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映画『明日を綴る写真館』平泉成さん インタビュー
6月7日(金)公開の映画『明日を綴る写真館』は気鋭の若手カメラマン太一が、一枚の写真に出会ったことをきっかけに、写真館を営むカメラマン鮫島に弟子入りし、自分自身を見つめ直し、“想い残し”に向き合う感動作。
この映画でバイプレイヤー・平泉成さんが初主演を飾り、相手役を先日CDデビューしたAぇ! groupの佐野晶哉さんが演じている。
俳優キャリアは60年、公開直前に80歳を迎える平泉成さんに名古屋でお話を伺った。
Q.今回、初主演作として、オファーを受けた時のお気持ちを聞かせてください。
平泉成さん(以後 平泉さん)
「こんな日があるかもしれないとは思いながらずっと60年間やってきましたが、ないかもしれないと思ってもいたので、お声をかけていただいてとても嬉しかったです」
Q.元々秋山純監督とは一緒にやろうとお話をされていたと伺いました。
平泉さん
「秋山監督がテレビ局のディレクターだった頃から何度も仕事でご一緒にさせていただいておりました。そんなご縁もあり、今回のお話をいただいたんだと思います」

平泉成さん
Q.実際脚本を読まれて、どんな印象を受けられましたか。
平泉さん
「いい話だなと思いました。自分でできるかなということが一番心配だったんですが、これなら大丈夫やっていけるなと」
Q.これまでもたくさんの役を演じられてきたと思います。今回はカメラマンの役でしたが、過去にもカメラマン役はあったのでしょうか。
平泉さん
「カメラマンの役ではありませんが、秋山監督の前作『20歳のソウル』では孫たちの写真をたくさん撮って応援している祖父役でした」

Q.平泉さんといえばやり手の医者や理事長などトップの役が多かったように思います。今回は地元に密着したカメラマンでしたが、シナリオを読まれてどういう風にカメラマンを演じていこうと思われましたか?
平泉さん
「この作品では役作りはしていません。ただ映画を観に来てくれた方をがっかりさせないように芝居が下品にならないように心がけて、鮫島との接点を考えました」
Q.では自然に現場に入られたわけですね。
平泉さん
「監督は現場は楽しくをモットーにしています。私たち俳優だけではなく、若手のスタッフの人たちものびのびと現場で仕事をしています」
Q.鮫島さんとの共通点はどのあたりなのでしょうか。
平泉さん
「普通に生きてきたということですよね。僕は俳優をやっているから違うだろと言われますが、そんなことはなくて。家の手伝いもして生活をしています。鮫島さんも子育てをしながら写真館を営んできました。いろいろな困難を夫婦二人で乗り切ってきたという意味では全く同じかなとシナリオを読んで感じました」
Q.本当にご自身と地続きに鮫島さんがいらっしゃるんですね。
平泉さん
「時々僕平泉成が鮫島さんに同化させていただくような感じです。監督が僕のことを見抜いていたかなという気がします。俳優生活60年への監督からのプレゼントだったかもしれませんね」
Q.60年、すごいキャリアです。
平泉さん
「俳優として60年やってきて、今まで夢を与えるという部分では何もできていなかったかもしれませんが、今回初めて主役という形でやらせていただいて、ちょっと夢を与えるということにニュアンスが近いような仕事をさせていただけたかなと思っています」
Q.本作品は写真がテーマになっていますが、平泉さんが思う写真の魅力とはなんだと思いますか。
平泉さん
「写真というのは家族にとっては大切なもの、思い出を繋いでくれるものです。元々キャメラが好きだったこともあり、僕もずっと家族の写真を撮ってきました。バラや風景などたくさんの写真を携帯やパソコンの中に収めています。これまで生きてきた証みたいなものですね」
Q.ではいつもデジタルカメラで撮影されているんですね。
平泉さん
「モノクロの昔のフィルムキャメラがいいと言われる方もいますが、今のデジカメの性能、使い勝手のよさに頼ってしまいます。フィルムだと現像したり、いろんな作業がものすごい大変ですが、デジカメなら瞬時にそれをやってくれますしね」
Q.現像しているシーンも映画の中にありますが、実際、現像はされたことはありますか?
平泉さん
「やったことはあります。今回、撮影でも暗室に籠って現像液から定着液をつけたりしてちょっと大変でした。でも写真好きというのは現像までの作業を楽しむことなのかもしれませんね」
Q.どういったカメラをお持ちですか?
平泉さん
「プロ仕様のものではありませんが、何本か揃えて撮るものに合わせて使っています」

Q.ポスタービジュアルに写っているカメラは小道具ですか?
平泉さん
「そうですね、これはニコンのフィルムキャメラFM2です。監督とも相談して決めています。よく見るとキャメラが少しこすれて、 真鍮みたいなのが出てきていたりしているような、そういう味があります」
Q.平泉さんから見た佐野さんの印象、魅力を教えてください。
平泉さん
「佐野さんは礼儀正しい好青年です。彼は感受性も豊かで、何といってもチャーミング。そして歌も踊りもお芝居も出来てしまう。私が彼の年頃には何も出来ていなかったと思います」

Q.今回は平泉さん演じる鮫島が、佐野さん演じる太一くんのお師匠さんになるお話ですよね。平泉さんが今の後輩や若手の俳優さんにメッセージを送るとしたら、どんなメッセージを送られますか?
平泉さん
「芝居のことよりも世の中がどう成り立っているのかを理解し、地に足がついた状態で、自分がどんな役割をはたすべきなのかということを考えてほしいなと思います」
Q.今回、出身地の岡崎でも撮影されていますが、岡崎での平泉さんの思い出を教えてください。
平泉さん
「高校に通っていた時は東岡崎の駅からずっと歩いていきました。学校は木造の3階建てでした。実家はもうありませんが、本宮山のくらがり渓谷のすぐ近くでした。まだ雰囲気は残っています」
Q.映画の中で、太一は鮫島の写真に出会ったことによって、人生を変えていきますが、平泉さんの出会いによる転機を教えてください。
平泉さん
「名古屋のホテルに勤めていて、人生どうしようかなと思っていた時に、同志社大学の相撲部のキャプテンだった人と寮で相部屋になったんです。その人に「役者がやりたいなら、市川雷蔵さんを紹介してやるぞ」と言われて、就職したホテルを一年ぐらいでやめて、次のステップに行っちゃいました。それが転機と言えば転機ですね。たまたまなんですが、その人と出会ったことが、今の世界に飛び込むきっかけになりました。よく行けたなと思いますが、それも若さというものですかね。勢いと勇気がありました」

一枚の写真が、人生を変える。鮫島と太一。二人のカメラマンが写真を通して人々の思いを繋ぐ。
映画『明日を綴る写真館』 https://ashita-shashinkan-movie.asmik-ace.co.jp/ は6月7日(金)より全国公開。
『明日を綴る写真館』
出演:
平泉 成
佐野晶哉(A ぇ! group)
嘉島 陸 咲貴 田中洸希 吉田 玲 林田岬優
佐藤浩市 吉瀬美智子 高橋克典 田中 健 美保 純 赤井英和
黒木 瞳 / 市毛良枝
原作:あるた梨沙『明日を綴る写真館』(BRIDGE COMICS / KADOKAWA 刊)
企画・監督・プロデュース:秋山 純
脚本:中井由梨子
企画協力:PPM
製作:ジュン・秋山クリエイティブ
配給:アスミック・エース
©2024「明日を綴る写真館」製作委員会 ©あるた梨沙/KADOKAWA
上映時間:104分
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