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第35回CINEX映画塾『いつかのふたり』トークレポート

第35回CINEX映画塾が11月9日岐阜CINEXで開催された。
作品は『いつかのふたり』。高校卒業後に大阪に行くことを決めた娘・真友と夫・隆弘と別れてから娘を育てて来た母・麻子。大阪について来て欲しいと言えない娘とついて行きたいと言えない母の半年を描く。

この映画の主演・麻子役の中島ひろ子さん、元夫・隆弘役、岐阜県揖斐郡出身の岡田義徳さん、長尾元監督、この映画を企画した岐阜市出身の棚橋公子プロデューサーがゲストとして登場。上映後のトークをお届けする。

棚橋プロデューサー
「長尾監督は脚本も書かれていますが、主人公麻子のモデルに誰かを浮かべて書いているんですか?自分が麻子になっている気持ちで書いていますか?」

長尾監督
「僕にはもちろん母がいます。母親のことをモデルには出来るだけ気恥ずかしいのでしたくはないと思っているんですが、3、4週公開してきていると母親の友達から色々言われるのは何かやっぱり…(笑)。僕が一番知っている母親像が自分の母親かもしれないので知らぬうちにモデルにしていたところはあるかもとは思いますが、僕は基本的に誰かをモデルにと考えるよりは一から考えようかなと思って作ったつもりです」

棚橋プロデューサー
「岡田さんは隆弘の役をどう思われますか?」

(会場内苦笑)

岡田義徳さん
「この会場の笑いが物語ってます(笑)。ちょっと複雑な事情のあるお父さんですよね。僕の演じた役は癖のある役で、共感できる方、できない方がいらっしゃると思いますが、家族の形としてはこういう形もあるのかもなと思います。皆さんがどう捉えるかは皆さんの自由だと思いますが、考えていただけただけで僕は幸せです」

棚橋プロデューサー
「最初に麻子をキャスティングするということで中島さんにご連絡させていただいたんですが、脚本を読んで、麻子のことをどう思いましたか?」

中島ひろ子さん
「変わってる。変わってるという言い方は変ですけど、お母さんのようで、お母さんじゃないように読めたんですね。かつ私に似ているところがあって。私は普段割と落ち着かない子でよく話すんです。映像で観て頂いている私とは違って割と麻子さんに近いんです。とてもやりがいのあるお話だなと。オファーを頂いてすごく嬉しかったです」

棚橋プロデューサー
「長尾監督は今回が初長編映画になりますが、どんなところにポイントを置きながら撮影されたんですか?」

長尾監督
「あまのじゃくなもので、とにかくデビュー作らしくないものを撮ろうと。なおかつ、自分でわかる範囲のちょっと外側の話をしようと思いまして。僕が思うがままに撮ったら多分主人公は20代の男性にしていたと思うんですが、そのまま撮るのもちょっと癪だなと思いまして。僕は性的に女性でもないですし、親でもないので、母親のことを考えてみようかなと思って今回、脚本を書きました」

棚橋プロデューサー
「父親像としては私から見るとものすごく愛情深い人だなと思うんですが、岡田さんが一番愛情が深いと思ったシーンはどこですか?」

岡田義徳さん
「温泉に行くシーンだと思いますね。撮影は2年前だったので、その時僕には家族はいなかったんですけど、ここ1年で家族が出来て、子どもが出来まして。今思えばもっと演じ方はあったと思うんですけど、自分一人で想像の範囲で出来る最大の役作りだった気がします。相手がする小さな動きとかそういったこと全てに気を遣ったと思います」

棚橋プロデューサー
「階段を落ちることはかなり究極な選択だと思うんです」

岡田義徳さん
「かわいいですよね?あれは」

棚橋プロデューサー
「自分だったらどんな選択をしますか?」

岡田義徳さん
「ちっちゃいことですかね。体は大事にしないといけないと思いますので(笑)。何か小さなアクションを起こしながら妻には気づいて欲しいと思います。ああやって大きいことをやるのもいいかも知れませんが、愛情表現としてはいたたましく思うところもあると思うので。まあ…ああいう風にならないのが一番ベストですね」

棚橋プロデューサー
「麻子さんは階段から落ちたことはどう思ってるんでしょう?」

中島ひろ子さん
「嬉しい半面、「何やってるんだ、この人」という思いがあるのかなと。わかっているだけにかわいさを憎めないところが奥さんとしてはあったんじゃないかなと想像してるんです。そこがつながっているから一緒に温泉も行けたんでしょうねと思ったり、あの距離感があるからこそいい夫婦でいられるのかなとちょっと思ったりして。形は色々ですけど、つながるものは一緒かなあと」

中島ひろ子さん

中島ひろ子さん

人を繋げるレザークラフト裏話

棚橋プロデューサー
「レザークラフトを作るシーンがあって何度か練習していただきましたが、どうでした?楽しかったですか?」

中島ひろ子さん
「楽しかったです。劇中で持っていたマイバッグは私が作ったんです。撮影が始まる何日前ぐらいでしたっけ?監督」

長尾監督
「確か撮影が始まる4日前ぐらいに最後の練習をしたんです。先生のところで1回5、6時間を5回ぐらい行って。最後の練習で宿題として全部縫って来てくださいということに」

中島ひろ子さん
「レベル高すぎますよね。もう大変でした。初めて革に糸を通したり、穴を開けたり、擦ったりしたんですが、こんなにも革のバッグを作るのは大変なんだと身に染みました。岡田さんはレザークラフトをやってらっしゃるんですよね?」

岡田義徳さん
「やってました。独身の頃は。今はやる時間がないので。道具は持ってます。楽しいんですよね。作るのが」

棚橋プロデューサー
「どんなものを作られたんですか?」

岡田義徳さん
「台本のカバーとか、小さなバッグとか作りました。簡単なものだけは作ってましたね」

中島ひろ子さん
「先生に習ったんですか?」

岡田義徳さん
「独学で、見よう見まねで。親が元々縫製業をやっていたので、ミシンとかを触らせてもらったりしていまして。そういうものに触れている時間が長かったからかものを作るということに関しては抵抗がなかったというか。作ることは早かったです」

中島ひろ子さん
「血はすごいですね」

岡田義徳さん
「岐阜は縫製のまちですから」

棚橋プロデューサー
「長尾監督、全てのシーンの中で一番大変だったシーンはどこですか?」

長尾監督
「一番大変だったのは屋上で麻友が、部屋で麻子がレザークラフトの先生の親子それぞれと話しているのを交互に出てきたシーンの屋上の方です。あそこの麻友がどうしても話の内容的に撮影しているとウェットな演技になるというか、涙が出るような演技になってしまいまして。そうじゃないと言って何回かやり直したんです。あのシーン以外は撮影が押すこともそんなになかったと思います。ウェットになる気持ちは僕もわからなくはないのでいい落ち着きどころを麻友を演じる南野さんと話し合いながらやったんですね。今となっては楽しかったです」

長尾元監督

長尾元監督

 

棚橋プロデューサー
「あのシーンは本当は一日で撮る予定だったんですが、外なので日が落ちてしまって撮り切れなくて、次の日が休みの予定だったのをなくして撮影しました」

長尾監督
「もう一度観るとわかります。如実に日が暮れて行っているのがわかります。カットが変わるとどんどん赤くなって行ってます(笑)」

中島ひろ子さん
「監督が映画に出ていたのは皆さん、わかりましたか?」

長尾監督
「本屋の店員で出ておりました」

棚橋プロデューサー
「岡田さん、本屋の店員役の役者さんはいかがでしたか?(笑)」

岡田義徳さん
「あー…。勉強が足りませんね(笑)。嘘です、嘘です。僕が言うのは何ですけど素晴らしかったと思います(笑)」

棚橋プロデューサー
「一応共演シーンもありましたよね」

岡田義徳さん
「めっちゃ監督が緊張していたのを覚えています」

棚橋プロデューサー
「自分で書いた台本なのに本屋の隙間ですっごい暗記してました(笑)」

長尾監督
「それを言うと僕がサボっているみたいに聞こえますが、ちゃんとセリフを全部覚えて現場に行ったんですが、緊張で全部忘れてしまったんです。本当に役者さんはいつも大変なお仕事をやられているんだなと思いました」

小規模・短期間で凝縮した撮影を

棚橋プロデューサー
「中島さんの大変だったシーンはどこですか?」

中島ひろ子さん
「どれもかな(笑)。11日間で撮影したので、娘となるべく一緒にいようと休憩時間もずっと会話をしたりして、なるべく母娘に見えるようにとか、小さなことですが、二人でやってました。お父さんがいるときは3人で話して。短期間で撮影するというのは皆さんも大変だったと思いますけど、その短い中で皆さんがパッと一つになれた時間が沢山あったので、すごいなと」

棚橋プロデューサー
「スタッフも10人ちょっとで、キャストも10人ぐらいでしたし」

中島ひろ子さん
「スタッフさんは一人何役もやられてましたよね」

長尾監督
「撮影している現場を見たら「これで映画が撮れているのか?」と思うような小規模な切り詰めた切り詰めた撮影スタイルでやりました。キャストは切らないで」

棚橋プロデューサー
「スタッフは休みもない12日間で撮影しました。最初は2日ぐらいお休みを入れていたんですが…」

長尾監督
「1日目が天気の都合でなくなって、2日目はさっき話していた現場の押しなどによってなくなりました」

棚橋プロデューサー
「皆さんに伝えられたらという思いで今回は短い期間で、しっかり作りました」

岡田義徳さん
「棚橋さんも岐阜出身なんですよね。今日もお知り合いが沢山来られていると思いますが、なぜこの映画を撮ろうと思ったんですか?」

岡田義徳さん

岡田義徳さん

 

棚橋プロデューサー
「映画を作りたいとは結構前から思っていたんですが、スタイリストの仕事を長くやってきて、映画ってどうやって作られているんだろうと興味がありまして。たまたま長尾監督とある作品で一緒だったんです。長尾監督は助監督として、私はスタイリストという立場でしたが、「実は映画を撮りたいんだけど」と軽い感じで相談したのが始まりです。私はハンドメイドが大好きで、アクセサリーは作ったりしています。ハンドメイドで作品を作る人は結構プロ並みに上手い人でも、主婦の趣味としてやっている感じであまり脚光を浴びていなくて。もっとその人達が作るものに対しての気持ちや作品の凄さみたいなものを表現できたらいいなと思ってハンドメイドをテーマにしています。母子家庭の設定はうちが母子家庭なのでその設定でわかりやすくやろうかなと監督に相談しました」

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棚橋公子プロデューサー

 

中島ひろ子さん
「私、ちょうど直前くらいに17年ぶりにお仕事をご一緒して。その時に「いい子がいるのよ!すごい子がいるの」って棚橋さんから聞いていまして。すごく嬉しそうに棚橋さん話されていましたよね?その半年後にお声掛けいただいたんです。あ、実現したんだと思いました」

観客からの質問

観客から
「映画の中ではどうして夫婦が別れたのかが語られていません。もし教えていただけるなら教えていただきたいです」

長尾監督
「僕としては設定はしています。皆さんがどう思っているか聞いてみたいです」

中島ひろ子さん
「私は破天荒なところもあるので、行き違いになったのかなと思っています。麻子の集中すると一直線に行ってしまうところが彼には合わなかったのかなと。離れてみるとあまりそういうところを見ないのでいい距離感が持てたのかなと。岡田さんは?」

岡田義徳さん
「そうですね。他人ですから。夫婦と言えど。理解出来ないことは本当に沢山あると思うんです。それが無理だったということなんじゃないですか?」

中島ひろ子さん
「難しいですね、永遠のテーマです」

岡田義徳さん
「僕が考えるのは、相手が考えることを何年後かに「あ、こういうことだったのか」と思えればいいやと思うようにしてます。そうすれば今分からなくてケンカしたとしてもまた10年後にそう思える日が来るのかなと。忍耐が必要なんです。人を傷つけた分優しくしたいなという思いが今はすごく強いです」

中島ひろ子さん
「色々あるのを二人で乗り越えていくのが夫婦なのかもしれませんが、そうでない形もあるのかなとこの映画で思ったり。もちろん自分も色々経験していて反省点は多々ありますが、それを踏まえてまた出会いの時に出して行けたらいいなと思うんですが、そこは人間なので(笑)、どうその時に化学反応が起こるのか分からないという楽しみがありますよね」

岡田義徳さん
「次の出会いで幸せになれればいいんですもんね。話が違う方に行きましたが・・・」

中島ひろ子さん
「どうですか?棚橋さんは」

棚橋プロデューサー
「私も麻子と隆弘の別れた理由は聞いていないんです。私が思うに隆弘はすごく愛情深い男の人でああやって階段から落ちてまでやってくれるんだけど、麻子はその深さに気づいてないんだと思いました。だから自分のペースで自分の思うがままに生きたいと。別れた時点ではわかっていなかったですが、温泉に行ったり、いろんなことがあって少しずつ気が付き始めているのかなとは思います。その時は麻子が自分の生き方をわかってくれないならそれでいいって別れてしまったんじゃないかと。では監督解答を」

長尾監督
「解答という解答はないんです。映像に映っていることが全てです。皆さんが思っていただいたこと、それが正解です。僕が思っていたのは麻子さんの凝り性といいますか、こう聞いたらポーンと何かが返ってくる反応が娘が生まれたことで子育ての方に行ってしまって。それは悪いことではないですが、隆弘の考えている優しさとか子育て感とは違っていて。子育て感の食い違いがあったのかなと思います。両方偏屈な人なのでそういう所で食い違うと大変なのかなと。でも結局別れても事務的な連絡とかは取っていて別に関係性が戻ることはないと思いながら温泉旅行に行ったら、「前より話が分かるようになってるんじゃない?いややっぱりなってなかった」という流れかなとは思います。お互いに」

観客から
「『いつかのふたり』というタイトルはチラシなどのパブリックイメージからは母と娘という感じですが、実際映画を観ると父と娘とか先生と生徒という関係性がありました。タイトルはどのようにつけたのでしょうか?」

長尾監督
「タイトルは脚本が形になってからもずっと悩んでいまして。ある時、大林宣彦監督の『ふたり』というタイトルはいいタイトルだなと思いまして。そこをきっかけに、この話もいつか言おうとしている人の話だったり、観ている人があの時の私もそうだったかもなと思ってもらえるのではないかと考えた話なのでじゃあ『いつか』にしようかな『ふたり』にしようかな・・・そうだ『いつかのふたり』だ!ということです。ひらめきです」

観客からの質問にもしっかり耳をかたむけて

観客からの質問にもしっかり耳をかたむけて

 

観客から
「真友ちゃんの衣装に個性が出ているのかなと思ったんですが、衣装へのこだわりがあれば教えてください」

長尾監督
「僕がお願いしたのは真友に関しては出来るだけ制服を着させないでくださいと。制服が僕が嫌いというのもあるんですけど、それ以前に映画として制服を着ている人は沢山観てきているのでなんかアレンジを加えて上に1枚何か着ているとか。そういうのをやってくださいというのをお願いしたらあんな感じになりました。お決まりにしないでくださいとお願いしました。スタイリスト目線から見て棚橋さんどうですか?」

棚橋プロデューサー
「真友ちゃんはカジュアルをベースにして色の組み合わせをちょっと効かせてます。ブルーのスカートを入れたりとか。色を入れてパキンとさせたりはしています」

長尾監督
「専門的ですね(笑)。ありがとうございます」

観客から
「プロデューサーの仕事というのはどんなことをするんですか?発想を渡すようなことをされているようですがどのように製作に関わられているのでしょうか」

棚橋プロデューサー
「プロデューサーの仕事というのがこうですよとは初プロデューサーなので語る位置にはいないかもしれませんが、今回は自分でこんなのが作りたいと思って監督にオファーして相談して脚本も書いていただいて。その書かれた脚本に対してロケ場所を探したり、キャスティングして、お金の管理をしてという感じのことが大半の仕事です。もちろん撮影中はほとんど立ち会って、次の日の連絡とかロケ場所の確認などをしていました」

長尾監督
「今回はそうですけど、本来はプロデューサーさんは全体の統括、作品がこれでいいのかどうかの判断、財務大臣的なお金の管轄ですね。どこにお金を出すのかとか」

観客からの質問コーナーのあとはサイン入りのポスターをかけたじゃんけん大会が開催された。また花束贈呈、記念撮影も行われた。

棚橋プロデューサー
「今日は本当にありがとうございました。今日から2週間CINEXさんで上映しております。もう一回ここが観たいと思ったらまたお越しください。よろしくお願いいたします」

中島ひろ子さん
「この物語は人それぞれいろんな道があっていいんだよという心温まるメッセージが込められた作品だと思っています。またSNSなので拡散していただきたいです」

岡田義徳さん
「このような形で地元に帰ってこられるとは本当に幸せなことです。16歳で東京に出たものでもう東京に住んでいる期間の方が長いんです。この街がこう変わっている姿というのも見ていなかったですし、何年振りかにここに来て岐阜のために何かしていきたいという思いがすごく強くなりました。この映画を通してもそうですしいろんなことで自分がお力になれれば岐阜のために地元のために頑張っていきたいと思っています。今後も応援よろしくお願いいたします」

長尾監督
「僕も岐阜のために何かできることがありましたらいつでもお呼びください(笑)。何でもやります!本当に皆さんお一人お一人のご感想を聞きたい思いです。このあとロビーにいますのでお声がけください!ありがとうございました!」

観る人によって、観るときによって違う感想を持つ映画だと思う。家族との関係性、好きなことに没頭すること。『いつかのふたり』というタイトルもこの映画の誰のことなのかは観る人によって違うことだろう。麻子と真友の会話に普段の何気ない母と自分との会話が幸せな時間なのだと気が付かせてもらえた。

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