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映画『水平線』名古屋シネマスコーレ舞台挨拶 小林且弥監督、足立智充さんトークレポート

映画『水平線』公開記念舞台挨拶が3月23日(土)名古屋シネマスコーレ開催された。小林且弥監督、江田役の足立智充さんが登壇。その様子をお届けする。
(進行:シネマスコーレ 坪井支配人)

映画『水平線』作品レビューはこちらから

小林且弥監督(以後 小林監督)
「今日はありがとうございます。一生懸命喋りたいと思います。短い時間ではありますが、よろしくお願いいたします」

足立智充さん(以後 足立さん)
「江田を演じました足立智充です。本日はお足元の悪い中、ありがとうございます。よろしくお願いします」

シネマスコーレ坪井支配人(以後 坪井さん)
「では壇上に座るシステムになっております。どうぞ」

小林監督
「前もこういう感じでしたか?15年ぶりですよね」

坪井さん
「小林監督には2010年『ロスト・パラダイス・イン・トーキョー』という作品で初めて来ていただいたので、その頃にはこのシステムがありまして、座っていただいてます」

小林監督
「えー……?」

坪井さん
「お仕事の時もよく寄っていただいたりはしていたんですが、登壇はあれ以来ですね。今日は監督で登壇ですね。よろしくお願いします。足立さんも何回か来ていただいているような気がするんですが、名古屋での舞台挨拶自体初めて。よろしくお願いいたします。まず、この『水平線』はどこから始まったんですか?」

小林監督
「元々これを神奈川芸術劇場KAATから俳優をやっていた2018年頃に今の現代の日本構造を取り入れたもので、オリジナルキャラで演出をやりませんかという話があったんですね。その中で脚本家の齋藤孝さんと一緒に何本かプロットを立ち上げた中の1本なんです。僕自身が福島に関わり出したきっかけは、2011年震災が起こった年に役者として「明日をあきらめない…がれきの中の新聞社〜河北新報のいちばん長い日〜」という復興ドラマに参加したことです。気仙沼と石巻が舞台だったんですが、その時から映画を作るとか、創作する目的ではなく、福島を中心にあのあたりに足繁く通うようになりました。いろんなきっかけはありますが、映画の中の台詞でもあった風化してしまえばいいということを全ての人が包括できるわけではないし、もっと風化してほしいと思う人ももちろんたくさんいらっしゃいます。僕が福島でその言葉を聞いた時にはものすごく多くの方がそれをおっしゃっていたんです。福島の人々と文字やSNS、内と外という線引きの中で、やっぱり文字やSNSの方に考え方が流されていたなと。自分の自戒の念も含めて、足立さんが演じてくれた江田という役には、いろんな意味合いを込めています。懲罰感情がますます加速していくこの世の中で、事象に対して寄り添わないと、勝手に加害者になっていくことへの線引きは、ものすごくあると思うんですよ。正しさという、本当はないものなのに、そういうものに寄りかかって発信していくことに気持ち悪さを感じていたので、僕自身が福島の中で皆さんがおっしゃっていたその言葉を映画にする、それを伝えなきゃいけないんじゃないかということで、外の人間だからこそ描けるものってなんだろうということを考えたのが最初です」

小林且弥監督

小林且弥監督

坪井さん
「映画を作る方に小林さんは行ったわけじゃないですか。これがやっぱりすごいなと思いました。映画を作りたいという意思が昔からあったんですか?」

小林監督
「これは本当に個人的に僕が聞いた言葉だったり、僕が感じたことなので、プロデューサーという立場の上で、誰かに監督してもらうことはあんまり考えなかったんです。僕は役者をずっと20年ぐらいやったんですが、10年ぐらい前からもうやりたくなかったんです。なんかすごく諦めというか、自分の中で、やっぱりちょっと違うなということを抱えたままやり続けていて、制作する側の方向に意識が行っていたので、それが徐々に形になっていった形です」

坪井さん
「ピエール瀧さんの起用も最初から求めていたところではあったんですか?」

小林監督
「そうですね。作品があって、瀧さん、瀧さんがあって作品。ピエール瀧という人に感じるものが、このフィクションの中の描写で必然的に引っ張られていく感じがありました」

坪井さん
「足立さんと小林さんは関係は長いんですか?」

足立さん
「いや、今回が初めてです。厳密に言うと、僕が出演した『夜走る』という映画があるんですが、それの初号試写の時に小林さんがいらっしゃって、軽く目で挨拶したぐらいです」

小林監督
「『夜走る』が鮮烈で、足立さんはいい役者だなというのがあったのでお願いしました。本当にこの映画では足立さんにいろんなものをかぶってもらうような感じになったので、もし次を撮る機会があれば、本当に足立さんにいい人の役をやってもらいたいなと思っています(笑)」

足立さん
「お願いします」

坪井さん
「足立さん、現場はいかがでしたか?」

足立さん
「面白かったです。役者をやっている人が撮る映画のイメージは、いろんな映画を観ていますが、俳優がとても生き生きしているイメージがあるんですね。だから小林さんの現場もきっと役者として現場が楽しいだろうなと思っていたら、すごい芝居を大事に撮ってくれますし、僕の個人的な感想ですが、一人一人を人間として大事に扱ってくださる印象だったので、やっぱり僕の読みは当たっていたんだなと」

足立智充さん

足立智充さん

小林監督
「わかりやすい、希望を持っている役者さんに江田を演じていただくと、ちょっと違うなとなんとなく思っていまして。瀧さんもそうですが、僕は役者さんの中で市井の感じというか、日常の地続きにちゃんと介在しているようなところが垣間見える役者さんがすごく好きなんですね。その中で足立さんが元々本来持っている役者としての素養みたいなところというのはとても魅力的で、それを大前提として足立さんにやっていただけないかなと思いました」

坪井さん
「足立さんはほぼ共演していくのはピエール瀧さんなんですよね。しかも瀧さんを追い込むのは足立さんの方ですから、追い込みがうまくないといけないですが、瀧さんを追い込めるかどうかというのはわからないですよね。そのあたりのお芝居の駆け引きは?」

足立さん
「わかりやすく、嫌なやつではあるんですが、希望的なものにしないで、ピエール瀧さんを追求していくみたいなものができたらいいなと思っていたので。カットがかかった時に瀧さんから「やっぱりむかつくな」って言われた時は嬉しかったですね(笑)」

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小林監督
「役作りというか現場の入り方が瀧さんと足立さんで全然違うんですよ。

坪井さん
「どんな違いなんですか?」

足立さん
「瀧さんは緊張しないんですが、僕はすごい緊張するんです。「なんで緊張しないんですか?」と聞いたら、 「選んだやつが悪いと思っている」と(笑)。割と僕は頭で考えちゃうんですが、 瀧さんはその場その場で演じられるので。もちろんその場で感じて演じることも大事なんですが、なんなんでしょうかね。瀧さんの作り方は」

小林監督
「元々役者としての出自というより、瀧さんって何者でもない感じがすごいするんです。ミュージシャンでもあり、役者でもあり、ピエール瀧という固有名詞の人というか。でも全てにおいてピエール滝という人がちゃんとありながらも、いろんなところで変容をしていくという存在だから、逆になんか分かりやすそうで、実は分かりにくい人というか。あまりにも正直なんですよ。誤解を招く言い方を恐れずに言うと、人間っていいところと悪いところってあるじゃないですか。それが人間らしさなんですが、意識的にそのどちらかの面を出さないようにするとか、そういうことではない。なんかこれが本当だよなということを、瀧さん自身の人間性に僕は垣間見えることがすごく多かったんですね。その強さみたいなことというのは、瀧さんがどの場所でも出している、多分それが出せるという根底の力だったり、エネルギーだったりとかすると思うんです。足立さんは出自が役者で、役者として演じているのと、ピエール瀧さんは役者として別に映画に出ているというような、決まりきったところでやっていないから、自ずと作り方も違うし、現場への入り方も違うし、カメラの前での生き方も違うし、その違いが、如実に今回の映画の構造ではすごく出ていましたね」

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坪井さん
「足立さんは緊張感を持って瀧さんと対峙していたわけですが、その緊張感は江田が真吾と対峙する感じにぴたっとはまってくるような気がしましたか?」

足立さん
「それはあります。いつもシンクロできたらいいなとは思ってます」

坪井さん
「ピエール瀧さんとも初めての共演ですか?」

足立さん
「初めてです。めちゃくちゃいい人です。楽しかったですね。普通に喋ってくれますし」

小林監督
「編集を思い出したんですが、これ12日間ぐらいで撮っているので、やっぱり時間がないんです。出たとこ勝負でとにかく撮るということをずっと積み重ねていったんですが、場面場面が繋がっているかをあんまりチェックできなくて。編集の時に瀧さんは繋がらないカットがなかったんです。この人全部やっぱり考えているのかと。役者はこのタイミングでセリフを発した後にちゃんと振り向くという動作をカメラのカットが変わっても繋がりを気にしなければいけないんですけど、 瀧さんだけ唯一全部繋がっていたんです。ちょっと怖い怖いと思って(笑)」

坪井さん
「それは瀧さんの瀧力ですね。足立さんは完成した作品をご覧になっていかがでしたか?」

足立さん
「僕は俳優が生き生きしてる映画を見たいといつも思っているので、 それが観られた喜びが本当に大きかったです。それを普通に監督に言っちゃいました。それだけで映画は見れちゃうなと思います」

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坪井さん
「小林さんはどうですか。やりきったと言ったら変ですが、皆さんに観ていただいているこの状況というのは」

小林監督
「共通したテーマというか、もっと間口が広いものというのは、やっぱり自分で撮る衝動にはならないので、本当に僕自身が感じたものでしか表現できていないから、やっぱり拙いところはいっぱいあります。福島の人たちに観ていただいた時の反応として、真意というか、そう捉えられない表現もありうるなというところもあって。それは本当に僕の拙いところなんですが、きちんと撮っていただいたという感想もあったので、12月末に先行公開した時にそれが届いたんじゃないかなと。僕はそれが一番嬉しかったです」

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坪井さん
「では最後に一言お願いいたします」

足立さん
「本日は本当にありがとうございました。初日、名古屋、ここに立てて嬉しかったです。またこれからもよろしくお願いします。ありがとうございました」

小林監督
「本日はありがとうございました。僕が1番感じるのは震災の時から13年間の中で、僕が関わった年齢も職種も様々な人たちというのは、みんなこの13年間ずっと揺り動かされている気がするんです。当事者であるはずの福島の人たちだというのに、実はもう本当に大まかに言ってしまうと、決定権は1つも、何もなかったんじゃないかと。その中で揺り動かされてきて、見えない線をずっと歩かされている感じがすごくしていて。 その中で何か外の人の、外から出される言葉に揺り動かされている姿を僕は映画にしたくて。この福島だけの問題ではなく、どういう声にちゃんと耳を傾けて、どういう声を発信していくかが、非常に僕らの中で問われていくというか、これがすごくグレーだったものが、どんどんちゃんと自分で、個人個人が線引きしていってくださいねと今はなっているような気がしています。 それに相反して懲罰感情みたいなことも同時にすごくある世の中になってきて、不寛容な時代はこれからもずっと続くと思うんです。 だからこそ、やっぱり個人の選択をどういう風に発信していくかを考えるきっかけになっていただきたいなと考えてこの映画を作りました。本日はありがとうございました」

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映画『水平線』https://studio-nayura.com/suiheisen/ は現在名古屋シネマスコーレで公開中。

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