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映画『掘る女  縄文人の落とし物』名演小劇場トークイベントレポート

映画『掘る女 縄文人の落とし物』公開記念トークイベントが8月21日名古屋 名演小劇場で行われた。松本貴子監督、折井克比古さん(樹林舎編集長/スワニミズム会員)が登壇。その様子をお届けする。(司会:神取恭子さん)

映画『掘る女 縄文人の落とし物』映画紹介はこちらから

神取恭子さん (以下 神取さん)
「折井さん。今私は折井さんのことをスワニミズム会員とご紹介したのですが、スワニミズムとは何でしょうか」

折井克比古さん(以下 折井さん)
「長野県に諏訪市というところがあります。そこは結構縄文の渡刈石ですとか、遺跡があったり、諏訪大社に代表されるように昔からの信仰があったりするんですが、その諏訪の研究をする、コアな研究をする人達の集まりで、諏訪湖とアニミズムをくっつけた造語で、スワニミズムといいます。僕はそこの末席に加えていただいています」

神取さん
「松本監督は今、映画が公開されて絶賛キャンペーン中なんですよね。イベントの動画もご自身で撮影して、YOUTUBEにあげられたりするわけですね」

松本貴子監督(以下 松本監督)
「東京のイベントには春風亭昇太さんにお越しいただいて、色々盛り上がりましたが、そういうダイジェストみたいなものを作ってYOUTUBEにアップしていますので、よかったらご覧ください」

神取さん
「8月19日の金曜日公開だったんですが、公開から3日目ということで、反響などはいかがですか」

松本監督
「名古屋についてはTwitterで反響を読ませていただいていました。「暑くてコメダで、コーヒーを飲んでから名演小劇場に来て映画を観ました」というツイートを観たので、今日は私もコメダに寄ってコーヒーを飲んでここにやってきました。皆さんの口コミだけが頼りです。ぜひTwitterなどで感想をつぶやいていただきたいです」

松本貴子監督

松本貴子監督

神取さん
「折井さんはこの作品をご覧になってがいかがでしたか?」

折井さん
「あんなに楽しそうに土を掘っている女子たちというのがとても印象に残っているのと、僕は松本市出身なんですが、ちょっと山の方に行くと黒曜石が採れる畑があると聞いて、そこに行っては黒い石を拾ったのが子どもの頃ものすごく嬉しかったんですね。土器とか石器とか、子どもの頃に興味を持った一番初めの嬉しさを、そのまま今まで持って生きている方たちが出てきたのが印象的でした」

神取さん
「そういうきっかけが映画に出てこられた大竹さん、八木さんの様な方を生むんですね」

松本監督
「土器や石を拾ったことがきっかけで、この世界に入るというのはなかなかすごいですよね。未だにその時のことを忘れずに、大竹さんもキラキラと目を輝かせて話をしてくださったり、八木さんにいたっては、アメリカで石器を拾って、それがきっかけで考古の世界に入って。八木さんの場合は初めての発掘現場で土偶を掘り当てて。それを洗う時に感動して、泣いたらしいんですよ。その時に大学の先生に写真に撮られていたそうで、その写真を探したんですけど、先生が最近処分してしまったそうで。多分断捨離ですね(笑)。その時の感動を20何年たった今も土偶女子として持っていらして、専門家なのに土偶のことをかわいいと言っているんですよね」

神取さん
「監督自身も土偶とかに元々興味はあったんですか」

松本監督
「私は縄文というよりもうずまきです。20代で、テレビ業界に入ってしばらくした頃に突然うずまきが気になり始めて。うずまきのアクセサリーとかポストカードとかうずまきを見ると買ってしまって。今日もスペインで買ったうずまきの指輪をつけているんですけど、いろんなうずまきを見ていたら、縄文土器とか土偶にうずまきが付いているのを発見して。これは極上だと。極上のうずまきって縄文なんですよ、私にとって。そこからいろんなものを見始めて。すごくいっぱいうずまきついていますよね?」

折井さん
「ついてますね。土偶のおへそのところとか」

松本監督
「ハート形土偶をご存知でしょうか。顔がハート形の土偶です。それにもうずまきがありますし、国宝の縄文のビーナスは上から見るとうずまきが見えるんです。土器とかに至ってはうずまきだらけでしょ」

神取さん
「うずまきには何か意味があるんでしょうか」

折井さん
「場所によって違うと思うんですけれども、わかりやすいのは、蛇の形をしたものとか、渦巻きの周りに三角形がついているものとか。いくつかパターンがあるんですよ」

折井克比古さん

折井克比古さん

神取さん
「そういうことを聞くとなんだか調べたくなりますよね」

松本監督
「私は調べない人で、見るだけなんですけど、折井さんは調べる人です(笑)」

神取さん
「この作品を作るきっかけを教えてください。監督はこれまで草間彌生さんとか山口小夜子さんとかキラキラしたファッションとかそういった世界の方を撮っておられましたが、急に土に来たのはなぜでしょう」

松本監督
「出会った人で、これはきちんと残したいと思った人とかものを撮りたいと思うんです。そういったパッションがないとつくれないので。草間さんとの出会いがあって映画にして、小夜子さんとは生前、「ファッション通信」(テレビ東京系)という番組を作っていた頃からかわいがっていただいて。亡くなった後に小夜子さんの足跡を残したいという思いで映画にしたんですけど、縄文はいつか何かを残したいなと思ってはいたんですが、たまたまNHKで「土偶ミステリー」という番組を作ったんですよ。ちょっとバラエティっぽい番組だったんですけど。それをやってみたら、縄文熱があがってきて。「英雄たちの選択」という歴史番組があるんですが、そこで縄文時代から弥生時代への過渡期の番組を作ったんです。私はものを調べるのは得意ではないんですけど、いっぱい本を読んだら、縄文人が立ち上がってきて。当たり前ですけど、縄文人は私たちと同じ生活をしていた人なんだということがリアルになってきて、それと同時に一番不思議だったのは博物館のガラスケースの中にいる土偶や土器たちっていったいどこから来たのだろうと。どういう経緯でここに来たのだろうと。もし縄文を映画にするんだったら、発掘という切り口がいいんじゃないかとぼんやり思い始めたところからここに至っています」

神取さん
「今回この作品に出てこられる大竹さん。30年掘っていらっしゃる方も、初めはお知り合いじゃないわけですよね」

松本監督
「発掘でやろうと思った時に、業界的に作業員さんは女性が多いらしいというのはぼんやり聞いていて。調査員いわゆる専門職は結構女性が少ないと聞いたので、女性たちの取り組みを見たら面白いんじゃないかと思い、知り合いに女性で発掘をやっている方を教えてくださいと。まず大竹さんと出会って。あとは現場で出会って。出たとこ勝負ですね」

神取さん
「大学院生だった伊沢さんも偶然?」

松本監督
「偶然です。彼女に会った時は「この人だ!」と思ったんです」

折井さん
「伊沢さんは狙ったんじゃないかというキャラだったですよね」

松本監督
「何も考えていないように見えるかもしれませんが一応考えていて(笑)。八木さんと出会って、大竹さんを紹介してもらった時、年齢的に八木さんが中堅どころで、大竹さんがレジェンド的な人だったので、若い人が来たら面白いんじゃないかと思って探していたんです。伊沢さんに会って、その会った日に色々話していたら、「就職試験の結果が今日、一つ来るんですよね」と言われて。私が探していた人はこういう人だ!と思ってそこから密着していきました」

神取さん
「折井さんがこの作品を観て、元々お知り合いだとは思いますが、せっかくだから松本監督に聞いておきたいなと思うことはありますか」

折井さん
「個人的に印象に残っていた場面が、大竹さんが「私、これで考古学を始めたんです」と言って藤森栄一さんという諏訪の考古学者の本を持って語った後に、場面が変わって、星糞遺跡がもう閉じられるというところに北相木村の学芸員の方が来ていたんですね。もうその瞬間に何かストーリーがすうっと通ったんですよ。北相木村の学芸員の方のお名前は藤森英二さんです。あれは編集上は意図したと思うんですけど、その辺りを聞きたいなと」

松本監督
「もうマニアックすぎて皆さん何の話と思われているかもですが(笑)。大竹さんが心の支えにしている本が藤森栄一さんという在野の研究者の本で。その後最後の発掘の日に赤いジャケットの人がいたんですが、それが藤森英二さんというんです。私は恥ずかしながら藤森栄一さんも知らなければ藤森英二さんという存在も知らなかったんです。何のてらいもないんです。藤森英一さんの本を出されて大竹さんが喋った後に慌ててAmazonで取り寄せて読んで調べました。こういう人が今まで考古学を支えてきたんだと知って。そして藤森英二さんが来た時もその人が誰なのかも全く知らなかったんです」

折井さん
「藤森という名字はあの辺りは多いんです。諏訪は藤森だらけ」

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松本監督
「門脇さんという女性のカメラマンと一緒に撮っていたんですが、彼女がカメラマイクと繋がっているイヤホンを耳に入れていて色々聞いているので、拾った音から私に囁いてくれるんですけど、「なんか見に来ている人が結構色々話してますよ」と。え?誰々となって。じゃあ、撮っておこうかと。ずっとついて行って。何しに来たんですか?と聞いたら、大学時代のことを話してくださって。しかも藤森栄一さんのお孫さんだって知って。だから何の意図もしていなくて、後で「あ、そうだったんだ」と。大竹さんからも「あの人がお孫さんなんです」と興奮気味に言われたんですけど、私には点と点がつながらなくて。後で、「この人が!へ~」と。縄文時代に神様という観念はないと思うんですけど、もし縄文的なアニミズム的は精霊がいたとしたら、私への采配ですね」

折井さん
「これ絶対編集でつながるようにしたんだと思っていたんですけど、衝撃ですね(笑)」

神取さん
「本当に精霊様が導いてくださったんですね。作業員の方たちもとても魅力的ですが、監督が現場で探されたんですか」

松本監督
「それも偶然というと、段々恥ずかしくなってきてしまうんですが。作業員のおばちゃんたちは本当に楽しくて。モグモグタイムにはお菓子をくれるんです。何かあると産直市場で買ってきてくれたり。立ち話をするのも楽しくて。池田さんという吊り手土器を発掘された方とは、あそこはものすごく大きな遺跡で、作業員さんがいっぱいいらっしゃる。どこで何をしてるかなかなかわからない中で、コロナ禍前にあの遺跡の撮影許可が下りて、ちょっと撮影に行った時にちょっと会話を交わした程度だったんです。その後、コロナの感染者数が増えて、現場に入れない時期が1カ月ぐらいあって。久しぶりに撮影許可が下りて、池田さんとお久しぶりにお会いしたとき、いかにコロナ禍の間、お互い主婦なので主婦は家族の分のご飯を作らなければいけなかったかということでものすごい盛り上がって。「毎日毎日大変だったですよね」という会話をしてから、この遺跡の現場に行くと池田さんの所には顔を出すようになって。そうしたら、「ここは結構すごいかも」と言われたのでそこからずっと池田さんがいる場所にずっとついていたら、あの吊り手土器が出てきたんです(笑)」

神取さん
「先程話に出ていた、大竹さんが発掘していた星糞峠の場所に行ってみたいんですけど、簡単に行けるのでしょうか」

折井さん
「諏訪から峠を越えた小諸側なんです。名古屋からだと車で行くなら中央道で岡谷ICまでいって、和田峠に向かって走って、それを上田の方に抜ける途中にあると思います」

松本監督
「タモリさんの「ブラタモリ」で諏訪の黒曜石が取り上げられたんですが、それが和田峠のあたりの遺跡で、そこからもう一山越えたところに星糞峠はあります」

神取さん
「大竹さんが作った施設を見たいと思うんですが、あそこまで車でいけるんでしょうか」

松本監督
「あそこの下まで行って、ピストン輸送されるか、徒歩で行くかになります。徒歩だと縄文人が黒曜石を求めて歩いたので同じ経験が出来ます」

折井さん
「歩いてあそこまで行って掘って。掘った土が積み重なって地層が逆になっている。そこまでして黒い石を採ろうとしたわけですから、すごいですね」

神取さん
「2、3年の話ではないですよね。何千年という歴史ですか?」

松本監督
「あそこは2回に分かれて掘られているようなんですが、その2回の間が3500年ぐらい離れているんですよ。縄文時代って1万6000年ぐらいありますからね。でもそんな時代なかなかないですよね」

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神取さん
「最後にひと言お願いいたします」

折井さん
「本当にドキュメンタリーとしても映画としてもとっても音楽も素晴らしかったし、いい作品だと思いますので、ぜひお友達に宣伝していただいて、皆さんでまた観に来てください。それから、藤森英二って誰だっけ?と思った方はもう一回観てみてください」

松本監督
「ちょっと暗めな世の中ですが、映画は明るく楽しく元気にというものを作っていいんじゃないかと思って、作りました。もし、ちょっと元気のない人がいたら見せてあげてください。今日はありがとうございました」

映画オリジナルのTシャツで左:神取恭子さん 中央:松本貴子監督 右:折井克比古さん

映画オリジナルのTシャツで左:神取恭子さん 中央:松本貴子監督 右:折井克比古さん

映画『掘る女 縄文人の落とし物』https://horuonna.com/ は現在愛知 名演小劇場では公開中。

また映画『掘る女 縄文人の落とし物』公開記念として松本監督の『氷の花火 山口小夜子』http://yamaguchisayoko.com/ も名演小劇場で公開中。

ライター:涼夏(Twitter:@ryounatu)

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