
映画『嵐電』名古屋舞台挨拶レポート
映画『嵐電』の公開記念舞台挨拶が5月26日名古屋・名演小劇場で行われた。
登壇したのは鈴木卓爾監督、川本明輝尾役の福本純里さん、菊乃真紗代役の藤井愛稀さん、有村子午線役の石田健太さん。その様子をお届けする。
『嵐電』は京都の京福電鉄嵐山線と、その路線の土地を舞台に京都に3つの世代の3つの恋愛の姿が描かれる。セリフひとつひとつを聞くとハッとする瞬間がこの映画には沢山ある。3つの話が終わったのか終わっていないのか。嵐電と共に切り取られたその時間は観たものに様々な印象を与える作品だ。
舞台挨拶レポート
鈴木監督
「本日は、春はどこへ行った?という暑い日ですが、『嵐電』を観に来てくださいましてありがとうございました。こんなに沢山の皆様にお集まりいただけるというのは、本当に感激しております。今日は出演者が3名来ております。紹介させていただきます。まず、嵐電の街は撮影所の街でもありまして、映画を撮っているところの助監督・川口明輝尾という役を演じました福本純里(じゅり)さんです」

鈴木卓爾監督
福本さん
「川口明輝尾を演じました福本純里(じゅり)です。「めてお」は「明るく輝く尾」と書きます。今日はご来場いただき本当にありがとうございます。私は地元が名古屋なので、今日この場に立てているのが本当に嬉しいです」

福本純里さん
鈴木監督
「撮影所の中で撮っている映画『結婚オブ ザ デッド』に出てくるゾンビ花嫁・菊乃真紗代というスター女優を演じている、藤井愛稀(いつき)さんです」
藤井さん
「菊乃真紗代を演らせていただきました藤井愛稀(いつき)と申します。名古屋には別の映画で来させていただいたことがあって、面白い所だなと思っていました。映画館のホームページで「ゾンビ花嫁」と紹介された劇場は初めて(笑)で、今日は皆様にお会い出来ることを楽しみにしておりました」

藤井愛稀さん
鈴木監督
「嵐電の街で8ミリカメラを持って嵐電を追い掛け続けている高校生・有村子午線役の石田健太さんです」
石田さん
「有村子午線役の、石田健太です。本日は、本当にありがとうございます。ここに上がっていること自体が夢みたいなんです。名古屋は子供の頃から来るのが夢で。天むすが大好きだったんですよ。「天むすを名古屋で食べたい!」という想いがあって。今日は本当に夢みたいです」

石田健太さん
鈴木監督
「石田さん、出身はどちらなんですか?」
石田さん
「兵庫県の西宮市です」
鈴木監督
「藤井さんはどちらですか?」
藤井さん
「私は京都出身なんですが、親戚が今こっちに住んでいます」
鈴木監督
「藤井さんはこの映画の中でゾンビ花嫁を演じてますが、京都の出身だったりするので、京都の出身ではないけど京都出身の役を演じた方の方言指導を現場でしてましたよね」
藤井さん
「はい。私は出ているシーンじゃない撮影日でもずっと現場で一緒にいさせていただきました。方言指導するということで、声が聴こえないと指導出来ないので、録音部さんが使っている俳優さんのピンマイクの音を全部聴くことが出来る無線をお借りして。現場では主に嘉子役の大西礼芳(あやか)さんに付かせていただいてたりしたんですが、大西さんの呼吸のリズムや唾を飲み込む音とか、そういう細かい音まで聴くことが出来て。あ、ヘンな意味じゃないですよ(笑)。完成した『嵐電』を観たら、息の感じとかが本当にいかされている、小さな音でも空気感として伝わって緊張感を与えることが出来る。そんなお芝居の些細なことも散りばめられていて。皆様感じ取っていただけましたでしょうか?お楽しみいただけましたか?」
(場内拍手)
鈴木監督
「嵐電は電車なんですけど、生き物のように街を走り続けているイメージがあったので、映画の中でも嵐電の音が画面の外から聴こえてくるようにしました。しかも嵐電というのは、1975年くらいから走り続けているお爺さん、いやおじさんで。私は67年生まれですので、ちょっと年下くらいです。ブレーキの軋みとかが凄く独特な音でしたし、そんな音を大事にしたいなと思ったのと、同時に現場の録音で俳優の台詞の音も大切に録れたなと思います」
鈴木監督
「福本さんは映画の中で映画を作る助監督役ですが、如何でしたか?」
福本さん
「大学では私は俳優コースで、映画にも俳優として出ることが多かったんですが、助監督役ということで映画を作る立場、映画をどのようにするか考えていく立場として、映画のことを考えるようになりました」
鈴木監督
「監督としての立ち居振る舞いは誰から学びましたか?」
福本さん
「浅利さんという助監督さんです」
鈴木監督
「浅利さんというのは今回東京から呼んだプロのチーフ助監督さんで僕と一緒に脚本も担当しています。深作欣二監督の『バトルロワイヤル』とか『男たちのYAMATO』にも参加されています」
福本さん
「撮影が始まる前から浅利さんを盗もうと思って観ていました。浅利さんはちょっと大柄で声が大きくて元気な方なんです。あと卓爾さんもちょっとだけ(笑)」
鈴木監督
「私ですか?」
福本さん
「卓爾さんは俳優もやられていたのであれですが、そこに自分の要素も入れられたらと思いましてやっていました」
鈴木監督
「この『嵐電』は京都造形大学の北白川派とプロが一緒に働いて映画を作る企画の第6弾なんです。福本さんと藤井さんは今年の3月に卒業したんですが、石田健太くんは3年生で制作コースですよね。だけど俳優」
石田さん
「元々は監督を目指して入ったんですが、俳優に転身しました。出来るかわからないですが」
鈴木監督
「石田君は現場で演じることと演出部を兼任してやったんですが、それは如何でした?」
石田さん
「正直なことを言うとすごい辛くて。出来ない自分が悔しくてなんで先輩はあんなに出来るのにと思って泣いていたんです。これを言うとメイクのあやさんに「泣くなんて贅沢なんだ。こんな幸せなことで泣いちゃ駄目だ」と言われるので言わないようにしていました」
鈴木監督
「言ってるじゃない(笑)。それではそろそろ時間なのでここのところを観て欲しいというのがあれば」
藤井さん
「一度観た後の印象は凄く優しくて柔らかいと思うんです。確かに不思議で凄く気持ちいい心地を感じていただけたかなと思うんですが、その中に散りばめられたひとりひとりの人間が現実的に抱えている問題に対する苦悩をだげじゃなく、卓爾さんは映画とは何かいうことをメディアでもよく話されることがあるかもしれないんですけど、私は「人とは何か」みたいなことを考えさせられました。個人的には何回も観て感じ直したいと思うので、よろしければ皆さんも何度か観ていただければ感じ方も違ってきて面白いと思います」
福本さん
「映画を見終わった帰りにその映画のことを話したりだとか、一日が終わった何気ない時に映画のシーンが思い返されたりだとか、そういうことがあると思うんです。この映画もきっと観ていただいた方にとって、何か普通に生活している時にふと思い出すことがあると良いなと思っています。映画の中で重なるところがあると思うんです。登場人物3世代のどこかに何かしら重なる部分があるんじゃないかと思っています。どんな形でも良いんですけど、観ていただいた方の中に残る映画だと思うのでまた出てくる人たちや嵐電に会いに来てくださると嬉しいなと思います。今日はありがとうございました」
鈴木監督
「今後この3人が色んな映画に登場する未来があったら是非それを見守ってください。それから。『嵐電』、何かよく分からなかったなという方もいらっしゃると思うんです。でも、それ大丈夫です。その通りです(笑)。ストーリーを追おうとすると道に迷う。そんな映画だと思ってください。もし面白かったらSNSで、またお友達やご家族にこんな映画だったよと言葉にしていただけると僕たちはとても嬉しいです。ここで、お客さんの中で作品が完成するのが映画を観せることだと私たちは思って作りました。この隙間を皆さんお帰りになられながら色々思い出して、考えていただければこんなに嬉しいことはないです。本日はどうもありがとうございました」
鈴木卓爾監督とキャストの皆さんのインタビュー取材も行った。また後日掲載予定。
映画『嵐電』http://www.randen-movie.com
は現在全国順次上映中。東海地区では名演小劇場で公開中。
おすすめの記事はこれ!
-
1
-
ロイヤル劇場存続をかけてクラウドファンディング開始! 【ロイヤル劇場】思いやるプロジェクト~ロイヤル、オモイヤル~
岐阜市・柳ケ瀬商店街にあるロイヤル劇場は35ミリフィルム専門映画館として常設上映 ...
-
2
-
第76回 CINEX映画塾 映画『波紋』 筒井真理子さんトークレポート
第76回CINEX映画塾『波紋』が7月22日に岐阜CINEXで開催された。上映後 ...
-
3
-
岐阜CINEX 第17回アートサロン『わたしたちの国立西洋美術館 奇跡のコレクションの舞台裏』トークレポート
岐阜CINEX 第17回アートサロン『わたしたちの国立西洋美術館 奇跡のコレクシ ...
-
4
-
女性監督4人が撮る女性をとりまく今『人形たち~Dear Dolls』×短編『Bird Woman』シアターカフェで上映
名古屋清水口のシアターカフェで9月23日(土)~29日(金)に長編オムニバス映画 ...
-
5
-
映画『私の大嫌いな弟へ ブラザー&シスター』公開記念 アルノー・デプレシャン監督舞台挨拶付き上映 伏見ミリオン座で開催決定!
世界の映画ファンを熱狂させる名匠アルノー・デプレシャンが新作『私の大嫌いな弟へ ...
-
6
-
自分の生きる道を探して(映画『バカ塗りの娘』)
「バカ塗りの娘」というタイトルはインパクトがある。気になってバカ塗りの意味を調べ ...
-
7
-
「シントウカイシネマ聖地化計画」始動!第一弾「BISHU〜世界でいちばん優しい服〜」(仮)愛知県⼀宮市にて撮影決定‼
株式会社フォワードがプロデュースし、東海地方を舞台にした全国公開映画を毎年1本ず ...
-
8
-
エリザベート40歳。これからどう生きる?(映画『エリザベート1878』)
クレオパトラ、楊貴妃と並んで世界の三大美女として名高いエリザベート皇妃。 彼女の ...
-
9
-
ポップな映像と音楽の中に見る現代の人の心の闇(映画『#ミトヤマネ』)
ネット社会ならではの職業「インフルエンサー」を生業にする女性を主人公に、ネット社 ...
-
10
-
豆腐店を営む父娘にやってきた新たな出会い(映画『高野豆腐店の春』)
尾道で小さな豆腐店を営む父と娘を描いた映画『高野(たかの)豆腐店の春』が8月18 ...
-
11
-
映画『フィリピンパブ嬢の社会学』11/10(金)より名古屋先行公開が決定!海外展開に向けたクラウドファンディングもスタート!
映画『フィリピンパブ嬢の社会学』が 11月10日(金)より、ミッドランドスクエア ...
-
12
-
『Yokosuka1953』名演小劇場上映会イベントレポート
ドキュメンタリー映画『Yokosuka1953』の上映会が7月29日(土)、30 ...
-
13
-
海外から届いたメッセージ。66年前の日本をたどる『Yokosuka1953』名古屋上映会開催!
同じ苗字だからといって親戚だとは限らないのは世界中どこでも一緒だ。 「木川洋子を ...
-
14
-
彼女を外に連れ出したい。そう思いました(映画『658km、陽子の旅』 熊切和嘉監督インタビュー)
42才、東京で一人暮らし。青森県出身の陽子はいとこから24年も関係を断絶していた ...
-
15
-
第75回CINEX映画塾 『エゴイスト』松永大司監督が登場。7月29日からリバイバル上映決定!
第75回CINEX映画塾 映画『エゴイスト』が開催された。ゲストには松永大司監督 ...
-
16
-
映画を撮りたい。夢を追う二人を通して伝えたいのは(映画『愛のこむらがえり』髙橋正弥監督、吉橋航也さんインタビュー)
7月15日ミッドランドスクエアシネマにて映画『愛のこむらがえり』の公開記念舞台挨 ...
-
17
-
あいち国際女性映画祭2023 開催決定!今年は37作品上映
あいち国際女性映画祭2023の記者発表が7月12日ウィルあいちで行われ、映画祭の ...
-
18
-
映画『愛のこむらがえり』名古屋舞台挨拶レポート 磯山さやかさん、吉橋航也さん、髙橋正弥監督登壇!
7月15日ミッドランドスクエアシネマにて映画『愛のこむらがえり』の公開記念舞台挨 ...
-
19
-
彼女たちを知ってほしい。その思いを脚本に込めて(映画『遠いところ』名古屋舞台挨拶レポート)
映画『遠いところ』の公開記念舞台挨拶が7月8日伏見ミリオン座で開催された。 あら ...
-
20
-
観てくれたっていいじゃない! 第10回MKE映画祭レポート
第10回MKE映画祭が7月8日岐阜県図書館多目的ホールで開催された。 今回は13 ...
-
21
-
京都はファンタジーが受け入れられる場所(映画『1秒先の彼』山下敦弘監督インタビュー)
台湾発の大ヒット映画『1秒先の彼女』が日本の京都でリメイク。しかも男女の設定が反 ...
-
22
-
映画『老ナルキソス』シネマテーク舞台挨拶レポート
映画『老ナルキソス』の公開記念舞台挨拶が名古屋今池のシネマテークで行われた。 あ ...
-
23
-
「ジキル&ハイド」。観た後しばらく世界から抜けられない虜になるミュージカル
ミュージカルソングという世界を知り、大好きになった「ジキル&ハイド」とい ...
-
24
-
『オールド・ボーイ』のチェ・ミンシク久しぶりの映画はワケあり数学者役(映画『不思議の国の数学者』)
映画館でポスターを観て気になった2本の韓国映画。『不思議の国の数学者』と『高速道 ...
-
25
-
全編IMAX®️認証デジタルカメラで撮影。再現率98% あの火災の裏側(映画『ノートルダム 炎の大聖堂』)
2019年4月15日、ノートルダム大聖堂で、大規模火災が発生した。世界を駆け巡っ ...
-
26
-
松岡ひとみのシネマコレクション 映画『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』 阪元裕吾監督トークレポート
松岡ひとみのシネマコレクション 映画『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』が4月1 ...
-
27
-
映画『サイド バイ サイド』坂口健太郎さん、伊藤ちひろ監督登壇 舞台挨拶付先行上映レポート
映画『サイド バイ サイド』舞台挨拶付先行上映が4月1日名古屋ミッドランドスクエ ...
-
28
-
第72回CINEX映画塾 映画『雑魚どもよ、大志を抱け!』足立紳監督トークレポート
第72回CINEX映画塾が3月25日岐阜CINEXで開催された。上映作品は岐阜県 ...
-
29
-
片桐はいりさん来場。センチュリーシネマでもぎり(映画『「もぎりさん」「もぎりさんsession2」上映+もぎり&アフタートークイベント』)
センチュリーシネマ22周年記念企画 『「もぎりさん」「もぎりさんsession2 ...
-
30
-
カンヌ国際映画祭75周年記念大賞を受賞したダルデンヌ兄弟 新作インタビュー(映画(『トリとロキタ』)
パルムドール大賞と主演女優賞をW受賞した『ロゼッタ』以降、全作品がカンヌのコンペ ...
-
31
-
アカデミー賞、オスカーは誰に?(松岡ひとみのシネマコレクション『フェイブルマンズ』 ゲストトーク 伊藤さとりさん))
松岡ひとみのシネマコレクション vol.35 『フェイブルマンズ』が3月12日ミ ...
-
32
-
親子とは。近いからこそ難しい(映画『The Son/息子)』
ヒュー・ジャックマンの新作は3月17日から日本公開される『The Son/息子』 ...
-
33
-
先の見えない日々を生きる中で寂しさ、孤独を感じる人々。やすらぎはどこにあるのか(映画『茶飲友達』外山文治監督インタビュー)
東京で公開された途端、3週間の間に上映館が42館にまで広がっている映画『茶飲友達 ...
-
34
-
映画『茶飲友達』名古屋 名演小劇場 公開記念舞台挨拶レポート
映画『茶飲友達』公開記念舞台挨拶が2月25日、名演小劇場で開催された。 外山文治 ...
-
35
-
第71回 CINEX映画塾 映画『銀平町シネマブルース』小出恵介さん、宇野祥平さんトークレポート
第71回CINEX映画塾『銀平町シネマブルース』が2月17日、岐阜CINEXで開 ...
-
36
-
名古屋シアターカフェ 映画『極道系Vチューバー達磨』舞台挨拶レポート
映画『極道系Vチューバー達磨』が名古屋清水口のシアターカフェで公開中だ。 映画『 ...
-
37
-
パク・チャヌク監督の新作は今までとは一味も二味も違う大人の恋慕を描く(映画『別れる決心』)
2月17日から公開の映画『別れる決心』はパク・チャヌク監督の新作だ。今までのイメ ...