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ずっと二人で生きてきた親子の絆と世間の目(映画『梅切らぬバカ』)

2021/11/26

毎日同じ時間に起きて、同じ時間にご飯を食べ、同じ時間に出かける。そんな息子との生活は果たしていつまで続けていられるのだろう?完全に自立は出来ない我が子が一人になったらどうやって生きていくのだろう?

長年二人で生きてきた母と息子を描いた映画『梅切らぬバカ』が公開される。

あらすじ

山田珠子は、息子・忠男と二人暮らし。毎朝決まった時間に起床して、朝食をとり、決まった時間に家を出る。庭にある梅の木の枝は伸び放題で、隣に引っ越してきた里村家からは苦情が届いていた。ある日、グループホームの案内を受けた珠子は、悩んだ末に忠男の入居を決める。しかし、初めて離れて暮らすことになった忠男は環境の変化に戸惑い、ホームを抜け出してしまう。そんな中、珠子は邪魔になる梅の木を切ることを決意するが・・・。

母と子。加賀まりこと塚地武雅が作り出す優しい空気

珠子と忠男親子の雰囲気がいい。演じるのは加賀まりこと塚地武雅。加賀まりこは54年ぶりの主演となる。占い師として悩める人たちに結果をズバッと言う一面からは、私たちが知っている彼女のイメージを感じるが、忠男の面倒を見る姿からは私たちが知らない彼女が見える。もちろん役として演じているのだが、彼女自身が今まで経験してきた中で生まれた気持ちが自然と珠子に投影されているのかもしれない。

忠男役の塚地武雅は忠男を演じるにあたり、自閉症の男性と会話し、役作りをしたという。自閉症の症状は様々だ。音に敏感だったり、毎日決まった時間に行動しないと気持ち悪かったり、慣れないことをすると混乱したり。しかし、働くことも出来るし、日常生活も出来る。自己主張もするし、時にとても頼もしいこともある。彼らは介助が必要かもしれないが私たちと変わらない生活をしている。そんな忠男の特徴を捉えつつ、とてもかわいらしいキャラクターに作り上げていて、忠男の優しさを感じることが出来る。

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住宅地にあるグループホームを巡る騒動

先に旅立たなくてはならない親が我が子のこの先を心配するのは当然のことだ。子どもに介助が必要な場合、親は自分がいなくなってからの子どもの生活全てを考える。兄弟もいない場合、グループホームで共同生活するのは一つの形だ。ひとりっこの忠男の行く末を心配した珠子がグループホームに忠男を入所させるエピソードからはグループホームを住宅地で経営していくことへの難しさ、一般市民からの反対運動があるということを知ることが出来る。グループホームの建設をしようとするとその地域で反対運動が起こることは実際にある。最近は保育園や幼稚園を建てることにも反対する人がいるという。

タイトルの『梅切らぬバカ』は「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」という諺から来ている。樹木の剪定には、それぞれの木の特性に従って対処する必要があるという戒め。転じて、人との関わりにおいても、相手の性格や特徴を理解しようと向き合うことが大事であることを指すという意味だ。

監督・脚本は『禁忌』の和島香太郎。実際に自閉症の息子を持つ親への取材をして登場人物のキャラクターを造形した。加賀まりこからの助言もあったという。
ただ、和島監督は忠男について、自閉症とは作品の中では一言も言っていない。何か自分達と違う人として忠男を、忠男の一番の理解者として母親の珠子を登場させている。差別したり、排除したりする人達は排除される側の理由を考えず行動を起こす。その不条理を珠子がグループホームの話し合いの会で指摘するシーンがあるが、反対している人達は今映画を観ている自分なのかもしれないと気づかされる。知らず知らずのうちに自分の都合だけで自分も動いていないかと改めて考えさせられた。

隣に越してきた里村一家とのやりとりの変化も描かれているが、排除するのではなく、共存できる世の中になってほしいという監督の願いが込められているように思う。

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知らない人同士をすぐ理解するのは難しい。人は皆考え方も生活スタイルも違う。

どうすれば一緒に生きていけるのか。共存するにはどうしていけばいいのか。これは誰もが考えるべきことだ。その人のことを全て知らなくてもいい。ただ少し知るだけで、相手に知ってもらっているだけで随分と関係性は変わってくるのだと思う。

珠子は忠男と幸せに暮らしている。これから先のことは少し不安だけど、地域の人と分かり合えばきっとその時に助けてくれる人がいるはずだ、そんな世の中になることを信じたい。

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映画『梅切らぬバカ』 https://happinet-phantom.com/umekiranubaka/ は11月12日(金)よりシネスイッチ銀座ほかで全国公開。東海3県では11月26日(金)より伏見ミリオン座、ユナイテッド・シネマ(豊橋18、稲沢、阿久比)、12月11日より岐阜CINEXで公開。

監督・脚本 和島香太郎/加賀まりこ  塚地武雅 渡辺いっけい  森口瑤子  斎藤汰鷹 / 林家正蔵  高島礼子
配給:ハピネットファントム・スタジオ

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