
一人で踊るダンスの出来栄えは?映画『1人のダンス』安楽涼監督インタビュー(Mirageなお客様⑧)
毎年音楽と映画でタッグを組み制作されているMOOSIC LAB2018短編部門で男優賞に輝いた映画『1人のダンス』が60分の長編にグレードアップして6月7日まで池袋シネマ・ロサで公開中だ。
監督・主演は安楽涼。
役者として活動を始めた彼がなぜ映画を作るのか。この作品が生まれたのはどんなことがきっかけだったのか。映画公開に合わせてインタビューした。
Q.安楽さんが役者をやりたいと思ったきっかけは?
安楽監督
「スポーツ推薦で入って高校野球をやってたんですけど、自分の才能の無さに気づいて。今作にも出てるOOPARTZのリュウイチから「映画好きなんだし、役者やってみれば?」と言われて辞める理由が出来たからなんです」
Q.役者としてはどんな活動をされてきましたか?
安楽監督
「真利子哲也監督の『イエローキッド』を見てからインディーズ映画に凄く興味を持って、自主制作映画を主に出演してきました」
Q.役者だけではなく、映画を作り始めたのはなぜですか。
安楽監督
「役者がうまくいかなかったんです。主演した映画も脇役で出た映画も全然上映が無くて。だったら、自分主演で面白い映画を撮ってやろうと思いまして」
Q.映画を作る!と思って突然作れるものなんですか?
安楽監督
「元々リュウイチとか友達のMVを遊びながら撮ってたんです。一歩目って難しいんですよね。僕は女の子に振られて勢いのままその内容を映画にしました。迷わずやるのが良いと思います」
Q.協力してくれる仲間はどんな形で集まったのでしょうか?
安楽監督
「地元西葛西の同級生に『1人のダンス』にも出演している出倉俊輔がいまして。僕と彼で『すねかじりSTUDIO』という映像制作団体を作ったんです。5年も2人でやっていたら周りに仲間が増えて来ました」
Q.この作品が出来るきっかけは何だったんでしょうか?
安楽監督
「前作『弱者よ踊れ』という映画を下北沢映画祭で見てくれたMOOSIC LAB主宰の直井さんが僕に声をかけてくださって作りました。映画の内容は、僕とOOPARTZのリュウイチとの本当の喧嘩です。怒りが抑えられなくて本人出演で作りました」
Q.『1人のダンス』というタイトルの印象が映画を観る前と後では全然変わりますね。これは先にOOPARTZの曲があったんでしょうか?
安楽監督
「元々は全然違うタイトルだったんですけど、映画を撮る直前にOOPARTZの楽曲ができて、送ってきた曲のタイトルが『1人のダンス』でした。そのまま使わせて貰いました」
安定っていいものじゃないっすよ
Q.主人公がとりあえず生活するために自身のこだわりを抑えて仕事をしてしまう映像監督ですが、この設定はどこから生まれたのでしょうか?脚本の片山亨さんとどんな話し合いをしてストーリーを決めていかれたのでしょうか?
安楽監督
「僕の話を元に、脚本の片山享さんが書いてくれました。僕自身が売れていない新人のアイドルを撮っていた事がありまして。本当はやりたい事は別にありながらも、とりあえず生活費を稼ぐ為だけにやっていました。脚本を作っていきながら、自分の怒りがどこに向かってるのかを片山さんと考えていきました」

片山亨さんは役者としてもこの作品に参加している
Q.「こっちの世界に来る?」とサラリーマンの道に誘われるというシチュエーションがあまりにもリアルで。この辺りも実体験でしょうか?
安楽監督
「あれは、脚本家の片山さんの気持ちも入ってるところです。僕の周りもどんどん結婚していって安定していくんです。「安定って良いもんじゃないっすよ」って今でも思ってます」
Q.自分が出ているシーンの撮影はカメラマンとの意思の疎通が非常に大事だと思いますが、どんな感じで指示を出して撮影しているのでしょうか?
安楽監督
「瞬間を大事にしたいんです。信頼してるカメラマンの深谷さんが、何を撮りたいかっていう、その気持ちが欲しいんです。「僕と一緒に呼吸をしてくれ」とか「肉感が欲しい」とか、かなり感覚的な事ばかり伝えてそれで何が撮れるかを試していきました」
Q.主人公は色々大事なことをやり忘れていて墓穴を掘っている気がします。不器用な生き方をしている主人公を監督として、役者としてどう捉えていますか?
安楽監督
「自分の話です。大事な事って誰にだってあるじゃないですか?僕はいつも見失うんですよ。見失うとそれをまた掴みたくて、というか、無い物ねだりにも似てる気がしてるなぁと今、思いました」

安楽涼監督
Q.恋人と揉めた後1人で猛烈にもがいているシーンがまさに1人のダンスですが、このシーンはアップのカメラと俯瞰で撮るカメラアングルで撮影されています。こういったこだわりが沢山あると思います。撮影や編集でのエピソードがあれば教えてください。
安楽監督
「撮影中は、感覚的に僕の演じる安楽に寄り添うべきか、突き放して客観的に捉えるかをずっと考えていました。絵コンテとかは全くなく、その場とその瞬間を切り取る事だけをずっと考えていました。ワンカットが長いのは、切ったら感情の波が切れるからです」
Q.安楽さんとRYUICHIさん以外のキャストはどう選ばれたんでしょうか?
安楽監督
「出倉俊輔は、僕とリュウイチの本当の友達でして。彼も本人役です。大須みづほさんは、映画『恋愛依存症の女』で共演してお誘いしました。他は脚本兼出演の片山享さんからこんな人が居ると紹介して貰ってキャスティングしました。佐藤睦さんは出演されていた映画のお芝居が好きでお願いしました。他の皆さんも出て欲しい人にオファーをしていった形です。オーディションはしていません」
Q.役者も、監督をこれからも続けますか?
安楽監督
「今んとこは、垣根なく続けるつもりです。そんな器用じゃ無いのでいつかはどちらかになるかなと思います」
Q.安楽さんの次回作はもう決まっていますか?
安楽監督
「役者としては『1人のダンス』は脚本で参加していた片山亨さんの初監督映画『轟音』に主演しています。金沢で開催されるカナザワ映画祭で7月14日に上映されます」
自分で動くということは非常にエネルギーがいる。『1人のダンス』を抑えきれない気持ちで踊る男。男のパワーは計り知れない。役者として監督として。安楽涼は自身の道を迷いながら凹みながら、怒りながらもがきならこれからも様々な作品を作っていくだろうと感じた。
『1人のダンス』は現在池袋シネマ・ロサでレイトショー20:45~公開中。6月7日金曜日まで。
おすすめの記事はこれ!
-
1
-
ロイヤル劇場存続をかけてクラウドファンディング開始! 【ロイヤル劇場】思いやるプロジェクト~ロイヤル、オモイヤル~
岐阜市・柳ケ瀬商店街にあるロイヤル劇場は35ミリフィルム専門映画館として常設上映 ...
-
2
-
第76回 CINEX映画塾 映画『波紋』 筒井真理子さんトークレポート
第76回CINEX映画塾『波紋』が7月22日に岐阜CINEXで開催された。上映後 ...
-
3
-
岐阜CINEX 第17回アートサロン『わたしたちの国立西洋美術館 奇跡のコレクションの舞台裏』トークレポート
岐阜CINEX 第17回アートサロン『わたしたちの国立西洋美術館 奇跡のコレクシ ...
-
4
-
女性監督4人が撮る女性をとりまく今『人形たち~Dear Dolls』×短編『Bird Woman』シアターカフェで上映
名古屋清水口のシアターカフェで9月23日(土)~29日(金)に長編オムニバス映画 ...
-
5
-
映画『私の大嫌いな弟へ ブラザー&シスター』公開記念 アルノー・デプレシャン監督舞台挨拶付き上映 伏見ミリオン座で開催決定!
世界の映画ファンを熱狂させる名匠アルノー・デプレシャンが新作『私の大嫌いな弟へ ...
-
6
-
自分の生きる道を探して(映画『バカ塗りの娘』)
「バカ塗りの娘」というタイトルはインパクトがある。気になってバカ塗りの意味を調べ ...
-
7
-
「シントウカイシネマ聖地化計画」始動!第一弾「BISHU〜世界でいちばん優しい服〜」(仮)愛知県⼀宮市にて撮影決定‼
株式会社フォワードがプロデュースし、東海地方を舞台にした全国公開映画を毎年1本ず ...
-
8
-
エリザベート40歳。これからどう生きる?(映画『エリザベート1878』)
クレオパトラ、楊貴妃と並んで世界の三大美女として名高いエリザベート皇妃。 彼女の ...
-
9
-
ポップな映像と音楽の中に見る現代の人の心の闇(映画『#ミトヤマネ』)
ネット社会ならではの職業「インフルエンサー」を生業にする女性を主人公に、ネット社 ...
-
10
-
豆腐店を営む父娘にやってきた新たな出会い(映画『高野豆腐店の春』)
尾道で小さな豆腐店を営む父と娘を描いた映画『高野(たかの)豆腐店の春』が8月18 ...
-
11
-
映画『フィリピンパブ嬢の社会学』11/10(金)より名古屋先行公開が決定!海外展開に向けたクラウドファンディングもスタート!
映画『フィリピンパブ嬢の社会学』が 11月10日(金)より、ミッドランドスクエア ...
-
12
-
『Yokosuka1953』名演小劇場上映会イベントレポート
ドキュメンタリー映画『Yokosuka1953』の上映会が7月29日(土)、30 ...
-
13
-
海外から届いたメッセージ。66年前の日本をたどる『Yokosuka1953』名古屋上映会開催!
同じ苗字だからといって親戚だとは限らないのは世界中どこでも一緒だ。 「木川洋子を ...
-
14
-
彼女を外に連れ出したい。そう思いました(映画『658km、陽子の旅』 熊切和嘉監督インタビュー)
42才、東京で一人暮らし。青森県出身の陽子はいとこから24年も関係を断絶していた ...
-
15
-
第75回CINEX映画塾 『エゴイスト』松永大司監督が登場。7月29日からリバイバル上映決定!
第75回CINEX映画塾 映画『エゴイスト』が開催された。ゲストには松永大司監督 ...
-
16
-
映画を撮りたい。夢を追う二人を通して伝えたいのは(映画『愛のこむらがえり』髙橋正弥監督、吉橋航也さんインタビュー)
7月15日ミッドランドスクエアシネマにて映画『愛のこむらがえり』の公開記念舞台挨 ...
-
17
-
あいち国際女性映画祭2023 開催決定!今年は37作品上映
あいち国際女性映画祭2023の記者発表が7月12日ウィルあいちで行われ、映画祭の ...
-
18
-
映画『愛のこむらがえり』名古屋舞台挨拶レポート 磯山さやかさん、吉橋航也さん、髙橋正弥監督登壇!
7月15日ミッドランドスクエアシネマにて映画『愛のこむらがえり』の公開記念舞台挨 ...
-
19
-
彼女たちを知ってほしい。その思いを脚本に込めて(映画『遠いところ』名古屋舞台挨拶レポート)
映画『遠いところ』の公開記念舞台挨拶が7月8日伏見ミリオン座で開催された。 あら ...
-
20
-
観てくれたっていいじゃない! 第10回MKE映画祭レポート
第10回MKE映画祭が7月8日岐阜県図書館多目的ホールで開催された。 今回は13 ...
-
21
-
京都はファンタジーが受け入れられる場所(映画『1秒先の彼』山下敦弘監督インタビュー)
台湾発の大ヒット映画『1秒先の彼女』が日本の京都でリメイク。しかも男女の設定が反 ...
-
22
-
映画『老ナルキソス』シネマテーク舞台挨拶レポート
映画『老ナルキソス』の公開記念舞台挨拶が名古屋今池のシネマテークで行われた。 あ ...
-
23
-
「ジキル&ハイド」。観た後しばらく世界から抜けられない虜になるミュージカル
ミュージカルソングという世界を知り、大好きになった「ジキル&ハイド」とい ...
-
24
-
『オールド・ボーイ』のチェ・ミンシク久しぶりの映画はワケあり数学者役(映画『不思議の国の数学者』)
映画館でポスターを観て気になった2本の韓国映画。『不思議の国の数学者』と『高速道 ...
-
25
-
全編IMAX®️認証デジタルカメラで撮影。再現率98% あの火災の裏側(映画『ノートルダム 炎の大聖堂』)
2019年4月15日、ノートルダム大聖堂で、大規模火災が発生した。世界を駆け巡っ ...
-
26
-
松岡ひとみのシネマコレクション 映画『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』 阪元裕吾監督トークレポート
松岡ひとみのシネマコレクション 映画『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』が4月1 ...
-
27
-
映画『サイド バイ サイド』坂口健太郎さん、伊藤ちひろ監督登壇 舞台挨拶付先行上映レポート
映画『サイド バイ サイド』舞台挨拶付先行上映が4月1日名古屋ミッドランドスクエ ...
-
28
-
第72回CINEX映画塾 映画『雑魚どもよ、大志を抱け!』足立紳監督トークレポート
第72回CINEX映画塾が3月25日岐阜CINEXで開催された。上映作品は岐阜県 ...
-
29
-
片桐はいりさん来場。センチュリーシネマでもぎり(映画『「もぎりさん」「もぎりさんsession2」上映+もぎり&アフタートークイベント』)
センチュリーシネマ22周年記念企画 『「もぎりさん」「もぎりさんsession2 ...
-
30
-
カンヌ国際映画祭75周年記念大賞を受賞したダルデンヌ兄弟 新作インタビュー(映画(『トリとロキタ』)
パルムドール大賞と主演女優賞をW受賞した『ロゼッタ』以降、全作品がカンヌのコンペ ...
-
31
-
アカデミー賞、オスカーは誰に?(松岡ひとみのシネマコレクション『フェイブルマンズ』 ゲストトーク 伊藤さとりさん))
松岡ひとみのシネマコレクション vol.35 『フェイブルマンズ』が3月12日ミ ...
-
32
-
親子とは。近いからこそ難しい(映画『The Son/息子)』
ヒュー・ジャックマンの新作は3月17日から日本公開される『The Son/息子』 ...
-
33
-
先の見えない日々を生きる中で寂しさ、孤独を感じる人々。やすらぎはどこにあるのか(映画『茶飲友達』外山文治監督インタビュー)
東京で公開された途端、3週間の間に上映館が42館にまで広がっている映画『茶飲友達 ...
-
34
-
映画『茶飲友達』名古屋 名演小劇場 公開記念舞台挨拶レポート
映画『茶飲友達』公開記念舞台挨拶が2月25日、名演小劇場で開催された。 外山文治 ...
-
35
-
第71回 CINEX映画塾 映画『銀平町シネマブルース』小出恵介さん、宇野祥平さんトークレポート
第71回CINEX映画塾『銀平町シネマブルース』が2月17日、岐阜CINEXで開 ...
-
36
-
名古屋シアターカフェ 映画『極道系Vチューバー達磨』舞台挨拶レポート
映画『極道系Vチューバー達磨』が名古屋清水口のシアターカフェで公開中だ。 映画『 ...
-
37
-
パク・チャヌク監督の新作は今までとは一味も二味も違う大人の恋慕を描く(映画『別れる決心』)
2月17日から公開の映画『別れる決心』はパク・チャヌク監督の新作だ。今までのイメ ...