
地球の裏側のきみに恋して(映画『きみへの距離、1万キロ)
好きな人は地球の裏側。しかも恋人もいて…。
あらすじ
北アフリカの砂漠地帯にある石油パイプラインで石油泥棒を監視する6本足の小さなクモ型ロボットを操っているのは遥か10000キロ離れたアメリカ・デトロイトから。遠隔操作しているのはオペレーターのゴードン。ゴードンは最近運命の人だと思っていた恋人ジャニーンと別れたばかりで傷心中。そんなある日ゴードンは監視ロボットを通して美しい女性アユーシャを見つける。彼女は恋人のカリムと密会していたが、親から別の相手との結婚を強要されていた。それを知ったゴードンは彼女を助けようと大胆な行動に出る。
カメラの向こうの彼女に恋して
ゴードンの仕事は砂漠のパイプラインに駐在する12基のクモ型ロボットを使って侵入者を監視すること。クモ型ロボットは有能でサーモグラフィ機能で暗い中でも人を判別する。攻撃機能で石油泥棒を撃退したり、他言語機能で目が見えず迷子になった老人にアラビア語で話しかけ、家の近くまで送り届けたりと人が来ないはずの砂漠の中で処理する事はそれなりにある。そんな中で偶然カメラがとらえた女性・アユーシャの姿が気になってしまったゴードンは彼女を追いかけ、彼女が親に内緒で恋人に会っていることを知る。恋をして、本当に好きな人と結婚したいという彼女の気持ちに心が動いたゴードンは力になろうとする。運命の人だと思い付き合っていたジャニーンにフラれてしまったゴードンに上司のピーターは出会い系アプリで新たな出会いを紹介。たくさんの女性から連絡があるが、ピンとくる出会いはない。そんなゴードンの頭の中から離れなかったのはアユーシャの姿だった。ゴードンはアユーシャの姿を観ることは出来ても触れることは出来ない。片想いでもいい。自分の代わりに動いてくれるロボットを通じてアユーシャに近づいていく。
キム・グエン監督が望むグローバルな世界
様々な情報メディアの向上で私たちの活動範囲が世界規模になっている現在。
監督のキム・グエンは携帯電話もあり、SNSで世界の誰とでも交流できる日常がある中で未だ古い風習に囚われて自由な生き方が出来ない文化が残っていることを観るものに知らせる。
風習はそんなに簡単には変えられない。それでもそれを超えて欲しい。そんな思いをこめてこの作品は作られた。
たとえ実際に会っていなくても話すことで心は伝わる。思いは届く。気持ちに国境はない。一つ一つの国ではなく、一つの地球の中で生きている人々の恋愛を描いている。
第74回ヴェネツィア国際映画祭においてヴェネツィア・デイズ部門フェデオラ賞を獲得し、ヨーロッパの批評家たちから大絶賛を受けた。
運命の人と思っていた元カノへの思いを振り切っておらず傷心気味の主人公ゴードンにはジョー・コール。不器用だけど優しく熱い男をじっくり演じてくれている。
自由な恋愛を許されず悩むアユーシャにはフランスのリナ・エル=アラビ。美しさもさることながら意志強き目にひかれた。
運命の人と思っても
運命の人にフラれることだってある。運命の人と出会っても気がつかない人もいる。運命の人との出会いはどういう形になるかわからない。
ゴードンが出会った新たな運命の人は地球の裏側にいた。
技術の進歩がなかったらこの出会いはなかった。
ゴードンはアユーシャを幸せに導くことが果たして出来るだろうか。
老人との会話が鍵となってくるので最後まで忘れないようにして欲しい。
昔は漫画のなかだけの設定だったかもしれないことが今なら現実になりそうだとあたたかい気持ちで最後まで見ることが出来た。
運命の人を探して世界に目を向けてみよう。
映画『きみへの距離、1万キロ』http://kimikyori.ayapro.ne.jp/は現在公開中。
東海地区では愛知・センチュリーシネマで5月12日より
岐阜・岐阜CINEXでは6月23日より、三重・伊勢進富座で8月11日より公開。
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