
映画『99%、いつも曇り』シネマスコーレ 舞台挨拶レポート 瑚海みどり監督、永楠あゆ美さん登壇
映画『99%、いつも曇り』公開記念舞台挨拶が名古屋シネマスコーレで開催された。
瑚海みどり監督、佐々木樹里役の永楠あゆ美さんが登壇した舞台挨拶の様子をお届けする。
映画『99%、いつも曇り』あらすじ
母の一周忌で叔父から言われた“子どもはもう作らないのか”の一言に大きく揺れる45歳の楠木一葉。“生理も来なくなり、子どもは作れない”と言いつつも、その目に映るのは、子どもを欲しがる50歳の夫・大地の姿。15年前に流産を経験し、子作りに前向きになれない一葉には、自分がアスペルガー傾向にあることも悩みだった。養子を取ることを薦められ、次第にズレていく一葉と大地は……。
瑚海(さんごうみ)みどり監督(以後 瑚海監督)
「監督、主演、脚本、編集、美術の細々としたものから製作まで、何から何までやっております瑚海みどりと申します。初めまして。ようこそお越しいただきました。私が名古屋へようこそ来ましたという感じなんですけれども(笑)、短い時間ですが、少々お付き合いくださいませ。よろしくお願いします」
永楠(えな)あゆ美さん(以後 永楠さん)
「樹里役で出演と制作を少しお手伝いさせていただきました俳優の永楠あゆ美と申します。今日はお越しいただいてありがとうございます」
Q.映画をつくるきっかけから教えてください。
瑚海監督
「私が50歳になる年にやろうと急に思い立ちました。例えばですね、映画美学校というところに通い始めまして、それで短編を2個作ってちょこちょこ映画祭などで受賞したものですから、調子に乗り始めて、ちょっと腰が重くなり始めているところだったので、勢いがあるうちに長編を作ろうということで。ちょうどその時にコロナ禍の関係で文化庁から助成金が出る年だったんです。自分の小遣いで出来る作品はたかが知れているので、その支援金が出るうちに作ろうと思ったんです。私は役者なので、ちゃんと久しぶりにアクティングのワークショップに通っていたんですが、そこで永楠さんと同じ組み合わせになって。そういう企画をやろうかなと思っているんだけどと話をしたんです」

瑚海みどり監督
永楠さん
「「こういうのは勢いでやらないと億劫になると思うの」とすごいおっしゃっていたのをすごく覚えていて、その勢いをちょっとでも後押しできればと。私は今静岡県に住んでいるんですが、そこで私の夫と一緒に40分ぐらいの作品を作ったばかりだったので、「何かお手伝いできると思います」と言いました」
瑚海監督
「「一緒にやります」と言って制作をやってくれるという話になって。だったらいい役があるので映画にも出ちゃってと」
永楠さん
「全然そんなつもりはなかったんですが、すごい嬉しかったです」
瑚海監督
「そんな感じで始まった企画です。今日は9月28日じゃないですか。ちょうど2年前に撮影が始まったんです。1月から自分の中で話を組み立てていて。それから3、4、 5月ぐらいで一気に脚本を書いて。それで撮影は秋にしようという風に考えました。夏が好きなので夏の話にしたいなと思っていたんですが、暑すぎるとちょっと自分もダレてしまうので、秋口になったら撮ろうと思っていたんです。そうしたら今度はコロナの関係で延期になっていた演劇とかをやることになったんですという役者がどんどん増え始めたので、秋口までに作らないと、みんなのスケジュールが取れないということで、家族の揃うシーンとか、家を使っているシーンはレンタルで借りていて、4日ぐらいしかレンタルしていないのに、家のシーンがたくさんありまして、カット数を計算していったら、1日9時間ぐらいはみ出ることになって。どうやってやるの?と。カットを削ることはできないので、1カットにかける時間を短くしようと考えて、現場に行ったら撮影をどんどんやっていく感じで、 リハーサルを前もってやりました」
永楠さん
「そうですね。監督補とか助監督の方が走り回っていました」
瑚海監督
「1週間ぐらいでの話ということになっているので、自然の光で撮っていくと、次のシーンは別の日になっていることが多く、「次、何日目です」とか、「戻ります」とかすごいバタバタやっていったことを思い出して」
永楠さん
「そうですね、スタッフも女性の方がすごく多かった。瑚海さんが監督だから女性の方が多くて、なんか謎の一体感がありました」
瑚海監督
「優しい話でもありましたし、私が女性ということもあって。なるべく女性の優しい雰囲気で作っていきたいなと思いまして」
永楠さん
「そう、だからタイトなスケジュールの割には殺伐とした空気にはならずに、結構なごやかな感じで」

永楠あゆ美さん
Q.二階堂智さんにはどういう経緯でオファーされたのでしょうか
瑚海監督
「撮影に入る前年の11月ぐらいに仲のいいしゅはまはるみさんから「ちょっと友達の役で出てくれないか」とオファーがあって出演した作品で二階堂さんが私の恋人役で楽屋が一緒だったんです。長編を作る前に作った短編が東京国際映画祭で賞をいただいているんですが、今回、二階堂智さんの弟役をやっている曽我部洋士さんがその時の相手役をやってくれていて、二階堂さんの生徒さんなんです。その短編がfacebookでも話題になっていたので、見せてという話になって、見た後に「今度、ぜひ出して」みたいな話になって。「いつ出してくれるの?」みたいな感じで言うので、「出られますか。ちょっといい役ありますよみたいな感じで」」
Q.大変なシーンが多いですよね、監督をやりながら、役者もやる。うまくいったんですか。
瑚海監督
「まずはリハーサルが必要でした。監督やって自分で主演という欲張りなことをやっているので、本番はもう本当に撮っていくだけと自分で決めたので、リハーサルをワンシーンごとみんなに集まってもらって、その時に演出をしました。ドキュメンタリー風に撮りたいという欲望があって。というのもこういうトピックを扱っていると、デフォルメしたような演技をしてしまうと観ている方に自分の事のようにして観てもらえなくなって、そういう人いるよねみたいな感じで遠い話になってしまうので、できるだけリアルドキュメンタリーに見えるようにしたかったんです。皆さんには、ちょっとでもオーバーな芝居をすると「人に見せるような芝居はしなくていいです。ちゃんと前の人と会話してください」とお願いしました。大人の俳優さんは比較的この気持ちをわかってくれるから楽だったんですが、子役はまだ経験が少ないので何度もやりましたね」
Q.撮影は順調だったんですか?
瑚海監督
「タイトルは『99%、いつも曇り』ですが、秋口なのでいい天気ばかりでした。雨のシーンがあるので、雨が欲しいなと思った朝に、雨が降ったんです。朝は違うシーンを撮る予定だったんですが、すぐ撮影スタッフに連絡して、家からまず撮りたいからと変更して土砂降りのシーンを撮りました。あのシーンからガラッと雰囲気が変わっていって、暗雲立ち込め、だんだん雰囲気が悪くなっていくので、土砂降りが欲しかった時に雨が降りました。それ以外はいい天気で」
永楠さん
「現場の制作としては雨になると思って動いていなかったので、やばい雨と思っていたら瑚海さん、雨にめちゃくちゃ喜んでいて」
瑚海監督
「ちょっと時間が経つと雨がやんでしまうので、また降って!と思うと、また降って(笑)」
永楠さん
「それも不思議でしたよね。移動中は雨が上がって、撮り始めるとまた降ってきてみたいな」
Q.長編初監督ですが、どうでしたか!
瑚海監督
「気分上々です。ただその終わった後、宣伝が1番大変でしたね。お客さんに伝えていく、知らない人に伝えていくというのはなかなか難しい。インディーズですから、有名な人がいない中で、観ていただいた方にはちょっと喜んでいただける、よかったと言って終わる。もうそれまでは胃がキリキリ、 内臓ぐちゃぐちゃな感じでございました」
永楠さん
「本当にお客様に足を運んでいただくのは、動画サービスもたくさんありますし、面白い作品がこれだけ世の中に溢れている中で、どう作品を認知していただくか、お客様に映画館に足を運んでいただくことというのは、大変で瑚海さんはいろんな映画館に足運ばれて、チラシを配ってすごいなと思いました」
Q.田辺・弁慶映画祭でグランプリを受賞したのは大きかったですね。
瑚海監督
「大きかったですね。有名じゃないというところから何か冠が欲しかったわけです。映画祭にどこか入れないかなというところで、東京国際映画祭にエントリーはして、上映していただけるということで、よしっと思い、そうしたら田辺・弁慶映画祭でも。田辺・弁慶映画祭は和歌山県で行われているインディーズフィルムの登竜門的映画祭なんです。そこで賞をもらうと監督が商業映画デビューすることがあるということで、登竜門という言い方をされています。そこで グランプリを頂戴したんです。グランプリ、観客賞、俳優賞、それから読売新聞構成員の人たちで作った賞の4部門で俳優賞は2人でもらったので、5冠だったんですが、それが弾みになりましたね」
Q.次の作品制作の予定はありますか?
瑚海監督
「2作品目は作りたいのは山々です。考えていることもありまして、プロットを少し書いています。今はちょっとプロデューサー募集中でございまして、時々プロデューサーの方とお会いしてこの作品を観ていただいて、お話をしている状態です。これを次で超えなければというプレッシャーもありますので、数字が採れるなら私は俳優としては主役でなくてもいいなと思っていて。端の方の意地悪な役とかで出るのもいいかなとは考えています」
永楠さん
「瑚海さんのおっしゃる通り、この映画を作っても観ていただくのが難しいというのは、私も自分自身で作って感じたことなので、ただ出て、 出演作公開を待つみたいなことではなく制作に携わっていきたいとか、お客様に届ける、どうしたらお客様に興味を持っていただけるのかというところをもうちょっと学んでいきたいなと思います。もし瑚海さんが今後また撮られるのであれば、何かお手伝いしたい。ただ出るだけではなく、一緒に作っていくことが今後もできたらいいなと思います」
瑚海監督
「この映画は今日始まったばかりでございます。ぜひ1週間シネマスコーレさんで上映していただきますので、面白いと思った方はSNSのアカウントをお持ちでしたらぜひとも感想をあげていただいて、 隣近所の方にも「あなたに合っているいい映画があったわよ」と言ってどんどん、どんどん宣伝していただければ幸いでございます」
Q.最後に監督から一言お願いいたします。
瑚海監督
「この映画はどういう気持ちで作ったかというと発達障害傾向の私が「アスペルガーじゃないの?」と言われた過去がありまして。私はこのアスペルガーという言葉をすごくかっこいい言葉だと思い込んでいたんですが、昨今悩んでいる人が多いとも聞いています。でも悩むことはないというか、誰もが生きることに悩んでいる。「あなただけじゃないの。みんなそうだよ」という応援歌の気持ちで作ったものです。悩んでいる方がいたらぜひその人たちにも勧めていただきたいですし、もちろん映画好きの方にも勧めていただきたいと思います。昨日から佐賀・唐津のシアターエンヤというところでも上映が始まっています。佐賀とシネマスコーレの上映をもって、一旦、上映は一段落、終了と思っています。ただ、これから先は上映会とかで回っていきたいと思っていますので、是非ともご感想をいただいて、この映画を少しずつでも皆さんが遠くへ遠くへと運んでいただけるようによろしくお願いいたします。短い時間ではございましたが、お付き合いいただきましてありがとうございました」
映画『99%、いつも曇り』は現在名古屋シネマスコーレ、唐津シアターエンヤで公開中。
おすすめの記事はこれ!
-
1
-
「空っぽ」から始まる希望の物語-映画『アフター・ザ・クエイク』井上剛監督インタビュー
村上春樹の傑作短編連作「神の子どもたちはみな踊る」を原作に、新たな解釈とオリジナ ...
-
2
-
名古屋発、世界を侵食する「新世代Jホラー」 いよいよ地元で公開 — 映画『NEW RELIGION』KEISHI KONDO監督、瀬戸かほさんインタビュー
KEISHI KONDO監督の長編デビュー作にして、世界中の映画祭を席巻した話題 ...
-
3
-
明日はもしかしたら自分かも?無実の罪で追われることになったら(映画『俺ではない炎上』)
SNSの匿名性と情報拡散の恐ろしさをテーマにしたノンストップ炎上エンターテイメン ...
-
4
-
映画『風のマジム』名古屋ミッドランドスクエアシネマ舞台挨拶レポート
映画『風のマジム』公開記念舞台挨拶が9月14日(日)名古屋ミッドランドスクエアシ ...
-
5
-
あなたはこの世界観をどう受け止める?新時代のJホラー『NEW RELIGION』ミッドランドスクエアシネマで公開決定!
世界20以上の国際映画祭に招待され、注目されている映画監督Keishi Kond ...
-
6
-
『ぼくが生きてる、ふたつの世界』の呉美保監督が黄金タッグで描く今の子どもたち(映画『ふつうの子ども』)
昨年『ぼくが生きてる、ふたつの世界』が国内外の映画祭で評価された呉美保監督の新作 ...
-
7
-
映画『僕の中に咲く花火』清水友翔監督、安部伊織さん、葵うたのさんインタビュー
Japan Film Festival Los Angeles2022にて20歳 ...
-
8
-
映画『僕の中に咲く花火』岐阜CINEX 舞台挨拶レポート
映画『僕の中に咲く花火』の公開記念舞台挨拶が8月23日岐阜市柳ケ瀬の映画館CIN ...
-
9
-
23歳の清水友翔監督の故郷で撮影したひと夏の静かに激しい青春物語(映画『僕の中に咲く花火』)
20歳で脚本・監督した映画『The Soloist』がロサンゼルスのJapan ...
-
10
-
岐阜出身髙橋監督の作品をシアターカフェで一挙上映!「髙橋栄一ノ世界 in シアターカフェ」開催
長編映画『ホゾを咬む』において自身の独自の視点で「愛すること」を描いた岐阜県出身 ...
-
11
-
観てくれたっていいじゃない! 第12回MKE映画祭レポート
第12回MKE映画祭が6月28日岐阜県図書館多目的ホールで開催された。 今回は1 ...