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Mirageなお客様④ 『映画監督外山文治短編作品集』外山文治監督インタビュー
2017/11/11
12月2日からシネマスコーレで1週間上映される
『映画監督外山文治短編作品集』
(上映作品『わさび』『春なれや』『此の岸のこと』)。
上映を前に外山文治監督が名古屋にやってきた。
『わさび』が岐阜の飛騨高山付近で撮影されたことを知っていた私は
かなり前から岐阜か名古屋で上映してくれたらいいのに…と思っていたのだが
この作品、外山監督が自主的に撮影した映画だった。
配給会社がついていない映画は地道に自分で宣伝して上映館を
広げるしかないわけで地方に来るのはなかなか難しいかもとも考えていたが
東京ユーロスペースでの2週間レイトショーでは大好評を記録し、
万を持して名古屋のシネマスコーレでの上映が決まったそうだ。
ぜひ取材してほしいというお誘いをいただき、
初対面ながら色々不思議な質問もしながらの取材を受けていただいた。
話している相手の目を見てしっかり話す外山監督の話は
面白く、あっという間に夜も更けていった。
Q.パンフレットの『映画監督外山文治短編作品集』の文字フォントがいいですね。
外山監督
「これいいでしょう?雑誌『暮しの手帖』でもお馴染みの二井康雄さんの
文字なんですよ。お願いして作っていただいたんです。」
自主映画とは絶対に思えない素敵な映画パンフレット。
外山監督のこだわりは細部にまでわたっている。
Q.今まで外山監督の作品は高齢層を主人公にしていましたが
『わさび』は高校生が主人公ですね。
外山監督
「『燦燦-さんさん-』のような高齢者の世代の映画だけではなく
僕は広い世代の作品を書いていると知ってほしかったのがまず一つの理由です。
高校生が主人公だと「夢を叶えるために頑張る!」とか
キラキラした恋愛模様とかが映画の世界にはたくさんありますよね。
もちろんそういうキラキラしたお話も僕はミーハーなので実は大好きなんですが、
今の映画の世界にないものを書きたいなあと思ったんです。」

『此の岸のこと』より
夢を叶える人の方が実際は少ない
外山監督
「夢が叶わなくたっていい。夢を叶えなくても幸せな人生があると思っていて。
実際はそういう人の方が多いんです。なのでそういう人物を描きたかった。
主人公の葵は突然の家庭事情で「寿司職人になる。」と言って進学をあきらめて
父の跡を継ごうと決意します。
そこで自分が抱いていた夢は叶わなくなってしまったかもしれません。
それでもきっと生きていくための何かがある。
希望…というか。一筋の光みたいなものかもしれません。
普段は神様なんていないと思っていても
困った時は神社にお参りして神頼みしたりしますよね。
自分がやるしかない。そう思った時の葵の生きる覚悟の美しさを描いています。」
Q.どうして自主映画で撮ろうとしたんですか?
外山監督
「撮りたいものを撮りたくて。自分が書いたものを形にしたくて。
自分が撮りたい人に企画書を出してお願いして参加してもらったので
初めは実は公開する予定がなかったんです。
でも周りから見たいという声をいただいて上映することにしました。
東京のユーロスペースでレイトショーで2週間公開しまして。
連日トークショーでいろいろな監督と上映後に話した貴重な時間でした。」

『わさび』より
小説家にもなりたい夢はあるけど物語を形にできる監督でいたい
外山監督の今までの経験を聞いてみたくなり、
作品のことではなく外山監督自身のことを聞いてみた。
Q.いつごろから映画の世界に進もうと思っていたんでしょうか。
外山監督
「僕は福岡出身です。学生時代に宮崎でも暮らしました。
祖父が小説家志望だった影響なのか小さい頃から
小説家になりたくて話を書いていました。今もなりたいんですけど。
高校の時、その話を映画にしたらいいんじゃないかと
言ってくれる映画好きが周りにたくさんいたこともあって
父親が持っているビデオカメラで撮影しはじめました。」
映画好きな叔母がいるという話もしてくれた。
好きな撮影監督に会いに行ってしまう叔母だったとか。
ウディ・アレン監督に会いに行った外山監督にも
その血は流れているように思う。
外山監督
「その頃から東京にものすごく憧れがあって。
大学に進学するという時に上京を決めて。
大学か映画学校か迷って、日本映画学校に進みました。
19歳から助監督として映像の世界にも入りました。
ドラマも映画の現場も経験してきたんですが、23歳の時に挫折しまして。
助監督の仕事が性に合わなかったんです。
もう自分で監督になってしまおうと思ったんです。
でも突然思ったからできるっていうわけでもないですよね。
そんな時に舞台の稽古場を見させて頂く機会をたくさん得ました。
蜷川幸雄さんの稽古場にも通いましたし、宮本亜門さんのワークショップの
聴講生をしていたこともあります。
映画よりも演劇は脚本と演出家と役者が密になっている気がします」。
Q.外山監督は編集はやらないんですか。
外山監督
「今は色々なことができる監督がたくさんいます。
脚本も書いて、現場で撮影もして、編集も自分でできる。
僕は脚本は書けますけど現場では監督しかできない。助監督も挫折したし。
編集も自分ではできないので編集の方に入ってやってもらっています。
もちろん、ここはこうしてほしいとは言うんですけど
この『わさび』でも編集で自分が残したいと思っていたところをバッサリと
カットされました。下條アトムさんはこのセリフを言うために出てくれたんじゃないかと
思うシーンなんですけど、確かに全部繋げて見てみたらない方が物語性が高まった。
自分あの目ではない違う人の俯瞰というのは映画にはすごく重要なんです。」
飛騨で作品された『わさび』
Q.『わさび』を岐阜の飛騨で撮影しようと思ったきっかけは?
外山監督
「実は別の作品の企画のロケハンで高山に行ったんです。
高山在住の俳優の中田裕一さんのお家に泊まりながらロケハンしたんですが
本当に素敵な場所で。ぜひここで撮影したいと思いました。
撮影は寒い冬のわずか三日間。地元のボランティアスタッフの方の参加もありました。
いつもは雪が降る飛騨で雪が降らなかったので寒さが吸収されずとにかく寒かったです。
高山と飛騨古川で撮影しています。『君の名は。』で飛騨古川はとても有名になっていますが
実は今、古川では観光ポスターに『わさび』の写真を採用してくださったりしてるんです。
Q.キャスティングが絶妙だと思うんですがどのように決まったんでしょうか。
外山監督
「基本今回は紹介やこちらからのオファーでキャスティングしています。
芳根さんは脚本を読んだ方から「ぴったりな女優さんがいる。」
と紹介していただいたんです。
時期としてはドラマ『表参道高校合唱部』(TBS)の後ぐらいの頃で
朝ドラ『べっぴんさん』(NHK)が決まる前の撮影でした。
芳根さんにしかできない芝居をしてくれて本当に紹介していただけてよかったです。」

『わさび』より
Q.『春なれや』もオファーだったんですか?
外山監督
「『春なれや』もこちらからお願いしています。
吉行さんは私のデビュー映画『燦燦-さんさん-』に出ていただいて
もう一度出ていただきたいと考えていました。
というのも『燦燦-さんさん-』以降吉行さんとは親しくさせていただいていて。
短編映画にはご出演の経験がなかったそうですが、快諾してくださいました。
『春なれや』は震災前の桜咲く熊本で撮影しました。
ソメイヨシノは60年以上咲かないと言われています。
限りある時間の中で永遠とは何か考えてもらうような、叙情的な物語になりました。」

『春なれや』より
外山監督と話をしていると脚本を重視しているのが本当にわかる。
自分が作り上げた世界観を表現することの出来る場所、役者。
『わさび』『春なれや』この2作品は脚本家外山文治が描きたかったものを
誰に遠慮することもなく外山文治監督が作り上げたものなのだ。
そこで少し意地悪な質問をしてみた。
Q.もし脚本か監督かどちらかしかできないとしたら?
外山監督
「脚本が書きたいかなあ…でも出来た時点で撮影出来なければ
そこで自分の手を離れてしまうので出来れば監督もやりたいです。」

『春なれや』より
Q.もし監督は別の人でと言われたらどなたに撮ってほしいですか?
外山監督
「一番は自分で撮るのがいいので…うーん…。今度までの宿題でいいですか?」
そう答えた後も外山監督は長い時間考えていた。
悩みに悩んで出た答えは
「橋口亮輔監督がいいですね。」
周防正行監督や橋口亮輔監督の作品が好きなのだそう。
外山監督は名古屋で色んな取材陣と会って映画を広めたいと話していた。
配給会社が付いていない状態で、ほとんど来たことがない名古屋で
たくさんの人に自分の作品を見てもらいたいと一つ一つ丁寧に取材を受ける。
Q.名古屋での上映スケジュールを教えてください。
外山監督
「シネマスコーレでの上映時間は18時半台にしてあります。
学生や会社帰りの皆さんに見ていただきたいからです。
岐阜の方にも見てもらえると嬉しいなと思います。」
『映画監督外山文治短編作品集』(http://haru-wasabi.com)は
12月2日より名古屋シネマスコーレにて上映。
初日は外山監督来場予定。

シネマスコーレ前にて外山文治監督
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