
中川運河の魅力を伝える短編集(『Filmusic in 中川運河・秋』)
2018/04/07
名古屋都市センター【中川運河助成ARToC10】の助成事業として製作されている短編映画集『Filmusic in 中川運河』
今年は秋と音楽をテーマに製作された
FilmusicとはFILM(映画)とMUSIC(音楽)をかけあわせた造語だ
今回の作品は
『ダイナマイト・ソウル・バンビ』(監督・脚本 松本卓也)
『中川運河サンダーボルト』(監督・脚本 北岡真紀子)
『マンドリンの女』(監督・脚本 白石和彌)
の三本。去年の夏に名古屋でオーディションが行われそのオーディション通過者が映画に参加している
完成披露上映会が中川区のリンナイ旧研修センターで行われたので一足早く鑑賞した
『ダイナマイト・ソウル・バンビ』(40分)
決まった条件の中で作品を撮るということに関して名人級だと思っている松本卓也監督の新作は中川にあるリンナイをメイン撮影場所にした作品
今回はインディペンデント映画出身の監督が商業映画デビューする作品をメイキング監督の視点から描いていく
インディペンデント映画と商業映画の間での様々な違いが浮き彫りになる。
個人的にはどちらも区別をつけたくないのだが、よくその違いが捉えられていて、「ああ、そうなんだよねえ…」とどっちの現場も見ている自分には納得
上映場所のリンナイ旧研修センターやその回りの敷地も使って撮影されたため、帰りには「あ、ここあのシーンで使われた場所だ」と思いながら歩いて帰ってきた
撮影スタイルは合宿撮影。延べ17日間の撮影でリンナイ旧研修センターにスタッフキャスト総勢25名が泊まり込んで撮影を行った
結構人間関係的にもエグい所はあるが結局最後は泣けるエンディングを持ってくるのはさすがだなと思う
ぐるぐる巻きの包帯の男が出てきてシネマ健康会のロゴを思い出したのは私だけだろうか
今回は中川バージョンとして約40分の短編だが長い撮影期間で撮られた作品を繋いだディレクターズカットバージョンとして120分越えの長編も計画しているそうだ。
詳しくはシネマ健康会のサイトへ http://www.cineken.com

上映には沢山の関係者が集まった
『マンドリンの女』
ブルーリボン賞監督賞に輝いた白石監督が作った作品
オーディションの際にどこがロケ場所にいいと思うかと尋ねられたが名古屋在住でない私は答えられなかった。あの時、もう監督の中に話があったのか、それともロケハンして出来上がったのかそれはまた聞いてみたいところ
主人公は小学生の少年だ。少年の目から見た大人が描かれるがこれは舞台挨拶で子役の子が言った通り『子供が見る映画』ではない。子供の目を通した大人が見る映画
全編モノクロ。そこに現れるマンドリンを持った女
白石監督の『牝猫たち』で好演した井端珠里が独特な存在感を残す
そして映画だからできることを監督は色々やってくれている。(見てのお楽しみ。)
しかも、遊び心も忘れない
若松組出身の監督の若松愛が溢れている
シネマスコーレの坪井副支配人が出演しているが実は木全支配人も出演しているので支配人を知っている方は探してみてほしい
撮影はわずか2日。あの時は台風が来ていた
「とても寒い中の撮影だった」そうだが、雨がモノクロの味わいを一層感じさせてくれる。中川運河周辺の建物の質感が晴れた日とはまた違う顔になっていた
『中川サンダーボルト』
「他の監督の作品には負けてないと思います」
と北岡真紀子監督が舞台挨拶で話していた
NHK文化センターの映画講座のメンバーで製作されたこの作品、私は好きだ
河童が祀られている中川区の鹽竈神社の境内社である無三殿神社やささしまライブに移転してきたばかりの中京テレビ放送の全面バックアップで撮影された
河童が日本の結界を守っているという設定で河童や天狗、雷神が登場する
精霊が擬人化されて出てくる話が普通に受け入れられるのは日本だからであり、日本だからこそ生まれたストーリーだと思う
ちょっと不思議な世界と仕事でいまいち気が利かないテレビディレクターが出会って繰り広げられる話は分かりやすく純粋に楽しめた
雷神が演奏している場所は今池のTOKUZO。河童の衣装はどうやって作ったのかすごく聞いてみたかった
ショートフィルムは分かりやすさが第一という点では三作品の中で一番分かりやすいと感じた
中川運河をテーマに全く違うカラーの三作が楽しめる
短編作品の面白さを感じてほしい
取材&舞台挨拶レポート(4月7日 シネマスコーレ)
シネマスコーレでの公開初日舞台挨拶が行われた。
挨拶前に『中川サンダーボルト』の北岡監督に話を伺うことができた。
Q.すごく聞きたかったんですがあの河童の造形すごいですよね。
北岡監督
「あれは天狗役で出演しているひと:みちゃんのお知り合いの造形作家の方からお借りしたものなんです。実ははじめは自分達で作ろうとしていたんですがいまいちでひとみちゃんが紹介してくださったんです」
ひと:みさんの天狗役は実はあて書きだったと舞台挨拶で北岡監督は話していた。
Q.脚本はお一人で書かれたんですか?
北岡監督
「エンドロールにはありますが3人で書いています。書いては意見を言い合って、映画講座の先生である木全さんにもアドバイスを受けて作っていきました」
Q.神社がすごく素敵でした。元々あの神社のことは知っていたんですか?
北岡監督
「中川のことを全然知らなくて、シナハンすることで色々知ったんですがその中でもあの神社はディープな場所だと思います。あの神社があって今回の話はできました」
舞台挨拶では出演者のナカムラルビイさんやひと:みちゃんの撮影裏話が披露されていた。

『中川サンダーボルト』北岡監督と出演者の皆さん
『マンドリンの女』の舞台挨拶は子役も登壇した。
白石監督
「僕は実は小学校1、2年の時まで名古屋に住んでいてそこから北海道に行ったんです。この作品では主人公の親が離婚して母親の実家の北海道に行くことになります。これは僕の本当の話で今回は初めて自伝的な話になりました。今日観させていただいた他の作品は1、2週間使って撮影されていますが、僕の都合でこの作品は2日で撮影しました。しかも台風が来ていてとても寒かったんです。」
わずか2日間という中での撮影は役者たちにとっても非常に適応能力の必要な現場になったという。

『マンドリンの女』白石監督と出演者の皆さん
これが白石監督の自伝と考えれば、なぜこの映画にシネマスコーレが出てきたのかが初めて見た時よりも一層意味を持つ。
そんなシネマスコーレから主人公の少年に映画を観ていかないかと声をかけるのはシネマスコーレの副支配人坪井さんだ。
坪井さん
「僕はこの映画の箸休めだと思っていただければいいんです。朝早くからここで撮影したんですけど、芝居している僕を見て、みんながなんか笑うんですよ(笑)僕が親しくさせていただいている白石監督には白石和彌さんともう一人白石晃士監督がいて、セリフにアドリブで最後に『白石晃士監督の作品もあるよ。』って言ってって白石晃士監督から言われて。でもそれはさすがにまずいかなと思って言わなかったんですけど、後から和彌監督に言ったら『言ってもらいたかったですね。』って言われて(笑)」
このシネマスコーレを作った若松孝二監督の下で助監督をしていた白石監督の若松リスペクトがわかる人にはわかる仕組みになっている。
そしてさらに10月には若松孝二監督の若かりし頃を描いた『止められるか、俺たちを』が公開される。若松プロダクション再始動第1弾となる。
白石監督
「10月の公開の頃にキャストと一緒に戻ってきたいと思っていますのでよろしくお願いします」
『Filmusic in 中川運河・秋』は4月7日(土)~27日(金)まで
名古屋・シネマスコーレで上映される
『ダイナマイト・ソウル・バンビ』の松本監督の舞台挨拶は後日を予定している
詳しくはシネマスコーレのブログでの発表をチェックしてほしい
https://ameblo.jp/rengousekigun/entry-12364984701.html
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