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1990年代の釜山を舞台に抗争を描く韓国ノワール。チョン・ウが新たな顔を見せる(映画『野獣の血』)
韓国での劇場公開時に初登場1位を記録するヒットとなったベストセラー作家チョン・ミョングァンの監督デビュー作が日本で公開される。
あらすじ
1993年、春。養護施設出身で札付きのワルだったヒスは、釜山港の外れの街クアムを牛耳るソンに拾われ、その右腕として一帯を仕切っていた。小さな海水浴場に観光ホテル、屋台に風俗店。その利権を狙う奴らがしのぎを削っていた。一方、クアムに目を付けたヨンド派は、ヒスと共に施設で過ごした親友チョルジンを使い、ヒスを懐柔しようとしていた。しかし、ヤクザ稼業に嫌気がさしていたヒスの望みは、クアムでのし上がるでもなく、ヨンド派で金を稼ぐでもなく、施設時代からの恋人インスクと一緒にペンションをやりながら暮らすことだった。ヒスはソンの元を訪れ組織を抜けたいと告げるが……。

組織を抜けたい男の周りで勃発する抗争
クアムという釜山港の外れの街で利権争いが勃発する。ヒスは裏社会で生きてきたが、恋人と一緒に街を抜け出し、新しい生活を夢見て組織から抜けたがっていた。しかし街の利権を狙うヨンド派がクアムを手にしようとやってくる。ヨンド派にいる親友のチョルジン達の計画に巻き込まれ、ヒスは様々なものを失い、血で血を洗う闘いへ身を投じることになる。
ベストセラー作家でもあるチョン・ミョングァン監督だが、自分の作品を映画化したわけではない。原作は「設計者」「キャビネット」翻訳版が日本でも出版されている作家キム・オンスの傑作ノワール小説だ。主人公ヒスを演じるのはチョン・ウ。NETFLIXドラマ「模範家族」が現在世界配信中の演技派俳優だ。『偽りの隣人 ある諜報員の告白』の諜報相手と交流する諜報員を人情味溢れる演技で好演した彼からは想像が出来ない狂気を見ることになるだろう。出来るだけ無駄な争いはしたくないと思っていた前半から、自身の思いとは裏腹に激しい抗争に身を投じ、裏切り、悲劇、絶望の中で野獣と化すヒスを見事に演じている。また、ヒスを拾い、右腕に育てたソンには大ヒットホラー『箪笥』の父親役で知られるキム・ガプス、ヒスに裏切りを迫る親友チョルジンには、チ・スンヒョン、ヒスと自分は似たもの同士だという武闘派ヨンガンには「奇皇后」、「秘密の森2」など韓国ドラマにも出演し、演技派として幅広く活躍するチェ・ムソン。今回もしっかりと存在感が残る演技でヒスと関わるヨンガンを演じている。また恋人インスクの息子アミを演じたイ・ホンネの演技にも注目してほしい。

1990年、盧泰愚大統領による犯罪組織一掃政策「犯罪との戦争」を背景に、激動の時代を生き抜くヤクザたちを描く。生きるためには昨日友人だった男を今日は敵として潰す。暴力にも容赦ない描写はさすが韓国映画。今の日本映画では見ることが出来ない徹底的なノワール世界が味わえる。
映画『野獣の血』https://yajunochi.com/ は1月20日(金)よりシネマート新宿他で全国順次公開。東海3県では名演小劇場、ユナイテッド・シネマ豊橋18で1月20日(金)より公開。
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