
EntaMirage! Entertainment Movie
映画『僕の中に咲く花火』岐阜CINEX 舞台挨拶レポート
映画『僕の中に咲く花火』の公開記念舞台挨拶が8月23日岐阜市柳ケ瀬の映画館CINEXで開催され、清水友翔監督、主演で稔役の安部伊織さん、朱里役の葵うたのさんが登壇した。
本作は岐阜県安八郡神戸町出身の清水監督の初めての長編監督作品。脚本も清水監督自身が手掛け、岐阜を舞台に撮影している。
⇒作品レビューはこちらから
岐阜撮影秘話
清水監督は地元岐阜での撮影について、南平野小学校や大垣西高校など、自身のゆかりの地でも撮影したことを明かした。特に高校の撮影では、清水監督の在学中を知っている先生たちが見学する中での撮影となり、「中退してしまいましたが、自分なりの恩返しができたと感じています」と話した。

清水友翔監督
安部伊織さんは、「様々な場所で撮影するため、朝から晩までぎっしり撮影スケジュールが詰まっていました。岐阜の皆さんには馴染み深い場所が映画にたくさん出ていると思います」と話した。

安部伊織さん
葵うたのさんは、撮影日数は3日間だったものの、「空き時間を利用して高山の宮川を散歩したり、日本酒を飲んだり、喫茶店のモーニングに出かけたりして、岐阜を満喫しました」というエピソードを披露した。

葵うたのさん
鑑賞した観客からの質問にも答えるQ&Aセッションの時間も設けられた。
ある観客は、10代の少年特有の繊細さや危うさが、セリフを最小限に抑えた演出の中で、安部さんの眼差しによって表現されていたと称賛した。
安部さんは、「脚本も説明が少なく、セリフも最小限で、余白を存分に活かした作品です。主人公・稔が衝動的に動いてしまう芝居が出来たらと思い、演じました。目の演技を観ていただけて、役者冥利につきます」と答えた。
清水監督は、黒澤明監督や小津安二郎監督といった先人の監督たちの手法を参考にしつつ、登場人物の感情を直接的に説明するのではなく、視線や姿勢、沈黙といった「間」を通じて描くことを目指したという。
「最近、SNSで流す動画が増え、時代の流れから間を切りがちな作品が多いと思うんですが、自分は昔ながらの日本映画のリズムを意識して撮りたいと思い、役者さんにもそういったお芝居をお願いしました」と話した。
タイトルにも入っている「花火」が映画の中でどのような意味を持つのかという質問に安部さんは、「花火は元々死者を弔う儀式として始まったものであり、映画の中では死を象徴していて、魂が破裂して消えていくイメージ。稔はぐちゃぐちゃな感情で、何がしたいのかわからなくて衝動的に動いてしまう。花火にそのイメージを重ねて演じました」と答えた。
清水監督は、「花火が上がっていく音が悲鳴のように聞こえ、爆発した瞬間が死、そして煙となって空に残る様子が浄化していく魂のようだと思ってこの映画のタイトルをつけました」と明かした。
最後に、登壇者たちは改めて作品への思いを語った。
葵うたのさん
「この映画を観てくださってありがとうございます。私はこの映画が大好きで、観たかった映画に参加出来たことが嬉しいですし、救われました。大人になると失うものが多いですが、人の温かさに触れて、人や自分を許せるようになったりする。いろんなことを考えさせてくれる映画です。ぜひまた劇場で体験していただけたら嬉しいです」
安部伊織さん
「ハッピーになるような描写は多くはないですが、大切な人の死を受け入れることであったり、心が苦しい時に寄り添えるような映画になっていると思いますので、この映画がお守りのような作品になればと監督が以前おっしゃっていたことがあるんですが、心の片隅にずっと置いていただければ幸いです。ありがとうございました」
清水監督
「2年半かけて24回脚本を書き直しました。映画をつくる上で、資金集めから始めました。最初は自分の友人や先輩が支援してくださり、支援の輪が広がって、団体や企業からも支援いただきました。多くの人々の温かい支援があって初めて完成しました。この映画が存在するということは「悩んでいる人を助けたい」という人々の思いの結晶であり、「温かい人たちがいることの証明」になりました。ご覧いただいた通り、重めの作品で、ただの青春映画ではないと思うんです。賛否両論分かれるようなテーマだと思いますし、賛否両論をいただけることがまず何よりありがたいことだなと思っています。ぜひこの作品をSNSでシェアしていただいたり、周りの方に広めていただけたらありがたいです。よろしくお願いいたします」
上映後、劇場ロビーではサイン会も行われた。
舞台挨拶はCINEXの他にTOHOシネマズ モレラ岐阜、TOHOシネマズ 岐阜でも開催された。
映画『僕の中に咲く花火』https://bokuhana.ayapro.ne.jp/ は現在岐阜、愛知先行公開中。8月30日(土)より、ユーロスペースほか全国順次公開。
おすすめの記事はこれ!
-
1
-
「空っぽ」から始まる希望の物語-映画『アフター・ザ・クエイク』井上剛監督インタビュー
村上春樹の傑作短編連作「神の子どもたちはみな踊る」を原作に、新たな解釈とオリジナ ...
-
2
-
名古屋発、世界を侵食する「新世代Jホラー」 いよいよ地元で公開 — 映画『NEW RELIGION』KEISHI KONDO監督、瀬戸かほさんインタビュー
KEISHI KONDO監督の長編デビュー作にして、世界中の映画祭を席巻した話題 ...
-
3
-
明日はもしかしたら自分かも?無実の罪で追われることになったら(映画『俺ではない炎上』)
SNSの匿名性と情報拡散の恐ろしさをテーマにしたノンストップ炎上エンターテイメン ...
-
4
-
映画『風のマジム』名古屋ミッドランドスクエアシネマ舞台挨拶レポート
映画『風のマジム』公開記念舞台挨拶が9月14日(日)名古屋ミッドランドスクエアシ ...
-
5
-
あなたはこの世界観をどう受け止める?新時代のJホラー『NEW RELIGION』ミッドランドスクエアシネマで公開決定!
世界20以上の国際映画祭に招待され、注目されている映画監督Keishi Kond ...
-
6
-
『ぼくが生きてる、ふたつの世界』の呉美保監督が黄金タッグで描く今の子どもたち(映画『ふつうの子ども』)
昨年『ぼくが生きてる、ふたつの世界』が国内外の映画祭で評価された呉美保監督の新作 ...
-
7
-
映画『僕の中に咲く花火』清水友翔監督、安部伊織さん、葵うたのさんインタビュー
Japan Film Festival Los Angeles2022にて20歳 ...
-
8
-
映画『僕の中に咲く花火』岐阜CINEX 舞台挨拶レポート
映画『僕の中に咲く花火』の公開記念舞台挨拶が8月23日岐阜市柳ケ瀬の映画館CIN ...
-
9
-
23歳の清水友翔監督の故郷で撮影したひと夏の静かに激しい青春物語(映画『僕の中に咲く花火』)
20歳で脚本・監督した映画『The Soloist』がロサンゼルスのJapan ...
-
10
-
岐阜出身髙橋監督の作品をシアターカフェで一挙上映!「髙橋栄一ノ世界 in シアターカフェ」開催
長編映画『ホゾを咬む』において自身の独自の視点で「愛すること」を描いた岐阜県出身 ...
-
11
-
観てくれたっていいじゃない! 第12回MKE映画祭レポート
第12回MKE映画祭が6月28日岐阜県図書館多目的ホールで開催された。 今回は1 ...