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映画『湖の女たち』名古屋先行上映舞台挨拶レポート 福士蒼汰さん、松本まりかさん、大森立嗣監督登壇
5月17日(金)公開の映画『湖の女たち』舞台挨拶付き舞台上映が4月22日(月)に名古屋ミッドランドスクエアシネマで開催された。
福士蒼汰さん、松本まりかさん、大森立嗣監督が登壇した。
『湖の女たち』の原作者・吉田修一さんと大森監督のタッグは国内外で賞に輝いた『サヨナラ渓谷』以来10年ぶり。
大森立嗣監督(以下 大森監督)
「吉田修一さんの小説の書評を書いてほしいと依頼されて書いたところ、お礼の手紙を編集者の方からいただいて。そこに吉田さんが大森さんに映画を撮ってほしいとつぶやいておりますというようなことが書かれていたんですね。それで気持ちよくなっちゃいまして。なかなか難しい小説だったんですが、やりたくなってしまったところから始まりました。原作者にそう言っていただけることはなかなかないので、すごく嬉しかったんです」

大森立嗣監督
今回福士蒼汰さん演じる濱中圭介は浅野忠信さん演じる先輩刑事の指示のもと、殺人施設の介護士たちを執拗に取り調べで追い詰める。今回の撮影で福士さんは新たな自分を発見した。
福士蒼汰さん(以下 福士さん)
「いつもは仮面ライダーやアクション映画とか割とエンターテイメント作品に出ることが多くて、次はどんなかっこいいポーズをしようとか、どんなかっこいい言い方でやろうとか、頭ですごく考えて演じているわけです。その方がバシッと決まるからいいなと思ってやっているんですが、今回はそういうものを一切削って、脳みそを使わずに脊髄で反射してお芝居ができるところに行ってほしいという演出が監督からあって。それをやるとどんどん主観が強くなってくるんです。劇場で観た時は主観が強いから自分がやっているように見えるのかなと思ったら逆で、全く違う自分がそこにいたことに驚いて。「俺、こんな顔してたんだ」とか、「あんな風に追い詰めていたんだ」とか劇場で観るまでは気づかない表情とかがたくさんあって。今回はいつもより発見が大きかったですね」

福士蒼汰さん

©️2024 映画「湖の女たち」製作委員会
福士さん演じる濱中圭介の支配に身も心も奪われていく豊田佳代は事件が起きた施設の介護士。役作りの中で介護職への考え方が変わった。

©️2024 映画「湖の女たち」製作委員会
松本まりかさん(以下 松本さん)
「座学から入ったんですが、この座学がとっても大事だったんです。介護士さんがどういう思いで介護をされているのかを、逆の発想で考えていました。偏った言い方になってしまうかもしれないですが、介護をするというのは、介護をしてあげる、お世話をしてあげる感覚なんじゃないかと勝手に思っていたんです。そこがまず真逆でした。介護をさせていただいている利用者さんに「ありがとうございます」の気持ちでいるということを知った時に、目から鱗で鳥肌が立ったぐらいです。佳代は、介護士として生きているわけですが、家でもずっと父の世話をお母さん代わりにしてきたという女性なんです。私としてはその感覚を本当の意味で掴むことができなくて、その言葉を聞いた時にそういうことかと理解が一気に深まりました。利用者さんに「ありがとう」と言ってもらえて、私はここにいるという存在意義や、この人のために何かできているという感覚を得られる。それはとても満たされることで、大変なこともたくさんあると思いますが、なんて素晴らしい職業なんだと。介護職の見方が変わったのは、私の人生にとってもありがたい経験、発見だったなと思います」

松本まりかさん
名古屋での舞台挨拶ということで、名古屋の印象や思い出について司会者から質問された。
松本さん
「ご飯がおいしい。そして心の温かい方たちがたくさん。テレビ局で生放送に出たときにスタジオまでの各部屋を通るたびに皆さん総立ちで拍手で迎えてくださるんです。皆さんなんてあったかい方々なんだろうと。ここまで出迎えられたことはなくて、幸せな気持ちになりました」
福士さん
「高校からの友人が住んでいて、遊びに来てその時にみんなでひつまぶしを食べました。美味しいかったです」
松本さん
「美味しいよね~」
大森監督
「名古屋は駅前にここミッドランドスクエアシネマとシネマスコーレがあるということが素晴らしいです」
トークでは他にも二人をキャスティングした理由や滋賀県ロケでのエピソードも語られた。
舞台挨拶は上映前ということで、これから観る方への一言で締めくくられた。
松本さん
「この作品を撮ろうと思われた監督の覚悟は凄まじいものだったなと感じながら、私はこの作品をやっていました。監督の俳優を信じきるという覚悟の演出を受けて、人を信頼するとはどういうことなのか、並々ならぬ覚悟がないとここまでできないということを私はこの作品で知ることができました。それを自分もやってみようと思って、この1年半撮影が終わってから生きています。この映画で私は自分の人生において大事なことを学びました。演技だけでなく、それを超えてどう生きるかを学べた作品です。その監督の覚悟がこの作品にはとても深いところで現れて、伝わってくる気がしています。そういったものを皆さんが感じとっていただけることができるのではないかと信じておりますので、どっぷりこの映画に浸かっていただければと思います。今日は本当にありがとうございました」
福士さん
「『湖の女たち』という作品は、すごく人間の心の奥底を描いた作品だと思っています。観ていただくと複雑な気持ちになると思います。どうやって言葉に表していいのかわからないような作品かもしれないんですが、そのわからないも含めて自分のことを理解してあげると、またそれもこの作品を一歩理解したことにも繋がるのかなと思います。この人はわからないけど、あの人のことはちょっとわかるかもとか、これとこれが繋がっているんじゃないかとか。自分の中で勝手に妄想を膨らましていって、二人が演じたキャラクターのその先を想像してみることで解決していったりすることもあるかもしれないので、自分勝手に観てくれたらいいかなと思っています。本日はありがとうございました」
大森監督
「原作を映画にするときに記者を男性から女性に変えているんです。これは若い女性で、まだ世の中にあまり疑いがない女性が事件と出会った時に、心をなるべく純粋にグラグラと揺らしていくところが結構始まりになります。その記者は濱中と佳代の関係性を見ることは映画の中ではないんです。でも、お客さんはその2人の関係性も見られるんです。記者の彼女は世界はもしかしたら汚いかもしれない、でももしかしたら美しいかもしれないということを信じたい女性なんです。この2人のことは見れないけど、この2人はこの2人で勝手に世界はもしかしたら美しいかもしれないということをやっていると思って映画を観ていただけると、もしかしたら少しだけ見やすくなるかもしれないです。2人が最後、琵琶湖の沖へ旅立っていきますが、あそこで戦っている姿が僕はものすごい好きなシーンですので、楽しんでいってください」
映画『湖の女たち』https://thewomeninthelakes.jp/ は5月17日(金)公開。
【ストーリー】
老人施設で利用者の殺人事件が起こった。事件の捜査にあたった西湖署の若手刑事・濱中圭介とベテランの伊佐美は、施設の中から容疑者を挙げ、執拗な取り調べを行っていく。その陰で、圭介は取り調べで出会った介護士・佳代への歪んだ支配欲を抱いていく。
一方、事件を追う週刊誌記者・池田は、この殺人事件と署が隠蔽してきたある薬害事件に関係があることを突き止めていくが、捜査の先に浮かび上がったのは過去から隠蔽されてきた恐るべき真実・・・。それは、我々の想像を超えた過去の闇を引き摺り出す。そして、後戻りできない欲望に目覚めてしまった、刑事の男と容疑者の女の行方とは
キャスト:
福士蒼汰 松本まりか
福地桃子 近藤芳正 平田満 根岸季衣 菅原大吉
土屋希乃 北香那 大後寿々花 川面千晶 呉城久美 穂志もえか 奥野瑛太
吉岡睦雄 信太昌之 鈴木晋介 長尾卓磨 伊藤佳範 岡本智札 泉拓磨 荒巻全紀
財前直見/三田佳子 浅野忠信
スタッフ:
原作:吉田修一『湖の女たち』(新潮文庫刊) 監督・脚本:大森立嗣
製作幹事・配給:東京テアトル、ヨアケ

©️2024 映画「湖の女たち」製作委員会
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