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第60回CINEX映画塾『Trinity』『truth』堤幸彦監督、広山詞葉さん、生島翔さんトークレポート

2022/04/15

第60回CINEX映画塾『Trinity』『truth』が3月27日岐阜CINEXで上映された。上映後には堤幸彦監督、『Trinity』『truth』に出演、『truth』のプロデュースを担当した広山詞葉(ことは)さん、『Trinity』に出演した生島翔さんがトークを行った。その様子をお届けする。

堤幸彦監督(以下 堤監督)
「皆様こんにちは。東海地区出身の堤でございます。三重県四日市で生まれて名古屋で育ちました。今回コロナだからこそと言っていいかもしれない、非常にネガティブな時期ではあり、これが良くなってくるのかはまだ不明ですが、そんな中、知り合ったこの2人と本当にインディーズな作品を作ることができ、そして皆さんにこうやってご披露できて、とても幸いでございます。なかなか過激な作品ではございますが、ご夫婦とカップルで来た人たちがちょっと見づらいんじゃないかと思っていますが、なぜこんなものができたのかということを、これからお話できればと思っています。よろしくお願いします」

広山詞葉さん(以下 広山さん)
「日曜日にありがとうございます。『truth』の方では、プロデュースと主演の真弓を演じました。そして『Trinity』の方では告げる女、もしくは叫ぶ女をやっておりました。広山詞葉です。岐阜市ははじめましてなんですが、とても温かいお客様が多くて安心しております。ここでしか言えないことをどんどんいっぱい話していこうかなと思っています。よろしくお願いします」

生島翔さん(以下 生島さん)
「生島翔と申します。今回『Trinity』というダンスアートフィルムを観ていただいたんですが、ダンスを観るのが初めてだった方もいるんじゃないのかなと思っているんですけれども、こんな晴れた日曜日に僕のお尻を見せてごめんなさい!(笑)。そこの部分はちょっとこれからのトークでどうにか挽回していきたいなと。楽しく、一緒に皆さんと過ごせたらと思っていますので、よろしくお願いします」

堤監督
「(下からあたる照明を見ながら)これすごく眩しいんですけど…」

岐阜新聞社 後藤さん
「いつもは登壇されるのが2人なんですが、今日は3人で後ろからの照明だと当たりきらないので置かせていただいています」

堤監督
「女優さんにだけ当ててください(笑)」

広山さん
「ここにください(笑)」

堤監督
「広山さんはテレビ朝日、こちらでいうとメ~テレ系でやっていた「やすらぎの郷」という昼のドラマにずっと出ていたんですよ」

広山さん
「加賀まりこさん、浅丘ルリ子さん、石坂浩二さん、八千草薫さん、野際陽子さんと共演させていただいていました。私はコンシェルジュの役を演っていました」

堤監督
「なんか変な体操していませんでした?」

広山さん
「やすらぎ体操を踊るお姉さんでした。なのでこういうライトの大事さは女優の大先輩から学んでおります。「照明さんと仲良くしろ」と教えられました」

堤監督
「あれ?これ話は進めちゃっていいんですかね」

後藤さん
「はい、監督にどんどん進めていただいて構いません。段取り的にはまず 『Trinity』の話を伺いたいです(笑)」

ダンスが仕事の公務員を辞めて

堤監督
「翔くんは岐阜に来るのは初めて?」

生島さん
「そうですね、初めてです。『関ヶ原』という映画に出させていただいて。宇喜多秀家役、西軍の副大将を演じさせていただいたんですが、撮影自体は彦根城の方で行っていたので、岐阜に来るのは初めてだと思います。はい」

生島翔さん

生島翔さん

堤監督
「私は実はですね、だいぶ中年になってから地理学というものを大学で学び始めて、それで岐阜の現地研究をしたんです。岐阜城とか、繊維問屋街、この柳ケ瀬とか色々な所をうろうろとさせてもらって、地理学的に岐阜市はどうなのかということを研究したんです。名古屋の研究をして、岐阜も研究したという流れなんですが、昔はデパートも4つあって、PARCOもあったと。そしてさらにもっと前には繊維問屋街はある種世界のファッションの中心地の一つと言ってもいいくらいでしたからね。色々時代は流れているんだなと思いますが、どうすればまたこの岐阜を盛り上げることができるか、盛り上がるチャンスも相当あると思いますし、繊維問屋街のところで映画が撮りたくて仕方がない。味わいのあるアクション映画が撮れる気がします。さて『Trinity』についてですね。これはドイツのダンサー集団と共に作っていった経緯がありますね」

生島さん
「最初は2020年の東京オリンピックに向けて、インバウンドで海外の方が多く来られるので、東京にいても毎日オリンピックのチケットを持っているわけではないので、東京都内で、例えばいろいろなイベントがあったり、映画があったり、それこそダンスは言語が関係ないので、人が観に来たときに観やすいんじゃないのかということで、アーツカウンシル東京というところから助成を受けて、僕がドイツで1回公務員でダンサーをやっていた経緯がありまして……」

堤監督
「ダンスで公務員?!」

生島さん
「不思議なんですけど、州立劇場っていうシステムがあって。日本でいう県立とか、都立とかのイメージを持ってくださればいいんですけれども、各州に劇場があって、そこで働いている役者さん、ダンサーさん、ミュージシャン、照明、美術、演出家も含めてみんな公務員なんですね」

堤監督
「そんな安定的な仕事、俺も欲しいな(笑)」

生島さん
「そういったところで踊っていると、要するに明日を心配せず踊れるという(笑)」

堤監督
「すばらしいじゃないか、何でやめちゃったの?」

生島さん
「もうちょっと夢を見てみようかなと思って、こっちの映画の世界とかにも来たんです。そういったところで踊らせていただいていた経験があって、そこのときの芸術監督さんにお願いして、ドイツのダンサー半分、日本のダンサー半分で東京芸術劇場というところで舞台の公演をオリンピックの期間中にやるというのが大元だったんですけれども、皆様ご存知の通りコロナ禍で、渡航が難しくなって。じゃあダンスフィルムを撮ろうということになったんですけれども、ドイツはドイツで1本撮ってもらって、日本をどうしようってなったときに、堤監督は東日本大震災後に10年間ずっと気仙沼、僕の親父の実家の方なんですけど、ドキュメンタリー番組を撮っていただいていたご縁がありまして。その縁で監督にお願いさせていただいて、『Trinity』を撮ることになりました」

堤監督
「翔くんのお父さんは生島ヒロシさん。私の大学の先輩です。私がアシスタントディレクターの頃、今だとヤングディレクターと言わなければいけないですね。その頃に生島ヒロシさんが「ザ・ベストテン」で追っかけマンと呼ばれてすごい盛り上がっていた頃にお世話になって。世代を継いで仕事をさせて頂いているわけです。翔くんのことは「若」と呼んでます。ダンスアートムービーって正直言うと、どのように撮ったらいいかってなんとなくイメージがありました。世界に先駆的な例もいっぱいあって、こういう風に撮ればかっこいいものが作れる。でもかっこいいのを作るべきなのかというところで大分悩んで、皆さんご覧になっていただいたように大分メッセージ性の強い、ちょっとまさに今、戦争の時代になりまして、なかなか毎日ニュースを見るのも本当にしんどい。でもそれは今日に始まったことではなくて、ずっともう何百年も、領土争いだったり、あるいは自由への侵害だったり、いろんなことで、様々なトラブルがあり、そういうことに対して何かメッセージをきちっと自分なりにできないかという見地の内容で作らせてもらいました。翔くんは踊る、広山さんは叫び、私はその内容を演出するというやり方でした」

生島さん
「今ウクライナ情勢で皆さんすごくセンシティブになっていると思うんですが、ダンスは最近イスラエルとかでもすごく人気なんですね。イスラエルはしょっちゅうミサイルが飛んできてそれを迎撃しているというのがもうここ何十年も続いています。この状況が実は日常な人たちも昔からいるんです。今回ウクライナ情勢ですごく取り沙汰されているんですが、そういったところを何か改めて監督はずっと考えていらっしゃったんだなということ、多分こういったことを、ずっと形を変えて表現されていたんだなっていうのを知ることができて、改めて本当にびっくりしています」

堤監督
「なかなかそういうハードなテーマって、日本人の映画作家ってなかなか作りづらい状況にありますね。チームで僕らは動きます。チームといっても本当に10人から何百人で編成は変わりますが、将来を通して何百人という人々と一緒にご飯を食べていかないといけない。なのでなかなかハードなメッセージがあるものは作りづらい。しかし、やっぱり韓国映画の『タクシー運転手 約束は海を越えて』、それから昨日観たんですが、ケネス・ブラナーの『ベルファスト』とか、ちゃんとやっぱり生活とは別にそういうハードなテーマということにも、きちんと向き合う映画作家でありたいという風に思っています。ご飯を食べていくことやチームのことを考えれば作りづらかった。ところがどうですか、このコロナ禍という時代を通じて仕事が1回、本当に更地になってゼロになったときに、こういうチーム、仲間と共にそういうものを見つめていくんだという、そういう出発点にもなったなという気がしますね。この『Trinity』は今後はどういう風にしていきたいんですか?」

堤幸彦監督

堤幸彦監督

生島さん
「そうですね。実は今日が初公開のようなものでして。上映会はしたんですが、こういった劇場でちゃんと上映されるのは初めてなので、すごく嬉しいです。ありがとうございます。チリの映画祭に入選しまして、他にもいくつかの映画祭に今応募はしているんです。応募してから決まるまで時間差はいろいろ映画祭であるので、僕の方はまだ結果が出ていないものも多数ある状態です」

堤監督
「しかし、よく脱いでいましたね」

生島さん
「(笑)。これですね、だからどの部門に応募しようかなって。毎回その映画祭部門で、ヌーディスト部門というのを作ってくだされば賞を獲れるのかなあと思っているんですけれども」

堤監督
「最後は広山さんも一緒に太陽に向かって股を開くポーズを。あのシーンは最後まで太陽がちゃんと出なくてね。メインクルーが帰った後でいい太陽が出て。急いで脱いで!となって僕が持っていた4Kカメラで撮って」

生島さん
「もしかしたらiPhoneで撮った方が綺麗なんじゃないかみたいな話も」

堤監督
「ごめん、俺iPhoneじゃないから(笑)」

生島さん
「とふざけながら言っているわけですけども」

後藤さん
「監督、あれはロケはどこでされたんですか?景色が素晴らしいです」

堤監督
「伊豆大島です。本当に素晴らしいロケーションで。いろいろ実は入っちゃいけない部分もちょっと踏み込んだりして、伊豆大島の方に怒られるかなと思ったらですね、伊豆大島の議員さんに、うちでも何でやってくれないんですかって言われまして(笑)。とても気に入っていただけて。皆さん優しかったですね」

生島さん
「日本で唯一の砂漠、裏砂漠というところで、本当に木も一本も生えていない、真夏の暑い中全裸で踊り続けるダンサー」

堤監督
「東京からわずか1時間ちょっとで、ジェット船で行けます」

後藤さん
「撮影はどれぐらいかかったんですか?」

堤監督
「5日です。私コロナ禍中の一昨年、自宅で転んで、空気清浄機の角に目をぶつけまして、名古屋市立大学病院とかにしばらく入院していたんです。それは前振りとして、この伊豆大島のロケの前日にスタッフを連れてもう一回場所確認をしに行ってテトラポットの上でまたこけまして、ちょっと66歳で足もおぼつかないのかと思いながら、脳波検査とかあとで一生懸命やったんですけど、本当に血まみれになってロケしてました」

生島さん
「添え木をして、監督が血だらけで「脱ぐぞ!」というと「じゃあ脱ぐか」って(笑)」

何もなくなったとき自分から動こうと思った

堤監督
「では『truth』の話に行きましょう。こちらの美人女優さん、ちょこちょこ僕の作品に出てもらっていまして。『天空の蜂』とかね。広山さんはここ(ポスターを指さして)にうっすら映っていてなかなか気づかない佐藤二朗さんと同じ事務所で、僕はとっても面白い女優さんと思っていていろいろ好き勝手な役を演ってもらっているんですけど、今回はコロナ禍ということでプロデュースをしています。どんな経緯で始まったんですか?」

広山さん
「一昨年にコロナ禍が始まった頃ですね。最初の緊急事態宣言が出たときに私は監督の『SPEC』 のスピンオフの撮影が入っていたんですけど、それも緊急事態宣言が出てドラマ、映画、舞台すべてが中止になって、本当に私達は何もできなかった時期がありました。監督の作品も中止になりましたというご報告を受けて本当に打ちひしがれていて、私もその頃ってコロナウイルスが何者かもわからなくて、本当に怖くて、ずっと毎日家でお酒を飲んでる日々だったんですけど、私、何やってるんだろうと。でも仕事がないので外も出れないし、これって何、生きてるってなんだろうみたいなことを考え出したときに、やっぱり自分は表現をしていたいし、作品を作っていきたいと思ったときに、文化庁の助成金を見つけまして、よしこれで自分で作品を作ろうと思い立って、いろんな仲間を誘って、まずは女優の2人を誘って、どんな映画を作ろうかっていうところでまず精子バンクをテーマに映画を作らないかというところからスタートし、監督は誰にしようかというときに堤さんにちょっとお電話をして、「こういうことをやろうと思ってます」と言ったら「いいんじゃない。やるよ」って言ってくださって、それから始まったという」

広山詞葉さん

広山詞葉さん

堤監督
「俺にやらせろと。(ポスターを見ながら)これどっちが広山さんなの?」

広山さん
「右です。真ん中が河野さん」

堤監督
「実はここに映っている一番左の福宮さんは撮影中妊婦で」

広山さん
「5ヶ月ですかね。ちょうど安定期に入った頃でした」

堤監督
「なのにあんなアクション。ひどい監督だよね」

広山さん
「(笑)だから監督が気を遣って、台本の時点から口が一番悪いっていう設定にして。実は私が一番喧嘩早くて、私と河野さんが基本的なアクションというか最初のアクションをやっているという」

堤監督
「河野さんは、お医者さんの役だけど、実は英語の先生もやられていて」

広山さん
「外資系の会社勤務なので英語が堪能でコロナ禍の中、私達役者に Zoom で英語を教えてくれるということをやってくれていました」

堤監督
「自分たちで文化庁に申請を出して、制作費をいただく。もらうはいいですが、その後の使い道とか結構大変ですよね。公費、税金ですから」

広山さん
「そうですね。だから全部本当に細かく説明をして、全部領収書とか請求書も貼って、画像化して送って、それをさらに一覧にして送って。その後説明のやり取りを何ヶ月もやって。Excelなんか使ったこともないのにがんばりました」

堤監督
「それだけじゃないんですよ。これもそうですし、『Trinity』の写真展バージョンもあって、これも文化庁の助成、それから恵比寿にあるエコー劇場でやったお芝居「窪地の女」も文化庁の支援」

広山さん
「はい」

堤監督
「文化庁に申請ばっかりしているので、私は申請女優と呼んでいるんですけどね(笑)」

広山さん
「でも本当にこれがなければできなかったことなので、とてもありがたいですし、私は助成金を使ってる中でも監督の50作品目として撮っていただけたわけで、日本の文化にものすごく貢献したなあと思っています」

堤監督
「単に通過点でしかないですからね」

広山さん
「50作ってすごいですよね」

堤監督
「ドラマや舞台も入れたらもう少しあるのかな。最高傑作は次回作です。そういう女優さんたちが苦労して、資金を集め、我々に声をかけ、そして私のいろいろヘルプをしてくれる皆さんが集まってもらって、たった2日間です。『Trinity』は5日ですが。それじゃあ24時間働いたかというとそんなことはなく」

広山さん
「ちゃんと寝ましたね」

堤監督
「22時頃には撮影も終わってね。ですが、海外の8つの賞を6つの国でいただいて。特にローマはインターナショナルムービーアワード最優秀賞です。ニューキャッスルでは、ベストコメディ賞をもらっているんです」

後藤さん
「外国の方がすごく理解しそうな内容ですよね?」

広山さん
「私は実際に昨年の11月にノースイーストに行って映画祭に参加してきたんですが、本当にいろんな国のフィルムメーカーや監督さん、プロデューサーの方と『truth』を一緒に見たんです。もう本当に冒頭の3人が出会ったところからまず笑いが起きて。二朗さんのことをあちらの方は知っている方は少ないと思いますが、ちゃんと笑いが起きて、監督の狙い通りでちゃんと笑いが全部起こっていました。Q&A もすごくたくさんありまして、一幕芝居なのに全く飽きなかったけど監督はいつもどういうものを撮っている監督なんだというものや、精子バンクについて日本でも盛んなのかという質問があったり。 Q&A が終わって劇場を出てからも2時間ぐらい立ち話でいろんな国の方から質問を受けてという、映画で本当にいろんな国の方と一つになれるという経験をしました」

堤監督
「ニューキャッスルまでって大変ですよね?ドバイ経由でヒースローへ行って、ロンドンに行ってニューキャッスル」

広山さん
「11月はオミクロンが出る直前だったので行けたんです。帰ってきて3日後ぐらいにオミクロンで海外に行くことも海外から帰ることも出来なくなったので、少し遅かったら帰ってこられなかったです。1月7日に公開になって、まだ劇場でやっていただけるってなかなかないんですよね。映画って1ヶ月で終わっちゃったりとか平気であるので本当に嬉しいです」

堤監督
「(広山さんの手元を見て)それ何を持っているんですか?」

広山さん
「これは『truth』のパンフレットなんですけど、これも今回自主映画なので私達が自分たちで手作りで河野さんがデザインもやって、自分たちのパソコンで作ったんですけど、イギリスの旅の話だったり、私がなぜこの映画を撮ろうと思って、何月何日に申請をして、何月何日に監督に電話をして、何月何日に脚本を書き始めたかが書かれた日記も全部入っているという。今回劇場で販売していただいているので、よろしくお願いいたします」

後藤さん
「最終ページには岐阜の産科医の先生の寄稿もあるとか」

広山さん
「そうなんです。川鰭市郎先生に寄稿していただいています」

堤監督
「川鰭先生と私は以前NHKの番組で対談をさせていただいたことがあって、本当にいろいろと相通ずるものがありまして。今回ちょっと無理矢理ではあるんですが、観ていただきまして。医学的にはこの映画はアウトです。しかしながら、そんな無粋なことは言わない、言いたいけど言いませんよということで、川鰭先生に書いていただきました」

広山さん
「温かいメッセージをいただきました」

堤監督
「若、若は『truth』を観たんですよね?」

生島さん
「僕は監督の作品は何回も見ているんですが、僕の監督のイメージはカット割りや編集がすごい上手で、観ていて飽きない、本当に現代的、それこそInstagramやTikTok を先取りしたような編集方法をしている方だなっていう印象があるんですけど、ずっと同じワンシチュエーションでこういう舞台にしても面白いような撮り方だったので、今回新鮮で面白かったなと思いました」

堤監督
「イギリスでベストコメディ賞というちょっと良い賞をいただいたんですね。関東の人間でいうところの上方演芸大賞を獲るみたいなもので。図に乗って、英語劇にして輸出したらいいんじゃないかって思っていたんだけど、ちょっと時間かかりそうだし、置いてあります。でもどっちかというとパリ、ロンドンとニューヨークでこの『Trinity』を含めてちゃんと公開したいなと思って今いろいろ準備中です」

後藤さん
「本当に脚本が面白くてですね、ワンシチュエーションで展開する。やっぱりさなさんが英語を強調するような言い方をしたりするのは、やっぱり監督の味付けですか?」

堤監督
「そうですね。やっぱりそれぞれの個性みたいなものを強く、ちょっと戯画化して出したいなと。突然キレる、常にマウントを取って勝ちたいと思っているのに、本当はとてもめっちゃ寂しがりやとか。一番造形で作りやすいのはやっぱりヤンキー。わかりやすくて好きなんです。3人の芝居を描くということが大好きです。一番バランスがいいんです」

後藤さん
「2日で撮ったとおっしゃいましたけども、これ3人での練習はされていますよね?」

広山さん
「事前に4日間リハーサルをさせていただいて。普段映像だとあんまりそういった機会はないんですけど、舞台の稽古のようなものを4日間やらせていただきました。その際にいろいろ監督が小ネタを出していったりというのはその時点からありました」

堤監督
「一番好きなのは「その精子バンクの提供者はどの人ですか?」と聞かれて「慶応とか……。慶応とか」」

広山さん
「イギリスではウケなかったですけどね(笑)」

堤監督
「いや私のような仕事をしていると必ず会うんです。慶応の方に。東大でも早稲田でもない。慶応なんです(笑)」

声と写真だけでイメージが広がる佐藤二朗という役者

後藤さん
「重要なキャスティングといえば佐藤二朗さんですが、これは監督が脚本を読んで決められたんですか?」

堤監督
「私じゃないです。広山さんです」

広山さん
「事務所の先輩でマネージャーが一緒なのでとても頼みやすいという(笑)」

後藤さん
「月曜日の女と水曜日の女と金曜日の女に19時28分の間に同じ留守電を入れている。これは二朗さんすごいなと」

広山さん
「でも二朗さんだからこそ見ていて嫌じゃないんですね。きっと。なんか許せるというか」

後藤さん
「では現場には一度も来られていない?」

広山さん
「一度もないですね。この時、二朗さんが初めてのミュージカルをやっていらっしゃるときで基本的には他の仕事を受けないというときだったんですけど、堤監督ですしということで受けていただけまして。監督が稽古場に行って声と写真だけを収録してくださって」

堤監督
「だってジェームス・ディーンそっくりじゃないですか」

広山さん
「(笑)誰も腑に落ちてないです」

後藤さん
「姦しき弔いの果てというサブタイトルですけれども、この女が3つで姦しいという漢字。女が3人寄るとああなるという様子を文字が表しているといいますか」

堤監督
「それはね、私たちの世代はやっぱりかしまし娘という方々がいましてね。日曜の昼間からずっとかしまし娘という時代に小学生時代を過ごしまして。僕としては全く自然な成り行きです」

広山さん
「面白いのが河野さんが英語が達者なのでいろいろ調べていると「Three women makes the market.」ということわざが海外にもあって3人の女が揃えば市場ができるよという。やっぱり3人女性が集まれば世界でも姦しいんだなと思いましたね」

堤監督
「ダンサーが3人揃ったらどうなるの?」

生島さん
「3人揃ったらもうパーティーですよ(笑)」

堤監督
「すぐ服脱ぎたがるもの」

生島さん
「すぐ服脱いでパーティーしますよ(笑)。いやいやいや脱がないです。そんなすぐに脱ぎません」

堤監督
「しかしよく本当に、男性2人はともかくね」

生島さん
「そうですね。皆川まゆむという根性の座った女性がいまして。すごい気風のいい背丈も僕たちと同じくらいで男性女性関係なく、お互いをリフトしたり、リフトされたり出来るんです。どうしてもバレエのイメージで男の人が女の人
を持ち上げるということが多いですが、それを関係なくできるという関係性の3人で、『Trinity』いう関係図ができたのかなと」

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堤監督
「何度も振り付け指導しているところを見ましたけど、面白かったね」

生島さん
「不思議な作り方で。2人とも海外で踊ってきた経験豊富な2人だったので、僕がプロデュースをしているのもあって、いろいろアイディアを出すんですけれども、2人から出てきたアイデアも多々あって。僕もまゆむももう1人のダンサーの森井淳さんももう10年来ぐらい一緒に踊ってきている仲間なんです」

堤監督
「淳さんっていくつ?」

生島さん
「49歳ですね。D LEAGUEという国内初のプロフェッショナルダンスリーグがあるんですが、ただいまそのリーグの最年長ダンサーとして淳さんが踊っているんです。49歳で踊り続けるというのはなかなかないですよね」

堤監督
「軽いよね。なんか砂漠みたいなところでジャンプしているスローモーションの画とかはたまらんですよね」

生島さん
「尊敬している大先輩であり、友人でもありというところで、それだからこそできた作品だったのかなと思っていますね」

堤監督
「ダンスだけではない、その合間合間に裏のボイスとして出てくる英語の達者な人もいるし、何というか、自分では想像しないモンタージュというか、化学反応になったなと思っていて。時間的なものが長いか短いかちょっと作っている自分では判断できないんだけど、こういうストーリーがあるわけでもない、台詞として何か脚本があるわけでもない、しかし、力強い肉体と言葉の力みたいなものを撮影し、編集できたということは、本当にコロナ禍じゃなかったらやっていなかったなと思うんですよ」

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観客からの質問
「堤監督の中で、こういう俳優さんが好き、こういう俳優さんはあんまり好きじゃないということはありますか?」

堤監督
「いや、それは私は立場上申し上げることはできません(笑)。ただもう映画も50本、この映像業界では40年以上、1979年からずっとやっていますので、ぱっと見れば、だいたいこの人はこういうものが向いているな、こういうところにはめればいいなという道筋は見えてきます。いろんな味付けができる人なのか、ぱっと見てこの人はなんとか風だなという人か、どっちかわかる。判断つかない人ももちろんいます。私も人間ですから、その場合は時間をかけて、この人は何向きなのかということを探るということを努力する。だから、僕が嫌いとか好きではなくて、私はその人に対して何ができるかということを考えますね」

観客からの質問
「作品を拝見していて思うのが今日の作品もそうなんですが、俳優の魅力を十二分に引き出していらっしゃるというところがすごく魅力的です。『Trinity』も『truth』もそうなんですが、『truth』で佐藤二朗さんが演じる役柄というのは、姿は写真だけですよね。どのように監督はこのキャラクターを捉えていらっしゃったのでしょうか」

堤監督
「佐藤二朗さんのところは、僕らも最初から佐藤二朗さんがいいなと思っていたんですけど、これね。ここだけの話ですよ、イケメンじゃ駄目だったんですよ。3人の女性から愛される。そもそも、それが同時並行的にお付き合いするなんて駄目です。アウトです。それがイケメンだったらもっとアウトです。ありえないです。そんなことはしてはいけません。佐藤二朗ならしていいかといえば駄目なんですけど、これはもう架空のストーリーですから。イケメンではないところに、何か本質的に惹かれるものがあるはずなんですよね。佐藤二朗はまさにその風格、そういう味わいを持っている。だから動画である必要すらない。佐藤二朗という抽象でいいわけです。ただ幸い大変有名人なので、佐藤二朗と言えば大体こんな感じだなということを皆さんがご存知だったというところは助け船になりました。私と出身地が近くて、彼は東郷町出身なんですが、名古屋のテレビ番組にも一緒にずっと出たりしていましたし、大変気心は知れているんですが、それとは別に、彼が持っているある種神格化される部分みたいなものに、この3人がひかれて行って、それが究極の選択に結びつくという、本当にあり得ない架空の設定にはぴったりだったなと思っています」

観客からの質問
「さなさんがドラム缶にぶつかるシーンがあったと思うんです。喧嘩は激しいんですが、私にはちょっと猫の喧嘩みたいで微笑ましい気もします。あれは1回で撮られたのでしょうか」

広山さん
「本来だったらああいうアクションのシーンというのは右手で殴ってよけてとか、左手で髪の毛掴んでとか、全部振り付けを映画というのはするものなんですが、今回監督はしっかりこの女の子たちの心の内を伝えたいということで、一切振り付けをせず、ガチで怪我をしないようにいろんなものを仕込んでいただいたりしてるんですけど、本当にぶつかっていく、魂のようなものを撮っていただいて、その熱量も映っていたのかなと思います」

堤監督
「服が破れてしまったりとかしたときもあったんです。その寸前までの所を使っているのでその勢いが良かったですね。これは実は良し悪しで。バトルものの舞台を作っていたときに、殴り合いの最初の一発目の拳が本当に当たってしまって歯が折れてしまったんですね。そのあと40分ぐらいアクションシーンで。いい芝居するな、本当に痛そうだなと思ったら本当に外れていたということもありました。今回もギリギリのところで頑張ってくれました。一人妊婦でしたしね」

広山さん
「安全は取りつつも、私たちが役者だけじゃなくて今回プロデューサーもやっていたので、そこに何か反対の意見もなかったというか。それ面白いねと。役者としてだけで出ていたら「いや、それやめましょうよ」とか思っても言えないし、同じ空気感じゃないかもしれないですけど、この作品では元々台本作りから私たちはやっていたので、それはもう「こうしましょう」と決めてやれたこと、やらされたことではなかったというのが大きい気がします」

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コロナ禍を経て、これから

観客からの質問
「両作品とも、コロナ禍というのが製作のきっかけというかキーワードになっているなと感じたのですが、コロナ禍を経て、アフターコロナで何かこういうことは変わってくるだろうなというものはありますか。また皆さんから見て、消費者、我々受け手の方もどう変わるだろうなという予測といいますか、そういったところを教えていただきたいです」

生島さん
「僕は今度、京都大学の大学院で都市工学を勉強することになりまして。そこで勉強したいなと思っていることが今の質問につながるのかなと思います。まずどういう風に作っていくのか。両極端、両方出てくると思います。オンラインミーティングも、働き方改革もすごくいいと思いますし、毎度毎度会わずともオンラインでリモートで仕事もできますし、作り手もそうです。監督の次の作品もそうですが、Web 上でできることもすごい増えてきているなと思う部分もあるので、結局そのままネット配信型のものであったりとか、テレビだったりというところでの消費も技術の進化とともに増えていくと思うんですけど、僕は元々ダンスという生身のエネルギーを使って生きてきたので、そこの舞台であったりこうして人がみんなで集まって拍手が聞こえるというのがすごく僕にとっては大事で、それが何か生きていて楽しいなと思うので、多分この『truth』でも『Trinity』でもお家で見たのと今日ここで見たのでは絶対感覚が違うと思うんですね。この後商店街を通って、お家に帰るまでの道中で一緒に観に来た人もいれば1人で帰る方もいると思うんですが、その間に「ああそうだったな、こうだったなあ」と思う時間が僕は幸せ、とても大事だと思うので、その作品が端的にスマホで見れるテレビ、パソコンで観られる便利さというのもすごく大事で、それはそれで世界の人にも届くんですけれども、逆に今日はお出かけするからちょっと綺麗なお召し物を着て行こう、ここでご飯食べようというのも僕は大事な人間の営みの中の一つだとこのコロナ禍の中で皆さんも感じた部分なのかなと思うので、配信と、舞台、生身で人と会えるということの両方を意識しながら作り手として作っていきたいなとは思っております」

広山さん
「私も同じくになってしまうんですが、本当にオンラインで交流できるzoomのような便利なツールが出てきて、その場で日本と海外が何かを一緒に話もできるし、その場で作品を作っていくことができる。こういうグローバルなものがお金をかけずにできるようになったことは一つエンターテイメント界としては大きなことかな。ネットでその場でやりとりをするということができるようになったのはこれからも残していきたいし、とてもありがたいシステムだと思います。仮想世界のバーチャルシネマとかも今はありますし、とても面白いなと思うのと同時に、私も演劇の舞台をやったりするのが好きなのと、やっぱり映画を映画館で観たいタイプなので、多分ここにいらっしゃる方みんなそうなんですけど、そういう意味で言うと、本当にちゃんと映画は映画館で観て初めて映画だよという。昭和の古い考えかもしれないんですけど、そこは本当に絶対変わって欲しくない。こうやって顔を見て、一緒に観に来た人が話をしながら、「あそこはこうだよ」「いや違うよ」という話をするとか。映画を今回プロデュースをして初めて思ったんですが、映画は「勝手に製作者が作りました。はい、お客さん観に来てくださいね」ではなくて、映画館でかかってお客さんが観て初めて映画は成立するんだなと。なのでここに来てくださっている皆さんは映画界を確実に支えてくださっている一人一人なので、映画館、古き良き映画はこれなんだよと私達も頑張りますが、皆さんも一緒にエンタメの灯を絶やさないように一緒に盛り上げて頂けたらいいなと思います」

堤監督
「僕の答えの一つとしては、映像業界においてもオンラインでの仕事が進んでいまして。先日撮った映画は衣装合わせを全部zoomでやりました。コロナ禍という諸事情もありましたが、今まで面と向かって俳優さんの衣装を着てもらって決めていたところをカメラを通して流れ作業でできてしまった。大変良くもあり悪くもあり。ただ、もうこれはもう避けられない。それは出口、すなわち映画館、あるいは配信、あるいはテレビ、いろんな出口の選択肢が増え、それをお客様が自由に選んでいただくことができる時代の成せる技、それがコロナ禍によって加速し、映画館にとってはつらい時代ではありました。これからまた折り返していくことを心から願います。なぜなら、私は映画を撮るとき、映画館のシステムでものを作っています。このスピーカーが立体的に並んでいます。音もそのように作るし、それから画像も映画館で、遠くも近くもご覧になっていただいて、迫力、驚き、感動、そういったものを醸し出せる演出を心がけてきたつもりだし、これからもそうしていくつもりです。映画館ベースというのは、今広山さんの発言もちろんありましたように変わりません。しかしこれだけ出口が多様化しているとなると、やっぱりその様々なターゲットに向けて確実な球を投げていく必要がある。それはコロナ禍において確実に明らかになった。どこかで自分が映画監督だからスクリーンで面白いものを作っていればいいというのがコロナ禍によって吹き飛ばされたというのは現実であります。これはお客様をとっても、観る側の見方というのがいろんな見方ができてきて、それでいいんじゃないかと。その時代に、ちゃんと出口は何なのかということを意識して作っていくのが我々送り手の使命だと思います。ただ難しいですね。私の尊敬する、大好きだった神のように思ってるはっぴぃえんどというロックバンドがありました。その作詞家の松本隆さんはドラムを叩いていたんですね。ドラムを叩くということと、詞を書くということを実は引き裂かれるような思いでやっていたという風にご本人は言っていたけども、しかしそれが見事に統合して、肉体と精神が統合して作品になっていった。それはさっき広山さんもね、生島若も言っていたことかもしれないけど、やっぱりそれは我々にとっての宿命ですよね。特に舞台なんかはその日1回しか見られない。これはアウラですね。聖なる一回性とでも言いましょうか、それがやっぱりエンタメの究極、最高のものとして目指しつつも、しかしいろんな出口に対してきちんと対応する。これは我々の職業であるということをコロナ禍はこんなにもはっきりと明らかにしたということなのではないでしょうか。答えになっているでしょうか」

生島さん
「本日は『Trinity』、『truth』の上映会に来ていただき、本当にありがとうございました。僕個人としては『Trinity』がこういった一般の劇場でかかるのは今日が初めてということで、一緒に過ごせるということがすごく僕には嬉しいことなので、今日という日をかみしめて、東京に岐阜の美味しいお酒を飲んでから帰りたいと思います。ありがとうございました」

広山さん
「本当に初めての岐阜だったんですけど、皆さんがとっても温かくてすごく楽しいイベントになりました。やっぱりちゃんとこうやって人間って生身で触れ合って初めて何かが生まれるんだと確信しました。私事なんですけど、来週4月2日から公開の別の作品の主演をやっておりまして、4月2日には名古屋で舞台挨拶もありますので、そちらもお時間ありましたら来ていただけたら嬉しいです。本当に貴重なお時間をありがとうございました」

堤監督
「岐阜は本当にね、北から南までも大好きなんですよ。仲のいい脚本家で北川悦吏子さんも岐阜出身でございます。同じ東海地区の一員と言っちゃうとちょっとおこがましいですけども、いろんな意味で東海がもっと元気になるように、アフターコロナにいろんなご提案ができるように頑張っていきたいと思います。どっかで見かけたらお声掛けいただきたいと思います。本日はありがとうございました」

 

 

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ホウ・シャオシェンやジャ・ジャンクーら名匠たちの作品の映画音楽を手掛け、『アグリ ...

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