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©2020「名も無い日」製作委員会

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名古屋を舞台に製作されたある家族の物語(映画『名も無い日』日比遊一監督インタビュー)

愛知県名古屋市発信の映画『名も無い日』。

記者発表から3年。満を持して公開された(全国公開は6月11日から)。
カメラマンでもある日比遊一監督が自身に起きた実話を元に描いた作品だ。公開を前に日比監督にお話を伺った。

Q.驚くほどの豪華キャストですね。

日比監督
「そうですね。なかなか狙って集まるメンバーじゃないと思います」

Q.永瀬さんは写真も撮っていらっしゃるのでその辺りにシンパシーを持ってオファーされたということもありますか?

日比監督
「今まで写真家が主人公の映画を観てきて「こうしたくないな」というのは色々とありました。ある時、写真家としての永瀬さんに密着する番組を観たんです。それを観てこの人しかいないなと。俳優として小道具の扱い方ってとても大切なことだと思うんです。例えば医者の役を演る時にメスの持ち方を勉強するというのは俳優としては当たり前だと思うんですが、永瀬さんはカメラの扱い方が自然で馴染んでいる。やっぱり自分の分身なので特に今回はそういう部分にはこだわりました」

Q.作品の中でカメラを握っている永瀬さんは本当に使い慣れている感じがします。永瀬さんが実際に陶芸を撮影された作品も拝見したことがありますが、すごく好きです。

日比監督
「映画というのは主人公が背負ったものが実際に見えなくても投影されていないといけないじゃないですか。永瀬さんはそれをセリフなしで背負える数少ない日本の俳優だと思います」

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Q.映画の中でも「写真は撮る人の想いなんだ」という台詞が出てきますね。

日比監督
「僕は魂は写ると思っています。僕は写真の学校にも映画の学校にも行ったことがありません。唯一行ったことがあるのは俳優学校です。俳優になろうと思って東京に行きました。写真については何もわからなくて。当時のフラストレーションを写真に映し込んでいったという記憶があります。写真家になりたいと思って始めたわけではないんですが、皮肉なことに最初に認められたのが写真でした。写真を撮り始めたのはオーディションにいくために宣材写真が必要だけど、写真家に撮ってもらうのが高い上に自分で納得が出来なくて。それなら自分で撮った方がいいと自分の写真を撮り始めたのがきっかけです。俳優としては、自分は才能がないと早いうちに気づいたんですが、なにかが形になるまでは帰国しないと意固地になっていたのかもしれません。自分で舞台をプロデュースして、自分で演じるということをやっていくうちに、演出がやりたいと思うようになりました。それなら舞台じゃなくて映画だと。写真は絵が下手なのでストーリーボードを作るためにも色々撮ってましたね」

Q.観終わった後、写真を撮ったみたいに一つ一つ思い出せるそんな素敵なシーンばかりでした。

日比監督
「写真にも共通しているんですが、絵の切り取り方は意識してます。ポストカードみたいな絵や構図は嫌いなんです。」

Q.家の中の美術についてもこだわりを感じます。時間の経過が見事といいますか。

日比監督
「自分の記憶に残る実家の姿を忠実に再現しています。出来上がったものを見たときは涙が出ましたね。美術担当の方、スタッフの皆さんのお陰です」

Q.監督にとって熱田は故郷です。ご自身をテーマに撮りたいと思われたのはいつ頃からだったんでしょうか。

日比監督
「私は名古屋市熱田区に生まれ、高校卒業後に俳優を志してアメリカに行きました。その後、ニューヨークで写真家としてようやく認められ、念願だった映画監督のチャンスに恵まれました。しかしその矢先に、実家に住む弟の悲報を聞きました。急遽名古屋に戻り、弟の生活の跡を目の当たりにした時、自分がこれまでにしてきたことを考え、罪悪感に苛まれました。それからどうしようもない自分の想いを書き貯めていきました。死んでしまった弟に手紙を書いたこともあります。そんなことを繰り返していくうちに、今、自分が向き合っていることは、実はもっと根本的なことで、普遍的なものではないかと思い始めたんです。

©2020「名も無い日」製作委員会

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人間には一つの共通項がある。それは、この世に生まれてくること、そして死んでいくことです。それは好き嫌いの問題ではない。受け入れる受け入れられないということでもない。人間にとって避けられないテーマです。そんな弟の死が、自分の中で突然一本の木の幹のようなものとして生え始めたのがきっかけでした」

Q.名古屋弁がとてもネイティブなセリフ回しに感じました。永瀬さんが名古屋弁を話している!と新鮮で。指導は地元の方もされたのでしょうか。

日比監督
「指導には地元の方にも入っていただいていますが、主人公の設定は25年間ニューヨークに居るという設定なんで、その辺は私自身のしゃべり方というか、俳優さんが演技をする上で差し支えのない程度にしたつもりです。言葉の持つ音は、ある種の音楽です。コテコテの名古屋弁ではなく、そこに息づく人たちの響きをきちんと表現したいという気持ちがありました」

Q.草村礼子さんの味がある演技が好きです。

日比監督
「草村さんは撮影の前日に名古屋入りしてくださって。名古屋に住む昔からの友人がいらっしゃるみたいで事前にチェックをしてもらったと。実際に、私の祖母がモデルになっているので、一行一行、「本当にこれで良いですか、こんな感じ?」とおっしゃいながら細かくチェックされていましたね」

Q.岡崎紗絵さんは愛知県出身だそうですね。

日比監督
「何十人という人をオーディションさせてもらって、迷いなく彼女に決めました。なんと岡崎さんのお父さんの出身校が名古屋というぐらいならわかるんですけど、熱田区の白鳥小学校。撮影の途中に彼女から言われたんです。「監督って白鳥小学校ですか?」って。「どうして?」と聞き返したら「うちの父親白鳥小学校なんです」って言うんですよ。「えー!」とびっくりして。年齢を聞いたら僕より一つ上だと聞いて心底びっくりしました」

Q.もしかしたら学校の廊下とかですれ違っていたりしていたかもということですね。

日比監督
「あったかもしれないですね。同じ時期に同じ小学校にいたってことですから。凄い偶然ですよね」

Q.大久保佳代子さんは三河地方のご出身ですが、愛知県出身ということでの起用ですか?

日比監督
「大久保さんのことはテレビでしか拝見したことがなかったのですが、最初から彼女がいいなと思っていました。バラエティ番組では一見好き放題言うキャラのタレントさんですが、彼女の持つオーラというか、エネルギーに優しさを感じていました。直子という役のもつ優しさと、大久保さん自身が重なったんです。現場では「私は三河生まれで、生粋の名古屋人じゃないんです」と、名古屋弁には少し手こずっていましたが、真面目に取り組んでくださいました」

Q.オダギリジョーさんの役(章人)はとても難しい役だと思いました。映画のあらすじを観ただけではわからない事実が見えてきて、追い込まれていくと言いますか。

日比監督
「章人というキャラクターがどうしてあの様になってしまったかというのは、多分わかる人にはわかると思うんです。そこの説明が要るかどうかということなんでしょうが、僕は説明的な表現が好きじゃないので、あの表現にしました。当時、オダギリさんは同時進行でまったく違うタイプの役をやっていると聞いていました。もしかしたら切り替えが簡単ではなかったかもしれませんが、演技を超えた、繊細さを見せてくれました。永瀬さんもそうですが、セリフのないところが抜群でしたね。画の中で、ただそこにいるだけで語りかけられるようなモーメントになる。いい俳優ってそういうことだと思います」

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Q.撮影は3年前、記者発表の後すぐにされて、無事クランクアップしたことも聞いていましたが、いつ公開になるのかなとずっと思っていました。コロナ禍だから延期ということだったんですか?

日比監督
「まったくそういうことではありません。なんとかクランクインして、撮影も無事終了したんですが、やはり自分にとっては重いプロジェクトで、撮り終わった後に僕自身が監督したものを、まともに見られなかったんです。すぐ編集作業に入っても、俳優さんたちのしてくれた仕事に対して、しっかりと受けて立つことが出来ないと思ったんです。8ヶ月近く見られませんでした。幸いなことに映画会社が入っていなかったので、いついつまでに完成しないといけないとかの制約はなかったので、そこはラッキーでした」

Q.監督ご自身の物語を撮られるということの重さというのがどれぐらいなのかを観終えて考えました。

日比監督
「弟の死によって出来た作品。兄として、一人の人間として、そしてアーティストとして、どう受け止めるべきか正直定かではありません。「オレの題材で、映画を撮りやがって……自分だけかっこいい思いをして」なんて思っているかもしれません。なかなか消化は出来ていません。本当は作品ともしっかり向き合う時間が取れないのかもしれません。これから先、少しずつ感情が湧いてくるんじゃないかと思っています」

Q.兄弟3人でのシーンは本当によかったです。

日比監督
「あのシーンはいろんな場所に置いてみました。試行錯誤をして幾つものバージョンを作りました。場面場面を並び替えてみてどう変わるか。例えば歩くだけのシーンを今は3秒あるけど1秒半にしたらどうだろうかとか。全体的に短くしたバージョンも作ったりして、やっと最後の編集に辿り着きました。自分の中ですべての答えに行き着かないと気がすまなかったんです」

Q.カメラを持っていながら写真を撮れない主人公の思いが伝わってきて、家族という存在を改めて考えました。

日比監督
「かつて「シャッターを切る」という言葉がありました。主人公の使うカメラはフィルムカメラです。SDカードに保存するデジタルカメラと違って、フィルムは焼き付けてしまえば消えることはないし、消すことも出来ない。たとえそれが ”過ち” であっても「ああ、そう言えば、そんなこともあったな……」 と、まるで他人事のように、都合よく過去をデリートして生きる現代人が増えてはいないでしょうか。シャッターを切った瞬間、フィルムはファインダーに写った絵を切り取って焼き付ける。そんなワンショットの重み、そして大切さは、人生そのものと似ている、そういう想いも込めたつもりです」

Q.いよいよ公開ですね。

日比監督
「偶然とはあまりにも言い難いコロナという目に見えない敵が立ちはだかる中、生と死というものが他人事ではなく、年齢別でもなく、背中合わせに皆、同等にある……そんなことを体感しながら日々が過ぎていく。

『名も無い日』は、私の私小説から始まったプロジェクトではありますが、これを読む皆さんのストーリーでもあると思っています。地元名古屋の方、熱田区の皆さんに観てほしいという気持ちがあります。そこから東海地方、全国、世界に向けて発信したいですね。宜しくお願いします!!!」

映画『名も無い日』https://www.namonaihi.com/は現在ミッドランドスクエアシネマほか東海3県先行公開中。6月11日より全国公開。

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