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惚れこんだ原作が実写化。読み込んで向き合った役(映画『よだかの片想い』松井玲奈さんインタビュー)
これまでも多くの作品が映画化されてきた小説家・島本理生が2012年に発表した傑作恋愛小説「よだかの片想い」が映画化。『Dressing Up』などの作品を手掛け、本作で長編映画2本目となる監督・安川有果と、映画業界で引っ張りだこの城定秀夫が脚本としてタッグを組み、原作に惚れ込んだ松井玲奈が、恋をきっかけに自身と向き合う顔にあざのある女性アイコを演じる。
松井玲奈さんが名古屋での先行上映舞台挨拶に登壇。終了後にお話を伺った。
Q.松井さんが大好きな島本理生さんの原作を城定秀夫さんが脚本を担当されたことは大変興味深いと思ったんですが、何か城定さんが書いたことによっての効果はありますか?
松井さん
「監督と俳優部はすごくその作品に没頭してしまう瞬間があるので、主観的に向き合ってしまう人たちが集まって意見をする場面が多かったんですが、城定さんが脚本家として今回参加されている立ち位置が、おそらくメインで集まる人の中では一番客観的、俯瞰的に全体の物語を見て書き起こすことができる人なのかなと思います。そういう点では、監督は撮ることに専念して、どういう風に撮っていきたいかということを考えていらっしゃることと、私が思う気持ちを城定さんがちょっと離れたところからうまくまとめてくださっていたところが、結果的にとてもいい方向に行ったのかなと思っています」
Q.顔にフォーカスするキャラクターを演じる部分で、今回はちょっと特殊な役だと思います。アイコの心情にどう寄り添って役作りされたのでしょうか
松井さん
「一番はあざのある女性を演じるという意識ではなくて、コンプレックスを持っている女性が恋をしたときに、どういう気持ちになって、どういう風に向き合うのかということを大切にしたいなと思っていて。原作を読んだときにも主人公であるアイコの恋の物語だと私は受け取っていたので、あざがある女性を演じるのが大変だったんじゃないかと言われたことに、私自身は結構驚いていて。自分自身は彼女の子供の頃に、周りの人に初めて自分のあざのことが変だと言われたことで、周りと違うことに気づいて、それがコンプレックスになっていくという彼女の人生経験も原作の中から読み込んでいって役としての経験、自分の中の経験として落とし込んでいく。そういう作業をずっとしながら役作りをしていきました。これまで経験してきた役の中でもこんなに原作があるものを何度も何度も読み込んで、毎回どういう状態に彼女がいるのかどういうことを経験してきたのか、相手といるときに彼女はどういう感情でいたのかというのを確認していったのは初めてでした。ただ、それにとらわれるわけでもなく、記憶として入れておく。その状態になろうとするのではなくて、その感覚だけを残しておいて、あとはやってみて、安川監督から何を言われたかによって、向き合った人とのお芝居の中でどんどん変化していくのを楽しんでいた感じでした」
Q.役作りは監督と話し合いながらしていったのでしょうか
松井さん
「私が持っていったものを安川監督はすごく尊重してくれる部分があって、その中でお互いに、ここはもっとこうなった方がいいんじゃないかと話し合っていることが多かったかなと思います」
Q.松井さんは普段からとても姿勢が美しいですが、映画の中のアイコも姿勢が綺麗で。あざがあることで、無意識に常に見られているということも考えてのことでしょうか
松井さん
「芯のあるしっかりした自立した女性でありたいと思ったので、あざがあることはもちろん彼女の中でちょっと自分の影として受け取っている部分もあったと思うんですが、それを姿勢を崩すことで隠すというよりかは、しっかりと地に足をつけて立っているところを私は表現したかったんだなと思っていて自然と立つという選択を取っていたなと思います」
Q.今回アイコはショートカットであざを隠さないビジュアルになっていたんですが、ショートヘアにしたのは原作通りなのでしょうか
松井さん
「原作のアイコはショートボブじゃないんです。肩につかないぐらいの長さの髪で、一応、あざが隠れるようになっていたんです。原作では、ちょっとうつむくと髪の毛であざが隠れるという描写とかも出てくるんですが、私がたまたまこの時期に髪の毛を短くしてしまっていて。でも撮影をしている中で、絶妙に隠れそうだけど隠れない前髪の感じだったり、このスタイルというのが監督と話していても、何か彼女の強さというものが出せる髪型なんじゃないかなということになったんです。例えばエクステをつけて髪の毛を伸ばすこともできたんですけど、このままのスタイルでいきましょうという話になって、あのショートカットのあざが見える髪型でやることになりました」
Q.アイコを演じられていて、恋という部分で、私だったらこうすると思ったシーンはありますか?
松井さん
「自分だったらこう行くのに、ではなく行かないのにという場面なんですが、 アイコが飛坂さんに告白するシーンがすごく印象的だなと思っていて。大体、告白をするときって、そういう空気感になる。今から告白しますよという空気を出したり、告白しても大丈夫だな、いけるなっていう空気のときに相手に想いを伝えると思うんですけど、彼女の恋愛経験が少なかったがゆえにそういう空気じゃないのに、突然好きですって自分の感情の高ぶりを持って相手に思いを伝えてしまう。その部分が彼女のかわいらしさでもあると思うんですけど、私はもうちょっと、一歩引くというか、空気を読みながらいけるかどうかを探るタイプなので、そこは彼女と自分のちょっと違うところでもあり、私だったらいかないなと思う部分でもありました(笑)」
Q.ではアイコとの共通点はありますか?
松井さん
「私自身は考えていなかったんですけど、飛坂役の中島歩さんに先日お会いしたときに、私自身が持っている、人に対するパーソナルエリアを守る壁みたいなものと、 アイコが持っているその壁というものがすごく似ている気がすると言われて。私は壁がある人間なんだと思ったんですけど(笑)、その通りだなと思いました」
Q.そんな松井さん評をする中島さんは松井さんから見てどんな人ですか?
松井さん
「不思議な人なんです。あのままの方で、オンとオフが芝居をしていても常に地続きの状態という人。トーンも落ち着いているし、でもその中で時々冗談を言ったりするのが、意外性があって面白い。さらにそれが中島さんという人がどんな人なのかわからなくさせるので、興味深くて人を引きつける人なんだなと」

Q.中島さんとは撮影の時もお話されたんですか
松井さん
「全然喋らなかったんです。基本的に誰ともそんなに喋っていないというと違うんですけど、コミュニケーションを取っていた記憶だけが多分全て抜け落ちていて、何かしらポツポツ喋っていたと思うんですが、常にずっと気を張っていて、壁を作っていたと思うんですね。だから多分中島さんにも、オンでもオフでも壁がある人って言われたんだと思うんです。どこか常に緊張していた空気があったのかなあと。私もあんまり中島さんのパーソナルなことを知らないですし、中島さんにも僕も松井さんのこと全然わかんないって言われている、そういう関係性で。映画のプロモーションになってから初めてちゃんと喋ったんです。そのときに思いがけない着眼点が面白い人だなと思いましたね」
Q.恋をすることでアイコの感情表現が豊かになっていると思ったんですが、どのあたりから変化させていこうとか考えられましたか
松井さん
「あまりそういうことは考えていなくて、経験をしていく。例えば飛坂さんだったり、ゼミの人たちと向き合っていくシーンによって、その関係性がどんどん変わっているので、相手の方からもらう空気感にそのまま応えていくと、どんどんどんどんアイコというキャラクターが豊かになっていって、柔らかさを持ち始めたのかなと思います」
Q.今回アイコを演じて、得たものはありますか
松井さん
「何でも自分でやろうとしてしまう人間なんですけど、今回安川監督とご一緒して、わからないことをわからないままやってみるという経験をしたんですね。そのときに、台本にも書かれていない、自分でも想像していなかった感情がわあっと溢れてきて、それを経験したときにやっぱり人に身を委ねたり、何かをきっちり決めすぎずに、わからないままやってみる柔軟性も必要なんだなということをこの作品で経験して強く感じました」
Q.今回、原作に惚れ込んだということですが、島本理生さんの作品の凄さを教えてください
松井さん
「島本さんの作品は本当に、登場人物、特に主人公の感情の積み重ねがとても豊かで、物語の中で主人公だったりいろんなキャラクターが大きく舵を切るような決断をしたときに、それが突然に感じない、読み手にも納得できる、彼ら彼女の決断に感じられるというところがすごいところだなと思っていて。「よだかの片想い」の中でもアイコはいろんな決断をしていくんですけど、それがしっかりと積み重ねられているからこそ、一つ一つに納得ができる。彼女に共感もできるし、感情移入もできるというところが、島本さんの作品の素晴らしいところだなと思っています」
Q.大好きな原作が映画になったわけですが、小説にはないシーンもあって映画も小説もどちらも魅力的になっていると思います。小説をまだ読んでいない方に原作のおすすめポイントを教えてください
松井さん
「映画はアイコの大学のゼミの人だったり、飛坂さんというごく近い人たちとの人間関係が描かれていて、アイコが、実はいろんな人たちに助けてもらっていたことに気づく物語になっているんですが、原作ではそこに加えて、アイコの家族も出て来るんですね。お母さんお父さんがアイコに対してどう感じていたのか、彼女とどう向き合って、大学に上がるまで一緒に生活していたのかということも描かれますし、飛坂さんの生い立ちが描かれていく中で、どうして飛坂さんがアイコに強く惹かれたのかというところもたっぷり描かれます。映画を観て読んでいただけたら嬉しいなと思います。原作に触れるということもこの作品自体を楽しむ、幅を広げるのではないかと思っています」
Q.今後どんな役に挑戦していきたいですか?
松井さん
「30代になったので、母親の役に挑戦してみたいなと思っていて。子どもとお芝居をすると本当に感情豊かというか、どこか私は、考えて演じてしまうところが時々あるんですけど、子供たちにはそういうものがなく、本当にその場で起きたことに柔軟に反応して返してくれるというのが、お芝居をしていて楽しいんですね。なのでもっと一緒に長い時間を共有して、母親という立場で、子供たちに接してみたいな、そういう作品に出会えたらいいなと思っています」

映画『よだかの片想い』https://notheroinemovies.com/yodaka/
は新宿武蔵野館他で全国公開中。
東海3県では9月16日より伏見ミリオン座、MOVIX三好、イオンシネマ(名古屋茶屋、岡崎)、ユナイテッド・シネマ豊橋18、9月30日よりイオンシネマ津南で公開。
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