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知多半島映画祭2017 レポートその1 『あのまちの夫婦』

2017/11/22

11月19日に知多半島映画祭2017が東海市芸術劇場大ホールで開催された。
7年目にしてこの映画祭を立ち上げた鈴木啓介プロデューサーの
念願である知多半島での映画製作がかなった。

第一部はその作品の完成披露。
作品は『あのまちの夫婦』。
監督・脚本は俳優・津田寛治。映画好きで映画監督になりたかったと
去年自身が監督した『カタラズのまちで』を知多半島映画祭のコンペ部門に出品し、語っていた。
去年のその出会いが今回の作品製作に繋がったのだ。

上映後のトークの様子の一部をお届けする。

津田寛治×渡辺哲×鈴木啓介プロデューサー 『あのまちの夫婦』トーク

『あのまちの夫婦』 ストーリー
知多半島のローカル出版社に勤める相馬(渡辺哲)は、
愛妻の紀子(赤座美代子)と夫婦二人暮らし。
愛知県の知多半島に住んでいる。

第一線を退いた窓際記者の相馬は、
まだ若い情熱溢れる20代カメラマンの榊原(篠田諒)と共に取材を重ねていく。

相馬はある日、自分の家に榊原を招待し、 愛妻紀子の得意料理を榊原に振る舞う。
ありふれた普通の幸せな毎日。
静かに自然体で生きる相馬夫婦をみて、榊原の心はゆっくりと動き出すが...。

 

あのまちの夫婦はプロデューサー夫婦がモデル

津田監督:
「何度も何度も「映画を一緒に撮りましょうよ。」と熱意を伝えてくださった鈴木さん。
知多半島で出会った人を描きたいと思って考えたとき一番に鈴木さんの顔が浮かんで。
僕は鈴木さんのインタビューをしました。
「普段はお仕事何してるんですか?」と聞いたら
「出版社勤務です。」と返ってきて。
「じゃあ奥さんは?」と聞いたら「看護士です。」と。
こうして主人公夫婦の設定は決まりました。
それを哲さんに当てはめたらどうなるのかを考えたわけです。」

左から 司会の松岡ひとみさん、津田寛治監督、渡辺哲さん、鈴木啓介プロデューサー

左から 司会の松岡ひとみさん、津田寛治監督、渡辺哲さん、鈴木啓介プロデューサー

 

哲さんにお願いしたのは三度目

津田監督:
「いつも怖い役が多い哲さんに窓際編集者をやらせたいと思って脚本を書きました。
哲さんとのタッグは三回目です。
(一回目は音楽がないのに歌うっていう役者任せのミュージカル映画
二回目が無声映画(「カタラズのまちで」)。)
今回も知多半島が舞台ですし、ここ出身の哲さんにお願いしました。
出ていただけてよかったです。」

12テイクと津田監督のビンタ

津田監督:
「せっかくなので鈴木さんに出てもらおうと思って編集長役をお願いしたんです。
返事がないのでどうなんだろうと思っていたら
夜になって「ぜひ僕でお願いします。」ってメールで返ってきたんです。
撮影の1テイク目の芝居が固くて。
もう一回やってもらったら前よりダメになって。12テイクぐらいやったんです。」

鈴木プロデューサー:
「ビンタをするシーンだったんですが僕が津田監督からビンタをいただきました。(笑)」

津田監督:
「相手の顔をひっぱたくシーンで「おもいっきりやってください。」とお願いしたんです。
「意外と痛くないですから、ためしにやりますね。」と
鈴木さんにビンタしたんです。「ほら、痛くないでしょ?」と聞いたら
返ってきた返事が「痛いです。」で(笑)」

鈴木プロデューサー:
「セリフもあるし、緊張していたんです。」

津田監督:
「でもいい芝居してくれてますよ。鈴木さん。」

懐かしの名前と大福

津田監督:
「店の方は自分達の予定そっちのけで協力してくださって。
しかも皆さん、セリフを話すのが上手かったですね。
特に大蔵餅のご主人とかね。」

渡辺哲さん:
「大蔵餅でね、『うんね』という文字を見つけたんです。
うんねは貝なんです。小さい頃常滑にいたときによく食べましたが
東京にいったら全くなくて。だから名前を聞いてとても懐かしかった。
しかもそれが大福に入っているわけですよ。
ご主人と店の商品をお盆に乗せるシーンでアドリブで色々入れました。
うんね大福とか、知多牛大福とか。」

観客からの質問

Q.哲さんはいつここから出たんですか?知多半島の若者に対する印象は?

渡辺哲さん:
「僕は常滑市出身で高校を卒業して大学に入るために19歳で上京しました。
演劇を始めたのはそれからです。
撮影で戻ってきてみていろんな所がずいぶん変わってるなと感じます。
昔に比べてセントレアも出来たし、居着く人が増えた気がしますね。
僕自身ももう地元に両親はいないのに前より多く帰ってきているんです。
地元に残ってくれる人が増えるといいですね。」

Q.もっと知多半島のきれいな画を入れればよかったのではないか

津田監督:
「僕にとって知多半島は人なんです。
人が素敵な暮らしをして住んでいるところはいいところだと思ってます。
だから人を撮りたくてそれをテーマにしました。」

Q.監督は撮影時は役者業も忙しかった時期ではないですか?
津田監督:
「俳優としても忙しかったですが監督業も同時進行でやっていました。
SNSでコミュニケーションを取りつつ
京都で『水戸黄門』を撮影している中で3日間だけ空けてもらって撮影して
また京都に戻りました。
撮影の合間にコーヒーショップとかでパソコンを使って
編集作業もしてましてやっと出来上がりました。」

野間灯台の先にあるもの

Q.野間灯台は恋人のスポットだったりしますが
ラストの暗い夫婦のシーンに使ったのはなぜですか?

津田監督:
「あの夫婦は生と死の淵を生きている二人です。
だからラストは暗くしているんですが
野間灯台は確かに暗いイメージではないですよ。
でも知多半島の人がここで生まれてここから出ずに一生を終える。
そのときにある海って日本海じゃなく知多半島の海だと思うんです。
野間灯台の向こうに広がる海。その向こうに死があった方が幸せじゃないかと。
穏やかな風が吹いている広い土地でこの人たちは優しく自由に生きている。
こういう人たちが老いて死ぬならやはりこの場所だと思ったんですね。」

上映時間よりもトークイベントの方が長いという充実した時間だった。

トーク終了後のショット 左:渡辺哲さん 右:津田寛治監督

トーク終了後のショット
左:渡辺哲さん 右:津田寛治監督

 

『あのまちの夫婦』は今後映画祭にも出品予定とのこと。
映画祭で出会ったらぜひご鑑賞を。

『あのまちの夫婦』ホームページ

知多半島映画祭2017レポートその2へ続く。

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