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政治家の秘書ってどんな仕事?(映画『決戦は日曜日』)
私たちの知らない世界を知ることが出来るお仕事映画。今回は選挙の裏側を描くコメディ公示!
あらすじ
とある地方都市。谷村勉はこの地に強い地盤を持ち当選を続ける衆議院議員・川島昌平の私設秘書。秘書として経験も積み中堅となり、仕事に特別熱い思いはないが暮らしていくには満足な仕事と思っていた。ところがある日、川島が病に倒れてしまう。後継候補として白羽の矢が立ったのは、川島の娘・有美。谷村は有美の補佐役として業務にあたることになったが、自由奔放、世間知らず、だが謎の熱意だけはある。そんな有美に振り回される日々。父・川島の地盤は盤石でよほどのことがない限り当選は確実のはずだったのだが、政界にはびこる古くからの慣習に納得できない有美はある行動を起こす。なんとそれは選挙に落ちること。前代未聞の選挙戦の行方はいかに!?
日本の政治は謎だらけ?
『エキストランド』や『東京ウィンドオーケストラ』など業界の裏側を描いた作品を手掛ける坂下雄一郎監督の新作は脚本を仕上げるのに5年という歳月をかけた力作。日本政治の悪しき慣習を脚本に取り込み、監督がおかしいと感じた日本の政治の姿を忌憚なく描いている。代議士はあくまで駒と考える地方議員や後援会の人達と、政治の世界のことなど全く知らず、自分が後継者になることが父親の意志だと聞いて立候補したいわゆる「熱い一般人」有美の考え方の違いによる確執、有美の候補者らしからぬ歯に衣着せない、正直すぎる発言に谷村たち秘書たちは右往左往する。そんな秘書たちは支持者と候補者の機嫌をとり、あまり表には出したくないような仕事も担いながら、選挙活動を進めていく。有美の失言は実在の政治家が話した発言をモチーフに作られており、そのことを思い出して、つい笑ってしまう(誰のエピソードなのかは実際に観てお楽しみいただきたい)。政治情勢に合わせて書き足されたであろうエピソードも随所に見える。
テンポのいい会話劇
とにかく役者陣のセリフのテンポがいい。演技派のキャストが揃っている。
代議士のサポートをする私設秘書・谷村には脚本に惚れ込んでオファーを受けたという窪田正孝。ことなかれ主義の谷村が有美と会うことで振り回されながら、秘書という職業に向き合っていくことになる。父親の代わりに選挙の立候補者となる娘の有美に宮沢りえ。世間知らず、候補者としての自覚もない。ただ二世というだけで担ぎ上げられた有美を宮沢りえが大胆に演じる。彼女が演じることでお嬢様としての品と実は複雑な心の中が見えてくる。間違ったことが大嫌いで、嘘がつけない有美の思いに谷村がどう動いていくのかが後半をさらに面白くする要素になっており、その伏線は前半にあるので、しっかり観ていただきたい。
有美と支援者の間で奔走する秘書達には窪田正孝の他に小市慢太郎、音尾琢真、内田慈、赤楚衛二と演技巧者が揃う。ベテラン秘書からまだ入りたての若者秘書までが協力し、選挙当選を目指す。こんなことまでするのかという秘書達の仕事を知ることが出来るが、その仕事の合間合間に聞こえてくる秘書達のやり取りが非常に面白い。
秘書達や有美に「諌言」というクレームを出す支持者の面々も小林勝也、たかお鷹をはじめとする演劇界の重鎮、ベテランが勢揃い。観ているこちらもリアルに圧を感じるパワーで有美とぶつかる。
世襲、ただのお飾り、秘書が作った差し障りのないお決まりな会見文書……。全くクリーンではない、信じられない政界の常識や真実をこの作品を観て笑いながら私たちは知ることになる。
よくわからない政治の世界。しかし政治家を選ぶ権利が私たちにはある。ひとりの新米候補者とその秘書を通して垣間見える様子を観ながら自分の一票を大切にしなければと思った。
映画『決戦は日曜日』https://kessen-movie.com/は1月7日より丸の内ピカデリー他で全国公開。
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