かなしみの先の光をみて(映画『グッバイエレジー』
ご当地映画が最近よく作られている。
そのおかげでこの街にはこんなものがあるんだと知ることもある。
この作品で私が知ったのは北九州は昔から映画のロケ地として
有名だったということだ。
昔の作品を観ていてもどこで撮影されているかは
今ほど情報がなかったこともあり知らなかったのだ。
北九州は昔から映画の街だった。
そして、この作品にはご当地映画という要素以外のものもある。
北九州で映画を観て育ち、昭和から平成を生きてきた
2人の男性の人生が描かれている。
あらすじ
映画監督の晄(大杉漣)は友人・道臣(吉田栄作)の死をきっかけに
北九州に数十年ぶりに帰ってきた。
思い出の地を歩く度に道臣と過ごした日々の記憶が晄には甦ってくる。
道臣は喧嘩が強く敵も多かったが、晄にとっては大切な友だった。
映画の魅力を小倉昭和館で一緒に知ったのも道臣とだった。
東京に進学してから会うことのなかった道臣の人生を映画化したい。
その思いで晄は取材を開始する。
道臣の妻・和代(石野真子)、漁師仲間の虎さん(中村有志)、
映画館のオーナーになった幼なじみの淳子(藤吉久美子)。
久々の再会や新たな出会いの中で道臣の軌跡を確認していく。
喧嘩別れしていた高齢の母(佐々木すみ江)には優しく迎えられ、
晄は自身のこれからの生き方も故郷北九州で考えることになる。

撮影本数200本以上。北九州は懐かしさも新しさもあるまち。
北九州は日本映画撮影の有数のロケ地だ。
北九州フィルムコミッションを中心に地域全体が撮影に協力的。
昭和の香りが残る風景やレンガ倉庫、広い道路と高層ビル。
撮影に必要なものがほとんど揃うこともあり
この十数年で大規模な映画の舞台になってきた。(『海猿』『DEATH NOTE』など)
最近では映画『相棒-劇場版Ⅳ-』、テレビドラマ『絶狼』もこの北九州で撮影された。
またハリウッド映画『OUTSIDER』の撮影地にもなり話題となった。
ただ、撮影場所にはなるが北九州としてではないことが多いのもロケ地の運命。
実際に撮影したい場所で撮影許可が下りないためにその場所に見立てて撮影されたり、
架空の都市として描かれることが多いからだ。
本作『グッバイエレジー』は北九州が舞台。
オールロケで撮影された。
北九州・小倉、門司の今の風景が収められている。
北九州フィルムコミッションホームページはこちら
北九州フィルムコミッションによる
『グッバイエレジー』ロケ地マップはこちらから
様々な資料館や旧跡も登場する。
その場所の方が本人役として出演し取材にやって来た晄と話すシーンがある。
一般の方と芝居をする大杉漣さんの話し方には漣さん自身の人柄が感じられる。
北九州フィルムコミッションを通じて百人を超える人たちがエキストラで参加した。
主人公は監督の分身
本作の監督は三村順一。北九州出身で、今回「地元で映画が撮りたい。」と
北九州フィルムコミッションの活動を知り、数十年ぶりに帰郷した。
監督自身の体験談がベースになっており、主人公・晄は監督の分身。
晄の友人の道臣も実在の人物。名前も同じ。
監督はこの作品の製作をきっかけに現実の世界では
道臣さんとの再会を果たした。
作品の中の晄は亡くなった親友・道臣の人生を
友人たちの話を通じてたどりながら脚本を作っていく。
道臣の生き方は『花と龍』の世界にも通じる男の生き様であり
晄が訪ね歩くシーンの間に入ってくる
「生き直している」道臣の姿から目が離せない。
晄を演じるのは大杉漣。
様々な作品で名脇役として作品に味を出す彼がこの作品では主役として
三村監督の思いを汲み取り、しっかりと北九州の魅力を伝えてくれる。
道臣を演じるのは吉田栄作。
芯が一本通っている義理と人情に熱い男を演じている。
北九州出身の藤吉久美子は晄に思いを寄せる小倉昭和館の館長として、
中村有志は道臣の漁師仲間の虎さんとして出演。
北九州なまりのネイティブさがより北九州色を引き出す。

小倉昭和館発。北九州版ニューシネマパラダイス
作品の中には様々な映画作品が登場する。
晄と道臣が通った小倉昭和館にある映写機が出てくるシーンは
『ニューシネマパラダイス』を連想させる。
道臣が愛してやまない赤木圭一郎。
大スター赤木圭一郎が出演している『霧笛が俺を呼んでいる』
その当時のポスターと貴重な本編映像が登場する。
作品内で何回も出てくる『花と龍』。
北九州が舞台の任侠ものだ。
義理と人情の任侠の世界。
この作品の主人公のような男。それが道臣。
自分の撮りたい映画が企画として通らなくなっていた晄は
道臣の人生を映画化するという生きていく上での新たな望みを見つける。
後者の2作品は北九州で撮影されたものだ。
北九州はこの当時から撮影に協力的な場所だったのだろう。
消えない親子の絆
この作品には2つの柱がある。
一本は晄と道臣の再会できなかった友人への思い。
そしてもうひとつが久しぶりに会う晄と母親の親子の会話だ。
母親と大喧嘩して故郷に帰ることができなかった晄。
それを優しく迎えた母。
時間がわだかまりをなくし、晄はこれからの人生を考え直すことになる。
母親を演じているのは佐々木すみ江。
ラストの晄と母親のシーンは長回しで撮影されている。
これは監督と監督の母親との間で行われた実際のやり取りであり、
親子だからこその思いやりが感じられるシーンになっているので注目してほしい。
いくつになっても親は親、子は子。
その会話がリアルに展開される。

年を重ねれば友人たちの訃報を聞くことも増える。
人生の終わりが近づくことも感じられるだろう。
エレジーとは日本語で哀歌や挽歌と訳される。
逝ってしまった人を思うことは大切なことだ。
しかし生きている人々は自分の人生が続く限り生きねばならない。
それなら前向きにまた進もう。
『グッバイエレジー』
監督の気持ちが込められたタイトルだ。
いくつからでも人生はやり直せる。いくつからでも始められる。
三村監督は北九州で『花と龍』を撮影しようと準備している。
撮りたいものを撮りたい場所で。
新作『花と龍』が見られる日もそう遠くないだろう。
『グッバイエレジー』 http://goodbyeelegy.com/ は
3月25日より有楽町スバル座ほかで全国順次ロードショー。
東海地区では3月25日より名古屋・名演小劇場で公開。
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