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映画『N号棟』公開初日 萩原みのりさん、後藤庸介監督登壇 舞台挨拶レポート

とある地方都市に、かつて霊が出るという噂で有名な団地があった。このとある地方都市。岐阜県にあると言えばお分かりの方もいるのではないだろうか。
2000年に実際に起きた幽霊団地騒動。ラップ音がすごいなどワイドショーを席巻した団地は岐阜県の某所にあり、あの当時、静かな町に報道陣が殺到し、全国に広がる話題になったのだ。しかし、人の噂も七十五日。次第に誰も気にしなくなっていった。あれから20年以上経つが、あの団地は今どうなっているのだろうか。

実際に起きた幽霊団地事件を基にした“実験型考察ホラー映画”『N号棟』の公開が4月29日(金)より始まった。
公開初日に名古屋ミッドランドスクエアシネマで主演の萩原みのりさん、後藤庸介監督を迎えた舞台挨拶が行われた。その様子をお届けする。

・名古屋で初日舞台挨拶を迎えるということはなかなかないので嬉しいですね。ではご挨拶をいただきたいと思います

萩原みのりさん(以下 萩原さん)
「史織役を務めさせていただきました萩原みのりです。ミッドランドスクエアシネマは映画を観に来る場所だったんですよね。そこに自分が立つ日が来るというのがあまり想像ができなかったので、すごく不思議な気持ちなんですが、今日はよろしくお願いします」

後藤庸介監督(以下 後藤監督)
「監督の後藤庸介です。本日はお足元の悪い中、ありがとうございます。よろしくお願いいたします」

・ミッドランドスクエアシネマには結構来られていたんですね

萩原さん
「はい。友達とも家族とも来ていました。いつもエレベーターに乗るとポップコーンの匂いがするから、映画館に来たなって感じがすごくするんですよね」

萩原みのりさん

萩原みのりさん

・後藤監督も結構長い間、名古屋で撮影されていたことがありましたよね?

後藤監督
「そうですね。メ~テレさんで、まさにご当地作品「ヴィレヴァン!」という遊べる本屋ヴィレッジヴァンガードを舞台としたドラマ、映画を作らせていただいてました」

萩原さん
「名古屋茶屋のイオンで撮っていましたよね?」

後藤監督
「結構行ってたりしたんですか?」

萩原さん
「そうですね。あのイオンは大きいのでみんなで行くことはよくありました」

・萩原さんは後藤さんとお仕事されるのは初めてですか?

萩原さん
「そうです」

・さすがに撮影中に愛知ネタなんて話したりしませんよね?

後藤監督
「いや、しましたよね。「監督、茶屋のイオンで撮影してたらしいじゃないですか」って」

後藤庸介監督

後藤庸介監督

萩原さん
「うちのお母さんが言ってたんです。監督のことを調べて、「茶屋のイオンで映画撮ってた人だよ!」って(笑)」

後藤監督
「茶屋のイオンで感動する(笑)。そんな初対面だったんですけど、いろいろ役について話している間、ずっと気になっていて最後に聞いたんですが、萩原さんが変なトレーナーを着ていたんですよ」

萩原さん
「NONBEEって書いてあるトレーナーです(笑)」

後藤監督
「それは僕の友達がデザインした当時多分ほとんど誰も持ってないもので。「あれ?それって」という話になりまして」

萩原さん
「初対面で結構仲良くなりました。最初、台本を読んだだけだと変な監督かもしれないってちょっと思ったんです。内容が内容だから、すごい人、絶対にド変態であることは確実じゃないですか」

後藤監督
「なんで確実なんですか!(笑)」

萩原さん
「どういう感じで、ずっと見透かされているように話されたりするのかなとかちょっと怯えて行ったんですけど、お会いしたら、ずっとニコニコしている優しい人だったので良かったです」

・NONBEEのトレーナーが効いたんじゃないですか?

萩原さん
「あまり女優さんが着る感じではないですね」

後藤監督
「私は酒飲みですって(笑)。売ってますのでネットでぜひ探してください」

・萩原みのりさんを、史織役に起用したことについて何か決定打なところはあったんですか?

後藤監督
「史織は死恐怖症ということなっていますが、一応死ぬのが怖いというのは僕自身の投影なんです。なので自分と同じ感覚を共有してくれる人がいいなと思って。萩原さんの出演作を見ていて、もう「まさに!」と思ったんです」

萩原さん
「勝手に。「死が怖いですか?」という確認もなく」

後藤監督
「キャスティングの時にそれ聞かないですよ(笑)」

萩原さん
「実際、死が怖いなと思って生きているタイプの人間ではあります。何でそう思っていたのかはわからないですけど、初めて監督に会ったときにすごく近しいものを感じました」

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・他の取材では生き急いでるように見えると監督は萩原さんのことをおっしゃっていたんですが、そんな風に見えます?

後藤監督
「いろんなお芝居を見ていても、何て言うんでしょう。出ているエネルギーがすごいので、エネルギーがこれだけ出るというのは、何か追い立てられるように生きている。全然悪い意味じゃないですけど、そうじゃないとなかなか出ないんじゃないかなと思ったんです」

萩原さん
「エネルギーを要する役がちょっと集まりやすいというか、エネルギーをいっぱい出したいなと思って生きているわけではないので(笑)。何か自然とそうなったというか、そうしたらどんどんそういう作品が増えていくんです。そういうイメージがついていって、萩原みのりを応援するのって疲れるだろうなって(笑)。すごく最近そう思うようになって。萩原みのりの出演作を追いかけようとするとちょっとしんどい思いをする。そろそろもうちょっとラブコメみたいな優しいものをやりたいなと思っています」

後藤監督
「そうですね、では次はラブコメで(笑)」

・今回の萩原さんの演技はいろんな方から絶賛の嵐なんですよ、そのエネルギー放出型が素晴らしいなというのがあったんですが、演じるにはなかなか難しい役だったと思います。いかがでしたか?

萩原さん
「お芝居っていうよりは実際に完全に追い詰められて、半ドキュメンタリーぐらいの追い込まれ方でいたので、特に最後、後半クライマックスに向けてに関しては芝居をしていた感覚はもうほぼ全くなくて、勝手にもう死にかけていって。自分をその状態に持っていこうとするとしんどいんですよね、お芝居って。多分そこに持っていくっていう作業がしんどいんですけど、持っていく作業は一切なかったので、もうただそこで、床で張りついて、私が実際にもうヘロヘロに HP が0になってる状態をカメラで撮っていただいていた感覚でしたね」

後藤監督
「だから怖かったですよ。僕は普段死以外は何にも怖いタイプじゃないですが。撮っていて怖いと思ったのは初めてでした。最後、筒井さんに「死ね」って言われた後に抱きしめられるというシーンがあったと思うんですが、あのときの顔色が尋常じゃない。人間のものじゃないぐらい白くて。1カットで本番を撮っているときに、周りのスタッフに「これ大丈夫なんだっけ?これどうなってる?」と確認しながら、でも筒井さんがアドリブしまくっているので、カットをかけられないまま撮っていたという結構すごい状況でした」

・あのシーンは観ているこちらもエネルギーを使いました

萩原さん
「もう二度とやれないです。もう1回やってくれなんて言われたら、あの場でもう1回って言われていても絶対できなかったと思います」

後藤監督
「スケジュールも決まっていますからあのシーンは撮りきらなければいけなくて。もう既にあのとき明け方なんです。その前にちょっと休憩したんですよ。もうあまりにも気持ちが入りすぎちゃって、結構しんどくなって。ちょっと休憩して、いや、これ本当に今日撮れるかな、撮れないかなみたいになって」

萩原さん
「「10分だけください」って初めて言いました。わからなくなっちゃったんですよね。ずっと床にいて、みんなが私の事を見下ろしていて。かなり追い込まれるシーンで、何が正しいかわからなくて、過呼吸みたいな状態をずっと6時間ぐらい撮っているんです。ずっと6時間過呼吸でいることって人生でないじゃないですか。おかしくなってきちゃって、もう目の焦点がどこにも合わないし、気づいたらカメラマンさんの顔をじっと見ていたりとか、何にも考えていないのに涙がポロポロ出てきたりとか、「あれ?本当に死ぬんだっけ?」みたいな、何かわかんなくなってしまって、映画を撮っている感覚というよりは自分自身も実際に追い込まれている、役を通してというよりは、もう萩原みのりにまでみんなの目とか、声がちょっと刺さりすぎちゃって、人生であの異常な空間ってなかなか経験しないので、キャパオーバーで完全に壊れた瞬間がありました。床に寝転がって全く動けなくなって、「10分ください」と。その後に一気に1カットで撮ったんです」

後藤監督
「1カットだけやってみようと」

萩原さん
「そうしたら顔が真っ白で。私、1回死んだ説があるんですよ」

後藤監督
「いや本当に。本人は記憶がないって言うし」

萩原さん
「変でしたよね、あの日」

・筒井真理子さんが加奈子という役を演じていらっしゃいますが、あの「死ね」はすごいですよね

後藤監督
「最高でしたね」

萩原さん
「加奈子様です。すごいですよ。カーディガンの背中にある顔めっちゃ怖くないですか。あれが見る日によってちょっと笑っている説があって。みんな言っていて、「今日ちょっと笑ってるな」って、吸い込まれるようにみんなそれを見ていました」

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・この作品は、岐阜県で2000年に実際に起きた幽霊団地事件をもとにされたということなんですけれども、監督も記憶があってもとにされたんですか?

後藤監督
「いわゆるホラーオカルト界隈ではそこそこ有名だったので元々知っていたんですが、死恐怖症の主人公を描きたいなと思って。筋立てとして僕自身が日々死が怖いので、どうやって死ねば怖くないのかなってちょっと一生懸命考えてみたんですよ。そうしたら不謹慎なんですが、みんなと一緒なら怖くないんだと思ったんです。隕石落ちてきますとかあるじゃないですか。あれなら怖くないなと思って。孤独になるのが怖いのかなというのがあって。みんなで一緒に死ぬという結末を迎えるホラーとなったときに、あの幽霊団地事件は舞台としてはいいかもと思ったんです。幽霊団地で実際に霊現象は僕はあったと思います。でも多分半分ぐらいは集団心理が起こした事件だったような気がするので、なんとなくその辺が集団心理の話にしやすい気がしたという」

・実際にその団地での撮影ではないですが、あの建物すごい怖いですよね。フィクションなのか、もうどっちなんだろう?と先程お話されていましたが、どんな雰囲気だったんですか?

萩原さん
「出てきたものの半分ぐらい本物なんですが、これは美術でしょうみたいなものが本物だったりするんです。初日はおいおいおいおいとなりましたね。「本当にここで数日間私、撮影するの?」みたいな。電気とかも全然つかないので、 iPhone のライトで照らしながら階段を登っていくんですけど、見たことない量の虫の死骸とか、しかもそれが1ヶ所に集まっていたりするんです。何でここでだけこうなったんだろうとか、鳥の白骨死体みたいなものが、どうしてこの位置にあるんだろうみたいな不思議なものがいっぱいあったりとか、撮影で使っていない部屋に血の染みがあったりとか、「?」って思うことがいっぱいあって、それをいかに疑問に思わないか、それをいかに当たり前のことにしていくかということは最初2日間ぐらいはありました。いろいろいちいち意味を考えちゃうから、動かなくなったエレベーターがなぜか4階に止まっているとか、本当にやめてくれと思って。しかもエレベーターの中だけなぜか電気ついているんです」

後藤監督
「本当に何もしていなくてそのままなんですよね」

萩原さん
「建物は電気がつかないのに、どうしてエレベーターだけつくのよと」

後藤監督
「あ、それ、今気づきました。なんでですかね?電気通ってないですもんね」

萩原さん
「エレベーターに入れないし、閉じたままなんですが、なぜか明るかったんです。それをいかに当たり前にするかということなので、電気ついているな、4階だなって認識するという。事実なので」

後藤監督
「それはもう因果関係を考えたら引きずり込まれますよ」

・ラストシーンの解釈は人によってかなり分かれそうですね

萩原さん
「私も監督と一緒で、どう死ぬかとかよく考えるからこそ、何か最後は祈りというか願いみたいなものが詰まってるのかなと思っていて。ホラーで、考察型とか体験型とかいろいろ言われていますが、私はすごく優しい映画なんじゃないかと本当は思っているんですが、皆さんどう思われたんでしょうね」

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・最後にお二人からメッセージをお願いいたします

後藤監督
「筋立てとか、ちょっとよくわからないところがあるかもしれませんが、どっちかというと肌触りといいますか、なんとなく観た感覚みたいなものを持ち帰っていただいて、生きづらい今、世の中かもしれませんけど、どう生きるべきかみたいなことをちょっと考えるきっかけになったらすごくいいなと思っております。もし可能であれば、ちょっと気になったらまた観ていただいたり、人に勧めていただいたりしていただけたらすごく嬉しいです。ありがとうございました」

萩原さん
「初日を迎えて、とにかく完成したということと、お客さんに観ていただける日が来た、生きててよかった、あの時死んでなくてよかったみたいな思いもたくさんあるんですが、やっぱり?が多いところについてはそここそ隣の人と話してみたり、ネットでツイッターとかで観た人同士で話してみたりということを何かしてもらえたら、いろんな解釈の仕方で、こういう解釈の仕方で観たらどうなるんだろうって思ってみると、意外と真逆の作品に見えたりする瞬間もあったりします。いろんなものを探しながら何度も観ていただけたら嬉しいなと思います。今日はありがとうございました」

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映画『N号棟』https://n-goto.com は4月29日(金)より全国公開中。
中京地方では4月29日よりミッドランドスクエアシネマ、MOVIX三好、イオンシネマ(岡崎、各務原、東員)、関シネックスマーゴ、5月13日よりコロナシネマワールド(中川、大垣)、5月20日よりユナイテッド・シネマ豊橋18で公開中。

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