痛みと共に生きていく(映画『君がいる、いた、そんな時。』迫田公介監督舞台挨拶レポート)
日本人とフィリピン人のハーフというだけでいじめられる正哉、給食時間の空気が読めない放送を繰り返す放送委員の涼太。自分の居場所を求めて正哉が入り浸る図書館には結婚し、子どもがいるという図書館司書の祥子がいる。
涼太も正哉を追いかけてやってくる。祥子は二人の境遇を知りながら話を聞いている。ある日涼太が特別な放送がやりたいと企画を二人に持ちかけた。
話を聞く祥子自身も二人に話していない秘密を抱えていた。
広島県呉市の円形校舎のある小学校を舞台に不器用に生きる人々を描いた『君がいる、いた、そんな時。』
センチュリーシネマコロナウィルス自粛休業明け初の舞台挨拶は今回の作品が長編映画デビューとなる迫田公介監督。
作品や映画に対する思いを観客に語った。
苦しみや痛みを持って生きていく
迫田監督
「映画の公開が始まって、既に映画は観てくださった方々のもので、監督である僕が言ったことが作品の正解ではないという前提で聞いていただきたいのですが、登場人物3人は実は誰も救われていないと思うんです。それでも彼ら3人が前へ進めるんじゃないかということを描きたかった。苦しみとか辛さとかを持ったまま進んでいく。これは2年前に広島県呉市で撮影したんですが、ちょうどその時は西日本豪雨災害の年でした。それがあったので、撮影期間をずらして撮影しています。そして公開の時期にコロナ禍に見舞われました。 祥子みたいに苦しみを抱えたまま生きていくという話がこの今の時期にちょうど重なった感じになりました。今は東京、名古屋、広島で上映しています」

許せる世の中になって欲しい
迫田監督
「もし誰かがコロナに感染したとしても責めるのは悲しいので。許し合えればいいなと思います。 コロナ禍の中で生きていくのはしんどいじゃないですか、疲れますし。辛いじゃないですか。でも僕はそれでもいいと思っています。「闘う」じゃなくて、「疲れたよ」って。それでも生活や社会はあります。映画の世界だけが大変ではありません。皆さんの職業も大変なんです。それぞれで大変だよねと思い合うのがいいのではないかなと思います」

With コロナの中での公開
迫田監督
「大都市はコロナ禍の影響はどうでしたか? 僕はこの映画を宣伝するために東京で準備していて、広島に戻ってという行き来を繰り返して作ったんですが、2月に広島に戻ったぐらいからコロナの影響が出始めました。その後はずっと東京に行っていなくて、各地の状況を見ながらどんな感じなのかなと考えていました。呉市は広島で三つ目の人口の都市なので大都市に比べるとそこまで影響はなかったはずなんですが、それでも窮屈で、しんどいけど乗り越えようという雰囲気がありました。だから大都市はもっと大変だったろうと」

舞台挨拶終了後、ソーシャルディスタンスを守りつつ、観客との交流も。
迫田監督
「この映画は東京で6月13日公開で緊急事態宣言解除明け新作封切りの一つで宣伝するのも難しかったんですね。出来ることは限られていましたけど、それでも今日これだけ多くのお客様が来てくださって本当にありがたいです。これから他の映画も公開されていくと思いますが、次に上映されていく色々な映画になんとか繋げたいという思いで今日はやってきました」
大切なものに映画を入れていただけたら
迫田監督
「映画だけが大切なものではありません。いろいろ大切なものがある中の一つに映画や映画館を入れていただきたい。社会があるからこそ映画が出来て。映画はそれぞれの生活があったからこそ出来たと思うんです。映画だけが尊いという風には僕は言いたくないんですが、だけど映画も大切なものなので応援して下さればうれしいです。お願いばかりで恐縮なのですがSNSでもどんな感想でもいいので呟いていただけたら幸いです。本当に今日はご来場いただきましてありがとうございました」

センチュリーシネマ入口にて
だれも完ぺきな人間はいない。順風満帆な人生などない。喜んだり、泣いたり、怒ったり、悲しんだり。人生のあの日、あの時。あなたのそばに誰がいただろう。
これは素敵な出会いのお話。
『君がいる、いた、そんな時。』http://kimi-iru.comは現在順次全国公開中。
新宿K’s cinema 6/27(土)3週目〜 ①12:00
センチュリーシネマ(愛知) 6月26日金曜日〜7月2日(木) ①16:15〜
呉ポポロシアター 6/26(金)〜 ①10:20 〜
7月18日(土)から萩ツインシネマ(山口) 、
7月24日(金)からテアトル梅田(大阪) 、
7月25日(土)からシネ・ウインド(新潟)で公開。
京都みなみ会館(京都)、HOTORI×ほとり座(富山)、桜坂劇場(沖縄)でも公開予定。
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