらやっていましたが、内心まだ終わらないかな、焦げないかなとか思いながらやっていました。監督からなかなかOKが来ないんです。映画の間というものを学びました。芸能界長いですが、テレビが多いので、映画の場は新鮮な経験でした」
Q.先ほど趣味の話はステージでもされていましたが、写真撮影もされたんですか?
林家ペーさん
「ロケの現場でも撮影の合間に撮りました。いつも撮る側なので、被写体として写っているのは少ないんです。監督、スタッフさん、寄居町の方々。撮りましたね」
Q.映画をよく観ていらっしゃるペーさんから見てこの映画の良さは何だと思いますか?
林家ペーさん
「芸能界に入る前は映画たくさん見ていましたからね。時代も変わって、映画からテレビに主流が変わってしまっていますが、久しぶりに映画に出るという経験もして、びっくりしたんですよ。この映画、音楽とかは少なめで会話だけで、淡々と人間の心のふれあいで進んでいく。それが寄居町やたい平さんの故郷秩父市の風景と相まっていいですよね。人の優しさを感じますね。テレビドラマでは出来ない作品ですよね」
Q.笑いを封印して出演されましたがいかがでしたか?
林家ペーさん
「自分を封印して演じるのは不思議な感覚でした。一行しかないセリフが逆にプレッシャーになって。過去にドラマに出た時も自分の役はアドリブでよかったことが多くて。今回は笑いを封印していました。たい平さんもずっと笑いを封印してずっとシリアスな顔をしていました。アドリブも封印して。二人とも林家じゃない一個の俳優で。映画はチームワークで作りますよね。自分の今までの現場ではなかなかそういうことがないのでいい経験になりました」

林家ペーさん
トークでも余談をたくさん披露してくださった林家ペーさん。その余談を封印して演じた、息子を温かく見守る父親役がはまっています。
御本人は恥ずかしいと連発されていましたが、島監督の演出も効いていて見事に寄居町で生きていらっしゃいます。林家たい平さんの芸の広さも改めて感じた映画です。
残された人々が去った人々を思いながら、前を向いて歩いていく姿を島監督が静かにじっくり映し出します。
映画『でくの空』https://dekunosora.jimdofree.com/
は9月23日より名演小劇場で公開。
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