
本音続出のトーク(とよはし映画祭2018カンファレンス)
今回が2回目の『ええじゃないかとよはし映画祭』。
今年も愛知ゆかりの監督やゲストを迎えて穂の国芸術劇場PLAT、開発ビル、ユナイテッド・シネマ豊橋18で開かれた。
上映後には監督やキャストの舞台挨拶があるだけでなく多くの監督が集まったから出来る企画としてカンファレンスが開かれた。
上映はないが監督がひたすら語るトーク企画。
映画祭のチケット半券を持っていれば聞くことが出来たイベント。
映画祭2日目の3月3日(土)は二本のカンファレンスが行われた。
本音続出で書けないことも沢山あったカンファレンスの様子を一部お届けする。
カンファレンス1
トークのテーマは『作り手にとっての映画祭の役割』
ゲストは映画祭のディレクターでもある園子温監督、知多半島出身山下敦弘監督、早めに豊橋に入って自転車で色々見て回ったという松江哲明監督、映画『ダブルミンツ』の内田英治監督。モデレーターは映画祭プロデューサーの森谷雄さん。映画祭とはどんな役割を果たすか。
監督ならではの思いが見えたトークだった。
海外の映画祭エピソード
園子温監督
「日本の映画祭ってきっちりしてますよね。昨日も映画祭の舞台挨拶なのに新作の舞台挨拶みたいに50分前集合。映画祭の舞台挨拶ってこうじゃないよね。映画祭って本当は直前までお酒飲んだり話したりしていてステージに上がって司会の人が紹介しますから後は進行に従ってください以上って感じなんだよね。司会の人も少し飲んでるし(笑)っていうのが海外の映画祭。食事代も出るしね」
松江監督
「舞台挨拶の直前に通訳いないけど大丈夫だよね?って言われて全然できないのに英語で舞台挨拶したことありますね。出演者にフォローしてもらったりしましたけど」
内田監督
「そういえば海外の時ってカラオケ多くないですか?ニッポン・コネクションの打ち上げってカラオケですよね」
山下監督
「カンヌに行ったけどカンヌ映画祭には行っていないです。(←山田孝之のカンヌ映画祭)でも面白かったです」
四人の監督は言う。外国で呼ばれないと日本の映画祭には呼ばれない。外国で評価されてやっと日本が評価してくれる。なぜか日本人同士なのに監督同士の初対面は外国の映画祭だったと語っていた。
この四人。自主映画製作を経てメジャーの監督になっているという共通点がある。インディーズの監督達にとって映画祭とは未来に繋がる大切な場。映画祭に出品し話題になると日本公開での宣伝費が全然違って来るから出せるなら出したいという思いもあるが
「映画祭ってなんだか成績表つけられているみたいでいやなんですよ」
「監督は順位は決められたくないんじゃないかな。自分が撮りたいものを撮ってるわけだし」
という本音も出ていた。

かなり本音のトーク 右から:内田英治監督、松江哲明監督、山下敦弘監督、園子温監督、森谷雄プロデューサー
観客からの質問にも監督たちは答えた。「映画に大事なことは?」
園監督:「撮りたいものを撮る」
山下監督:「最後までやりきること。なくさないこと。映画を作りきる」
松江監督:「それが映画として作るようなものかどうかを考え」
内田監督:「監督オリジナル作品であることが大事ですね」
森谷さんが締めに聞いた。「一言で映画祭とは何か」
園監督:「とよはし映画祭」
山下監督:「やっぱりお祭りですね」
松江監督:「出会いの場。奥様とも映画祭で出会いました」
内田監督:「やっぱり祭りです。僕は音楽フェスによく行きますし、自分の作品を出してなくても映画祭に行きます。それくらい楽しまないと」
園監督
「来年はライブイベントとかアートイベントとかも入れてった方がいいね。開発ビルも空いているからあそこにアート関連も入れてライブハウスとも提携をやって映画に関するミュージシャンにライブやってもらったりとかね」
来年是非実現してほしい。
カンファレンス2
ゲストは杉田成道監督、本広克行監督。
トークのテーマは『テレビの作り方 映画の作り方』
聞き手は森谷雄さん。
この3人実は同じ職場出身。職場はフジテレビ。
『北の国から』の演出であまりにも有名な杉田監督は豊橋出身でふるさと大使。ドラマだが映画レベルでお金がかかっているという『北の国から』の伝説のエピソードの裏話も出てきて聞きに来てよかったと思った。映画は『優駿』で初メガホン。このときのスタッフは黒澤明監督のスタッフだったそうだ。
『踊る大捜査線』シリーズの本広監督のデビュー作は『7月7日、晴れ。』。
まだこの頃はフィルムでの撮影でとんでもない失敗をしたという話をしてくださった。『北の国から』以上にお金がかかっているのは『踊る大捜査 THE MOVIE2レインボーブリッジを封鎖せよ!』の青島刑事への雨のシーンだという。

森谷さんの進行でトークは進む。中央:杉田成道監督、右:本広克行監督
元々映画学校出身だが映画界が低迷期でテレビ業界に進んだという本広監督と森谷氏。
モチベーションは映画業界>テレビ業界
収入はCM業界>テレビ業界>映画業界。
「映画を作ったときに『疲れた』と言ったら『あなたのために作っているのに』と言われてスタッフからボイコットされたことがある」という本広監督。テレビ業界のスタッフで映画が作りたくて観てもらうために様々な努力をした。それの一つが『踊る大捜査線』のスタッフルームの定点カメラから始まる今では当たり前のネット攻勢。インターネットの普及に合わせてネットワーク捜査員を募り、事前イベントまで企画。全国を飛び回った。
昔みたいにみんなに好かれる名作と言われる映画は少ない。テレビから繋がる映画とドラマでは出来ない作品を映画にしたものへの二極化。
今の大作はどうしてもキャスト重視で作品にない役を作ってでも出てもらう流れ。そうなると企画がある程度定まってしまう。
大きな配給でたくさんの人に見てもらおうとするとある程度の制約が出てくる。
本広監督:「大きなタンカーを動かそうとするんだけど舵が廻らない感じ」
杉田監督:「撮りたいものを撮っていいと言われるとまとまらない。ある程度題材を決められていた方がまとまりのある映画が撮れる」
本広監督「今回『Anniversary』では撮りたいものを撮っている。こうやって仕事を分けています。ヒットさせなければいけないものと撮りたいもの。『UDON』も香川を知ってほしくて撮った映画」
杉田監督「今は年間150本以上映画が作られていますが赤字にならないのは10本から20本なんです」
本広監督「自分の体験を重ねながら映画を観る。あの暗い空間だからこそできる醍醐味ではないかと思います。だから映画館に見に来てほしい」
森谷さんの締めの質問「あなたにとってテレビとは映画とは?」
本広監督
「テレビは訓練の場 映画は自分の鏡、人生の鏡。これ映画で観たことあるみたいなことが人生に起こりますから」
杉田監督
「テレビは生活。映画は夢。非日常の世界」

左から 本広克行監督、杉田成道監督、カンファレンスを聞きに来ていた内田英治監督、森谷雄プロデューサー
2つのカンファレンス。
なかなか聞けない話を聞ける貴重な機会だった。
面白かったのは一本目のカンファレンスでは映画は作りたいものを作るという話が出ていたが二本目のカンファレンスでは映画はある程度企画があった方がしっかりとしたものができるという話が出ていたこと。
どんな過程で映画監督になったかで感じ方も違い、作り方も違う。だからこそ様々な映画ができる。
今年はどんな映画がつくられるのだろう?楽しみは尽きない。
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