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リサ・ラーソン 作品の裏側に秘められた、ひとりの芸術家としての葛藤と情熱—。 映画『リサ・ラーソンがいた時間』名古屋舞台挨拶レポート
北欧スウェーデンを代表する世界的人気陶芸家、リサ・ラーソン。赤と白のしま模様の猫「マイキー」やハリネズミ「ハリエット」をはじめ、丸みを帯びた愛らしい動物や子どもの陶器作品は、今もなお世界中で世代を超えて愛され続けている。2024年3月に92歳で惜しまれつつこの世を去った彼女の晩年の姿を、孫であり映画監督のエミリア・エクマン・ラーソンが8年間にわたって見つめ続けたドキュメンタリー映画『リサ・ラーソンがいた時間』が9月18日から公開中。公開を記念して9月20日、名古屋・センチュリーシネマにて舞台挨拶が開催された。本作で監督・撮影を務めたエミリア・エクマン・ラーソン監督と、日本語字幕を担当した映画コメンテーターのLiLiCoさんが登壇。LiLiCoさんは通訳も兼任し、映画の制作秘話からリサ・ラーソンの素顔、作品に込められた愛まで、たっぷりと語った。
満員の客席からの大きな拍手に迎えられて登場したお二人。エミリア監督はマイクを手に取ると、「こんにちは、エミリアです。リサ・ラーソンの孫です。観にきてくれて、ありがとう」と日本語で丁寧に挨拶を披露。会場からは大きな拍手と温かい歓声が送られた。
続いてLiLiCoさんも「普段は映画を紹介していますが、今回はスウェーデン出身ということもあり、字幕を担当させていただきました」と挨拶し、和やかな雰囲気の中でイベントがスタート。
祖母のことを知りたい 祖母と向き合うために始めた撮影
エミリア監督へ「日本でも絶大な人気を誇るリサ・ラーソンさんですが、監督にとっては祖母という身近な存在でもあります。ドキュメンタリーを撮ろうと思ったきっかけは何ですか?」と質問が投げかけられた。
自身もリサさんと同じく芸術学校に通っていたというエミリア監督は、「同級生から祖母(リサ・ラーソン)のことを色々と聞かれた時、自分の祖母のことなのに何一つ答えられなかったんです。それがきっかけで、もっと祖母のことを知りたいと思うようになりました。直接質問攻めにするよりも、カメラを間に入れた方が自然に話を聞きやすいと思い、撮影を始めました」と制作の原点を振り返った。おばあちゃんとしてのリサの素顔について問われると、エミリア監督は「とても温かく、好奇心に満ちた人でした。アイデアが次から次へと溢れ出て止まらないため、ひとつの作品を作ったらすぐに次へ移り、途中のまま残された作品もたくさんありました。じっと座っていることも苦手で、自分でも座っていられないことに対してどこか申し訳なく思っている様子もありました。それでも、何かを作っては周囲の人にあげようとする、優しさに溢れた人でした」と愛おしそうに語った。

エミリア・エクマン・ラーソン監督
映画コメンテーターの直感が引き寄せた日本公開
LiLiCoさんからは本作が日本で公開されることになった驚きの経緯が話された。毎年夏に日本のファンを案内するスウェーデンツアーを主催しているLiLiCoさん。ツアーで特別な体験を提供したいと考え、現地で親交のあった友人を通じてリサ・ラーソンの工房に訪れる機会を作った。その際、サプライズでリサさんの三番目の息子のアンドレアスさんと出会い、アンドレアスさんから「姪(エミリア監督)がドキュメンタリー映画を作ったのですが、観てくれませんか?」と相談されたLiLiCoさん。「観る前でしたが、リサ・ラーソンのドキュメンタリーをお孫さんが撮ったなら絶対に良い作品になると映画コメンテーターとしての第六感が働きました。その場ですぐに「日本で上映したら良くないですか?」と提案し、日頃からお世話になっている配給会社のミモザフィルムズさんへ連絡したんです」と告白。去年の8月の出来事から僅か1年余りで日本公開と字幕担当が実現したという出会いが繋いだエピソードを披露した。
司会者から劇中の印象的な場面について聞かれたLiLiCoさんは、「祖母と孫という限られた時間の中で、二人が築き上げた信頼関係が本当に素敵です。劇中でリサさんがエミリアさんに「あなたは何でも出来るね」と話すと、「出来ないこともある。サッカーはできないし、サックスは吹けないよ」とエミリアさんが話し、それにリサさんは「サックスを持ってきたらきっと出来る」と返すシーンがあります。そして「あなた(エミリア)の監督デビューが楽しみだね」と語りかけるシーンがあるのですが、リサさんが亡くなった今となっては天国からのメッセージのようで、「ちゃんと訳さなきゃ!」と私にはそれがすごいプレッシャーに感じたのですが(笑)、リサさんのエミリアさんへの思いに深く感動しました」と熱く語った。
イベント後半は、観客からの質問に答えるコーナー。
「お孫さんから見て、リサさんの作品の中でどのシリーズが一番好きですか?また、今後どのような作品を作っていきたいですか?」と尋ねられると、エミリア監督はハリネズミやライオンなどの有名キャラクターよりも一点ものの作品への強い思い入れを明かした。
「私にとって大切なのは、祖母の指紋や手触りが残っているような一点ものの作品です。特に母を幼くして亡くしているので、悲しみの中で作った母親像の作品や、幼少期に離れて暮らさざるを得なかった妹との思い出が詰まった作品など、彼女の記憶や切ない感情が凝縮された作品に強く惹かれます」と回答。さらにエミリア監督は、自身の腕にあるタトゥーを披露。これは映画の中にも登場するエピソードで、弟のフリッチョスくんのエピソードが元になっている。「おばあちゃん(リサ)がトイレに行きたがっているみたい」と勘違いした弟が、無理やりリサさんをトイレへ連れて行こうとした微笑ましい家族の思い出が描かれたもので、実物は作られなかったものの、今回の映画の公式トートバッグのデザインとして残されていることが紹介され、会場を和ませた。

© 2025 Kamlert Film AB, Film i Skåne AB, Sveriges Television AB
今後の制作活動についてエミリア監督は、「これからもドキュメンタリー映画を撮り続けたいです。現代はAIやスマホの普及で画面越しの繋がりが増えていますが、人と直接向き合い、コミュニケーションを取ることが何より大切だと感じています。誰の人生を聞いても、そこには素晴らしい物語が存在します。戦争や人種差別で世界が分断されていくのは悲しいことですが、人間が持つ愛や感動は地球上の誰もが共通して持っているものです。父(リサさんの長男)も「あなたが感じる感動は、他の人が感じる感動と同じなんだよ」と言ってくれましたが、その普遍的な愛や感情を作品を通して伝えていきたいです」と力強く語った。

© 2025 Kamlert Film AB, Film i Skåne AB, Sveriges Television AB
北欧デザインが日本の人々の心に響く理由
続いて「北欧のデザインやリサ・ラーソンの作品が、なぜこれほど日本人に親しまれ、心に響くのでしょうか?」という質問が寄せられた。
エミリア監督は「祖母自身、日本の伝統的なアートや文化に深い関心を持っていました。私は今回初めて日本を訪れましたが、街を歩きながら日本の模様やデザインに北欧との共通点を感じました」と明かした。
LiLiCoさんも「私も個人的に、北欧のテキスタイルを見ると日本の昭和のポットや鍋に描かれていたチューリップなどの懐かしいデザインを思い出します。日本のデザインと、ぬくもりのある北欧デザインには不思議な親和性があると感じます」と共感を示した。
最後にエミリア監督は、「地球の反対側にいる人同士であっても、人間の根本的な感情は同じです。リサの作品が国境を超えて愛されるのは、彼女が大量生産のお金儲けのためではなく、ひとつひとつの作品に途途もない『愛』と『感情』を込めて作っていたからだと思います。ハッピーな気持ちだけでなく、悲しみや切なさも全て作品の中に注ぎ込まれているからこそ、見る人の心に深く届くのではないでしょうか」とまとめ、会場は温かい拍手に包まれた。

映画『リサ・ラーソンがいた時間』 https://mimosafilms.com/lisalarson/ は現在センチュリーシネマ他で公開中。
『リサ・ラーソンがいた時間』
原題:Farmors leriga händer- En film om Lisa Larson
英題:Memories In Clay: A Film About Lisa Larson
監督・撮影:エミリア・エクマン・ラーソン
出演:リサ・ラーソン、グンナル・ラーソン、マティアス・ラーソン、エミリア・エクマン・ラーソン、フランコ・ニコロシ
字幕:LiLiCo
製作年・国:2025年/スウェーデン
上映時間・仕様:94分/カラー/1.85:1/5.1ch
配給:ミモザフィルムズ
後援:スウェーデン大使館
協力:株式会社トンカチ
© 2025 Kamlert Film AB, Film i Skåne AB, Sveriges Television AB
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