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縄文に魅せられ汗だくになって発掘作業をする「掘る女」に密着したドキュメンタリー(映画『掘る女 縄文人の落とし物』)

昔、考古学に憧れて、真剣にその方面の大学に進学しようと考えたことがある(いろいろあってしなかったのだが)。

土の下には歴史ロマンがある。
掘れば掘るほど昔の時代のものが見つかる。

土の中に眠る土器や居構は人がどんな風に生活していたかを教えてくれる。何千年前の人たちの証跡を知る。歴史好きにはたまらない作業だが、発掘作業が行われた結果をニュースで知ることはあっても、実際にはどんなものなのかはあまり知らない。

知人の母親が市の委託で発掘作業をしていると聞いたことがあり、大学に行かなくても発掘作業は出来るのだと数年前に知った。

8月19日から公開のドキュメンタリー映画『掘る女 縄文人の落とし物』は発掘作業に関わる女性たちと彼女達が夢中になる縄文遺跡の発掘作業を追う。

『≒草間彌生 わたし大好き』『氷の花火 山口小夜子』が話題となった松本貴子監督が3年間その発掘作業に密着した。

主な登場人物と遺跡は長野県星糞峠の遺跡発掘現場に30年通う調査員の大竹幸恵さん、発掘が始まったばかりの高速道路建設現場沿いにある岩手県洋野町の北玉川遺跡の調査員、八木勝枝さんと作業員の皆さん、調査員8名、作業員200名という巨大な現場である神奈川県の稲荷木遺跡で、作業員として働く池田由美子さん、栃木県の中根八幡遺跡で発掘を行う國學院大学大学院生の伊沢加奈子さん。

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調査員の方は考古学を学ぶ大学を出て働いているが、作業員の方たちは地元の主婦の方たちがたくさんいる。

風貌や場所の様子から工事現場にしか見えない場所で、ひたすら土に向かい、暑い夏でも汗だくになりながら丁寧に丁寧に土を掘り、土偶や土器を掘り起こす姿が美しい。彼女たちは縄文時代の何に魅力を感じているのか。ライフステージも立場もバラバラな女性たちだが嬉しそうに発掘作業を語る姿に歴史を解明する発掘の素晴らしさ、楽しさが見えてくる。

作業員として発掘に参加し、見つけた合掌土偶が国宝に指定された山内良子さんと林崎恵子さんの思い出からも、土の中から縄文人達が残したものを発見した時の熱い思いが語られる。
(この合掌土偶がかわいいので、ぜひ映画館の大きなスクリーンで観ていただきたい)

また発掘作業をしてない間はどうしているのか、発掘されたものはどうなるのかもしっかりこのドキュメンタリーには入っていて、考古学の奥の深さを知ることが出来る。

遺跡は発掘が終われば埋め直されるものがほとんどだ。どんなにその土地の風景が変わっても、そこにあったものを見れば、昔を思い出せる。記録と記憶。記憶を呼び起こす大切なものを探し、記録する。本当に地道で手間のかかる作業。それが発掘。

発掘作業を愛し、楽しそうに土をひたすら掘る彼女たちの作業で、私たちは先祖である縄文時代の人々が残した思いを知ることが出来る。

いつか一度、あの細かい作業をやってみたいと、掘る女達の表情をみながら改めて思った。掘る女、魅力的だ。

映画『掘る女 縄文人の落とし物』https://horuonna.com/ は現在東京シアター・イメージフォーラムで公開中。愛知 名演小劇場では8月19日(金)から公開。

名演小劇場では8月21日(日)12:20の回上映後に松本監督の舞台挨拶が予定されている。

また映画『掘る女 縄文人の落とし物』公開記念として松本監督の『氷の花火 山口小夜子』http://yamaguchisayoko.com/ も8月19日(金)から名演小劇場で公開される。

ライター:涼夏(Twitter:@ryounatu)

 

 

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