
EntaMirage! Entertainment Movie
家族を思い、探す奈良 三人旅(映画『再会の奈良』)
なら国際映画祭の“今と未来、奈良と世界を繋ぐ”映画製作プロジェクト「NARAtive2020」。今後の活躍が期待される若手の映画監督を招き、奈良を舞台に映画を制作し、世界に奈良を知ってもらうプロジェクトだ。監督はなら国際映画祭のインターナショナルコンペティション部門において受賞した監督の中から選ばれ、その活動を日本の第一線で活躍する映画スタッフやロケ地の地域の人々が支えて撮影される。このプロジェクトから生まれた日中合作『再会の奈良』が公開される。
あらすじ
2005年、中国から陳おばあちゃんが、孫娘のような存在のシャオザーを頼って一人で奈良にやって来る。中国残留孤児の養女・麗華を1994年に日本に帰したが、数年前から連絡が途絶え、心配して探しに来たというのだ。麗華探しを始めた2人に、ほんの偶然の出会いで知り合ったはずの一雄が、元警察官だったという理由で麗華探しを手伝うと申し出る。麗華探しに手を貸す一雄はシャオザーに自身の娘の面影を重ねていた。麗華を想う老女、その老女を想うシャオザー。3人での探索の旅が始まる。麗華の日本名がわからないこともあり、なかなか麗華の行方はわからなかったが……。
日本・中国、絆が繋ぐ家族の物語
この映画のテーマにあるのは中国残留孤児だ。奈良県からも満州への開拓団として向かった家族がいる。終戦後の日本への引き揚げは大人でも過酷で、我が子を泣く泣く中国の人に預けた親も少なくはなかった。
1972年の日中国交正常化を機に残留孤児の調査が行われ、日本人だと判明した孤児達の中で日本に帰国することを選択した人達はその後、どうなっていったのか。当時、帰国して肉親が判明した人達が大きくクローズアップされて報道されたが、彼らがそれからどう生きていたのか、また肉親がわからないまま帰国を決断し、日本で生活を始めた身元未判明孤児たちがいたということはあまり知られていない。
麗華の手がかりを3人が探している中で日本で生きる残留孤児達がどんな生活をしているのか、麗華がどんな暮らしをしていたかが見えてくる。帰国できたのは40代、50代になってからでなかなか日本語も習得できず、同じ日本人なのにコミュニケーションが取れない。飛び出した中国には戻れず、日本にも馴染めず、生きていくために必死で安い賃金で働くしかない。そんな中でも麗華は陳おばあちゃんには明るい内容の手紙しか書いていない。育ててくれた陳おばあちゃんには心配をかけたくないという思いが溢れている。
残留孤児だけではない。中国からやってきた日本人と中国人のハーフのシャオザーも日本語は話せるが、日本では外国人として扱われていることがシャオザーの暮らしからもわかるだろう。
監督・脚本を手掛けたのは、中国出身の新鋭ポンフェイ監督。戦争を経験した一番最後の世代である八十代の人々が生きている時に、日本と中国2つの国の間に生まれた真の家族愛を描きたいとこのテーマを選んだ。日本での残留孤児の生活をリアルに捉えながら、3人の旅には奈良の本当の美しさと人とのやり取りの面白さがある。
我が子として麗華を育てた陳おばあちゃんは麗華のたどった場所を追いかけていく。養女の麗華探しに奔走する陳おばあちゃんを演じるのは中国を代表する女優、ウー・イエンシュー。言葉がわからないなりに日本での生活に順応し、麗華を探す。あまり感情を表に出すタイプではないが、活きている蟹を料理するのはかわいそうと話したり、酔っ払ったふりをしたり、麗華を思って涙したりととても魅力的だ。陳おばあちゃんを思うシャオザーには中国で注目の若手女優イン・ズー。見返りは全くないのに二人と旅する一雄を演じるのは『哭声/コクソン』、『MINAMATA-ミナマタ-』で近年益々世界的に認知度を高めている國村隼。血の繋がった娘と離れ、娘から手紙が来ることを心待ちにし、シャオザーに娘の姿を重ねて一緒に麗華を探す彼もまた、家族の大切さを老後にひしひしと感じている。だが一雄はそれを出さない。出さないが、観ているこちらがそれを感じるのは國村隼という役者の力だろう。エグゼクティブプロデューサーは『あん』、『朝が来る』を手掛け、なら国際映画祭のエグゼクティブ・ディレクターでもある奈良出身の河瀨直美と、『長江哀歌』、『罪の手ざわり』など中国映画「第六世代」を代表するジャ・ジャンクー。この2人がポンフェイ監督の新作をフォロー。河瀨直美監督の作品の常連である永瀬正敏が友情出演していることにも注目したい。
奈良・御所を舞台に、言葉の壁を越えて不思議な縁で結ばれた3人のおかしくも心温まる旅。異国の地での新たな出会いを通して、果たして陳おばあちゃんは愛する娘との再会を果たせるのだろうか。
映画『再会の奈良』 https://saikainonara.com/ は2月4日(金)よりシネスイッチ銀座他で全国順次公開。東海3県では伏見ミリオン座で2月4日(金)、伊勢進富座で3月12日(土)より公開。
出演:國村隼、ウー・イエンシュー、イン・ズー、秋山真太郎、永瀬正敏
脚本・監督:ポンフェイ
エグゼクティブプロデューサー:河瀨直美、ジャ・ジャンクー
撮影:リャオ・ペンロン 音楽:鈴木慶一 編集:チェン・ボーウェン
照明:斎藤徹 録音:森英司 美術:塩川節子
共同製作:21インコーポレーション
製作:© 2020 “再会の奈良” Beijing Hengye Herdsman Pictures Co., Ltd, Nara International Film Festival, Xstream Pictures (Beijing)
後援:奈良県御所市 配給:ミモザフィルムズ
中国、日本 / 2020 / 99分 / カラー / 日本語・中国語 / DCP / 1:1.85/ Dolby 5.1 英題:Tracing Her Shadow 中題:又見奈良
おすすめの記事はこれ!
-
1
-
映画『親のお金は誰のもの 法定相続人』三重先行上映舞台挨拶レポート
映画『親のお金は誰のもの 法定相続人』の三重先行上映、舞台挨拶が9月22日三重県 ...
-
2
-
映画『私はどこから来たのか、何者なのか、どこへ行くのか、そしてあなたは…』名古屋凱旋上映決定!
映画『私はどこから来たのか、何者なのか、どこへ行くのか、そしてあなたは…』が ...
-
3
-
ロイヤル劇場存続をかけてクラウドファンディング開始! 【ロイヤル劇場】思いやるプロジェクト~ロイヤル、オモイヤル~
岐阜市・柳ケ瀬商店街にあるロイヤル劇場は35ミリフィルム専門映画館として常設上映 ...
-
4
-
第76回 CINEX映画塾 映画『波紋』 筒井真理子さんトークレポート
第76回CINEX映画塾『波紋』が7月22日に岐阜CINEXで開催された。上映後 ...
-
5
-
岐阜CINEX 第17回アートサロン『わたしたちの国立西洋美術館 奇跡のコレクションの舞台裏』トークレポート
岐阜CINEX 第17回アートサロン『わたしたちの国立西洋美術館 奇跡のコレクシ ...
-
6
-
女性監督4人が撮る女性をとりまく今『人形たち~Dear Dolls』×短編『Bird Woman』シアターカフェで上映
名古屋清水口のシアターカフェで9月23日(土)~29日(金)に長編オムニバス映画 ...
-
7
-
映画『私の大嫌いな弟へ ブラザー&シスター』公開記念 アルノー・デプレシャン監督舞台挨拶付き上映 伏見ミリオン座で開催決定!
世界の映画ファンを熱狂させる名匠アルノー・デプレシャンが新作『私の大嫌いな弟へ ...
-
8
-
自分の生きる道を探して(映画『バカ塗りの娘』)
「バカ塗りの娘」というタイトルはインパクトがある。気になってバカ塗りの意味を調べ ...
-
9
-
「シントウカイシネマ聖地化計画」始動!第一弾「BISHU〜世界でいちばん優しい服〜」(仮)愛知県⼀宮市にて撮影決定‼
株式会社フォワードがプロデュースし、東海地方を舞台にした全国公開映画を毎年1本ず ...
-
10
-
エリザベート40歳。これからどう生きる?(映画『エリザベート1878』)
クレオパトラ、楊貴妃と並んで世界の三大美女として名高いエリザベート皇妃。 彼女の ...
-
11
-
ポップな映像と音楽の中に見る現代の人の心の闇(映画『#ミトヤマネ』)
ネット社会ならではの職業「インフルエンサー」を生業にする女性を主人公に、ネット社 ...
-
12
-
豆腐店を営む父娘にやってきた新たな出会い(映画『高野豆腐店の春』)
尾道で小さな豆腐店を営む父と娘を描いた映画『高野(たかの)豆腐店の春』が8月18 ...
-
13
-
映画『フィリピンパブ嬢の社会学』11/10(金)より名古屋先行公開が決定!海外展開に向けたクラウドファンディングもスタート!
映画『フィリピンパブ嬢の社会学』が 11月10日(金)より、ミッドランドスクエア ...
-
14
-
『Yokosuka1953』名演小劇場上映会イベントレポート
ドキュメンタリー映画『Yokosuka1953』の上映会が7月29日(土)、30 ...
-
15
-
海外から届いたメッセージ。66年前の日本をたどる『Yokosuka1953』名古屋上映会開催!
同じ苗字だからといって親戚だとは限らないのは世界中どこでも一緒だ。 「木川洋子を ...
-
16
-
彼女を外に連れ出したい。そう思いました(映画『658km、陽子の旅』 熊切和嘉監督インタビュー)
42才、東京で一人暮らし。青森県出身の陽子はいとこから24年も関係を断絶していた ...
-
17
-
第75回CINEX映画塾 『エゴイスト』松永大司監督が登場。7月29日からリバイバル上映決定!
第75回CINEX映画塾 映画『エゴイスト』が開催された。ゲストには松永大司監督 ...
-
18
-
映画を撮りたい。夢を追う二人を通して伝えたいのは(映画『愛のこむらがえり』髙橋正弥監督、吉橋航也さんインタビュー)
7月15日ミッドランドスクエアシネマにて映画『愛のこむらがえり』の公開記念舞台挨 ...
-
19
-
あいち国際女性映画祭2023 開催決定!今年は37作品上映
あいち国際女性映画祭2023の記者発表が7月12日ウィルあいちで行われ、映画祭の ...
-
20
-
映画『愛のこむらがえり』名古屋舞台挨拶レポート 磯山さやかさん、吉橋航也さん、髙橋正弥監督登壇!
7月15日ミッドランドスクエアシネマにて映画『愛のこむらがえり』の公開記念舞台挨 ...
-
21
-
彼女たちを知ってほしい。その思いを脚本に込めて(映画『遠いところ』名古屋舞台挨拶レポート)
映画『遠いところ』の公開記念舞台挨拶が7月8日伏見ミリオン座で開催された。 あら ...
-
22
-
観てくれたっていいじゃない! 第10回MKE映画祭レポート
第10回MKE映画祭が7月8日岐阜県図書館多目的ホールで開催された。 今回は13 ...
-
23
-
京都はファンタジーが受け入れられる場所(映画『1秒先の彼』山下敦弘監督インタビュー)
台湾発の大ヒット映画『1秒先の彼女』が日本の京都でリメイク。しかも男女の設定が反 ...
-
24
-
映画『老ナルキソス』シネマテーク舞台挨拶レポート
映画『老ナルキソス』の公開記念舞台挨拶が名古屋今池のシネマテークで行われた。 あ ...
-
25
-
「ジキル&ハイド」。観た後しばらく世界から抜けられない虜になるミュージカル
ミュージカルソングという世界を知り、大好きになった「ジキル&ハイド」とい ...
-
26
-
『オールド・ボーイ』のチェ・ミンシク久しぶりの映画はワケあり数学者役(映画『不思議の国の数学者』)
映画館でポスターを観て気になった2本の韓国映画。『不思議の国の数学者』と『高速道 ...
-
27
-
全編IMAX®️認証デジタルカメラで撮影。再現率98% あの火災の裏側(映画『ノートルダム 炎の大聖堂』)
2019年4月15日、ノートルダム大聖堂で、大規模火災が発生した。世界を駆け巡っ ...
-
28
-
松岡ひとみのシネマコレクション 映画『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』 阪元裕吾監督トークレポート
松岡ひとみのシネマコレクション 映画『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』が4月1 ...
-
29
-
映画『サイド バイ サイド』坂口健太郎さん、伊藤ちひろ監督登壇 舞台挨拶付先行上映レポート
映画『サイド バイ サイド』舞台挨拶付先行上映が4月1日名古屋ミッドランドスクエ ...
-
30
-
第72回CINEX映画塾 映画『雑魚どもよ、大志を抱け!』足立紳監督トークレポート
第72回CINEX映画塾が3月25日岐阜CINEXで開催された。上映作品は岐阜県 ...
-
31
-
片桐はいりさん来場。センチュリーシネマでもぎり(映画『「もぎりさん」「もぎりさんsession2」上映+もぎり&アフタートークイベント』)
センチュリーシネマ22周年記念企画 『「もぎりさん」「もぎりさんsession2 ...
-
32
-
カンヌ国際映画祭75周年記念大賞を受賞したダルデンヌ兄弟 新作インタビュー(映画(『トリとロキタ』)
パルムドール大賞と主演女優賞をW受賞した『ロゼッタ』以降、全作品がカンヌのコンペ ...
-
33
-
アカデミー賞、オスカーは誰に?(松岡ひとみのシネマコレクション『フェイブルマンズ』 ゲストトーク 伊藤さとりさん))
松岡ひとみのシネマコレクション vol.35 『フェイブルマンズ』が3月12日ミ ...
-
34
-
親子とは。近いからこそ難しい(映画『The Son/息子)』
ヒュー・ジャックマンの新作は3月17日から日本公開される『The Son/息子』 ...
-
35
-
先の見えない日々を生きる中で寂しさ、孤独を感じる人々。やすらぎはどこにあるのか(映画『茶飲友達』外山文治監督インタビュー)
東京で公開された途端、3週間の間に上映館が42館にまで広がっている映画『茶飲友達 ...
-
36
-
映画『茶飲友達』名古屋 名演小劇場 公開記念舞台挨拶レポート
映画『茶飲友達』公開記念舞台挨拶が2月25日、名演小劇場で開催された。 外山文治 ...
-
37
-
第71回 CINEX映画塾 映画『銀平町シネマブルース』小出恵介さん、宇野祥平さんトークレポート
第71回CINEX映画塾『銀平町シネマブルース』が2月17日、岐阜CINEXで開 ...
-
38
-
名古屋シアターカフェ 映画『極道系Vチューバー達磨』舞台挨拶レポート
映画『極道系Vチューバー達磨』が名古屋清水口のシアターカフェで公開中だ。 映画『 ...
-
39
-
パク・チャヌク監督の新作は今までとは一味も二味も違う大人の恋慕を描く(映画『別れる決心』)
2月17日から公開の映画『別れる決心』はパク・チャヌク監督の新作だ。今までのイメ ...