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ひかれ合う二人はどこへいくのか(映画『わたくしどもは。』)
ベネチア国際映画祭が新鋭監督を支援するプロジェクトBiennale College Cinema 2018-2019インターナショナル部門9作品のうち日本から唯一選出され、第36回東京国際映画祭コンペティション部門にも正式出品された映画『わたくしどもは。』が5月31日(金)から公開される。
あらすじ
佐渡島。名前も過去も覚えていない女(小松菜奈)の目が覚める。鉱山で清掃の仕事をするキイ(大竹しのぶ)は施設内で倒れている彼女を発見し、家へ連れて帰る。女はミドリと名付けられ、清掃の職を得る。ミドリは猫の気配に導かれ、構内で暮らす男、アオ(松田龍平)と出会う。彼もまた過去の記憶がないという。言葉を重ねるうちに、ふたりは何かに導かれるように寺の山門で待ち合わせては時を過ごすようになる。そんなある日アオとの親密さを漂わせるムラサキ(石橋静河)と遭遇。ミドリは心乱される。

佐渡島に眠る“無宿人”の墓からインスピレーションを得て、オリジナル脚本で監督を務めたのはこの作品が⻑編監督第二作目となる富名哲也。2018年長編初監督作品『ブルー・ウインド・ブローズ』が第68回ベルリン国際映画祭ジェネレーション・コンペティション部門とBerlinale Goes Kiezに選出され、長編企画「わたくしどもは。」は、ベネチア国際映画祭が実施する新鋭監督を支援するプロジェクトBiennale College Cinemaに選出された。その企画を映像化した作品がいよいよ公開となる。
生活感のあまりない家で暮らし、金山跡地を維持する仕事に従事する人々。佐渡島の自然と金山跡地を舞台に不思議な世界へと導かれる。どうして記憶を失いそこにいるのか、なぜその状況を周りの人々が自然に受け入れているのか。観ながら疑問がたくさん湧き、役者達の佇まいに違和感を抱くが、次第にそこが私たちがいる空間とは違う空間であることがわかってきて、違和感の正体が何なのかわかってくる。
小松菜奈・松田龍平が記憶がなく、自身の名前もわからないままひかれ合う2人を演じる。記憶はないのに、なぜ彼らはひかれ合うのか。なぜ彼らは繋がっているのか。観た後も色々考えてしまう。

大竹しのぶ、田中泯が小松菜奈演じるミドリを温かく迎え世話する金山の人々、石橋静河が松田龍平演じるアオを知る女、ダンサー・演出家の森山開次が金山の中を歩き続ける男として登場し、世界観を作り上げる。悩める高校生・透を歌舞伎界ホープの片岡千之助、その母親を内田也哉子が演じ、能楽師の辰⺒満次郎が演じる能という幽玄の世界も入ってくる。劇中音楽は日本を代表するバンドRADWIMPSのフロントマンとして活躍する野田洋次郎が手掛けており、様々なジャンルの表現者たちが揃う。あることがきっかけで解放される透の変化を表現する片岡千之助の芝居が強く印象に残った。
わたしたちはどこから来てどこへいくのか。
今わたしたちがいる場所は現実なのか、自身が観ている夢の中なのか。この世なのかあの世なのか。境を越えても続く二人の物語。あなたは何を感じるだろうか。

映画『わたくしどもは。』https://watakushidomowa.com/
は5月31日(金)よりシネマカリテ他で全国公開。東海三県では伏見ミリオン座、ユナイテッド・シネマ阿久比、ミッドランドシネマ名古屋空港で公開。
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