
祗園太郎は今日も京都の町を流す(映画『タクシードライバー祗園太郎 THE MOVIE』)
自分達の生きている場所を活気づけたい。
映画を観てもらってこの場所を知ってほしい。
そういう思いで作られるご当地映画が最近増えている。
『タクシードライバー祗園太郎 THE MOVIE すべての葛野郎に捧ぐ』は
京都の祇園を舞台に作られた映画だ。
監督はヨーロッパ企画の永野宗典氏。
私の中では俳優としてのイメージが強い。
『UDON』の階段落ちの人というイメージが強いが
今回は脚本・編集・出演と多才ぶりが見えてくる。
別に知らなくても楽しめるけど祗園太郎を楽しむための予備知識
ヨーロッパ企画って何?
知らない人のためにご説明。
監督や出演者、スタッフを担当している多くはヨーロッパ企画のメンバー。
ヨーロッパ企画は京都を拠点に全国公演を行う劇団。
SFやファンタジーな設定も折り込みながら日常会話が展開するコメディを主に上演する。
2005年に代表作『サマータイムマシン・ブルース』が
2009年には『冬のユリゲラー』を原作とした『曲がれ!スプーン』が
本広克行監督によって映画化された。
舞台の戯曲は主宰の上田誠氏が書いているが
ヨーロッパ企画のメンバーは一人一人が多才で役者だけでなく脚本が書ける人が何人もいる。
(この映画のエンドロールではキャストとスタッフでおなじ役割を果たしている人達がいるので
要チェック。)
東京に行かず京都を拠点にしているというところが個人的に好き。
タクシードライバー祗園太郎って何者?
ヨーロッパ企画のメンバーで放送していたラジオ『永野・本多の劇的ラジオ』
でのラジオドラマの主人公として祗園太郎は作り出された。
5分程度の京都の様々な場所を舞台にしたドラマとしてオンエアされた後、
なんと全国区NHKで映像化。
その際にペープサート(紙人形)を使って京都の実写と掛け合わせて作るという形を確立。
今回の長編は祇園祭中である7月15日に祇園で開催される
『祇園天幕映画祭』での企画として映画が製作された。
映画版の舞台は祇園
偶然乗せたお客が祇園を舞台にして撮影される映画の
主演女優・奥多摩子だったことを知った祗園太郎は
多摩子にまた会いたくて
一般公募のオーディションを受けにいく。
映画撮影になんとか参加できることになった太郎だが
突然現れたいわく付きの外国人の逃亡劇に多摩子と一緒に
巻き込まれてしまう。
2つの『ぎおん』
この文章中には『祇園』と『祗園』
2つのぎおんが出てくるが誤字ではなく意図して使用しているので悪しからず。
作中でその意味は祗園太郎氏が説明してくれている。
実際のお店が沢山登場
祇園の皆さんの協力で作られた。
南座、よーじや、いづ重、ギオンコーナーなどなど。
主な舞台は鍵善良房。
伝統ある和菓子のお店で祗園太郎らしい展開が繰り広げられる。
でもこの映画は冒頭に書いたようなご当地の観光地お知らせ映画ではなく
京都の今を切り取っている。
京都での伝統後継者問題や和菓子づくりのこだわり
決して一見さんお断りではない世界が描かれている。
タイトルは和菓子から来ていたんだと納得。
くずじゃないです。葛にしていることに意味がある。
エンドロールでは実在のお店の方の写真も登場するのでお楽しみに。
紙人形の表情は一つ。しかし!
上映は1時間ほど。
ヨーロッパ企画の作品で感じるリズムのよさはこの作品にも。
SFな展開、どたばたな展開も人形劇だから無理なく楽しめる。
紙人形の表情はその場面に対して一つしかない。
しかし私たちは役者が話す台詞や絶妙に操られる紙人形の動作から
その表情を無限に想像できる。
『ひょっこりひょうたん島』、『プリンプリン物語』
永野監督の年代であればかろうじてこの辺りの人形劇作品を知っているのではないか。
人形劇の楽しさが話を十二分に面白くする。
実際に使用された紙人形のコピーを持たせて頂いたのだが、
遠近感を出したり、カメラからどう映っているかを
考えながら動かすのは結構難しいと感じた。
(シアターカフェ上映期間中には紙人形も展示されるのでこちらもチェック!)
祗園太郎は京都から出ないが…
祗園太郎は京都を愛している。
京都から祗園太郎は離れないが
彼がタクシーを走らせれば世界に京都を知ってもらうことができる。
祗園太郎の映画は海外の映画祭でも上映された。
そして日本でも。今年は名古屋シアターカフェ、大阪シアターセブンで上映が決定している。
ヨーロッパ企画が大好きな方、短編映画が好きな方、
紙人形劇が気になっている方。
ぜひ見に行ってみてください。
NHK版や続編を見たくなること間違いなし。
『タクシードライバー祗園太郎 THE MOVIE すべての葛野郎に捧ぐ』
http://giontaro-movie.com/
名古屋大須のシアターカフェでは1月21日から23日まで。
1月20日(金)、23日(月)は19:30~
1月21日(土)、22日(日)は15:00~/17:00~/19:00~
料金1500円
(「祗園太郎のほんのきもち茶」&「祗園太郎せんべい」(鍵善良房さん製)付き)

各回定員20名。以下のサイトより予約可。
http://www.theatercafe.jp/mailform.html
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