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同じセリフで違うシチュエーション。親子の形を描く短編映画公開!(映画『あした、授業参観いくから。』安田真奈監督インタビュー)
2023/07/19
あいち国際女性映画祭で『36.8℃ サンジュウロクドハチブ』を上映した時に色々お話を伺った安田真奈監督の新作は短編『あした、授業参観いくから。』。昨年12月に大阪 シアターセブンで公開したところ「短編なのに濃密」、「胸が熱くなる」、「涙が出た」とリピーターが続出。4回も追加上映され、来場客の熱い感想メモが300枚以上も寄せられた。また「感動したので、今日は娘と来ました」「子どもと見てすごく良かったので、夫も連れて家族できました」「娘と一緒に観て本当に良かったです!」といった微笑ましい親子鑑賞も多数。そんな話題作の名古屋シネマテークでの2月26日からの上映が決定した。
あらすじ
坂口則子は、中学英語教師の職に生きがいを感じている。出勤は常に早朝。断れない性格で残業も多い。独り身の心細さもあるが、堅実に暮らしている。則子が担任をしているクラスには様々な生徒がいる。両親が共働きで、優等生の光。母を亡くしたが、明るい性格の亜輝菜。父が医師で母は専業主婦、裕福な一馬。母がだらしないので家事を担うゆかり。荒っぽい性格の父におびえる涼太…。明日は授業参観。それぞれの家庭で展開する全く同じ会話、しかし全く異なる親子模様がある。
授業参観というのは様々な思いを抱く。親が自分を見に来てくれることが嬉しいと思えたり、嫌だなあと思ったり。それには様々な理由がある。そして教師もまた授業参観というイベントに様々な思いを抱いている。自分が子どもの頃はどうだっただろうか。そして教壇に立っていた時、何を考えていただろうか。自分の思い出に重なるものがあった。観客が学生だった場合は、生きている今を感じる作品になっているだろう。
本当は、いろんなことを書きたいのだが、ネタバレは出来ればしたくない。これはとにかく観ていただいて、語り合って欲しい作品だ。
この作品の注目点はそれぞれの親子が発するセリフは全く同じだということ。
しかし環境やシチュエーションが違えば感じることは違う。そして観る人の状況によっても感じることは違うということも含めて面白い作品だ。
こんな面白い映画をどんなきっかけで製作したのか。安田真奈監督に名古屋公開を前に制作の意図やキャスティングについて伺った。
安田真奈監督インタビュー
Q.この作品の話を書くきっかけを教えてください。
安田真奈監督(以下安田監督):
「親子、家族について語り合いたくなる映画を撮りたい」と思ったんです。以前から、「親子、家族」というテーマに興味がありまして。2006年の劇場デビュー『幸福(しあわせ)のスイッチ』も、上野樹里さん、沢田研二さんの電器屋親子の映画でした(現在U-NEXT、dTVで配信中)。その後、子どもを授かりましたし、NHKドラマ「やさしい花」(2011年)の脚本担当以来、児童虐待に関する講演が長く続いています。そうした積み重ねで、親子の問題や事件にますます関心が向くようになりました。日本人は愛情表現がオープンではないので、「想いはあるけど、うまく通じない」という家族関係が多い気がします。本作でも、授業参観にいくからには愛情はあるんだけど、うまくいっていない家庭が数軒あります。観た後に、劇中の親子のみならず、実社会の親子に対しても、優しく見守るような気持ちになっていただけたら…と思います」
Q.親子のエピソードを描く上で、なぜ授業参観というシチュエーションにしたのか教えてください。
安田監督:
「授業参観のお知らせがあると、親は、ぜひ子どもの姿を見たい、学校や授業の雰囲気を知りたいと思って、仕事や家庭のスケジュールを一生懸命調整しますよね。特に男子は、成長するにつれて学校のことを親に話さなくなるので、授業参観は貴重な見学の機会。そんな行事がコロナ禍で失われている寂しさもあり、タイムリーな素材だと思いました」
Q.全く同じセリフを家族環境の違う親子が交わす。こんなにもたくさんのニュアンスが生まれるんだと驚きました。このアイデアはいつ生まれたのでしょう?
安田監督:
「親子、家族について語り合いたくなる映画を撮りたい」という想いに加えて、長年、脚本講座や演技ワークショップで「あした授業参観いくから」「え」「なによ」という親子の会話を教材として使っていたんです。「全く同じ台詞でも、キャラクターや親子関係がかわると演技も変わるでしょう?脚本だったらト書きが変わりますね。」という感じで。ワークショップを重ねるうちに、あぁこれは短編にできるな、誰もが何らかの想い出のある行事だしな…と思うようになりました。映像化にあたっては、各家庭について、ロケ地や、撮影、美術、人物配置、効果音、音楽など、色んな要素で描き分ける必要があります。スタッフからも「ここは長回しがよいかも」など、色々とアイデアをいただきつつ、仕上げていきました」


Q.上映形態としてワークショップ付上映も考えておられますが、実際にどんな内容を開催されているのでしょうか。
安田監督:
「大阪のシアターセブン、神戸の元町映画館では、上映期間中に「演技・脚本ワークショップ」を開催しました。「脚本とは?」から始まる、初心者歓迎の内容で、劇中の授業参観にまつわる台詞も活用しました。ワークショップ後に本作を観ると、演技に加えて映像や音、編集でこんなに変わるのか!と楽しんでいただけるんです。できれば今後は上映付きワークショップを中高生向けにも展開したいんです。映画という娯楽に慣れ親しんでいない若い方にも身近な素材ですし、同じ台詞でもこんなに違う映像になるんだと、映像制作に興味をもっていただけそうですしね」
Q.生徒だけ描くことも出来たと思いますが、教師の生活も描いたのはなぜですか?
安田監督:
「家庭環境がバラバラの生徒たちを一つの教室で束ねるのは教師。生徒を描き分けるだけでは映像の遊びで終わりかねないので、「親子、家族」というテーマを深めるためにも、教師を主人公にして生活を描きました。片岡礼子さんのリアリティ溢れる演技のおかげで、生徒たちのドラマがふわりと束ねられたと思います」
Q.キャスティングについて教えてください。片岡礼子さん起用の理由は?
安田監督:
「片岡さんには昔から憧れてたんです。2001年に『ハッシュ!』で、キネマ旬報ベストテンとブルーリボン賞で主演女優賞を受賞されましたが、その頃の私はメーカー勤めの自主制作作家。あいち国際女性映画祭、名古屋シネマテークで『オーライ』(関西テレビ製作16㎜映画)を上映いただいたのが2000年。「いつか映画を仕事にしたいな…」と考えていた頃の憧れの女優さんでした。たたずまいも、ナチュラルなお芝居も素敵ですよね。片岡さんとは、2020年春、コロナ禍のさなかにTwitterでつながったんです。「映画館がようやく動き出す」と書いておられたので、「嬉しいですね」とコメントを寄せて。片岡さんは拙作『TUNAガール』(小芝風花さん主演 近大マグロをアツく育てる青春映画。NETFLIX、ひかりTVで現在配信中)をとても気に入ってくださり、「安田監督と熱いタッグが組める日を夢見ています」と、嬉しいコメントをくださいました。コロナ禍で仕事も減り、不安な時期だったので、とても励みになりました。翌2021年、本作の企画を始めた時、主演の教師は絶対片岡さんに、と思いました。9月下旬の3日間の撮影のうち、2日間参加いただきましたが、やはり演技に圧倒的なリアリティがあり、素晴らしかったです。また有難いことに、とても気さくなお人柄で、撮影現場の雰囲気を明るくしてくださいました。終了時に、「スタッフ・キャストリストを下さい。どなたかとまたご一緒するかもしれないので、お名前を知っておきたいです。」とおっしゃって。本作に限らず、関わった作品やスタッフ・キャストに対して、とても熱い想いをお持ちの方なんですよ」

Q.他のキャスティング、生徒はオーディションだと思いますが、どんな感じのオーディションだったのでしょうか?
安田監督:
「親子キャストは、シナリオがほぼできた状態で、親子の組み合わせを変えながら、各シーンを演じていただきました。子役は、結果的にそれなりにキャリアのある方々に決まりました。光役の島田愛梨珠さんは、映画『魚の目』主演。亜輝菜役の坪内花菜さんは、映画『大阪少女』主演。一馬役の下松谷嘉音さんと涼太役の歳内王太さんは、テレビドラマや舞台の経験が多く、ゆかり役の佐野亮華さんはインフローレ女学院というアイドルユニットで活動中です。対して、親役はキャリアがバラバラです。亜輝菜の父役の河﨑公一さんとゆかりの母役の成瀬千尋さんは舞台経験も無く、映像作品初出演。光の母役の楠葉子さんと一馬の母役の森琴樺さんも、映画のメインキャストは初めてです。物語のキーマンとなる父親を演じた涼太の父役の前田晃男さんは、オーディションではなくオファーです。もともと南河内万歳一座にご所属で、拙作『オーライ』のメインキャスト。約20年ぶりに出ていただきました。また、教師の母親役の和泉敬子さんは関西のベテランで、拙作『幸福(しあわせ)のスイッチ』にも出てくださった方です。このように、片岡さんはじめとするベテランから、まったくの新人まで、キャリアはバラバラですが、良い感じのアンサンブルになったと思います」


Q.長編ではなく短編でシネマテークさんで公開というのはやはり実験映画と掲げられている通り、画期的な作品だからだと思います。観客の皆さんに公開前に監督からどう観たらいいのか教えてください。
安田監督:
「本作は、学園モノというより、親子モノです。「全く同じ台詞だけど、全く異なる親子模様を描く」という変わった構造を楽しみつつ、親子間の愛情のありかたについて、言葉のかけ方、受け取り方について、色々と想いをはせていただけると嬉しいです。また、演技や映像の描きわけ、という映画的な楽しみも味わっていただけたら幸いです」

安田真奈監督
短編映画『あした、授業参観いくから。』http://www.parasang.co.jp/works/index.html#movie は2月26日(土)より3月11日(金)まで名古屋シネマテークにて2週間限定公開。
上映スケジュール
2月26日(土)〜3月4日(金) 19:10(注意:3月2日は休映)
3月5日(土)〜3月11日(金) 10:00
初日に安田監督舞台挨拶が予定されている。
愛媛 シネマルナティック では 4月2日(土)~8日(金)、東京 K's cinema 4月16日(土)~22(金)で公開予定。
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