EntaMirage! Entertainment Movie
正義とは?真実とは?現代の問題をえぐり出し、訴えかける作品がいよいよ日本凱旋!(映画『由宇子の天秤』)
報道とは報せる道と書く。テレビ、新聞、雑誌、本がそれにあたり、文字通り様々な出来事を人々に報せる役割を果たしてきた。近年、情報インフラ、SNSなどの普及でそれらメディアだけではなく、インターネット上で誰もが自由に投稿する内容から私たちは情報を得る時代になった。その中には真実だけではなく、嘘の情報、誹謗中傷も含まれている。たくさんの情報の中から自身で真実を選ぶ時代になったとも言える。そしてふと思う。これまで私たちが日々見ていたニュースはありのままの姿で報道されていたものだろうか?自分たちの都合のいい視点で、真実が歪んだ形で伝えられていなかっただろうか。
世界三大映画祭の一つであるべルリン国際映画祭をはじめ、世界中の映画祭を席巻した『由宇子の天秤』がいよいよ日本凱旋。真実を明らかにしたいとドキュメンタリー制作する由宇子の姿が描かれていく。
あらすじ
3年前に起きた女子高生いじめ自殺事件を追うドキュメンタリー監督の由宇子は、テレビ局の方針と対立を繰り返しながらも事件の真相に迫りつつあった。そんな時、学習塾を経営する父から思いもよらぬ“衝撃の事実”を聞かされる。常に真実を明らかにしたいという信念に突き動かされてきた由宇子は、究極の選択を迫られる。ドキュメンタリー監督としての自分と、一人の人間としての自分。その狭間で激しく揺れ動き、迷い苦しみながらもドキュメンタリーを世に送り出すべく突き進む由宇子。最後に彼女を待ち受けていたものとは?

ドキュメンタリー撮影現場から見える日本の今
デビュー作『かぞくへ』が高く評価された春本雄二郎監督の新作は情報過多な社会を生きる私たちが抱える問題や矛盾を真正面から炙り出した。自浄作用のないマスコミの態勢、そこから生まれるドキュメンタリー製作の裏側にある製作者達の葛藤、SNSでの行き過ぎた個人攻撃、日本の格差社会が生んだ貧困。日本人が知っていながら見ないように蓋をしている問題を春本監督は一人のドキュメンタリー監督・由宇子の視点から私たちに訴える。
由宇子の取材を通して加害者家族、被害者家族の生活も描かれる。司法は赦しても社会は赦さない。本人だけではなく、家族も赦されない。ずっと身を隠して生きなければならない家族の姿は目に焼き付き、冒頭で聞こえるグリーンスリーブスが耳に残る。
そして、由宇子に青天の霹靂で襲いかかる父の衝撃告白。ドキュメンタリー取材で様々な人を追い続けたからこそ見えてくるこの先に起こる問題に、由宇子はどう動いていくのか。

春本監督は自身でキャスティングした役者陣と撮影前にしっかりとリハーサルをして臨んだ。
瀧内公美演じる主人公・由宇子は魅力的だ。眼差しは強く、まっすぐに突き進む。取材で加害者家族や被害者家族の話をそっと寄り添いながら聞く柔らかい雰囲気と何としても取材した内容を世に出したいという強い思いで取材に突き進むエネルギーを持ち合わせている。そのエネルギーはどこから来るのか。光石研演じる塾講師の父親との今までの生活は多くは語られないが、二人で生きてきた過去、二人だったからこそ踏ん張って生きてきた、そんな強さからにも見える。また由宇子の父親の塾生・萌役の河合優実、萌の父親役の梅田誠弘、加害者家族として登場する丘みつ子、被害者家族として登場する松浦祐也、由宇子のストッパーでもあり、よき上司で中間管理職的なポジション・富山役の川瀬陽太らがしっかりとこの作品の世界観を作り上げた。
タイトルにある“天秤”。この映画を見ながらギリシャ神話の正義の女神テミスを思い出した。テミスは正義、公正さを表す天秤を持っている。由宇子の心にある天秤は父からの告白以降、均衡を失い始める。何としても守りたいものが出来た時、真実を追い求めることが正義だと生きてきた人間は果たして正義のために真実を告げることが出来るだろうか。由宇子にとっての正しさとは何か。揺れに揺れた天秤は最後にどこで止まるのか。

春本監督は社会の問題を静かに、だが確実に私たちに投げかける。由宇子に降りかかったことは他人事ではない。由宇子の究極の選択をあなたはどう考えるだろうか?
映画『由宇子の天秤』https://bitters.co.jp/tenbin/は9/17よりユーロスペースほかで全国順次公開。東海3県では9/17より伏見ミリオン座、11/6より三重進富座で公開。
おすすめの記事はこれ!
-
1 -
『湯を沸かすほどの熱い愛』の中野量太監督が10年ぶりに完全オリジナル脚本で挑む—映画『私はあなたを知らない、』
日本アカデミー賞をはじめ数々の映画賞を席巻した名作『湯を沸かすほどの熱い愛』から ...
-
2 -
映画『メモリードア』『三尺魂』がシネマスコーレで上映中 加藤悦生監督、木ノ本嶺浩さんインタビュー
加藤悦生監督の『メモリードア』、『三尺魂』が8月22日から名古屋シネマスコーレで ...
-
3 -
地元・名古屋に凱旋!長村航希が語る映画『ひとりたび』撮影裏話 シネマスコーレ舞台挨拶レポート
映画『ひとりたび』の公開を記念し、8月22日、名古屋シネマスコーレにて舞台挨拶が ...
-
4 -
アーラ映画祭2026 今年は3日間で厳選の6作品を上映。チケットは8月22日(土)より発売開始!
映画館がない可児市において、市民ボランティアで構成される「アーラ映画部」の実行委 ...
-
5 -
幸せ絶頂のカップルを襲う“最悪の告白”―結婚直前、あなたはパートナーの過去をすべて受け入れられますか?(映画『ドラマなふたり』)
『DUNE/デューン 砂の惑星』のゼンデイヤと『THE BATMAN-ザ・バット ...
-
6 -
森田剛主演『見上げてごらん』本ポスター&本予告編が一挙解禁!マンガづくりを舞台に迷えるオトナに捧ぐ、ちょっと痛くて愛おしい物語
「夢を叶えるって、そんなに大事?」 42歳、万年マンガ家アシスタント。夢をこじら ...
-
7 -
左利きは「悪魔の手」—映画『左利きの少女』が突きつける偏見と強く生きる親子の姿
台北の熱気あふれる夜市を舞台に、生きづらさを抱えながらも力強く生きる多世代家族の ...
-
8 -
映画『平行と垂直』ミッドランドスクエアシネマ トークイベント付き特別試写会 レポート
2026年7月30日、映画『平行と垂直』の上映後トークイベントが開催された。 映 ...
-
9 -
映画『インビジブル ハーフ』西山将貴監督が語る「締め切りのない追求」が生んだ新感覚ホラー
14歳から独学で映像制作を始め、縦型短編ホラー『スマホラー!』で世界を驚かせた西 ...
-
10 -
日本必敗を予測した若きエリート達。それでも戦争に突き進ませたものは何か。歴史的真実を基に迫真の演技陣が炙り出す「空気」の不気味さ 映画『開戦前夜』
真珠湾攻撃の8カ月前、日本の命運を託した「総力戦研究所」が存在した……猪瀬直樹氏 ...
-
11 -
【プレゼントあり】Jホラーの巨匠・清水崇監督の最新作!映画『だぁれかさんとアソぼ?』
『呪怨』シリーズを手掛け、日本人監督として初めて全米興行収入1位を記録するなど、 ...
-
12 -
前を向いて生きよう 映画『小春日和〜Indian Summer〜』楠部知子プロデューサー インタビュー
37年間、精神科医として多くの心に寄り添いながら、役者としても活動してきた楠部知 ...
-
13 -
口にしたら、最後。映画『口に関するアンケート』が描く90分の最恐体験
衝撃的な展開と、観る者の日常を侵食するような最恐の恐怖体験が話題のホラーミステリ ...
-
14 -
【プレゼント企画あり】ケロロ軍曹劇場版が16年ぶりの復活であります!!(『新劇場版☆ケロロ軍曹 復活して速攻地球滅亡の危機であります!』)
「月刊少年エース」で大人気連載中、2000年代に社会現象を巻き起こした吉崎観音に ...
-
15 -
あなたの人生、それでいいですか? セントレアで起きた事件から生まれた崖っぷち三人のシークレット・ツアー 映画『マジカル・シークレット・ツアー』
映画『ミセス・ノイズィ』の天野千尋監督が有村架純、黒木華、南沙良を迎え制作した映 ...
-
16 -
賞金100億の生放送クイズ!原作・深水黎一郎×鬼才・堤幸彦監督が仕掛ける、最高峰の謎解きエンターテインメント!(映画『ミステリー・アリーナ』)
ド派手な推理クイズ番組が劇場のスクリーンに登場!最高峰の謎解きエンターテインメン ...
-
17 -
【プレゼント企画あり】佐藤二朗×城定秀夫が放つ衝撃のサイコバイオレンス(映画『名無し』)
俳優、脚本家、映画監督として多才な活躍を見せる佐藤二朗が、自ら初の漫画原作を手掛 ...
-
18 -
【名古屋撮影】映画『ランニングハイ』エキストラ募集のお知らせ
※この記事はテラスサイド様からのお知らせを受けて掲載しております。 ...
-
19 -
いつの間に結婚!?奇妙な出会いから始まる2人のストーリー 映画『ラプソディ・ラプソディ』
『クロエ』などで国内外から注目を集めた利重 剛監督13年ぶりとなる待望の長編監督 ...
-
20 -
日常の足元に広がる、愛おしい雑草の世界 映画『ザッケン!』
実在する「雑草研究部」をモチーフに脚本家で映画監督の上村奈帆がモノガタリラボと原 ...
-
21 -
映画『花緑青が明ける日に』名古屋ミッドランドスクエアシネマ2 四宮義俊監督Q&Aイベントレポート
日本画家としての活動を軸に、新海誠監督や片渕須直監督など名だたる監督のアニメーシ ...
-
22 -
『劇場版 転生したらスライムだった件 蒼海の涙編』名古屋 大ヒット記念舞台挨拶レポート
2026年3月15日(日)、ミッドランドスクエアシネマにて『劇場版 転生したらス ...
-
23 -
100年前のパリ、夢を追う二人の少女の物語。アニメ映画『パリに咲くエトワール』
日本のアニメーション界を牽引する豪華クリエイター陣が集結した珠玉の物語『パリに咲 ...
-
24 -
ユネスコ無形文化遺産 長浜・曳山祭りを舞台に子ども達の心を繊細に描く(映画『長浜』谷口未央監督インタビュー)
2016年、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に山・鉾・屋台等と呼ば ...
-
25 -
男たちの友情を描くロードムービー 映画『円盤』制作プロジェクトが本格始動!
映画『Mothers マザーズ』のプロデューサーを務めた難波望監督による最新長編 ...
-
26 -
「自分の青春そのもの」当事者が震えた圧倒的リアリティ 映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』名古屋センチュリーシネマ舞台挨拶レポート
2026年2月27日、名古屋センチュリーシネマにて映画『ストリート・キングダム ...
-
27 -
リストラ担当者の苦悩から見る「会社で働く」ということ(映画『ただ、やるべきことを』)
2月21日(土)から名古屋キネマ・ノイで上映される映画『ただ、やるべきことを』は ...
-
28 -
名古屋→東京 福山雅治 1日で駆け抜けた弾丸舞台挨拶でファンに熱い思いを語る!
2024年10月13日、長崎スタジアムシティのこけら落としとしてジャパネットグル ...
-
29 -
映画『安楽死特区』毎熊克哉さん登壇 名古屋大ヒット御礼舞台挨拶レポート
映画『安楽死特区』の大ヒット御礼舞台挨拶が2月8日名古屋ミッドランドスクエアシネ ...
-
30 -
シネマスコーレで上映中。会話劇の魅力。知多良監督初長編作品『ゴールド』
2026年1月26日、名古屋シネマスコーレにて映画『ゴールド』が上映中だ。 映画 ...
-
31 -
『MIRRORLIAR FILMS Season8』公開記念名古屋舞台挨拶レポート
短編映画制作プロジェクト『MIRRORLIAR FILMS Season8』の公 ...
-
32 -
映画『安楽死特区』が問いかけるこれからの日本の「生と死」の境界線―毎熊克哉さん・大西礼芳さん・長尾和宏さんインタビュー
高橋伴明監督が、現役医師である長尾和宏氏によるシミュレーション小説を映画化した『 ...