
飛騨の地と共に木樵として生きる(映画『木樵』)
岐阜県飛騨地方は9割が山林に覆われている。この飛騨地方で約50年間、木樵の仕事で生計を立てている高山市滝町の面家(おもや)一男さんと弟の瀧根(たきね)清司さんとその家族、弟子たちの日常を1年にわたり追い掛けたドキュメンタリー映画『木樵』が10月1日から名演小劇場と岐阜CINEXで先行公開される。
木樵とはどんな職業か。
木樵はきこりと読む。童話や昔話では斧を持って山で木を切っているあの人たちのことだ。
今の木樵は斧をチェンソーに持ち替え、車で山に入り、木を伐採し運ぶこともある。
飛騨地方の木樵として一目置かれる面家さん兄弟は車を山に入れずに切った木を運ぶ技術を持つ。
山を傷つけず、自然に生える木を間引きしながら木の成長を助け、植林し、またそれを切る。
実は山の災害を減らし、現在世界中で提言されているSDGsに繋がる役目も果たしている。
そんな面家兄弟に出会った岐阜県飛騨市小坂町出身の宮﨑政記監督は彼らの今のリアルな姿を捉えた。

面家一男さん
昔に比べると山で木を切る木樵は減り、面家兄弟と同じ年代の木樵も次第に引退しはじめているが、若者たちが修行にやってきて、面家兄弟の技術を習得し、未来へ繋げようとしている姿や、林業がその土地と深く繋がっており、緩やかに流れる時間の中で森林と共に古くからの伝統を継承し家族とともに生活する「山の暮らし」が映し出される。
それは飛騨地方で生きる魅力と言ってもいいだろう。
決して木樵が人手不足で困っているとか、経済的に苦しいとかそういうことを訴えたドキュメンタリーではない。
飛騨地方という自然豊かな場で、生きる人々を真っ直ぐに捉えた作品だ。
面家さんと宮﨑監督が会話する言葉は飛騨弁で、字幕がないので、わかりづらいこともあるかもしれないが、それもリアルな描写だろう。(ちなみに筆者は岐阜県民なので、8割ぐらい理解出来た)
ナレーションは、岐阜県郡上市在住の俳優・近藤正臣。ドラマ撮影でやって来た際に景色の美しさに惚れ込み、移住した彼だからこその語りの説得力がある。
山と自然と向き合い生きる人たちの姿は、自然から離れて忙しく生きる私たちにこんな生き方もあるのだと教えてくれる。
木樵達が木を切るチェンソーの音が山に響く。その姿を木が倒れるまでカメラを止めず回し続けるシーンは時間を忘れて見入ってしまうはずだ。
映画『木樵』https://kikori-movie.com/ は10月1日より愛知 名演小劇場、岐阜 岐阜CINEX、高山 でこなる座で先行公開(でこなる座は10月1日~4日まで)。10月14日よりヒューマントラストシネマ有楽町他で全国順次公開。 東海3県では10月14日より大垣コロナシネマワールド、イオンシネマ(各務原、津)でも公開。
舞台挨拶情報
【岐阜CINEX】
10月1日(土)10:00の回上映後
古田肇岐阜県知事挨拶
舞台挨拶&トークイベント
登壇:宮﨑政記監督、面家一男さん(『木樵』出演)
【名演小劇場】
10月1日(土)13:40の回上映後
舞台挨拶&トークイベント
登壇:宮﨑政記監督、山崎真理子さん (名古屋大学/生命農学研究科 森林・環境資源科学専攻)
【でこなる座】
10月2日(日)10:00の回上映終了後
登壇:長瀬公昭(飛騨弁解説者)
13:00の回上映終了後
登壇:田中明高山市長
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