ラーメンマニアの上を行く。その名もラーメンヘッズ(映画『ラーメンヘッズ』)
2018/01/26
日本人は世界中のどこの国よりもラーメン好きだ。
手軽で美味しい。その一杯のために数時間並ぶことを
厭わない人もたくさんいる。
こだわりを持ち提供する店はこの数十年でかなり増えた。
家の近くに大勝軒ののれん分けされた店があるが
いつ見ても開店前から行列ができている。
ラーメンは日本のソウルフードとして完全に定着し、
海外からもラーメンを食べに来る人たちがいるという。
扉を開けるとちょっとした緊張感があり、
今から食べるんだ!と腹を決めてラーメンを食べる。
わずかな時間だがラーメンとしっかりと向き合い
味を感じられる幸せな時間だ。
好きにもレベルがある。
その好きの中でファンやマニアを上回るこだわりを持つ人たちのことを
ヘッズという。
ラーメン界のトップを走り続ける人たちに密着した
ドキュメンタリー映画『ラーメンヘッズ』。
海外の複数の映画祭でも上映され大好評、
日本でついに上映される。
この映画のメインは中華蕎麦とみ田の店主富田治。
中華蕎麦とみ田はたくさんあるラーメン店の中で
四年連続でTRY(東京ラーメン・オブ・ザ・イヤー)大賞に輝いた
走り続ける男に密着している。

隠す必要なんてない
「企業秘密っていうじゃないですか。大したことやってないから
見せられないだけなんですよ。」
そういいながら店主の富田がこだわりのスープの仕込みの材料や作り方を
惜しげもなくこの作品では見せてくれる。
何を使ってどんな仕込みをすればいいのかが
わかってしまうのだが絶対に富田には同じ味を真似されない
職人としての自信と技術がある。
そんなスープがありながらも
スープよりも麺が主役といい
つけ麺の麺の材料にもこだわりを見せる。
毎日同じ麺はつくれない。

とみ田の1日を追うことで見えてくるもの
わずかカウンター10席ほどしかない店内。
無言でスープまで完食する客たちは
その麺の変化さえも美味しさであり、通う理由だと話す。
彼らは朝6時半から行列に並び、食べる権利を得た人たちだ。
食べに来る人たちの表情もしっかりとこのドキュメンタリーは捉えている。
富田の周りの人々を捉えることで彼の思いがどう伝わっているかを
知ることが出来るだろう。
弟子の教育にも隙はない。ラーメンのこと以外の店のことすべてに気を配れる。
集中しているからこそ全てが見える。富田の集中力は半端ない。
ラーメンの作り方は一切教えない。
見て盗む、食べて知る。
こうして富田が育て一人立ちした弟子たちが何人もいる。
休日の富田の過ごし方や
十周年記念で企画されたコラボラーメンの製作の裏側にも
密着しており、富田という一人のラーメンヘッズな男の生き様を
見ることができる。
作品内では富田以外のラーメンヘッズたちと
その店のラーメンも登場する。
多いときは千杯販売する築地の中華そば井上、
ラーメンは芸術だという鯛塩そば灯花。
らぁーめん一福はこだわりの味噌ととんこつ。
中華そば葉山は煮干しラーメンの店。
福寿には文化遺産とも言える道具が揃っている。
どこも並々ならぬこだわりを見せてくれる。
ここまで厨房の奥まで入って撮影されたものは
ないのではないだろうか。
『情熱大陸』、『課外授業 ようこそ先輩』など
様々なドキュメンタリーを演出してきた重乃康紀監督が
根気強く密着し、ラーメンマニアの上をいく
ラーメンヘッズの姿を描く。
重乃監督自身の語りが朴訥としていて作品に味を出す。
この店のラーメンは美味しい。それだけでもいいかもしれない。
しかしぜひあの一杯への店主たちの情熱を知ってほしい。
その思いが詰まったドキュメンタリーだ。
見終わった後、あなたはどこのラーメンを食べに行きたくなるだろうか。
今日もまたラーメンが私たちを呼んでいる。
映画『ラーメンヘッズ』http://www.ramenheads.com/
シネマート新宿、シネ・リーブル池袋、MOVIX亀有、千葉劇場他で全国公開。
東海地区では1月27日より名演小劇場、ユナイテッド・シネマ豊橋18で公開。
おすすめの記事はこれ!
-
1 -
運命さえも覆せ!魂が震える慟哭のヒューマン・ミステリー(映画『盤上の向日葵』)
『孤狼の血』などで知られる人気作家・柚月裕子の小説『盤上の向日葵』が映画化。坂口 ...
-
2 -
本から始まるストーリーは無限大に広がる(映画『本を綴る』篠原哲雄監督×千勝一凜プロデューサー インタビュー&舞台挨拶レポート)
映画『本を綴る』が10月25日から名古屋シネマスコーレで公開されている。 映画『 ...
-
3 -
いつでも直球勝負。『おいしい給食』はエンターテイメント!(映画『おいしい給食 炎の修学旅行』市原隼人さん、綾部真弥監督インタビュー)
ドラマ3シーズン、映画3作品と続く人気シリーズ『おいしい給食』の続編が映画で10 ...
-
4 -
もう一人の天才・葛飾応為が北斎と共に生きた人生(映画『おーい、応為』)
世界的な浮世絵師・葛飾北斎と生涯を共にし、右腕として活躍したもう一人の天才絵師が ...
-
5 -
黄金の輝きは、ここから始まる─冴島大河、若き日の物語(映画 劇場版『牙狼<GARO> TAIGA』)
10月17日(金)より新宿バルト9他で全国公開される劇場版『牙狼<GARO> T ...
-
6 -
「空っぽ」から始まる希望の物語-映画『アフター・ザ・クエイク』井上剛監督インタビュー
村上春樹の傑作短編連作「神の子どもたちはみな踊る」を原作に、新たな解釈とオリジナ ...
-
7 -
名古屋発、世界を侵食する「新世代Jホラー」 いよいよ地元で公開 — 映画『NEW RELIGION』KEISHI KONDO監督、瀬戸かほさんインタビュー
KEISHI KONDO監督の長編デビュー作にして、世界中の映画祭を席巻した話題 ...
-
8 -
明日はもしかしたら自分かも?無実の罪で追われることになったら(映画『俺ではない炎上』)
SNSの匿名性と情報拡散の恐ろしさをテーマにしたノンストップ炎上エンターテイメン ...
-
9 -
映画『風のマジム』名古屋ミッドランドスクエアシネマ舞台挨拶レポート
映画『風のマジム』公開記念舞台挨拶が9月14日(日)名古屋ミッドランドスクエアシ ...
-
10 -
あなたはこの世界観をどう受け止める?新時代のJホラー『NEW RELIGION』ミッドランドスクエアシネマで公開決定!
世界20以上の国際映画祭に招待され、注目されている映画監督Keishi Kond ...
-
11 -
『ぼくが生きてる、ふたつの世界』の呉美保監督が黄金タッグで描く今の子どもたち(映画『ふつうの子ども』)
昨年『ぼくが生きてる、ふたつの世界』が国内外の映画祭で評価された呉美保監督の新作 ...
-
12 -
映画『僕の中に咲く花火』清水友翔監督、安部伊織さん、葵うたのさんインタビュー
Japan Film Festival Los Angeles2022にて20歳 ...
-
13 -
映画『僕の中に咲く花火』岐阜CINEX 舞台挨拶レポート
映画『僕の中に咲く花火』の公開記念舞台挨拶が8月23日岐阜市柳ケ瀬の映画館CIN ...
-
14 -
23歳の清水友翔監督の故郷で撮影したひと夏の静かに激しい青春物語(映画『僕の中に咲く花火』)
20歳で脚本・監督した映画『The Soloist』がロサンゼルスのJapan ...
-
15 -
岐阜出身髙橋監督の作品をシアターカフェで一挙上映!「髙橋栄一ノ世界 in シアターカフェ」開催
長編映画『ホゾを咬む』において自身の独自の視点で「愛すること」を描いた岐阜県出身 ...
-
16 -
観てくれたっていいじゃない! 第12回MKE映画祭レポート
第12回MKE映画祭が6月28日岐阜県図書館多目的ホールで開催された。 今回は1 ...