
パンクな世界に身を投じろ!(映画『パンク侍、斬られて候』)
2018/06/28
言葉に出来ない"半端ないって!"の作品が久しぶりに来た。もうこれはとにかく観て!としか言えないのだ。
『パンク侍、斬られて候』がその作品。
超人的剣客と名乗る掛十之進(綾野剛)は街道の物乞いを突然切りつけ、あるはったりを黒和藩に持ち込む。それがきっかけで家老二人の権力闘争がとんでもない方向へと進んでいく。はったりがはったりと真実を生み…。
町田康×宮藤官九郎×石井岳龍=とんでもない
2004年に町田康が書いた原作をさらに吹っ飛んだ作品にしたのは町田康とは旧知の仲でもある石井岳龍監督。
石井監督作と言えば個人的には『エンジェル・ダスト』とかが好きなのだが…。そんな静かな世界ではない。
テンポのいい音楽が流れてくる。リズムに乗って語られる台詞は時代物の風貌なのに現代語もバンバン飛び出す。
この感覚。この脚本は間違いなく…。クドカンこと宮藤官九郎のものだ。得意の時間巻き戻しエピソードやおバカな話が書かれているようで実は世の中の矛盾を突っ込んでいたり。世の無情を語っていたり。これこそクドカン展開。
町田康×宮藤官九郎×石井岳龍=とんでもないキャストはとにかく豪華だ。
綾野剛、北川景子、染谷将太、豊川悦司、浅野忠信、永瀬正敏、東出昌大、國村隼と主役級のキャストが勢揃い。いつもならシリアスに芝居をしている役者たちも気持ちを昂らせ表情豊かにパンクな世界を生きている。個人的には渋川清彦、村上淳、近藤公園もいて芝居巧者だらけで嬉しい。
京都のお寺の美しい仏壇とパンクな世界のコラボ、色鮮やかな衣装、パンク侍の世界を作るために用意された壮大なロケセットのデザイン性にもあっと驚く。人間と猿が相まって乱れるVFXは圧巻。沢山のクリエイターがこの作品に結集している。エンドロールまでしっかり観てほしい。
前半だけでもかなり面白い。が、後半はさらに枠にはまらないエンターテインメント。タイトルに『侍』とついているから時代劇だし観ないと思うのは損だ。
ぶっ飛んだ話なんだけど引き込まれて見てしまう。何が現実で何が空想か。何が真実で何が嘘か。自分が生きている世界は何なのか。石井監督に突きつけられている気がする。
語れる言葉が少ない作品だ。とにかく観てもらえばわかる。
そうそう。すべてが架空の世界で
『岐阜羽島』、『岐阜』という地名が出てきたことに妙に反応した岐阜県民がここにいる。岐阜出身の綾野さんが出てるから?とも思ったけれどどうやら原作通りみたいで。
朝ドラも舞台は岐阜だし。
岐阜を広めてもらったということで
ありがと。(岐阜弁イントネーションで。)
『パンク侍、斬られて候。』は6月30日(土)より全国ロードショー。
上映劇場は公式ホームページ(http://www.punksamurai.jp/)でご確認を。
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